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Geo日記
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[156].予備ブレーキの扱いと中継信号

直通予備使用は常識的裏技

 直通予備ブレーキの使用が裏技として一般化していることを示す記事発見。関西大手私鉄現職運転士とんちきA氏著の「鉄道員ホントの話」(山海堂2003/01/30刊p21L10)に以下のように述べている。
 「また、運転士が制動中に慌てて立ち上がって何か操作しているなら、それは予備ブレーキを操作しているのです。これまたいけない制動の例で、制動距離が足りず,止まりそうにないときに用いる最後の手段です。ちなみに、予備ブレーキは………列車を止めるために使うのは、本当はいけないのです。」
 刊行時期が'03/01/30だから尼崎事故'05/04/25の2年前には運転士の常識であることを示している。事故調査委員会の中間報告書では運転士に「どんなブレーキ操作が良く効くと思うか」という質問で直通予備ブレーキと非常ブレーキ操作を問い、やはり直通予備ブレーキ操作が裏技として広く認識されていることを浮き彫りにしていたが、この本の記述は当事者直接の告白となっている。非常ブレーキ操作は報告だの追及だのとやっかいだが、直通予備なら報告義務はなく良く効いて緩解も素早いとなれば使うのは人情だ。
 こうした事情は現場を取材すればすぐ出てくるだろうに、日航羽田沖事故のK機長を引き合いに出して声高に異常操作を叫ぶ読売記事は報道として戴けない。JR西日本の責任転嫁の誘導の繰り返しに品悪く一発噛ましたのは、新情報が会社からは全く得られなくなった段階でインテリヤクザたる新聞記者が揺さぶりをかける許容範囲のことで非難は当たらないと思うし、元々親分からして品良くない新聞でTVカメラが停まってる時にやるなど状況を考えて足を取られない様気を付ければ足りるが、記事内容そのものが根拠がなくても煽れればいいという三文週刊誌型記事は願い下げである。

中継信号誤解対策必要

 中継信号の機能が問題になって誤解しやすい位置の信号を移設した鹿児島線宗像海老津追突事故'02/02/22についても同書は以下のように述べている。

 「もし中継信号機も、その対象列車が通過した時点で停止になる構造になっていればこのような事故は起こらなかったと思うのですが………」
 これは事故抑制を願う誰もの気持ちだと思う。
相模原線調布駅場内信号配置過走防止速照位置
 ところが、これに「本職」から異議が出て、中継信号機とはその前方の信号現示を中継するものでカーブミラーの様なものだから独自の現示を出してはいけない!中継信号の運輸省令で本信号現示以外を表示するのはダメなんだそうである。その反対論解説がBBSスレ「JR九州は「閉そく指示運転」を直ちに実施しる!!」の後半でかなり繰り返されて、それでも足りず「厨房のための中継信号機講座」が建てられたが、その強烈な本末転倒の主張に驚いた。
 思考基準が「中継信号=カーブミラー」論でこれに反するものは認められないということだが、信号本来の目的が衝突防止であり「カーブミラー」に幻惑されて事故になるのなら幻惑する条件でカーブミラーを見えなくすれば良いことだ。運輸省令はそれを「許容する」と改訂すれば良い。たとえば列車が中継信号直下の接触子を踏むと中継無効状態として保持され停止現示で解除される。その間の中継現示は消灯でも停止でも可とする。
 宗像事故後の現実の対応は「中継信号を誤認しやすい信号を移設する」というもので、国会審議も「指令の指示のない無閉塞運転の禁止」に集中して、阻害要因たる省令はいじらなかった。

 実は京王相模原線上り調布駅第1場内信号のすぐ手前約70m位置に第1閉塞信号を置き、それぞれに中継信号を置いて右170Rで90度方向転換する場所での信号誤認衝突を避けている。これで先行車が見えずにそれより前の現示アップが中継される条件はなくなるが、現示は中継ではなく閉塞区間として区間を分けて誤認を避ける丁寧な設置だ。(同線は20m車8両〜10両で運行しており、信号70m間隔というのは誤認対策の色彩が強い。)→略図参照

無閉塞運転15km/h速度照査は妥当な機能

 同様の本末転倒型主張が、無閉塞運転中の15km/h速度照査機能は設けてはならない説。実際には1号型ATSには無閉塞運転での15km/h常時速度照査機能がありこの見解は間違いだが、考え方の問題としては「無閉塞運転というのは信号現示を離れて運転するのだから、ATSは無関係であり15km/h照査をするのはスジが通らない。というものだ。(see→#nnn)

 この主張の論拠の間違いは、ATSは安全装置であることを忘れての形式論理を適用して安全確保制限を現示制御と勘違いして切り離してしまったことだ。安全装置が信号現示に拠らないものだが無閉塞運転中の15km/h制限を監視して大事故発生を抑制するのは妥当な機能である。

 この点ATS-Pが無閉塞運転開始50mで速度制限を解除する設定である理由は、次の地上子で前列車に対する進行信号を受信する危険があり、「無閉塞運転を強く意識させる」として50m一律解除を強調したのではないだろうか。ATS-P区間の輸送量が圧倒的に多いJR東日本が率先して無閉塞運転を禁止し指令の指示による閉塞指示運転に切り換えた理由はこの前列車への進行信号の受信問題だろう。
 現在エンコーダ型では地上子が列車通過を確認するとポーリング順を後回しにする制御を行っており、この時同時に停止信号送信に切り換えれば無閉塞運転中の誤動作追突は避けられるが、JR西日本の統合型や東日本のPN型のような車上情報受信機能のない地上子を使っている線区も多いので、解決策としては車上側で
●信号電流の有無をアンテナコイルで拾って無信号の場合に15km/h制限をするか、
●無閉塞運転開始を記憶し、直下地上子検出まで保持して15km/h照査を行う機能は付加した方が良いと思うが、当面、指令がCTCで総ての列車位置を掴んで許可・指示する方式だとリスクが緩和される。(間違い指令の機会は残る)

「車掌防護義務」は非現実的

 さらに同書は先発列車の車掌が後方防御をしていないことを手落ちとして取り上げているが(p118L7〜)、これがもし信号雷管設置のために800m以上後方に走ることを要求するのなら現実的ではない。走っている間に後続列車が追いついてしまうし、出発には雷管を外して800m以上を走り戻らなければならない。異音で停車して地上から車両点検しているのだから、JR東日本の運用では乗務員が防護無線を発報して周囲の列車に停止を求めていただろう。JR九州がやたらに停めさせない運用だったことが基本問題だ。防護無線が停止理由によって線区別上下線で使い分けられれば使いやすくなるのかもしれない。

2007/04/17 23:59
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