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高校物理学80%履修→20%以下へ衰退!雑感
従前の「世界に冠たる工業技術立国」は崩壊へ

 「高校物理学」というと「内容を良く理解出来ないまま、七面倒臭い法則式を丸覚えして、複雑怪奇な計算を適用して答えを出す厄介な教科」と思う生徒が多く、テストの得点分布も正規分布型から大きく外れて、双峰型となりやすく、それは高校物理に落ちこぼれる層が大量に存在することを示していた。 さらに教える側が、そうした消化不良の実態におもねって、理解無用の丸覚えで足りる出題で「得点救済」したことで、大学受験対策では「物理」が「暗記科目」とされるほど物理学本来の姿とは逆方向に脱線してしまった。
 しかし観察・計測に基づく法則性抽出の帰納法と、抽出した法則性からの演繹結果を事実との一致で検証していく「事実認識法」こそ物理学の基本であり、「科学」を標榜する他の実証的学問に共通する骨格であるから、「無批判な丸暗記」とは対極の実証型学問なのに、「大学受験対応」に引きずられて物理学の基本的長所を教える側が殺しているのだ。 科学的な事実認識で、キリスト教会異端審問所のガリレオ死刑判決を粉砕出来る解析能力を付けさせるべきところ、アベコベに無批判な丸暗記で「結論」を述べるだけの、自力解析能力を与えない教育は(物理学が典型である)実証的学問の教育ではないのだ。

日本の展望―学術からの提言 2010/物理学分野の展望
2010/4/5 (H.22)
日本学術会議 物理学委員会

 (この報告は日本学術会議物理学委員会の審議結果をとりまとめたもの)
     https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-h-3-3.pdf
(p16末行〜p17L7) 理工系離れの傾向は高校時代にすでに生じている。
高校における物理履修者の比率は 1970 年代には80〜90%台であったが、1982 年の指導要領改訂以降30%台に激減し、現在では20%以下と言われている。
 物理履修率の低下に片鱗が現れている理科教育の偏りが、理科離れを促進し、生徒達の科学的素養の偏りをもたらし、ひいては次世代の理科教育を担う初等中等教員の科学的教養の偏りをもたらすという悪循環が起こっているという指摘もある。
 これはわが国における理工系人材確保の先行きに強い危惧を抱かせるだけでなく、市民全体の科学リテラシー涵養の観点からも極めて憂慮される状況であり、早急な対策が強く求められる。

【上記日本学術会議物理学委員会報告書「冒頭文」L5〜12】

・・・・・・・ガリレオらによる実験的手法の導入は科学研究の方法に変革をもたらし、ニュートンによる力学の体系化が近代科学の基礎を築いた。
18 世紀から 19 世紀にかけて発達した熱力学や電磁気学を加えた古典物理学体系は 19 世紀の終わり頃には成熟の域に達し、この世界を動かしている根本原理が解明されたかのように思われた。
しかしながら 20 世紀に入って「アインシュタインの奇跡の年」が象徴的に示すように、古典物理学の枠組みを超える現代物理学、すなわち量子力学、統計力学、相対論が創始されることとなった。
現代物理学がもたらした新たな自然像はわれわれの世界観を根本的に変革するものであった。

高等学校教育の現状について


2020/10/01(令和2年)  文部科学省 初等中等教育局 参事官(高等学校担当)付(高校進学率遷移)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kaikaku/20201027-mxt_kouhou02-1.pdf

高校進学者推定(率→人数)

1950年→42.5%=約200万人
1960年→53%=約310万人
1965年→70.7%=約500万人
1974年→90.8%=約410万人
1982年→ 約450万人(改訂年)


1990年→ 約570万人
2019年→95.8%=約300万人
(2019年は通信制込みで98.8%)

高校物理学履修者数推定

1950年:200万×0.9=190万人
1960年:310万×0.9=279万人
1965年:500万×0.9450万人
1974年:410万×0.9=369万人
1982年,教育課程改訂で物理履修激減
  改訂を境に300万以上→100万代以下!
     450万×0.3=135万人
1990年→570万×0.25=143万人
2019年:300万×0.2= 60万人
 現状の日本は幕末からの近代化路線・列強競合路線で、工学、理学とも大きく発展して現在も世界水準にあり、科学分野でのノーベル賞受賞者数など非西欧の国々では突出している。 ところが、高校物理の履修率が1982年を境に、それまでの80%〜90%履修から激減!35%→20%(→15%)と40年近く掛けて後続世代が絶滅に向かいつつあるのだ。 高校物理(全6単位)の履修率集計に簡易の「物理基礎」(2単位)は含まれているのかどうか?は分からないが高校物理を履修せず卒業するコースが主流となっている。
 日本学術会議が物理学委員会提言として2010年に公表した文書に、1982年以降の高校物理学履修率の極端な低下を初等中等教育からの物理学の危機として指摘して以来、折々に広く引用されているのだが、それは文部省による教育課程の改変の結果であり、以来40年間、全く是正されずに来て、高度成長期を過ぎる頃までの高校物理履修率90%余から1/3〜1/6に激減、現状履修率20%〜15%とも言われる惨状になってしまった。
 日本学術会議の提言では履修率の低下が「物理学の次世代継承の危機」という捉え方になるのは当然だが、実はもっと深いところの「科学的な認識力」を極端に弱めてしまう、実証的学問の基礎力を奪う、危険な状態になっている。丸覚えとは「外部注入に無批判に従い、自分でものを考えない」ことだ。

 そもそもの問題として、高校物理が一般生徒の手に負いかねる難解教科なのかどうか?理解しやすい学習法の工夫は出来ないのか?の論議はあまり聞こえてこないで、教育界で暗記物化されているのは何故なのか?!
 私自身が学んだ時代、高校物理は多くの場合、普通科では3年次履修で数学2(2年次)の「微分」の後&数学3(3年次)の「区分求積」、「積分」とは同時並行だが、工業高校では事実上の物理必修、電気科・機械科で1年次、工業化学科で2年次履修、但し電気の章は「電気一般」「電気理論」などの専門教科に任せて物理からは割愛し、数学Vに替えた応用数学(数学TUV相当教科書)を履修していた。 工業専門教科で計算慣れしている工業高校生は、物理を1〜2年次履修でそこそこにこなしていた。 電気科・機械科で物理学抜きでは話にならないのだ。 試験成績分布は確かに双峰特性を示すことがあり、理解出来た群とは別に合格点ぎりぎりの生徒も群を構成し少なくなかったとは思う。

 学校の理科授業に共通しては、機器破損等の事故を嫌って、諸実験機器に触らせないことがあり、具体的理解が不十分ですぐ忘れてしまう。 試験管等のガラス製品は損耗を覚悟して使わせていたが、中学校で学ぶ、天体望遠鏡など赤道儀架台の設営が座学・机上教育で、市が集中管理する機材を借りてきての特別授業で、理科クラブ員など数名にしか操作させてないので、大方の生徒は期末試験を終える頃には綺麗さっぱり忘れてしまう。 学習教材として売価10万円前後の赤道儀天体望遠鏡(日記#291-3)を買い与えたが使い切れず、新品同様で中古店ハードオフに出て来て5千円〜8千円というのは親にも子にも中古店にも赤道儀設営調整が困難だからなのか!? (学習範囲としては中学校理科授業で学んでいるはずの内容だが、自分で操作したことは無く、憶えちゃ居ないのが主流。赤道儀の取扱説明書も添付されてないのは解っているのが前提だから)

 また1960年代の高校物理教科書の重大欠陥は、電磁気の単位に世間一般に使用される「実用単位系」ではなく、非有理化系で物理量毎の固有名称が無い[cgs-esu]、[cgs-emu]を使っていたこと(朝永振一郎監修教科書等)で、物理を無用に難関化していた。(大学入試でcgs非有理単位での出題は見られない様だから、実務的にはMKSA有理単位系(SI:国際単位系)でプリントを配布して扱えば良いのだが、それは文部省検定済み教科書無視にはなる)
 工業高校では高校物理での電磁気章を割愛して、専門教科:電気一般、電気理論などに委ねたことで電磁気学章での「難解非有理系cgs単位」の被害を受けないで済み、実用単位系に近く固有名称使用で理解しやすい「MKSA有理単位系」(後の国際単位SI)中心、一部実用単位で教育されている。(普通高校生には実用単位での出題が難問になることがある∵仕事率計算でのSIへの換算必要など & 「有理単位」とは、空間の立体角1ステラジアン当たりの物理量で定義する単位系。全立体角4πステラジアンのまま扱う単位系を「非有理単位」)
年度氏名分野
1949湯川 秀樹 中間子理論 世界平和アピール7人委員会
起ち上げ&継続に参加
1965朝永 振一郎 量子電気力学
1973江崎 玲於奈トンネル効果
1981福井 謙一化学
1987利根川 進生理・医学
2000白川 英樹化学
2001野依 良治化学
2002小柴 雅俊 宇宙ニュートリノ観測(カミオカンデ
田中 耕一化学
2008南部 陽一郎 素粒子自発的対称性の破れ,米国籍
小林  誠 クウォーク対称性の破れの起源
益川 敏英京大職組書記長時代の研究業績
で授賞、9条科学者の会呼掛人
下村  脩化学
2010根岸 英一
鈴木  章
化学
2012山中 伸弥生理・医学
2014赤崎  勇 高輝度青色発光ダイオード
天野  浩
中村  修米国籍
2015梶田  隆幸 ニュートリノ振動発見
木村  智生理・医学
2016大隈 良典生理・医学
2018本庶  佑生理・医学
2019吉野  彰化学
2021真鍋 淑郎 気候の物理モデル化
1968川端 康成文学賞元警視総監秦野彰都知事選参加(自民)
1974佐藤 栄作平和賞非核3原則で授賞、元首相経済官僚(自民)
1994大江 健三郎文学賞平和運動に注力
2017石黒 一雄文学賞英国籍
 だから工業高校の1年生で履修できた高校物理が、普通科3年生にとって「難解」というのは当たらず、寧ろ分かりやすく整理して正確に教える工夫と教科時間配分が足らなかった様に見えるのだが。 高校物理の成績低下の対応として、教え方・習熟機会の工夫で理解を深めることを諦めて、暗記物化して敢えて生徒の理解を求めなくしたことに加えて、物理学履修回避で他教科に置き換えてしまったのが教育側の重大な間違いではないだろうか。

 文部科学省初等中等教育局の資料から高校物理履修者数を推定すれば、かっては200万〜450万人(履修率80%〜90%)だったものが、1982年の教育課程改訂を境に激減!140万〜60万人(履修率20%〜30%)となって往時の1/4以下になっている。 こんな状況では「技術大国」の維持など困難で、今後、科学技術系のノーベル賞など中国や韓国同様に授賞できなくなっていくだろう。時の支配勢力・政権批判の行動や著作で不当弾圧を受けての平和賞&文学賞だけという実にミットモない国に転落しかねない。丸暗記型学習・教育は、批判力だけでなく創造力をも奪うのだ。

 加えて理工系&現業実務系への社会的評価の極端な低下が浸透、リーマン・ショック時のネットカフェ難民化などと、まるで韓国・中国のような、実務系への蔑みが日本にも広がり始めてきて、人を出し抜いて自分に金を集めるだけのムラカミファンド・ホリエモン型が持て囃される様になった。文系の2倍もの授業時間で学んだ理工系なのに不況時には学生時代は雀荘浸りだった文系から首を切られる非条理だから、理工系離れ・実務系離れは促進されてしまう。オリジナルでユニークなソフトを作れる層は多くが学業優秀層だったが、それが真っ先に解雇されて住居を失い、ネットカフェ難民化したのは酷い! 研究者の「10年任期制」など、10年毎の首切り制度であり、いくら好きな仕事でも生活が保障できないから、就業をためらうようになり社会の力を大きく落として、中国・韓国化する愚行だ。 既に現在でも、日本製の被引用論文数が激減して中国・韓国にも抜かれたとか! 中韓では大韓航空ナッツ姫事件に見られる様に両班など支配階級のみ異常に優遇されて、蔑まれる実務・実労働派は仕事への誇りを失い零落して、施工不良事故・設計不良事故頻発の現状に陥っており、やがて日本もそれを追って劣化する。リーマンショック解雇でのソフト屋ネットカフェ難民化や、技術力不足・手抜き設計「姉葉マンション」はその劣化の走りに見える。

丸覚え「考えさせない教育」は、従順国民育成方針か!?  <2>

 ノーベル賞は言葉の壁もあってか、受賞者がアメリカと西欧に偏る中で、アジア、アフリカ、ラテンアメリカなど他地域としては日本人授賞が29名(2022末現在)と突出して多い。それも物理学など自然科学系が25名(うち物理学賞が12名)で主、文学賞3名、平和賞1名(佐藤栄作首相、非核3原則)という内容だ(右上受賞者一覧表)。 物理学賞受賞の湯川秀樹、朝永振一郎、益川敏英などが平和アピール7人委員会に名を連ねて活動するなど、リベラル世論に与していたし、学者の国会:日本学術会議が憲法の規定遵守、学問の自由擁護の提言を繰り返して再び「戦争が出来る国」化を抑制して、戦前の大日本帝国回帰の動きを抑えてきた。 ノーベル物理学賞の湯川・朝永両2氏が40数年間その象徴的存在に見えていた。 それは文学賞川端康成の自民保守政治志向(都知事選自民系候補秦野元警視総監応援等)、同候補三島由紀夫の極右軍国主義志向(自衛隊本部に乱入してクーデター決起を煽って割腹自殺)と両極を成すように見えていた。 益川敏英は京都大学職員組合の書記長時代の研究業績で物理学賞を受賞していて、9条科学者の会の呼び掛け人をつとめるなど活動的であった。これら優れた物理学者たちが極右派勢力からは「アカ」に見えてのレッドパージが高校物理排斥、後の学術会議議員選定干渉へと繋がっているのではないだろうか。
 国民が自分自身の頭で考える学問:物理学の実証的事実認定法は、「科学」を標榜する学問共通の方法論であるが、支配側の愚民化政策に立ち向かう力を付ける不都合な学問として極端に冷遇された結果が高校物理80〜90%履修から20%以下履修への極端な減少に現れていないか? 日本の支配勢力は中等教育での物理学履修80%余に裏打ちされた国際的な科学技術的優位、製造技術優位を捨てても、国民支配のし易さ=愚民化政策を目指しているようである。 公安警察の影の特に濃かった管政権では学術会議議員の事務手続き的な任命承認を、理由なく6名を拒否して違法不当介入して、後続岸田政権も是正拒否しているのも、同根の不当介入だろう。 学術会議議員の資格として法規定されているのは学問的実績であり、それはスキルのある斯界の学者たちが評価するのが筋であって、門外漢の政治家、政府ではないから学術会議議員推薦者の自動承認とされてきたのだが、恣意的に政府与党・自民公明への姿勢でパージするのは明らかな違法行為であるし、自公両党が「亡国の輩」という性格を顕在化させている。



2023/08/28 23:55

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