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Geo日記
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[123]. レール破断の原因は?
  「JRのレールが危ない!」

  JRの線路の劣化が著しく、シェリングや、探傷車による点検直後に傷を発見できなかった場所で破断を起こしたりして、安全性にかなり疑問符が付く状態だが、それを管理する体制としては、レール折損を発見した保線からの減速要請を、指令が職制上の手続きを優先させて拒否し数本の列車をそのまま通過させてしまうとか、それらを週刊誌上(週間金曜日)で個人名で指摘した国労組合員を処分するなど危険・事故隠しの意図を疑わせる愚挙が重なって、人為的な大事故発生も危惧される深刻な事態になっている。
  この状況が「JRのレールが危ない」(安田浩一著金曜日06/04/25刊)というルポ本として発行されている。週刊金曜日誌の取材で不当処分が出されたこともあり、今後徹底追及なのだろうが、一読しての印象は、個々の支障事故と現場の人達の声は拾っているが、先を読ませる資料や会社側の言い分がなくかなり食い足りなかった。
  尼崎事故では、あの会社の言い分が安全軽視、嘘つき体質をあからさまにした訳だし、きちんと批判の目をもって見れば口数が多い分綻びも増えて実態が漏れて来るので一方の言い分だけ載せるより有用だ。垂れ流し手抜き報道の反映はあるが会社の言い訳をそのまま信じてしまうお目出度い「世論」が出るのはその都度潰すしかない。

  有力な現場見解と伝えられるのが、最近の新型車は加速トルクが大きく、線路を破壊し易いのではないかというもの。それを言うには嘗ての機関車時代との比較と、101/103系との比較は必須だろうし、近年のレールが表面硬化処理を受けていて集中応力を伴うから軽負荷では損耗が少なくても特定の閾値を超えた場合に急速に損耗が進むことは有り得ることで、材料屋を追うことも必要だろう。様々な要因を挙げて一つ一つ潰すことが必要なのだが、これが会社としてきちんと取り組まれているか放置なのかを突っ込んで欲しかった。

動力軸の粘着力比較
車両特性
車種103系E231E217
特性項目単位11両15両
加速度km/h/s 2.02.82.2
減速度3.3
全重量[ton]506406445609
加速
f=mα[kN]281.1315.8271.9372.2
加速軸当11.7119.7417.0015.50
相対比率1.0001.6861.4511.324
粘着率μ0.08690.18740.16140.1471
減速(全軸一斉、遅れ込め制御なし)
f=mα[kN]463.8372.1407.9558.25
減速軸当11.609.309.279.30
質量内訳
[ton]40t×628t×428t×428t×6
29t×424t×624t×724t×9
0.05t×150
×10×2
0.05t
×150
×11×2
0.05t
×150
×15×2
103系   40t×6 + 29t×4 =356t
E231   28t×4 + 24t×6 =256t
E217(11) 28t×4 + 24t×7 =280t
E217(15) 28t×6 + 24t×9 =384t
 人  0.05t×定員150×乗車率2×10両=150t
 人  0.05t×定員150×乗車率2×11両=165t
 人  0.05t×定員150×乗車率2×15両=225t
  ただ、新幹線線路手抜き工事を追及した会社を逆に発注停止契約解除にした事件を取り上げていたのは是。大スクープなのに他のマスコミが全く取り上げなかった事件だ。たとえ大スポンサーだろうと偽装や悪意はちゃんと突っ込んで欲しい。これを遠慮しては報道機関とは言えなくなってしまうではないか!(原記事05/06/12赤旗新聞日曜版P5)。レール締結ボルトの増し締め作業の全面手抜きをやっていながらJR西日本は「安全に影響がない」と言うのだが、それが本当なら天下り元請け会社への資金流入「工事」だったのか!などの疑惑は当然に湧く。真相は現場も知っているだろうに、いまだ漏れてこないとは、安全性向上計画推進云々はかなり機能停止状態だ。

 右表の試算に拠れば、103系から209系E231系などの新型に変わっての明かな違いは、動力軸の粘着係数が抵抗制御車の約2倍で機関車並に使われていて、加速粘着力が32%〜69%増えていることだ。(Web記事には重量など算出の基礎数値となる仕様部の記載がほとんどない!検索に良くヒットするWikiには皆無に近いのには驚き。そんな訳で信頼度にやや疑わしい数値もあるが、概算としてはこんなもので大きくは違わない)
 もしこれが影響してのことなら、レールの異常は加速区間と遅れ込め制動で制動力を電動車が負担する場所に集中するはずだ。ところが記事には、そうした駅との相対位置で整理できる発生データ指摘はなく、却って「あの辺は80km/hを越えて走る」云々として記事に挙げた例が加速区間のものとは言えないことを示唆している。シェリングの起きた幕張電車区傍はトルクが落ちる最高速度での走行区間で、強力な加速区間ではない。せめて破損発生位置データ付きの一覧表でもあれば分析のしようもあるものを、適切な資料に基づき全くデタラメな解釈を並べる川島本型コメントも高名著者ほど信者が多くて誤謬が広まって困るが、当然要求される資料がないというのもまた困ったものだ。

  レール折損隠しや、人による点検の手抜きは会社がやっているのであり、不十分なルポライターの責任ではない。JR東日本は信号・ATSに関しては突出したATS−P/−Psへの換装や、自社判断で無閉塞運転を廃止して指令の判断による閉塞指示運転へ切替るなど、人為エラーを前提にそれを防ぐ方針を貫いているが、他部門についてはそれが適用されず、他JRと同じ悪い体質を残している。現在、計測に拠らない要素を全面否定して、駅など現場からの気象観測情報をシャットアウトしたことで、近傍が無人駅ではなく現地情報を参照する体制が残っていたら避けられたかもしれない羽越線転覆事故を起こしている。その検証番組でJR東日本は運転士の判断で停めることを許さない方針を説明している。日常的に強風に慣れている現地の住人は「事故当日は希に見る荒天だった」としており、まばらな観測態勢にその荒天が引っ掛からず、また決定的な大規模寒冷前線の巨大積乱雲情報を利用できる体制がなかったことで惨事となった。数値化できない情報を排除してしまう極端さが追求される限りは避けられたかも知れないこの手の事故は頻発する。レール検測直後に把握できなかった場所での破断事故があるのだから、頻発重要線区にはOBを頼むなど人を手配して巡回間隔を確保するなど事故発生前の臨時手配が必要だろう。

[原因と対処法は新幹線でとうに決着済み!
どうなってるの?]
 
Link! see #140 200〜300/年発生が、ほぼゼロ!(06/11/16追記)

2006/07/02 23:55
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