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会社幹部にも事故責任追及か? 画期的試み

尼崎脱線事故でJR西社長きょう聴取
業過致死傷容疑、9月にも書類送検
2008年7月25日 東京(中日)新聞朝刊(26)第2社会面第2トップ

http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2008072502000089.html

 107人が死亡した尼崎JR脱線事故で、兵庫県警尼崎東署捜査本部が25日に業務上過失致死傷容疑で、JR西日本の山崎正夫社長(65)を被疑者として事情聴取することが分かった。

 捜査本部は、現場カーブ手前に新型の自動列車停止装置(ATS)があれば事故を防げたと判断。1996年6月から2年間、安全対策を統括する鉄道本部長を務めた山崎社長の対応が不十分だった疑いがあるとして、刑事責任を問うことも可能とみているもようだ。9月中にも山崎社長を書類送検する方針。

 昨年11月、山崎社長から参考人聴取したが、本格的な聴取が必要として、数回に分け、新型ATS整備が遅れた原因などについて詳しく事情を聴くとみられる。

 事故をめぐっては、被害者が今年初め、同容疑で山崎社長を含むJR西幹部十数人を告訴。このため捜査本部は刑事責任の有無の判断とは別に、刑事訴訟法の規定に基づき全員を書類送検する。

 捜査本部は聴取の結果を踏まえ、山崎社長に関して送検の際に「刑事処分相当」などの意見を付けることも検討している。送検後、神戸地検が立件の可否を慎重に判断するとみられる。

 事故現場は1996年12月、半径600メートルから同304メートルの急カーブに付け替えられた。この直前、JR函館線の半径300メートルのカーブで、速度を出しすぎた貨物列車の脱線事故が発生。鉄道本部長だった山崎社長は事故の報告を受けたが、新型ATSの福知山線への導入を見送る判断に中心的に関与したとされる。

 山崎社長は参考人聴取で「新型ATSがあれば事故を防げた」とする一方「運転士の暴走を予測できなかった」と予見可能性を否定したという。

【尼崎JR脱線事故】
 2005年4月25日、兵庫県尼崎市のJR福知山線カーブで快速電車が脱線して線路脇のマンションに衝突し、乗客106人と運転士が死亡、562人が負傷した。国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は最終報告書で、直前の駅でオーバーランした運転士が日勤教育を恐れ、車掌の無線連絡に気を取られてブレーキ操作が遅れたと指摘。カーブには(記事補足:過速度に対する)自動列車停止装置(ATS)がなかった。

(朝日・読売・日経26日朝刊には記載なく、毎日夕刊、赤旗新聞に同趣旨記事。カンタス航空B747機体破損急減圧事故に弾かれたか?)

【注】[新型ATS]解説補正
 上記記事の文脈にみられる「新型ATS」はATS-Pを指しているが解説の誤り。直接の事故原因は曲線制限速度超過による転覆脱線であり、ATSは新旧に拘わらず旧型ATS-Swでも過速度防止装置の設置により防止できるし、ATS-Pに換装しても速度制限地上子を設置しなければ過速度を防止できない。これは国交省も事故後そのサイトで[解説]している。誤解解消の一助に上記解説部に(過速度に対する)と補足した。
 この「新型ATS換装」云々は事故直後から延々と続く誤報であるが、県警までそれを踏襲していては被疑事実が間違っていてそれだけで刑事裁判請求手続きにならない恐れがある。どういう送検を考えているのだろうか。

 従前の鉄道事故の刑事責任追及は乗務員など現場職員を生け贄に幕引きを図る不公正な形で行われるものが多く見られたが、福知山線尼崎事故処理で会社運営の決定権を持つ側の怠慢が初めてまな板に乗っている。

 現場の曲線を('96/12)600Rから300Rに切り替える直前に'96/12/04函館本線300Rで過速度脱線転覆事故が起こり、(その函館本線の転覆事故現場付近には後日過速度防止装置を設置したのに)福知山線では対策を怠り惨事に至ったことにつき、当時の安全担当であった現社長の責任を問おうとするもので、処罰の程度は別として直接は会社としての責任を問えない刑事法体系の中で妥当な方向の模索だと思う。

 当時の鉄道本部長である現社長は「予見可能性が無かった」と無罪主張をしているが、前例となる曲線過速度事故としては函館本線大沼付近で相次いで発生した(特急寝台以上の高速走行性能を誇る)高速コンテナー列車を含む3件に加えて、九州鹿児島線西鹿児島−上伊集院間で74/4/21 特急583系(寝台電車)12両編成が300R65km/h制限を大きく超える速度で脱線事故を起こしており、専門家として「知らなかった」はないだろう。
 更に、分岐の過速度による転覆なら'68〜'69年頃に多発して国鉄として「分岐器過速度警報装置」を開発し要所に設置しているから、他の速度制限が遵守される保障は全くなく、事故の危険のある制限には対応が必要だったから、以降会社としての責任は生じているし、監督庁たる運輸省の指導責任もある。

 しかし現実は両者から放置されて、'84/10/19西明石寝台特急富士事故では60km/h制限以上で動作する過速度警報がなくて現場渡り線が全く無防備だったことが判明してATS-PのプロトタイプたるH-ATS開発の契機となっているから、国鉄JRと運輸省の責任はますます明らかだ。
 しかしながら、この経過総てを個人の刑事責任に帰するには無理がある。国会審議や民事訴訟での追及課題だろうが、JR西日本のように刑事事件として起訴猶予(=違法性は認めるが、刑事処罰までは無用、あるいは公判維持困難)を賠償責任回避の口実に使うような酷い状況では高額の罰金程度の刑罰は必要なのだろう。検察も起訴猶予処分の発表に際しては予定しない方向への世論のブレを防ぐため民事賠償責任の免責とは無関係であることを付言する必要があるだろう。

 そうした経過を見たときに、函館本線大沼−仁山間での300R過速度転覆事故直後同月中の尼崎事故現場300R化切換を無対策で放置した怠慢を捉えての初の立件努力は評価されて良い。北陸トンネル北国火災事故など、警察・検察がこれまで行ってきた現場オペレータ人身御供処分はあまりに不公正で酷すぎた。

 国鉄が事故当事者でありながら事故調査を行った間の事故などについては、適切な第3者機関が再調査、再評価を行う必要があるだろう。「事故の鉄道史」正続などでは追及されているが、あくまで著者個人の見解主張に留まっており、航空鉄道事故調査委員会発足を期に、安全追求の公的機関として取り組んで貰えたら公益に資するだろう。ほとんどが時効に掛かっていて結果がひっくり返ることはないのだから。

函館本線大沼付近転覆事故標高図
(貨物列車3本が峠を越えた下り勾配の300Rで過速度脱線転覆)

    再検討を要する事故一覧
     事故当事者調査から有効な教訓と公正の光を

日時事故公称原因補足・補正
31/01/11山陽線河内駅事故分岐器過速度 逆方向分岐器に取替。分岐器設計ミスで逆方向の分岐が搬入され、取替工事を中止せず無理矢理設置、本線が分岐側となり35km/h制限となるが十分周知されず正式連絡はなく80km/h制限のままにされ脱線転覆。30/12/17切換工事で25日後につき分岐を見て減速しなかった乗務員の責任とされ判決は確定した。ミスの発端は配線原図が逆方向だったのを気付かないで設計した。鉄道省内部処分は行われた記録があり内部では真相は把握の模様。乗務員の冤罪あるいは量刑不当。※
56/10/15参宮線六軒事故通過信号見落
場内信号冒進
直前転換(駅側の操作遅れミス)の可能性。本来なら無罪相当
中継弁不設置で重連時非常制動不達(重連運行の上越、北陸は設置済)
駅同時進入禁止未実施。どちらか実施なら回避できた事故※
運転通告券非発行(担当局の規則違反)※2
63/11/09鶴見事故競合脱線 線路と貨車に大規模な改造を加えて2軸貨車には2段リンク化改造を行い、改造不能車は廃車にしているが、脱線したワラ1型は元々2段リンクで公式対策の対象外。真相はワム60000類似車両として実地走行特性試験を省略したことで軽荷重時の走行不安定を見逃し曲線出口緩和曲線カント低減部の捻れで脱線したもの。(「日本の鉄道車両」カント低減部での脱線は00/03/09日比谷線中目黒事故と同じ)
 以後ガードレールを国鉄独自基準として設置しているが、これを公開、あるいは運輸省基準としていたら営団地下鉄の140R以下に設置という極端に緩い脱線防止ガード設置基準はなくなり、中目黒事故は起こらずに済んでいた。
69/12/06北陸トンネル特急日本海火災事故 列車火災発生、トンネル内停止の危険性に気づき、外まで走り続けてから消火し物損に留めた寝台特急日本海乗務員たちを報道は冷静沈着な措置と称えたが国鉄は「運転規則違反」として処分※3、火災時もトンネル内停止の無謀な規則を乗務員に強要してきたぐに惨事の引き金を引いた。この国鉄処分の違法性評価が全く行われていない。起訴が必要だったのは命懸けの消火活動を行ったきたぐにの乗務員ではなく、不当処分で危険な火災時トンネル内停車を強制した部局だ。典型的な警察・検察の人身御供処分
72/11/06北陸トンネル急行きたぐに火災 食堂車出火
原因不詳
86/12/28餘部鉄橋転落事故強風 鉄橋補強工事不適合共振で風速33m/sで転落 (抗力係数異常、意図的操作?)※。原因発表を著者自解析。羽越線強風転覆事故05/12/25では転覆限界風速が静止で55m/s、100km/h走行で35m/s〜28m/sとされている。33m/sはかなり低めで網谷説に説得力。
91/05/14信楽高原鐵道事故代用閉塞違反
相互連絡無
タブーの領域外制御方式強行、無断工事・無断使用
(領域内制御であれば固着トラブルはCTC制御盤に表示され即対処されて事故にならない。信楽との打合せで一旦引っ込めながら無断工事強行・無断使用が最大の事故誘因。JR西日本が特別の相互連絡が必要になるタブーを冒したことが基本原因)
※「続事故の鉄道史」網谷りょうぞう著。掲載、 ※2「鉄道重大事故の歴史」掲載、 ※3「大阪車掌区史s58/車掌○真乗務手帳p51

2008/07/27 23:55
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