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心構えと安全装置設置基準の混同
有害な精神論は消えず

   尼崎事故現場過速度ATS停止について
東京新聞 2010/11/06 11版S 5面
   「ミラー」(投書特別枠)   <C1>

 JR西安全、機械任せか
       S.S. 78歳
          (原文は実名。不必要につき省略)


 十月二十八日付社会面で、尼崎JR脱線事故が起きた福知山線の問題の急カーブに、同十四日に電車がまた制限速度を超えて進入し、自動列車停止装置(ATS)が働いて急停車し、ことなきをえたとの記事を読んだ。

 二十代の男性運転士は「考えごとをしていて減速が遅れた」と話しているという。現場の手前は直線区間が長く続くので、ぼんやりしていればそうなるのは当然だ。

 しかし、カーブにかかる手前から適切な個所によく目に入る速度標識がいくつかあり、そのつど大きな声で指さし喚呼を実行していれば、考えごとなどする暇はないと思う。どうやらJR西日本は、運転士は信用で漕ないので安全は機械に任せるということらしい。
 今回はそれがうまくいったので安心したものの、あまり自慢できるようなことではないので公表しなかったのだろう。

 しかし機械だって故障することはある。以前は胸のすくような的確でスムーズな発車をはじめ、停車・加速や減速、実にいいタイミングでのドアの開け閉め、巧みな客扱いなど、うまいものだなあと感嘆することがよくあった。仕事に誇りと自信を持てれば自然にそうなるのだろう。
 JR西日本の職場はどうもそういうものの育つ環境ではないようだ。

 まず第一は、人間を信頼することが必要だと思う。その上に万一のことを考えて安全措置を講じるのが本来の姿ではなかろうか。
 JR西日本の人間不信の体質が改まらない限り、同じようなことがきっとまた起こるのではないかと心配している。

     【牧野宏美】毎日新聞
      2010年10月28日 東京朝刊  <C2>

 「鉄道トラブル:
   脱線事故現場、速度超過で進入
     ATSで停止、JR西公表せず」


 107人が死亡したJR福知山線脱線事故(05年4月)が発生した兵庫県尼崎市の事故現場カーブ(塚口−尼崎間)で今月14日、快速電車が速度超過し、ATS(自動列車停止装置)が作動して緊急停止していたことが分かった。運転士が、カーブ手前で減速するのが遅れたという。けが人はなかった。JR西日本は「利用者に不安を与え申し訳ない。乗務員には脱線事故の重大性を再認識するよう指導している」としている。

 JR西によると、14日午後5時10分ごろ、宝塚発同志社前行き快速電車(7両、乗客350人)が、事故現場カーブの105メートル手前の直線で、ATSが作動する時速81キロを4キロ超過して走った。ATSが作動して減速したが、カーブには制限速度(時速60キロ)を9キロ超えて進入。カーブ入り口から160メートル過ぎた地点で停車した。運転士は運転歴4カ月の男性社員(23)で、「考え事をしていてブレーキが遅れた」と説明しているという。

 報道機関の取材があるまで公表しなかった理由について、同社は「即座に安全を脅かす事象でなく、乗務員らの安全トラブルに関する自主的な報告を妨げる恐れがあったため」としている。
  曲線速度制限
  本則 vs 本則+α
   <C3>


 重力+遠心力の合力がレール面と交差する点と軌道中心との距離で、軌道中心と期間内側との距離(=軌間の1/2)を割ったものが曲線通過速度の「安全比率a。これは上図の最大カント定義にも適用される。


 曲線制限速度規定での「本則」というのはカントのない水平面での安全比率aを3.0〜3.5として規定しています。本則でのカントは各通過列車の速度の2乗平均根で均衡カントになるよう定められます。カントにより転覆しにくくなりますが、それは考慮に入れません。

 国鉄時代に全国の高速化を求められて、カントを加味して、カント面に対する安全比率aを4.0として、その考え方を基準に均衡カントに対する車種別の許容不足カント量を定めて速度制限を規定する「本則+α」方式を特急電車・気動車に適用して高速化を図りました。

 JR西日本など高速指向の電鉄会社ではその特急用基準を普通列車にも適用して高速化を図っています。その制限速度規定法の差で本則60km/h、本則+α70km/h/75km/hとなるものです。なお最大カントは停止時の転倒安定性から安全比率aを3.0として規定しており、軌間1,067mmで105mmとしています。

 安全比率aとは、車両の重心点から遠心力横Gと重力の合力線が軌道面と交わる点から軌道中心までの距離で、軌間の半分(=軌道中心−レール間距離)を割った値を言います。最大重心高が規定されており、軌間の1/2を安全比率で割った値までの横Gが許容されます。(上図は最大カント限界の安全比率)
 転倒限界が1で、西欧が2.4程度、日本は高速車3.0〜普通車3.5が国鉄基準で、数値が大きいほど緩やかになります。

 6日の東京新聞投書欄に、「JR西、安全は機械任せか」として従前の国鉄JRを席巻していた精神論的安全論と同主旨の投書が掲載されていました(右カコミ)。オペレータが操作に集中してうっかりミス、ぼんやりミスを冒し難い体制にせよという範囲では同意できますが、安全装置の整備をそれに対立させる立論は鉄道界にも深くはびこる重大な誤りで、認識を改めて戴きたいものです。

 人は必ずエラーを冒すもので、人に対する対策だけでは事故を絶滅させることはできません。ですからエラー発生の際に致命的事態には至らないよう、安全装置を設置します。この原則は高度成長期突入に伴い労働災害死亡事故多発を承けて労働省の行政指導として一般産業界には曲折を経て浸透していった基準ですが、鉄道業界では何故か冒頭の精神唯一論が勝って適用が40年余も遅れてきた安全性確保の基本原則です。

 但し、経済的合理性を勘案しながらで、最も非情な基準は、事故被害補償を含む総事故費用と、安全装置の設置・維持費用を天秤に掛け、事故補償の方が高くないと判定したら放置という英国流の基準ですが、日本の鉄道では必要十分ではありませんが、英国基準よりは積極的に「保安装置」と呼ぶ安全装置の設置が義務付けられています。これは事故ゼロを目指しながらも犠牲を止められない航空機の運行を社会として許容する考え方の基礎でもあります。

 鉄道の過速度防御については、尼崎事故2005/04/25を承けた政令で転覆懸念個所について設置が義務付けられて、それを承けたJR各社は速度制限遵守基準で設置しているので設置個所が義務付け個所数の数倍になっていますが、私鉄では神戸電鉄の様に「転覆懸念速度の90%以上」という義務付け個所に留めている処もあります。
   See→曲線過速度ATS設置基準国交省通達 〃簡易設置基準表
   See→神戸電鉄過速度停止:日記#189〜191

「緊急停止」の実態は?    <2>

 BBS(ゲストブック(10/10/30 (Sat) 23:23:32))で概略は既に述べましたが、転覆限界速度×0.9を根拠とする国交省基準の設置では非常停止にならず、乗り心地限界を基準に設置していたために制限適用が厳しくなって非常制動停止となったもので、安全装置が正常に動作していたことと、数値的には事故の心配は無かったことが分かります。(右中段記事)

 現場のカーブは304R97Cですから、許容不足カント60mmの列車(普通列車)で70km/h制限、許容不足カント70mmの列車(特急用車両)で75km/hとなるのを、事故当時は双方70km/h制限、路線の最高速度を120km/hとしていましたが、事故後は「本則規定」に戻して60km/h、路線の最高速度を95km/hとして、速度制限ATSとしてはATS-P速度制限と、ATS-Sw速度照査を設置していました。速度照査の最低値は制限+10km/hが標準ですが、安全には余裕がある実際の設定値は分かりません。

 このうちの「曲線手前105mに設置したATS-Swの81km/h照査に85km/hで突入して非常制動が掛かり、69km/hで曲線に突入、160m進入して停止した」という報道ですが、ATS-Sw速度照査が3段あることと、ATS-P速度制限地上子の有無、-Sw3対中のどれが動作したのかは報じられていません。

 前出の国交省通達に拠れば、最高速度95km/hが207系転覆速度106km/h×0.9=95.4km/h以下なので設置義務は無いことになりますが、付属の簡易設置基準表では、軌間1067mmの場合、400Rを境に制限速度+20km/h〜+30km/hで設置義務を課す「試算」をして居り、付表の方を採用すると、本則+α制限70km/h+20km/h=90km/hを越えた95km/hは設置対象となる微妙な地点となります。転覆速度105km/hの103系が再び入線することを想定すると105km/h×0.9=94.5km/hで設置対象になるので、設置義務有りと捉えるのが妥当でしょうか。

 曲線突入速度69km/hは、元々の「本則+α=許容不足カント方式」とすれば、70km/h制限+10km/h以内で問題なく、「本則制限」と理解すると60km/hを9km/h超過で、10km/h以内なのでやはり問題ありません。


   (<3>)
 事態の本質は結局、2005年の行政指導と翌年の政令改正で設置を義務付けた安全装置である速度制限ATSが正常に働き、運転士の操作遅れをアシストしたということであり、設置未了の鉄道事業者がないかどうか点検を求めて完全実施を促進させるべきことが主であり、想定通りのエラーを冒したオペレータを非難することはほとんど意味がありません。

 JR西日本がこの過速度ATS作動をマスコミに公表しなかったのは、事態に危険性はなく、日常的に起こることでもあり、運転士に対する不当な背面監視的プレッシャーを避ける意味でも妥当な選択肢だと思いますし、事故現場という特殊な条件を考慮して公表する選択肢を選ぶのなら、具体的な危険度を含む詳細説明をすれば良かったのですが、「内部告発」で明らかにされたことで問題化したのに、一般相手としては若干説明不足でした。


尼崎電車区日勤教育自殺事件
フライデー記事
 また、そこまで配慮できるのなら、丸尾副社長が意見聴取会で主張した「懲罰的日勤教育有用論」を全面撤回して謝罪すると共に、パワハラ自殺を招いた尼崎電車区服部運転士に対する理由のない懲罰的日勤教育実施を謝罪することでけじめを付けることが必要でしょう。裁判は自殺との因果関係を雲上人の裁判官が理解できず立証しきれなかったと言うだけですから、職場の感覚とは狂っており妥当な決着を付けるべきです。

補足:JR西日本「拠点P」はP/Sw単純併用か?    <4>

 今回の過速度停止のケースで、もしATS-Pの速度制限が働いていたら、常用制動で減速して、制限内に速度低下したらブレーキ緩解できて、何事もなくそのまま運行を続けていました。それが非常制動で停止したのは、ATS-Swの速度照査がATS-Pの照査に卓越した、すなわち車上ではATS-PとATS-Sw併用という「拠点P」方式は、単純に併用しているだけで、ATS-Pでの速度制限にはほとんど意味が無く、絶対信号での冒進防止と現示アップ制御による待機時間削減にのみ有効だと言えそうです。中間の閉塞信号に設置のATS-Sは1966年4月に全国展開されたもので、停止信号警報機能のみで最高速度のまま冒進できるというのはそろそろ止めにしたらどうかと思います。JR東海も全面PのATS-PT換装を進めていることですし。

Google 動画用高速ブラウザ供給!   <5>
立ち上がり早い!が、見えなくなるサイトも

 サイト閲覧ソフトはFire Fox3とIE8を使っていて、サイトはその両方で見られるように調整していましたが、かなり前(2006年)からGoogleが動画再生用と銘打って、Google Chrome が供用されていて、画面が表示されるまでのうんざりする長さを短縮しているらしいので、早速その Ver.7.0.517.44を組み込んでみました。
 確かに動画が動き出すまでの時間は大いに短縮されて、U-tubeとニコニコがメインの人にはお勧め。
 しかしながら、他のブラウザとは表示が大きく異なる部分や、表示したりしなかったのものもあり、併用することになります。
[PDF内の画像が一部表示されない例]
 「AC Train の開発」:http://www.jreast.co.jp/development/tech/pdf_1/09-12.pdf
   (3〜4頁目などの画像データが時折読み込まれない)
[文字の大きさが酷く違う]
<font size=-0>Google Chrome では小文字になり、
<font size=+0>Google Chrome では普通文字で、
従って</font>を省略できません。
 漢字:2バイト文字は、コード宣言前に使うと化けます。これはFire Foxでも同じです。IE:インターネットエクスプローラでのみそのまま読め、Fire Foxでは一旦表示の後、コード指定をShift JISに切り換えると読めますが、Google Chromeには切り替え機能が無くて読めません。・・・・・・(治ってますね+0、−0で同じにみえます。10/12/22追記。右上の☆をクリックするとメニューが出てコード変更できます)
[行間調整の line-height 属性の無効が他ブラウザと異なる?]
 長文を読みやすくするためのline-height属性がうまく働きません。IEとFireFoxでは本文ファイルに指定すれば有効、外部cssからでは無効なものがあり、記述改良したのですが働かず残念。<p>では働きましたので、タイトル間の本文には適用できそうです。
 コード指定前に<tytle>Tagを置いてそこに漢字を使っているサイトは少なくないようで、そこでは文字化けで読めません。
 改めて自分のサイトを眺めますと、後者の</font>漏れがかなり存在し、それ以降小文字表示になってしまうので、可及的速やかに漏れを補充します。命令の終端部を忘れた私が悪いのですが、ブラウザ毎に動作の違う部分はあって、余分な手間になっても対応するかどうか、普及しそうなブラウザかどうか、その都度悩ましい判断となりそうです。


2010/11/18 23:55

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