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ガードレール未理解が根底、
日常検査法不適と、 脱線防止ガード逆側設置
   松江、一畑電車脱線事故

【参考資料】
一畑電車脱線事故報告書 RA2010-4
   http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/railway/report/RA10-4-1.pdf
運輸安全委員会事故報告書←旧鉄道事故調査委員会URL
  (サーバー変更:
     http://araic.assistmicro.co.jp/     → http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/
     http://araic.assistmicro.co.jp/araic/ → http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/ )
日比谷線中目黒事故調査検討会最終報告書(現在リンク切れ)
http://www.mlit.go.jp/kisha/oldmot/kisha00/koho00/tetujiko22-6_.html
(注:「航空・鉄道事故調査委員会」は現在「運輸安全委員会」に改組されて、それまでサイトに公開されていた資料のURLが変更されたものが多数あります。
 記録の相対構造は生きている様で、サイト名だけを変更すれば読み出せるものがほとんどです。前身の「鉄道事故調査検討会」の資料はリンク切れのままほとんど引き継がれて無いようです。)

松江、脱線防止ガードを逆設置 一畑電車の事故

 松江市の一畑電車北松江線で昨年8月、2両編成の電車の1両目が脱線、3人が軽傷を負った事故について、運輸安全委員会は27日、国土交通省の指導とは逆の外側レールに脱線防止ガードを設置していたなどとする調査報告書をまとめた。

 国交省は2000年3月の地下鉄日比谷線脱線事故後、半径200メートル以下のカーブの内側レールへの設置を指導しており、安全委は再発防止の趣旨を理解して安全対策を実施するよう求めた。

 報告書によると、左カーブを走行中、異常音と揺れを感じた運転士が非常ブレーキで停止。右に脱線した。カーブ終盤のレールに基準値を超えるゆがみなどがあり、バランスが崩れてレールに乗り上げたとみられる。

 一畑電車は指導に基づき、00年中に防止ガードを設置したが、脱線したカーブを含む9カ所で外側に設置していた。

 安全委の調査に同社は、線路脇に道路がある内側に脱線した方が危険と判断したためと説明。同社によると、社内にも「反対ではないか」と疑問の声があったという。

以上、山陽新聞 WEB NEWS (8/27 10:02)
東京新聞8/27夕刊:(上記と同趣旨)
読売新聞8/27夕刊:「ガードの趣旨を理解していない」
赤旗新聞8/29:「カーブ出口付近で」「傾いていた地面の傾斜が徐々に緩やかになる地点」
(刑場公開記事に埋められ、朝日、毎日、日経には発見できず)
 事故被害としては軽度の打撲傷数名という小規模で済んだため、ほとんど注目されなかった島根県松江市の一畑電車脱線事故(09/08/27発生)の報告書が8/27付けで国交省運輸安全委員会から発表されました。(See→右カコミ記事&事故調査報告書 RA2010-4
 各紙報道では、曲線での脱線防止ガードを国交省の指示とは反対側に設置したため脱線を防げなかったエラーのみを書いていましたが、それはあくまで線路への乗り上がりを引き戻せなかった原因であり、脱線そのものの原因である線路の狂いを生じさせた理由についてはどこも報じていない様です。

事故調報告による脱線原因   <1>

 そこで読み込んだ一畑電車事故報告書には元々の脱線原因として、

200Rカーブは本則+15km/h?   <2>

一畑電車事故  なお、カントが105mmというのは国鉄JR在来線1067mmでの許容最大カントで、これは高速通過を狙ってのものです。200Rでの制限速度60km/hの制定根拠を試算すれば
  V本則 =3.5×√R=49.49 [km/h]=45 [km/h]  ……(本則)
V+α ≒sqrt(127*R*(C/W+Ge)) ≒sqrt(127*R*((C+Ca)/W))
 =sqrt(127*200*((105+60)/1067))=62.7 [km/h]=60 km/h  
  ……(許容不足カント60mm、本則+15km/h)
V+α ≒sqrt(127*200*((105+70)/1067))=64.5 [km/h]=60km/h  
  ……(許容不足カント70mm、本則+15km/h)

 以上の計算より、現場の制限速度60km/hは「本則:45km/h」による規定ではなく、許容不足カント、普通車60mm〜特急車70mmによる「本則+15km/h=60km」の高速型規定法であることが分かります。

 曲線速度制限の「本則」というのは、カントの状態で、安全比率が高速車3.0、普通車3.5と定めた横Gになる速度として算出・規定されたものです。(安全比率というのは重力と遠心力の合力線が軌間と交わる点位置の1/2軌間との相対比率です。)カントは、その線路を走る全列車速度の2乗平均根の速度で平衡する値とします。従ってカントを附加した分、実際の限界値より低めの制限速度になります。(在来線で105mmが限界値というのは、停車時の内軌側への脱線回避のために安全比率3.0としたカント制限値です。)

 これに対し「本則+α」方式は、平衡カントに対し、車種別に「許容不足カント」を定めて制限速度を決めることで、実際の限界一杯の値になって、本則より高速制限になります。敢えて無理をしている訳ではありません。
 考え方としてはカント面に対する安全比率を4.0として限界速度を規定し高速化を図るものですが、実際の曲線速度制限表は計算しやすい均衡カントに対する車種別許容不足カントで規定しています。
 当初は、国鉄が全国の特急の高速化のために採用したもので、軌道損耗の激化を怖れて電車特急とディーゼル特急以外には適用しなかったのですが、現在ではJR西日本や高速化したい私鉄では普通列車に適用する様になりました。現在、不足カント量は、在来線の一般車両60mm、非振り子特急車両70mm、振り子特急車両110mm、機関車列車50mm、新幹線は90mmとしてカント面に対する安全比率4以上より若干低め(=安全寄り)に設定しています。

脱線個所は「曲線出口緩和曲線部」で共通   <3>

緩和曲線ガード指示
「00/03/17事務連絡」文書中の緩和曲線部略図
 注目すべきはここでも「曲線出口緩和曲線部=カント逓減部の捻れ(カント105mm→0mm逓減)」で脱線していることです。日比谷線中目黒駅事故(00/03/08)でも東海道線鶴見事故(63/11/08)でもこのカント逓減部での脱線で、中目黒事故で事故調査検討会が事故直後(00/03/16)に全国の鉄道事業者向けに出した緊急指示もこの200R以下の「曲線出口緩和曲線部」への脱線防止ガード・レール設置でした(00/03/16第2回検討会:中目黒報告書p9L5〜)。

 これは中目黒事故調査検討会が「可及的速やかに曲線出口緩和曲線部への脱線防止ガード設置」を別項建てにして強調したことの妥当性を裏付けるものですが、各マスコミ揃って「緩和曲線」ではなく「曲線」とした微妙な誤報と、続く3/17運輸省事務連絡文書での並列化で、緩和曲線設置の説明図(See→右図)が添付されて分かりやすくなったものの、緩和曲線優先という特別の強調が消されてしまいました。検討会の大変適切な指摘でしたが結果として説明不足であり、一斉の誤報に対してのフォロー不足になっています。(私も数ヶ月後の最終報告書(00/10/26)で3/16通達そのものを読んで初めて誤報であることに気付きました)

 緩和曲線というのは、水平線形としては徐々に曲率を下げて直線に繋ぐものですが、同時に曲線での最大105mmという大きなカントを徐々に減らしてにする曲線ですから必然的に捻れを生じ、特に在来線は外軌側だけを高くするカントですから、曲線出口の緩和曲線中のカント逓減で捻れを生じ前側軸外軌側の輪重が小さくなり、その分脱線しやすくなります。(新幹線のカントは内軌・外軌で±半分ずつを負担することで高さ変位を抑えています)

緊急指示内容が伝達段階毎の書き直しで捨てられ現場に正しく伝わらず!  <4>

 今回の一畑電車事故調査報告書ではこの中目黒事故調査検討会決定に基づく翌日付運輸省指示文書2通が付図6として掲載されていて、特に鉄道局施設課から地方運輸局鉄道部技術課あて事務連絡文書(付図6−2/2)には「脱線防止ガード又は脱線防止ガードの場合は曲線の内軌側に設置するものとする」と明記されて、更に略図が付記されて、そこには緩和曲線部とその前後5mの内軌側にだけ「脱線防止レール等設置区域」として図示しています。すなわち運輸省鉄道局から各鉄道事業者の現場に直接向けた文書です。その文書が鉄道の現場にちゃんと回ったのかどうか・・・・・事故調報告書は直には書いていませんが、一畑電車では最終的に同社の「届け出実施基準/軌道・土木施設実施基準」という規則を介して現場に伝えた模様で、その規定では緊急指示内容と内軌側設置という補足は捨てられ、設置位置の適用を間違えました。

 すなわち一畑電車制定の「軌道整備心得」を継承する「届け出実施基準/軌道・土木施設実施基準(2002/03制定)」では「第35条2 脱線防止レール又は脱線防止ガードは危険の大きな側の反対側に設けるものとする」とあって、文面通りでは左右どちら側に設置すべきか指定が無く、現場の判断に任せているため、逆の外軌側に取り付けてしまったところが9個所あってそのうちの1個所で脱線したものです。
 これは一畑電車軌道・土木施設実施基の脱線防止レール設置の規定法にも問題があり、
●曲線部の遠心力に対応した脱線防止措置なら内軌側に設置、
●機関車列車での起動牽引力とカントの合力に対応した脱線防止措置なら外軌側、
●高所の築堤、急勾配個所の安全保障なら、危険側の反対方向
と規定を具体的に分けて、万一の誤解の余地を無くすべきでしたが、規則作成者がそれをきちんと理解していなかった可能性が報じられています(報告書p19L18〜、読売8/27夕)。

現場向けの具体的通達なのになぜ社内通達に添付しなかったのか?  <5>

 それ以前に、前述(5)項に述べたように、中目黒事故調査検討会00/03/16決定として通達された内容が2度の書き直しを経て現場に通達されるまでの間に変容してしまい、先ず運輸省内で緊急アクションの重要さの重み付けが捨てられ、また折角現場直への指示として理解し易いよう略図を書き足した文書なのに、会社デスクでブロックして「設置位置が内軌側」という基本情報まで捨ててしまい、事故調査検討会の緊急指示が伝わらないエラーで発生した事故です。
 緊急対策指示ですから自社の規則化とは別に、少なくともその指示文書を添付していれば、一目瞭然の略図を見ることで間違いは起こりませんでした。そして社内規則にも同様の付図が必要ということです。

一畑電車の規定・規則担当がガードレール未理解?  <6>

 加えれば、このニュースを聞いて真っ先に感じたのは、曲線の脱線防止ガードの具体的働き方を鉄道本職の人達が知らなかったのか!?一部報道にもある「社内からの間違いの指摘」をなぜ検証できなかったのか?!という疑問です。内容としては高度なものではなく、かっては神田萬世橋の交通博物館にもガードレールの模型展示のあったヲタでも知ってる内容です。JR東海やJR西日本の様な旧帝国軍隊型の上意下達の体制に支配されていて、下部や外部からの指摘は全く受け付けられず無条件に捨てられてしまうのでしょうか?また、誤りの発生を前提にしてフォロー出来る体制として、原文書添付と質問対応の義務付けも必要なのかも知れません。逆に間違っても他から訂正されるからと無責任な仕事がはびこっては却って困りますが、ソースや解析添付で間違いにくくする方が良いのではないかと思います。それにしても「本職」さんはしっかりしてよ!と感じた少々情けない事故でした。

新幹線事故にも前例!絶対計測さぼり事故  <7>

 東海道新幹線で、運転室の窓から外を監視していた運転士が標識に衝突して再起不能の重傷を負った事故があります。原因は新幹線開業以来建築限界の確認測定をしていなくて、経年の沈下・陥没を埋める保線作業で次第に線路と構造物の相対位置が狂ってきたのを、全く測定していなかったために起こった事故で、急遽オイラン列車(建築限界測定車)を仕立てて全線の建築限界検査を行いました。
 線路の相対的位置関係については日常的に保守点検していたのですが、絶対値を追わなかったミスはこの一畑電鉄脱線事故と同じです。この新幹線事故の時点で運輸省が絶対計測の必要性を全鉄道事業者に注意喚起していれば、前回計測との差だけ管理するような誤った作業はもしかしたら避けられていたかも知れません。いくら注意されても抜けてしまう怖さは有るのですが、助かるものも有ったはずです。
地下鉄脱線事故の真因を探る−  No.2 のり上がり脱線とは ?  
鉄道・交通機械工学(永瀬)研究室
(http://www2.kanazawa-it.ac.jp/knl/index.html:既閉鎖)
(http://www7b.biglobe.ne.jp/~nagase_rail/rail_discuss_No11.html:BAK公開。「初狩駅」で検索)


 昭和40年に中央線初狩駅構内で貨物列車が約25[km/h]の低速で進入した際に起きたタンク車ののり上がり脱線事故がある。現場を調査した結果、車両・地上ともに異常はなかったが、結果的には「Sカーブにおける緩和曲線挿入の方法」と、脱線した車両が「剛性の非常に高い(しなやかでない)タンク車」であったことと、その車両のタンク部分を含む車体部を台車が受ける部分(これを「側受」とよぶ)のスキマが狭小であった、つまり「側受のスキマが狭かった」ことの、3者間のミス・マッチにより起きたことがわかった。

緩和曲線の前後+5mの根拠は   <8>

 なお、緩和曲線の両側5mづつを含めて内軌側に脱線防止ガードを設置する「+5m」の根拠は、2軸貨車の軸距約4.7m前後をカバーして捻れ部での脱線を防ぐための距離の模様ですから、それより軸距の長い車両が入線する場合や、ボギー式タンク車などローリング方向の捻れ剛性の特に高い車両が入線する場合(See→右カコミ)には、それに合わせて延長することが求められますが、運輸省による補足通達には明記されていません。

 かってスイッチバック駅である中央線初狩駅で、台枠・タンク一体構造で捻れ剛性の高いボギー台車のタンク車が入線した際に、本線勾配と駅引き込み線との捻れに対応し切れず、復旧作業中に脱線を繰り返した事故があり、静的な追従性を増す改造をして切り抜けたことがありますが、そういう車両の場合も最大で台車間距離+台車軸距分の脱線防止ガードを緩和曲線両側に延長する必要があり、+5m一定で済ますことは出来ないはずですが、付図6の運輸省通達文書にはその旨の具体的記載はありません。一般的なボギー車では捻り剛性は高くなく、線路の捻れに良く追従しているので問題にはなっていませんが、全国通達ですからタンク車など例外的車両についても触れた方が良いでしょう。

(番外)各紙の報道は?   <9>

 8/27夕刊は東京拘置所絞首刑場公開の記事に埋められて、島根の田舎の一畑電車の人的被害が打撲傷だけという小事故調査報告の報道は埋没してしまい、千葉配布の朝日、毎日、日経、サンケイに記事は見つけられませんでした。夕刊では読売、東京と、29日朝刊で赤旗の3紙のみが報道。3紙共通しては、脱線を引き戻せなかった脱線防止ガードの逆側設置のみの報道で、脱線原因である線路の狂いの蓄積原因を報じたものは有りませんでした。埋め記事としては派手な項目だけ取り上げるのがやっとだったのかも知れませんが、「計測値の変化だけを見て、絶対値を管理しなかったことで許容限界の倍以上の変位となり事故になった」何処にも起こりがちなミスが根本原因であることは「社会の木鐸」として一緒に報道すべきでした。相対調整のみで絶対測定を省略して事故になったのは新幹線でも経験したミスですし。

 事故調査報告書を独自に読み込んでいれば、日比谷線中目黒事故検討会緊急指示(2000/03/16)が、翌日の運輸省事務連絡、一畑電車の「届け出実施基準/軌道・土木施設実施基準(2002/03制定)」と内容が微妙に変遷して、重要事項が薄められ捨てられるのが見えたはず。そしてその不適当な変遷を事故調査委員会がなぜ直接指摘しないのか?=監督庁の下部機関が監督庁の弱点やミスをあからさまに言えない限界を指摘できたはずです。
 事故調査報告書というのは情報漏洩ではなく報道解禁日を設けて事前に報道機関・事故関係者には配布されて、報道用アンチョコまで作られているものの様ですから、1週間ほどの期間を設けてきちんと読み込ませた方が良いと思います。(JR西日本漏洩事件ではそうした事前配布も含めて叩かれてしまいやりにくくなりましたが、正確な報道を保証する目的として解禁日に事前配布日を明らかにすれば報道正確化の工夫として了解されるのでは?報道と報告書を対比させると「報道用要旨」が透けて見えるものがあるでしょう。)

 読売新聞が特に指摘したのは一畑電車が「ガードの趣旨を理解していない」という運輸安全委員会の指摘。

 東京新聞は外軌側に脱線防止ガードを設置している事故当時のカラー写真を掲載し「「カーブ終盤レール」に基準値を超えるゆがみ」として「緩和曲線部」を摘示した」かにも見えないことはないのですが、残念ながら読者には曲線部の一部と取られてしまうでしょう。

 1日遅れでも報じた赤旗新聞は、脱線個所を意識して「半径200mの左カーブ出口付近で………左側に傾いていた地面の傾斜が徐々に緩やかになる地点」と書いて「緩和曲線」を示唆していますが、道路のバンクではないのだから「地面」よりは「左右レールを結ぶ面」「カント面」の方が分かりやすいし、「緩和曲線」と並記にすれば誤解の余地が無くなって良いと思いますが、どうでしょう。
 科学技術用語を言い換えだけにしてキーワードを捨ててしまうと検索できなくなってしまい、それだけで情報の質を大きく損なってしまいます。緩和曲線、カント、脱線係数、安全比率、速度照査などは言い換えだけにしてはいけない単語です。ググッた結果がwikipediaだけで自己の固有技術で判断出来なければ「朝日新聞の特ダネ」扱いで保留にして、他サイトに同趣旨の記述を見つけて信憑性の確認を行うと。(珊瑚、伊藤律、慰安婦番組改竄、田中知事etc………あそこは事実の追求より事前設定の枠組みを前提の記事を書かせるから必然的にああなるんでしょうねぇ。)
 ソースのコピペではなく自前の表現で読者の理解を助ける意図は買いますが、「このため車両に『遠心力』が働き、………」は報告書の読み間違い。カーブそのものではなく、蓄積された線路の狂いで正矢が増して(曲率が増えて)遠心力が増え、緩和曲線でのカント逓減の捻れに拠り輪重が減るという脱線しやすくなる構造的なもので、正矢増に触れずに「そのため」としてはいけません。
 一日遅れでも、分かり易さを求めて技術的な内容で独自の表現をする努力自体はソースコピペ記事氾濫の中で大いに支持しますが、なかなか頑張っている同紙科学部や、関連深い現場の専門家、学者などに相談するなどして検索キーワードは言い換えずに残すなど、もう少し慎重にして貰いたいもの。時には益川先生まで引っ張り出せる強烈な応援団を擁する新聞なのですから。
(2010/09/03追記)

(番外2)東京拘置所絞首刑場「公開」は誘導   <10>

 公開された絞首刑場は、建て直しされたばかりの新しいもので、執行の惨状が判らないよう、絞首縄すら隠している。失禁・脱糞・出血などでもっと凄惨だという批判は報道にもあり、目は飛び出し、体の穴という穴から体液が流れ出ている文字通り目も当てられない様子とされていましたが、実はその程度に留まらず、絞首刑場に連れて来られるところから汚物痕で烈しく汚れていて到底公開出来る状況ではないという話も伝わってきます。死刑囚はおとなしく目隠しをされて首吊り縄の処まで歩く訳ではなく暴れて抵抗し垂れ流しになっているのを実力行使で制圧して踏み板まで運んで首吊り縄を掛けることも多いのだと。

 昔、映画「アルジェの闘い」の冒頭近くで、アルジェリアの独立運動家に対して監獄内でのギロチン死刑執行場面がありました(あんな凄惨な映画がよくヒットしたものだとは思いますがDVD化されて今も売られています)が、それは死刑囚を縛り上げて動けなくし、看守達が独房からまるで丸太を運ぶように通路を運んで、他の房から良く見える吹き抜けホールにある断頭台にセットし、死刑囚の「アルジェ万歳!」「アルジェ万歳!」………の叫びが続く中、断頭台の歯がガイド溝を落下する長〜い摺動音がして、烈しい打撃音で叫び声がその途中でピタッと途絶える場面がありましたが、実際の絞首刑でも似たようなものでしょう。(この映画の主人公は隠れ家をフランスの治安部隊に取り囲まれ、降伏を拒否して隠れ家と家族もろとも爆殺されてしまうのですが、ブッシュ大統領がアフガンとイラクで「警察行動」ではなく「戦争」を強調するのは、裁判を経ない処刑と一般市民の巻き添え犠牲を正当化するための仕掛けで、それをフランスも利用していました。端的に言えば「戦争」なら標的者目掛けてミサイルを撃ち込んで周囲を巻き込んで殺して良いという話です。そんな酷い論理を今もって利用とは、さすが野蛮なリンチ横行する西部劇の国の大統領ではあります)

 まして13階段を自分で昇っての絞首処刑など現実にはほとんど考えられません。各種メディアでは死刑執行のボタンを押す看守達の苦悩が語られますが、実際には、実力行使で制圧して床落下部踏み板上に引きずっていき、首に縄を掛けて踏み板が落ちるまで支える役の看守たちはもっと大変でしょう。3〜4個の執行ボタン云々は実力行使で首に縄を掛ける作業に注目が行かないための目眩ましかも知れません。

 「刑場公開」を言うのなら、記者クラブ以外のジャーナリストやNPOなど運動体も公開対象として、執行数の多い古い刑場をも公開しないと死刑擁護存続論に強く誘導するものになってしまうという意見も伝わってきます。この情報の発信源はおそらくナマ情報の得られる内部からでしょう。
(2010/09/11追記)
2010/09/01 20:55

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