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6/14午後に京葉電車区脇を通過したが、
11番線に長期に停車していたE331が居ない。いよいよ本線での試運転が始まったのだろうか?画期的な新形式車両の試験は大いに興味のある処であり、試乗や説明会に期待する。(それは公共輸送機関の義務ではないが、関心を持たれることに応じるのはユーザー対応の一つだろう。第1線の講師を動員して社外向けのATS-P、DS-ATC講座でもやってくれたら真っ先に応募するのだが、)
京葉区#11番線のE331系(06/05/21)
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シンクロナスモータに拠る高効率化
誘導電動機のスベリ率はもろ電気−機械変換での損失率であり、スベリのない同期電動機(シンクロナスモータ)の採用はエネルギー効率の点からは妥当である。滑走制御や回生失効の制御が誘導電動機での到達点を追えるかどうかを
ACトレイン(E993)から追求しているのだろう。VVVF制御での誘導機と同期機の大きな違いは誘導機が回転位置を問わないのに対し、同期機制御が回転位置を押さえた上でそれに見合う制御を行うことであり、丁度ブラシレスモータの駆動を回転位置センサーで行ったのと同様の駆動位置制御を求められることである。この辺りは誘導機でも単なる周波数制御ではなくベクトル制御の導入で篭型回転子の作る誘導磁界位置に合う電機子磁界を形成する様になったから近寄ってはいる。
しかしながら,軸直結駆動=DDMにしたことで回転数を1/5〜1/7に落とさなければスベリ損の影響は1/5〜1/7で許容範囲だった訳である。すなわちDDM方式を採用するには同期電動機の採用は必然であり、DDM方式の得失評価が先である。
右効率比較グラフは安川電機の新聞広告掲載のものであるが、誘導電動機が低速域で大きく効率を落としていることが分かる。
(10/09/08安川広告追記)
電車モータ特性
下図は直流直巻き電動機を使う車両の基本特性であるが、VVVF方式での誘導電動機式や同期電動機式車両の基本特性と酷似・対応しているので引用する.
特性の対応は、直並列制御の定加速領域がVVVF(周波数−電圧比例)領域、CVVF(定電圧−周波数増)領域中のスベリ増領域が定電力(弱界磁制御)領域、スベリ一定で周波数のみ上げる領域が特性領域に相当している。スベリのない同期電動機で言えば、回転磁界と磁極の電気角差がこれに相当する。
実車では、この特性をフルに発揮しようとすると車輪とレール間の粘着限界を越えて空転滑走に至り、それを応荷重装置で滑走限界内に限流値を抑えている。
抵抗制御車では高速側の低粘着力に合わせて一定だが、VVVFでは制御システムが回転速度を得ており、直角双曲線で近似される速度毎の粘着限界に合わせて低速加速力を増やす制御が可能である。
この制御はCVCF領域でも可能で、抵抗制御車に較べると弱界磁領域(トルクが速度に反比例)に相当する高速領域まで粘着限界ギリギリの加速力を与えられるので「VVVF車は高速まで加速が延びる」という評価に繋がる。
制御の上限から上側はトルクが速度の2乗に反比例する点では抵抗制御もVVVF制御も同じである。
国鉄ではモハ90系に端を発する新性能国電シリーズで選択した特性は、既に私鉄で採用されていた電動車2両1ユニット制御に小型高速回転中空軸モータを可撓継ぎ手を介して台車のバネ上に装着、回転子と界磁を直列2群に分けて直並列制御を行うものだった。更に折からの絶縁材料の改良で耐熱性向上から小型軽量化が図られたことが特徴だった。
その中で唯一毛色が異なるのが103系の低速大型モータを採用しそれに合わせて動輪直径まで大きくしたことだった。直結駆動であるDDMの採用はこの103系の異流の最も極端なものと言える。この列車質量に対しイナーシャに蓄えられるエネルギー量の最適値の検討は見かけないが、単純に高速回転・軽量モータなら良いということでもなさそうだ。現に103系用の低速大トルクモータには補極はあるが、電機子磁界を中和する補償巻き線は無しで済まして単純構造にしている。
DDM方式の得失
DDMの利点は駆動減速系が要らず、減速損失もないことだが、それはバネ下荷重増を招き線路保守には軽量軌条ほど良くない影響があるだろう。保守はギヤが無い代わり車軸兼用で阻害されることもあり構造次第でどちらとも言い難い。
最も大きく違うのは定格回転数が在来線車両で
1/7〜1/3.5になることで、軸出力が同じなら定格トルクは
7〜3.5倍必要になり、同出力のモータが従前よりかなり大型化することである。目の子で云えば「軸出力は回転数比例、鉄量比例」だから、回転子の鉄量が
7〜3.5倍必要ということになる。
慣性能率(イナーシャ)で費やされる回転エネルギーは、速度エネルギー
:(1/2)m・V2に対応して
(1/2)I・ω2だから、回転数が
1/nだと回転エネルギーは
1/n2に、円盤・円筒のイナーシャは約
(1/2)a2M …… 但し(回転子半径
a、質量
M)で、トルクを
n倍にすることで、鉄量も
n倍必要で、これを軸方向
n倍延長で吸収できないから、半径方向への拡大のみで解消するとそれは
√n倍必要。それによりイナーシャは
n倍(
=√n2)となって、回転エネルギーとしては
1/n(=n/n2)となるハズである。
これが列車の運動エネルギーに較べて無視できないほど大きく、モータの重量増分を大きく越えるのなら、加速・減速の多い通勤列車用としては有り得る選択だろうが、最適配分値を検討する上で、現在どの程度の値かを調べてみたい。回転子の直径と質量が分かれば比較的精度良く推定できるのだが、残念ながらこれがなかなか見つからない。
尚、高トルク化に際しモータの軸方向への延長が最もイナーシャを増やさないから、中空軸平行「カルダン」方式は望ましい方式だ(自在継ぎ手以外も含んで「カルダン」。摺動損のないバネ式が増えるのか?)。
DDMでも本格採用されればこの中空軸方式が標準になるのではないか。また、イナーシャに蓄えられる無用な回転運動エネルギーを小さくするために加速・減速の多い路線ほどギヤ式のモーターも中空軸にして回転子を軸方向に長くすることで高速軽量化することが望まれることになる。(現在VVVF電車に中空軸方式は見当たらない様だが、それは当然作りやすさ=値段が絡むのだろう)
但し
PMSM(永久磁石式同期電動機)では、電機子巻線誘起電圧が速度比例で増加して供給電源電圧を上回ろうとするのを90度位相の進んだ補償電流が流れて減磁させて平衡運転するのでモータ巻線の最大電流制限からそれ以上の高速運転は出来ない。拠って
PMSMを使う場合は最高速度附近に加速最終段を設定するほか無い。誘導電動機
VVVFインバータ制御でのスベリ増領域も特性領域もほとんど利用出来ないので、地下鉄など運転状態の限られる路線以外では使い辛いであろう。加えて
線路損傷が輪重の4乗に比例することがわかり、電力回生制動の発達で高速回転エネルギーの回収も高効率で可能になった現在、敢えて重量の大きい
DDM方式にこだわるべき理由が薄らいでいることも確かである。(この節2010/05追補)
2006/06/16 19:00
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