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Geo日記
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[61].あり得る推定
未曾有の130km/hのブレーキをいつもの制動点で掛けたか?

  なぜ108km/hもの高速度で300R速度制限70km/hのカーブに突入したかの物理的にあり得る推定を図にした.計算は#59の下段に述べている.
  運転士はオーバーランに因る90秒の遅れを取り戻そうと右カーブ出口以降フルノッチ加速を続け,通常の回復運転ではノッチオフする120km/hを超えても猶加速.
  通常の回復運転なら塚口駅通過直後に100km/hまで減速して(図右側の100km/h線),事故現場カーブの250mほど手前の制動目標からブレーキを掛けるとピタリ70km/hとなる.
  それを更に加速して130km/hに到達.この速度から減速して70km/hに落とすには最低600mの減速距離が必要だ.ところがオーバーランの遅延に焦っていた運転士は,これに気づかず従前の制動限界ポイントぎりぎりまで引っ張ってブレーキを掛けようとした.上を通る高速道路が直後のカーブを見えにくくしていた.第一,未曾有の高速運転に見合った制動目標は未経験だから知らない.その結果,カーブ入り口での突入速度は108km/hになって,線路から足払いを掛けられる様に横転して大惨事となった.


  4/30毎日朝刊には,カーブ入り口から75m(=128m−63m+10m余?)の電柱の折損が報じられ,車両が約45度傾いて激突した模様と報じている.折損位置は2.5m高,外側の線路から2.4mで,列車の屋根の高さが約3.7mとあり,略図では枕木脱線痕の直後の位置である.207系の車体幅は約2.9mだから,作図(右図)すれば,おおよその車体傾斜は28.5度,外側線路基準で3.5m程度なので,この時点で車体の角が20〜30cmばかり潰されていて,電車としては希な転覆脱線であることを示している.既に重心が左側線路直上より外側になっていてかなり早い時期に片足走行横転が始まっている様だ.
  300Rを75m走行すると,円周操向角度としてはθ=75m/300m[rad]=0.25rad=14.3度,元の直線の延長線からは300{1/cos(75/300)−1}=9.625m離れている地点だ.
  前例は74/の富士急三つ峠事故くらいだろうか.あれは踏切事故が第1原因だから高速での転覆そのものは調べてない様だ.(それにしてもトップ記事の見出し「45度」は酷い.せめて30度.新聞記者諸氏はそれほど数学は苦手なのか!苦笑)
  同日の毎日新聞は更に,JR西日本が不適切な情報で予断を与えたことを謝ったと報じている.置き石説のみ強調と,133km/hまでは脱線しない,と主張したことの2点を謝罪.計算は下図FIG_61Cが順当で,基準となる転倒限界の遠心力を求める事には意味があっても,それを速度に換算したところで脱線限界より高速すぎて全く意味がないが,この架空の数値を鉄道総研の権威を借りて責任逃れの印象操作に利用した訳である.鉄道総研が「133km/hまでは脱線しない」などと言うはずがない.

  そして日勤研修教育の見直しを言っているが,労組側のホームページをアクセスすると,JR西日本は日勤教育で運転士が自殺に追い込まれた事件を採り上げることについて狂気の脅迫状とも言うべき通告書を発している.無茶な虐め研修を反省するのなら,裁判上は認諾なり和解なりをする交渉を当事者や労働組合と始めるのが筋なのに,逆に攻撃とは,全く反省の気持ちはなく,マスコミ対策の低姿勢としか言いようがない.生き死にを掛けた問題であまりに不誠実だ.たとえ組合に極左暴力集団の影響があったにせよ,一般組合員を含めて不当な扱いをして良いはずがなく,今回の大惨事の原因になったマル生以来の暴挙に終止符を打つべきだ.
2005/04/30 18:00
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