ATS-Ps の詳細な作業資料が以下カコミ内のアップローダに置かれていた。
信号・標識・保安設備について語るスレ8
http://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/train/1167318386/513n
信号・標識・保安設備について語るスレ8
513 :名無しでGO!:2007/04/19(木) 19:49:01 ID:6e/OrzGl0
現場に行けばこの程度のドキュメントなら転がってるわけだが。
http://www.uploda.net/cgi/uploader3/index.php?dlpas_id=0000002360.zip
パスはいつも通りスレタイ。
*Swは223系の説明書の抜粋で683系の取説にも全く同じ記述あり。
*321系のSw2は73kHzがなくなってる。
Psはシステム基本の抜粋だけど、仕様書ではないので細かい数字は誤記があるらすい。
現場ではこういう紙ベースの資料を首っ引きで設計するわけではなく、ツールに制御図表のパラメータをぶち込んで図面化するからツールのメンテが出来ていれば問題はない。
ツールはさすがに入手できない。
キの人が自分のサイトに転載して演説しそうな気がするが、束からクレームが来ても当方は責任を負いませんw
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●バックアップコピー→p1〜p52ここ●
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この資料をざっと読んで見ると、ATS-Psにはかなりの設置・運用制限があることが分かり、開発20年を経た高機能ATS-Pの大幅な低廉化の中で、JR他社が-Psの採用に二の足を踏む理由も納得できた。各種部品のコンパチを狙って逆にコマンドコードの衝突を生み却って対応を複雑にした面がある様だ。
ATS-Pが非常に高価だった時代に従前の変周方式を使って安全度の高いパターン照査方式を安価に実現したことでATS-Pの価格低下を促し普及させた優秀な当て馬という位置付けだろうか。その実際的影響を考えればコロナ社刊の電気鉄道ハンドブックがこのATS-Psについて1行も触れていないのは新技術偏重で学者・研究者的偏りの感がある。たとえコロンブスの卵型技術でも画期的だったものは取り上げる方が良い。
'67年の私鉄ATS通達仕様が国鉄JR系ATS-Sxに較べて圧倒的に優れている点は結局は停止信号冒進可能速度をATSが低速に制限していることである。(常時自動投入云々という私鉄通達の基準は安全装置としての最低限の条件であり、国鉄型ATS設置基準の欠陥ではあるがこれは通達から30年ほど遅れて'90年代に「自主改良」された。)
'05/03発生の土佐くろしお鉄道宿毛駅突入事故により国鉄JR系ATS-Sxが最高速度(120km/h)のまま冒進可能な危ないシステムであることが劇的な形で実証された。一方私鉄ATS通達仕様では3段の速度照査を義務付けて信号直近最終段での照査速度を20km/h以下と定めているので、衝突危険度比較で言えば、最大冒進可能距離比=冒進速度エネルギー比で言って、ATS-Sx:私鉄通達:ATS-P/-Ps=36:1:0 という著しい相違になる。パターン照査方式は、停止位置基準許容速度車上演算照査方式だから冒進速度0、冒進しないことが決定的な特長だ。(これを「安全性に違いはない」とした国交省答弁('05/05/16)と×冬柴北側国交相答弁は誤りというより虚偽である。)
-Psはこの冒進速度0を従前の技術で安価に達成してATS-P価格引き下げを促進、パターン照査区間拡大に資したが、その弱点もあって自身の普及にブレーキを掛けることとなった。
ATS-Psの弱点というのは、それが、ATS-Sxの地上装置をそのまま使ってパターン照査を付加する方針で変周周波数を決定し、複数地上子の組合せでコマンドを定義したが、変周周波数割当が2つSxと衝突するのと、地上子組合せコマンドでの後側地上子に不動作時無検出ステータス(=73kHz共振状態)を割り当てたことで30mの地上子設置禁止区間を発生させている問題だ。後者は否定コマンドを割り当てていれば問題は起こらなかったし、発想を変えれば無効時は先頭側の地上子も切替式に改めて無効にすれば現状で簡単に解決できることである。資料は具体的な設置条件毎に解説しているため、禁止規則が却って分かりづらくなっているが、本質は変周周波数の機能衝突と、コマンド取消分離距離(30m)問題、-Sxとの自動切替問題に尽きる。
(→参照ATS-Ps概論。ブラウザ左上「戻る」で復帰。)
すなわち、
- 一部の周波数が衝突していることでその区別法
- 108.5kHz地上子×2基を第2パターン発生コマンド兼ATS-SFのY現示速照に割り付けたことで、分岐速照毎の108.5kHz地上子3〜4対で無用の第2パターンを生じるので地上子対毎に種別指定地上子(85kHz/95kHz)が必要。ATS-Ps搭載車が-Sx区間に進入の際の障害になるのでモードをSxに切り換える必要がある。
- -Sx非動作時周波数103kHz〜105kHzをパターン消去に割り当てたため、分岐速照と誤出発防止地上子の非動作時の103kHzで意図に反してパターンが取り消されるため否定地上子(:種別指定地上子、速照=85kHz、誤出発=95kHz)が必要。
- 2地上子組合せコマンドの後側周波数の選択の不都合
ATS-Psのコマンドは地上子を1基〜3基順に並べることで定義し、不動作は73kHzとして25m以上地上子を検出できないことで取り消していて、そのため後方30m以内への他の地上子設置を禁止しているので約30m〜50m前後の他地上子設置禁止区域ができる。最も長い禁止区間は103kHz位置マーカ地上子で、パターン消去コマンドとなるから第1パターン地上子以降信号まで平坦地で650mの間設置できない。これは-Ps防御を特に必要とする錯綜主要駅構内では大変面倒な制限である。
- 1連地上子以降30mの設置禁止区間に相当するのは誘導信号制限108.5+85kHzと入替信号制限108.5+90kHzなど有効/無効を切り換えている無効コード部分だ。制限速度を設定しない場合は後側が73kHzなので、前側地上子の30m以内に第1パターン地上子を設置すると予期せぬ100mパターンを誤発生させる。これは距離制限を守ることで回避する。だか、先頭側108.5kHzも一緒に73kHzに切り換えればその分30mは設置制限を緩和できるはず。
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- -Ps/-Sx自動切り替えを前提とした場合、車上装置起動時に-Sxモードとすれば-Psコマンド受信で-Psモードへの自動切替可能だが、逆に-Ps→-Sx 進入は区別できない場合があるので-Sx/-Psモードの切替コマンドが必要。
-Ps区間でパターンが発生していない状態なのに生の-SF速照108.5kHz×2が現れたり、ロング129.3kHz単独が現れることは無いから、その場合には-Ps車上装置を自動的に-Sxモードに切り換えることになる。
コード表を眺めると「工事中区間」のON-OFF(90+108.5kHz、4m-2m)がこれに相当しそうだ。JR西、JR東海区間は-Ps車上装置から見ればATS-Ps化工事中区間なのだ!
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というわけで「実はATS-P値引き交渉の当て馬だったのか?ATS-Ps」と思った。そうだとしたら、JR東日本もなかなか曲者だW。それなら東京直通列車のある仙台付近の東北本線はPNで行き、新潟近郊だけ-Psでも足りただろうに。
ATS-Pのコストダウン
ATS-Pが開発された1986年頃のパソコン関係品の相場は、プリンター・ケーブル1本数千円、ワープロ用の2400BPSモデムボードが\250,000.、同第2水準漢字ROMが\110,000.〜\23,000.といった時代で、エンコ−ダとして8085CPUボードを信号毎に設置、各地上子まではデータ通信、車上装置はM68000CPU制御、全地上子がトランスポンダというATS-Pシステムは非常に高価で1キャブ1億円との噂すら流れた。時間スケールで言えばPC-9801初代が'82年初、-VMが'83年、-UVが'86年頃だから、3.5インチFDの-UVと同世代で5インチFD付きがP車上装置だった。(FDDは8inchも5.25inchも3.5inchもピンコンパチが主なので、3.5FDDが安定した段階で換装されたものがあるかもしれない)
それが今やモデムボード\500.の時代に、ATS-P低価格化にどれだけ反映させられるかという問題である。
'88/12東中野駅追突事故の対応を迫られて、ATS-B区間(=東京・大阪の国電圏)については全面ATS-P換装が決まりJR西日本の一部にも採用されたが、それを東中野事故対策として公約したJR東日本以外では採用拒否されて、ATS-Sの安価な改良が図られATS-SN、再改良ATS-ST/-Sxが他JR各社の主流なのだが、前述通り最高速度で冒進可能な欠陥仕様ATSで留まることとなった。
このATS-Sxの弱点を破る改良品がパターン照査を導入したATS-Psという訳である。-Psは構造的にはATS-P系列ではなくATS-Sx系列である。それに煽られてATS-Pはどういう変遷を辿って安価になったかは不明だが、構造的にコストダウンを図った経過は以下の通り。
- ボードによる一体化で高価なケーブル省略を図る(2型3型)
- 双方向地上子を信号直近の1基のみに(統合型:JR西日本)
- 無電源地上子を信号現示論理切替することでボードPCたるエンコーダと通信機能省略(PN型:東日本)
- 絶対信号のみATS-Pとする「拠点P」方式設置で隘路となる駅周辺の輸送容量増加を図る。現示アップ機能は生かせるが、閉塞信号はATS-S警報のみで、最高速度冒進突入を阻止しないまま。(JR西日本の'95年以降、地下線が主である東西線と桜島線を除く4線12区間に拠点型のATS-P設置。現示アップ機能が有効のため福知山線尼崎駅上り場内信号2本への設置例では10秒〜16秒短縮。最終報告p133,p)
- 車上装置の新設計(JR西日本では-P2型、-P3型として、-P3では-Swと一体設計としている。東日本の新設計は不詳)
- ATS-Pで優秀さが実証されたパターン照査を採り入れたDS-ATC、D-ATCでは更に高価になりがちな長尺ケーブルを嫌って地上のマーカー位置を車上データベースとして持ち車上演算化を徹底した。
以上の経過をみれば、新規導入ATSとしては、コードとしてはATS-P(上位)コンパチが条件となり、線路容量を増やす現示アップと踏切定時間制御のためにはエンコーダを用い信号直近の地上子のみ双方向通信とし他の地上子は現示条件で直接切り換える(=Sケーブル流用可能)PN方式が基本になるだろう。(Pだけでの踏切定時間制御には無理があり他方式採用が必要だが、別案件。)そうした制御のない閉塞信号では-PN準拠で電源供給等の小改造だ。-PNに準じた方式なら600m地上子の制御も従前のATS-S用ケーブルを流用できて鉄道総研ATS-Xの売りのお株を奪える。仕様検討中とされるJR東海ATS-PTも独自コード方式採用は無理のようで、独自の機能付加はあっても基本的にこの線以外は考えがたい。JR東のPNとJR西の統合型の良いとこ取りの新設計、これなら価格で-Psに対応しうる-Pも視野である。
2002年頃までATS-Pは、予算を食いつぶしてしまう金食い虫として現場からも嫌われていて時には「信号独占の新たな収奪手段」とまで叩かれ「冒進のないATS-P方式は優れている」などというと「N信号の工作員か?」などと追及されたが、パターン照査方式のD-ATC/DS-ATCへの採用や、線路容量増加、冒進事故が起こらない安全性が理解され、構造改良によるコストダウンと価格低下が進むにつれて次第に肯定的評価に転換していった。それを低価格化促進という形で脇で引きずったのがこのATS-Psというわけだ。
2007/04/28 23:00
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