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真相究明に老骨奮闘!
当事者調査事故の洗い直し必要


●重連運転に対しての注意事項

 蒸気機関車には元空気溜と動作弁がある。客車にはA形動作弁と補助空気溜が備わる。機関車で直通ブレーキを扱うと空気管内は8kg/cm2 ※1減圧し、客車の動作弁が働いて補助空気溜の圧力によりブレーキが伝達される。
 駅に停車する場合にはいったん直通ブレーキで減速し、最後に機関車の単弁により停止する。これは始動時に連結器の隙間をなくす※2ためである。
 重連運転では先頭の本務機に信号確認をはじめ、すべての義務が課せられる。 しかし、補機がブレーキを扱わないと減圧が進まず、客車のブレーキが働かない。大事故のもとになる。この点に対して、常に注意をする必要があった。

齋藤雅男執筆「鉄道エッセイ5.
蒸気機関車時代の機関区の仕事
「鉄道ジャーナル」誌2010/01号p113右下L−11


注※1.国鉄JRの旧型車と貨車に使われる「自動ブレーキ」は、牽引車両に引き通すブレーキ管圧力を、緩解時に5kg/cm2としてこれを各牽引車両の制御弁を通じ補助空気溜に供給。これは元空気溜の8kg/cm2から減圧して供給する。
 引き通しブレーキ管圧力を減圧すると、圧搾空気が補助空気溜からブレーキシリンダーに送られブレーキが動作する。列車分離など引き通しのブレーキ管圧力が急に無くなると非常制動が働く。
 電車で自動ブレーキ方式を使うものはブレーキ応答を早めるため各車両の電磁弁で減圧し、高圧空気も引き通して電磁弁を介して全車に供給している。引き通しブレーキ管圧力は最大5kg/cm2で供給され、そこから減圧されるとブレーキが動作する。高速貨車にもそうした電車方式が使われる様になった。近年の電車の主ブレーキは更に応答の良い「電磁直通ブレーキ」「電気制御ブレーキ」を使っており、自動ブレーキはそのバックアップとしてモハ20、90、91以降の「新性能国電」に引き継がれて201系203系まで搭載していた。(以降の列車分離対策は電気の引き通し線に拠る)

 「単弁」とは機関車だけに働くブレーキとその操作弁。上記齋藤氏の解説はその「単弁」に対して自動ブレーキの「直通ブレーキ」(通称「自弁」)を言っており、ブレーキエアを運転台から各車に直接送り込む「直通ブレーキ」構造とは別物である。

注※2.列車圧縮方向の隙間をなくす=引き出し方向の隙間を最大にして、その隙間を利用し1両ずつ引き出す。摩擦式軸受けの静摩擦が動摩擦よりかなり大きいため、列車を楽に起動させるのに有効な方法だった。
腕木信号機
腕木信号機現示
  2本ある上側が場内信号機で、ホーム進入可否を示し、下側が通過信号機で、ホームの出発信号機と連動して、ホーム進入後にそのまま出発出来るかどうか、すなわち通過の可否を示すもの。衝突防止に同時進入禁止規則を定めるには、到着検出をして自動的に対向側を進行現示に切り換えることの可能な色灯式信号の継電器制御が必要だが、手動式のため急速に廃止される原因となった。


●ワラ1形式貨車の性能テストは実施すべきだった

 1963年11月9日、東海道線鶴見付近の3複線で、下り貨物列車のワラ1形式FCが脱線転覆し、その貨車に隣線の上り横須賀線ECが衝突、不運にもそこへ下り横須賀線ECが衝突してきて、162人が亡くなった※3。最初に脱線した新製間もないワラ1形式貨車の走行安定性が問題になった。
 新形式車両の誕生の場合は、走行安定性などの性能テストを行っているが、ワラ1形式FCの場合は車体長さ、軸距、荷重時の重心高さなどの数値は在来ワム60000とわずかしか変わらないため、走行テストが省略されていた。しかし以上の数値がわずかの差であっても、当時線路の原因かFCの原因か解明できない競合脱線事故が年間数件発生していたことを考慮すると、新製のワラ1形式FCの性能テストは実施すべきであったことが教訓として残された。

「日本の鉄道車両史」久保田 博著グランプリ出版
2001/3/21刊p241L−10〜p242L5


注※3:横須賀線電車(EC)の到着順は逆順では?。停まり掛けた下り電車と脱線転覆した貨車の間に上り電車が突入、下り電車を突き抜けて160人の亡くなる大惨事になった・・・・と読み取ったのだが。
 三河島事故の死者が160名から後日161名とされているはず。

 右枠内の国鉄技系幹部OB鉄道専門家齊藤雅男氏のエッセイには、 「しかし、補機がブレーキを扱わないと減圧が進まず、客車のブレーキが働かない。大事故のもとになる。この点に対して、常に注意をする必要があった。」とあり、何気ない記述ですが、実は鉄道現場には良く知られた重連運転での重大な欠陥を述べています。要するに重連のためブレーキを掛けても効かない!数多くの列車が疾走していたってことです。

 その対策は「中継弁」と呼ぶ伝達装置を機関車に設置することで、常時重連運転する上越線の電気機関車と北陸線敦賀付近のディーゼル機関車には早くから設置されていましたが、それ以外では放置状態でした。

 そういう状態で起きた鉄道事故が参宮線六軒事故1956/10/15でした。この時、重連編成に非常制動が正常に働いていたら衝突事故にはならずに停まり切れたことが再現実験で確かめられています。

といった事故防止策が講じられました。

 刑事事件裁判としては、乗務員の信号見落としに拠るものとして起訴されましたが、乗務員は駅入口の場内信号、通過信号は進行現示だったと主張して、事故原因が信号見落としか、駅側の信号操作遅れかの、オペレータエラー犯人捜しだけで争われて乗務員の信号確認ミスと「推定」され、地裁判決禁固、高裁判決同執行猶予で決着しましたが、乗務員を有罪にするには証拠が足りず、司令所の交換駅変更決定時刻からの「推定有罪」とは、かなりの無理がありました。
 事故後の対応を見ただけでも現在の水準で言えば、地上側が不作為を含めてかなり多くのエラーを冒して惨事に至ったことが判ります。

 この事故直後の総裁会見から事故調査抜きに乗務員の信号見落とし説が強調されて、以降、裁判までもが見落としを既成事実として幕引きしましたが、当事者調査でかなり伏せられた分があるようで、真相究明には改めて第三者機関の調査・検討に委ねる必要があるでしょう。

 以上の内容は網谷りょういち著「(続)事故の鉄道史」に述べられていますが初版の'95/11から長期に放置されているもので、執筆にあたり齊藤雅男氏が相談に乗っている模様です。

 同様の真相暴露は国鉄小倉工場長などを歴任した国鉄技術系幹部の故久保田博氏が著書「日本の鉄道車両史」で行われています。右枠下段の通り、表面的には原因不明に等しい「競合脱線」で片付けられた'63/11発生の東海道線鶴見事故で、惨事の切っ掛けとなったワラ1型貨車の軽負荷時の走行特性不安定を見逃したのが、事前の走行試験を省略したためだったことを記して、当時の国鉄が事故当事者調査を利用して真相隠蔽を図ったことを指摘しています。
 これは、事故後の大規模な車両改良廃棄と脱線防止ガード設置などを見る限り、国鉄内部としては事故原因を明確に掴んでいたと考えられ、曲線出口緩和曲線での不安定は専門家にも知られた事実でしょう。
 現に、'00/03発生の日比谷線中目黒事故で直ちに全国の鉄道事業者に対し「半径200m以下の曲線出口緩和曲線に脱線防止ガードレール設置」を勧告しています。曲線出口緩和曲線というのは鶴見事故でワラ1型が脱線した場所です。当時マスコミはこれを曲線全体と勘違いして揃って誤報し、弱小私鉄の経営基盤を揺るがしかねないなどとコメントしていますが、ナマの通達文書ではカントをゼロに戻す捻れがあって輪重抜けの起こる「曲線に続く緩和曲線部(約30m〜52m余:在来線カント逓減率1/300〜事故現場1/500)において、可及的速やかに脱線防止ガード、脱線防止レール又は安全レールを設置すること」(最終報告書p9L5〜第2回検討会3/16決定)としています。営団は逓減率1/500という在来線としては若干緩やかなレール面の捻れで脱線してしまうような酷い車両整備水準だったことを暴露しました。

 各種日米密約についてそれに調印して隠し続けた元外務省アメリカ局長吉野文六氏(91歳)が裁判証言で密約の存在を認めて記者会見しているTVニュースを見ながらタイプしていますが、真実を墓場に持っていきたくない共通の思いを感じます。腐肉を加工して売りつけたミートホープ事件の内部告発を行って阻止した定年後採用の役員氏のルポ番組も同日に重なって、真相究明要求のオンパレード。
 JR西日本の事故調工作で、当事者調査だった国鉄JR時代の事故調査洗い直しの必要が明らかになった今、第3者機関での結論洗い直しは避けられないと思うのですが、放置でしょうか?JR西日本を除き国鉄JRは刑事事件としての立件を防げればその後の真相暴露には鷹揚な印象があります。今回の事故調工作も刑事処罰の要件である速度照査ATS設置に絡む予見可能性の否定に焦点があるようです。

2009/12/04 23:55

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