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『スペノ』はちゃんと通してる??都営浅草線!
年率0.08mm研削でレール損傷防止@新幹線発

 都営浅草線のレール折損続発の写真と記事を見て、「これは一時の新幹線と同じ割れ方!年率で0.1mm〜0.08mmのレール研削でほぼ100%回避できるようになった現象」「浅草線にレール削正車(スペノ)を通し忘れたか?」と思った。
東京新聞

日本材料学会平成11年度論文賞・技術賞・学術奨励賞

論 文 賞
 受賞課題 (略)
技 術 賞
 受賞課題
   新幹線レールの疲労破壊の解明と寿命延伸  Click Here!
    受賞者:山梨大学工学部 井上靖雄
        (財)鉄道総合技術研究所 柏谷賢治,佐藤幸雄
 受賞課題 (略)

学術奨励賞
 受賞課題 (略)
        以下4件略す

         http://www.jsms.jp/prize/shou11.htm 学会サイト


 東海道新幹線の線路が、当初の鉄道技研推定の6倍余という激しい損耗で補修が追いつかなくなって、50回近くの半日運休を繰り返して線路を作り直して対応したが、このときは折損著しかったテルミット熔接部を取り敢えずガス熔接に切り換え、新幹線用に開発された50Tレール(53kg/mレール)を、もっと丈夫な60kg/mレールに交換してレール損傷を抑えることで、1/3〜1/4の発生にしたが、根絶はできなかった。

 残るレール損傷をほぼ完璧に抑えたのが、定期的なレール踏面研削で、表面の小さな傷や疲労部:鉄の巨大結晶化で損傷・折損に至るのを初期段階で削り取ってしまう方法だった。 10年前後掛けた実証実験で年率0.1mm研削して、卓効があることが判り、1986年には東海道新幹線全線で年間4000件あったレール損傷をほぼゼロにして、在来線や私鉄にも拡げられ、「平成11 年度日本材料学会技術賞」(1999年)を受けている。 See→日記#140。現在のレール研削量は年率0.08mmの模様。 その実施データをみる限り、先に気付いていたら重軌条化(53kg→60kg)せずともレール損傷・折損は抑えられたと見られるほどの卓効であった。
レール削正実験
鉄道総研&山梨大実証実験結果
(論文概説より)
レール削正車@スペノ
レール研削車
@スペノ社サイト
レール削正車
レール削正車:通称「スペノ」

@Wikipedia写真(筑波エキスプレス基地)
レール研削歯
レール削正用ミーリングの歯@鉄道技術展メッセ
砥石式と上掲ミーリング式とがある

 ところが、この大成果はJR全体にはあまり広がらなかった様で、たとえば「新幹線保線物語」(深澤義朗氏編纂著作、山海堂出版 '06/02/20刊)では、その間18年間のデータを抜いて若返り工事の成果に見せかけてレール削正(研削)の卓効を隠してしまった。 そこでは逆に重軌条化の成果のみ述べて、以降18年分を飛ばして19年目のデータを示すことで、レール研削実験の行われた11年分のデータを消して伏せてしまっている。 See→日記#141#true。 こんな結論を逆転させかねない恣意的なデータ提示をしてはいけない。
 Web百科Wikipediaの記事でも、新幹線レール損傷・折損をほぼゼロに押さえ込んで材料学会表彰を受けた継続的な削正作業については一切触れていない。
 また「レールが危ない」(日記#140)では、労使とも既に採用されている線路削正(研削)の卓効を知らずに処分する、しないを争って不当な譴責処分が行われていて締まらないことおびただしい。

 記事末尾で金沢工大永瀬和彦客員教授談話として「表面の傷を削り取って傷が深くなるのを防ぐ作業など、線路の保守を無理なく行える体制が整っているかの検証が必要だ」としているのは、ストレートな言い方に変えれば、「レール表面削正(研削)を定期的にやっていたかどうか調べろ!」ということになり、当記事の主旨に一致する。 永瀬教授の記事は福知山線尼崎事故辺りから鉄道事業者への過剰な忖度を感じさせるモノが多すぎる。
 同じトラブルが1435mmゲージの浅草線1線に集中するというのは、輸送量集中の過負荷があるのか、路線丸ごとレール削正漏れがあるのか、何らかの系統的な原因があることが多いもの。

 レール削正(研削)車はその製造会社名から通称「スペノ」と呼ばれるが、2000年初頭に横浜線橋本駅留置線に搬入されて、本国スイスから派遣された技術者たちが納入設置調整を行っているのに出くわしたことがある。 レール削正車はその辺りから騒音発生抑止の波状摩耗削正だけではなく、疲労部を削っての折損防止に使われるようになっている。
 営団日比谷線中目黒事故(2000/03/08)で、現場線路を前年末頃に予定の8倍〜10倍(0.8mm)削ってしまっていたと、一部新聞から脱線原因であるかの様に報じられたのはこのレール削正作業であるから、営団:東京メトロも早い時期にレール削正法を採用している可能性は高い。

 新幹線のレール折損は、「不安を与えない」観点から、国鉄記者クラブへの解説を担当していた斉藤雅男氏が、走行には危険がないという鴨宮実験線での実データを示して頼み込み「レールのヒビ」という表現に抑えて貰っている。 その基準では、都営浅草線のレール折損トラブルは「レールのヒビ」と報道されているもの。 「レール折損」の方が率直で良い。

 だが、何故かそうやって静かに導入された方式であり、千葉のJR労使のように鉄道事業者が削正(研削)の卓効を知らない可能性も残っているが、今回のレールが切れて赤信号になった程度の事故として通常は埋め記事で終わったかも知れないトラブルが、東京新聞名物「特報部」ということで、たまたま大きく採り上げられたのかも。

 なお、テルミット熔接は折損事故多発で、「ボロミット」とまで酷評されて排除された工法だが、その原因が納期(1964年10月の東京オリンピック開催)に追われて雨中での熔接作業強行で冷却法不適となっての折損多発だったことが後に解明されて、作業が簡便なので復活した。


2019/02/16 10:55

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