mail to: adrs
旧
新
Diary INDEX
Geo日記
戻る LIST
主目次

[60]. 木を見て森を見ない!おかしな原因論議

  福知山線尼崎先転覆事故は大局的には300R70km/h制限箇所に推定108km/hで突入した過速度脱線転覆事故だから,対策としては高速度で接近し危険な横Gの予想される箇所に過速度防止装置として速度照査地上子を設定すれば良いのだ.これは先の3/02宿毛駅突入事故後の対策と同じで,その適用範囲を拡げるものである.

  ところが,現在,事態を正確に理解しきれない文科系マスコミの論調だけでなく,事故調までが事故原因として全く本質から外れる速度限界外で最初に崩れたファクター探しに走っている.マスコミに煽られてという側面はあるが,東海道新幹線立ち上げ,台湾新幹線立ち上げなど設計現場経験豊かで冷静な斎藤雅男氏や機関士を経験して金沢工大の鉄道工学関係の教授に転身した永瀬和彦氏などが「300R100km/hを越えたら脱線の危険性が極めて高くなる」と指摘しているのをほとんど無視し,JR西日本が目眩ましに主張している207系空車状況での転倒−復元境界速度133km/hまでをねじ曲げて「脱線しない速度」などと称し,「なぜそれより低い速度で脱線したか!?」などと元々結論の出るはずのない,出す必要のない重箱の隅をほじくって,本来徹底追及されるべき過密線区を安全性の高いATS-P換装や,ATS-Sxのままでも過速度防止装置設置の実効有る方向を吹き飛ばしてしまっている.世論がATS-P化に流れてATS-Sxを残さざるを得ない条件も押しつぶしかねなかったのを冷ます世論操作だろうか?しかしそれでは錯綜路線のATS-P換装も,カーブ手前での速度照査義務付けも,ATS-SN系での過走防止,過速度防止速照設置も飛んでしまう.社会の木鐸,世の灯台たるまともなマスコミはないのだろうか.

  昨28日毎日朝刊に88/12函館本線姫川事故を引いて300R100km/hで転覆してることを指摘して133km/hまで不転倒説の信用性を崩し,それを追って今日29日は読売がまともな専門家の試算を基に「120km/h以下でも転覆の可能性」「JR西試算は机上の空論に近い」と追及を始めたが,果たして根拠もなしに「制限速度の2倍までは脱線しない」とTVで叫び続けてJR西日本の責任逃れに協力する「専門家」を乗り越えて真実に到達できるだろうか?JR西の仕掛けを破れるかどうか.
  133km/h脱線限界説をみて,これは酷いシロート騙しと感じて廻りに説明してみたが,虚構を崩すのにはあと一歩が必要だ.間違いである理由を文科系にも分かるように説明しても,「TVで専門家が2倍の速度までは脱線しないと言ってますが,それはなぜですか?」と受け容れて貰えない.仕方ない!「その専門家は鉄道工学の基礎理論を学んでない科学技術畑は苦手な方だと思います.高校物理の運動とベクトル合成だけで解けるんで自分で試算してみて下さい」.やれやれ.こんな場合マスコミは理工系に強い記者を加えてレクチャーさせながら取材するべきだ.

  曲線の制限速度の決め方は,ここ参照。数学力に自信があれば、こちらはプロの解析。その解析結果の一般向け解説に説得力のある数字選びをする訳で、下手をすると歪曲が紛れ込んで誤導されるから必ず眉にツバを付けてデカルト型で読み込む必要が有るのだけれど、この解析は信頼に値するので是非一読を。川島・桜井両御大の有害な妄言を完璧に粉砕している。HPは、こういう良いページを作りたい。(この節05/08/31追記)
2005/04/29 21:00
旧
新