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却ってスッキリしないか?旗幟鮮明の公述人

 JR西日本が事故調関係者に対するなりふり構わぬ情報収集と、内容介入を行って、当然厳しく糾弾されているが、各公述人の口述内容を読み込むと、公述人が中立公正であるかの前提で論じることに無理があると思った。JR西日本擁護・推薦とか、TASK世話役・自薦とか、それぞれスッキリした看板を背負って、打ち合わせしながら公述すれば良いのではないか?不偏不党公正のタテマエで裏で打合せながらJR西日本擁護論を展開したところに不信感の源がある。
●平成19年2月1日開催 意見聴取会議事速記録●

    意見聴取会の概要
  • (口述内容リスト、意見聴取会日程) 148KB
    http://araic.assistmicro.co.jp/araic/commission/pdf/hearing/00意見聴取会の概要(公述内容は別ファイル).pdf

    概要説明・公述及び質疑応答
  • (丸尾公述人・井口公述人・黒田公述人)776KB
    http://araic.assistmicro.co.jp/araic/commission/pdf/hearing/01概要説明・公述及び質疑応答(丸尾公述人・井口公述人・黒田公述人).pdf
      1.丸尾和明西日本旅客鉄道椛纒\取締役副社長兼執行役員鉄道本部長
      2.井口雅一(参考人) 東京大学名誉教授、日比谷線中目黒事故調査検討会座長
      3.黒田勲(参考人) 日本ヒューマンファクター研究所代表取締役所長
  • (石井公述人)6619KB
    http://araic.assistmicro.co.jp/araic/commission/pdf/hearing/02公述及び質疑応答(石井公述人).pdf
      4.石井信邦(参考人) (社)日本鉄道運転協会顧問
  • (山中公述人・杉原公述人・小椋公述人)4768KB
    http://araic.assistmicro.co.jp/araic/commission/pdf/hearing/03公述及び質疑応答(山中公述人・杉原公述人・小椋公述人).pdf
      5.山中秀夫 中井エンジニアリング鞄ア管部次長(遺族)
      6.杉原清道 西日本旅客鉄道労働組合中央本部書記長(西労組)
      7.小椋聡 蒲人社主任(遭難2両目生還)
  • (淺野公述人・篠原公述人・前川公述人)512KB
    http://araic.assistmicro.co.jp/araic/commission/pdf/hearing/04公述及び質疑応答(淺野公述人・篠原公述人・前川公述人).pdf
      8.淺野弥三一 樺n域環境計画研究所代表取締役(遺族)
      9.篠原一光 大阪大学大学院人間科学研究科助教授
      10.前川誠 JR西日本労働組合中央本部副委員長(西労)
  • (安部公述人・葭岡公述人・永瀬公述人)3881KB
    http://araic.assistmicro.co.jp/araic/commission/pdf/hearing/05公述及び質疑応答(安部公述人・葭岡公述人・永瀬公述人).pdf
      11.安部誠治 関西大学商学部教授(鉄道安全推進会議副会長)
      12.葭岡庄吾 国鉄労働組合西日本本部書記長(国労)
      13.永瀬和彦 金沢工業大学機械工学科教授(国鉄&技研OB JR西安全諮問委員会委員長)

 丸尾副社長JR西日本擁護の主張をするのは責任当事者だから分かるが、丸尾氏が強く主張した「懲罰的日勤教育有用論」を杉原西労組中央書記長が「日勤教育を原因として加えるのは心外」とフォローし、さらに西労からJR総連へのFAXのタイムスタンプが事故発生の25日9時台、JR総連発が19時台であることを示して「27日から取材攻勢に晒され一斉に報じられたのは西労の組織的キャンペーンの結果で科学的でない」と攻撃していて(速記録3 P24L6〜P25L14)、労働組合として会社に対し実に献身的協力を行っている。JR西労からその上部産別への連絡FAXが入手できるなんて敵内部への♪スパイ大作戦♪か?という疑問は取り敢えずは置くとしよう。

 だが報道は、説明もなく突然送りつけられたFAX資料だけで動く程甘くはない。尼崎電車区運転士日勤教育自殺事件関連の第1報は、西労を牛耳る革マル派が目の敵にしている共産党中央機関紙赤旗新聞26日(3面5段末尾:朝刊紙)であり無関係である。取材ラッシュが27日からというのなら尚更無関係。TVはこの赤旗報道の26日昼過ぎ以降から西労スポークスマン役の副委員長などのコメントを報じ始め、翌27日から?西労組にも取材が殺到した。その強烈な反日共西労執行部から共産党赤旗新聞に連絡とは考えがたい。逆に赤旗報道で、同紙とは接点のないJR西労FAX資料も有効化され、かっての写真週刊誌の自殺事件報道(下記カコミ)にも辿り着いて取材が殺到したのではないだろうか。西労と同系と言われるJR貨物労組が連絡したというなら国会議員ローラーオルグ作戦を展開し同党議員に陳情しているから反日共意識よりも組合員の利益優先で同党との接触はあり得るが、JR西労は烈しい純粋反日共ではないか。さらに国交省からは草むしりなどの懲罰的日勤教育中止勧告が前年2004年9月に出されていて()、JR西日本はそれを全く無視している。夕刊フジが背面監視による日勤教育送りについて全幅3段幅の巨大横見出しで「JR西 車内ゲシュタポ」(05/05/03付2日刊1,3面)と驚きをもって報じる方が普通の市民感覚だろう。JR西労の謀略説は不当な懲罰的日勤教育で会社からテコ入れされたJR西労組の尼崎事故アリバイ主張あるいは被害妄想だ。JR西労組が「会社支持」とは自称しないから、ここは当該会社労組で乗り切る他はない。居眠り説強調の国労にあるべき毒が足らない。ごく少数派の全動労の方が興味ある陳述をしたかもしれない。

 また設定ダイヤにゆとりがゼロであったことを事故調意見聴取会報告から非難されているが、その非難に対し、尼崎駅手前での東海道線遅延列車の発車を待っての機外停車主因論で反論を試みているのが国鉄&同技研OBの金沢工大永瀬和彦教授だ。「尼崎駅手前の平均遅延時間が、全線の平均遅延時間と同じだから、そこまでのゆとりゼロのダイヤに無理はない」というのは、実時間と平均時間の違いを敢えて混同させた詭弁である。たとえ最終的に機外停車による遅延に吸収された場合でも、それまでの運転にゆとりゼロ、あるいは誤設定などによる不足を解消させる無理な運行が求められることには変わりないのだ。


 なんと1年半で7人!自殺者続出!
JR西日本の「社内いじめ」を遺族が告発

Friday'01/10/19p22-23
FRIDAY 2001/10/19号p22〜23

[JR総連公式サイトへ] 18字×103行 
 但し「1年半で7人!自殺者続出!」という見出しは写真週刊誌特有の印象狙いだけの煽りであり、単純平均は全国平均並み。安定した大会社にしては多いとか、個々の自殺理由で論難される余地はある。
 全国平均で年間
2万人〜3万人/1億2000万=1/6000〜1/4000 に対して、
7人/1.5年/3万人=1/6400
 さらに加えれば、最終報告書に対する批判として自分の研究室のサイトで「意図的な調査と調査委員会設置法の主旨に悖る判断とを含むレポート」、「航空事故調査委員会は国家資格を持った委員が就任しているが鉄道事故調査委員はそうではなく、」「鉄道に深い造詣を持つ者が調査を担わないと今回と同じような問題が起きかねない」「その結果に基づいて戒告、勧告及び業務停止などの行政処分が行われる事態にでもなれば、鉄道事業者だけでなく、社会にも大きな影響を与えかねない・・・・準司法的な『運輸安全委員会』の新設を予定しているが、問題である」と、反論できる立場にないJR西日本に代わって事故調を罵って運輸安全委就任に反対しているのは従前指摘の通りである。

 これだけ立場が明確な人達が含まれる公述人を、総てが公正中立だという前提で非難しても無理があるようで、却って繋がりを明確にして貰って、それに虚偽が有れば、そこを突いた方が良いのではないかとさえ思う。公述人に「JR西日本推薦」とかあれば何を陳述したとしても不信感もそれなり抑えられるだろう。

事故調委員の基本的立場は

 事故調査委員たちの基本的立場についても、同様に速記録を辿ると明らかになる部分がある。まず渦中の佐藤泰生鉄道部会長は、丸尾副社長公述に対しての糾弾発言がある。調査した感想として「・・・・社会にこたえる鉄道員だという、その気持ちが会社の方に余り見られないように思う」というのである。[参照→速記録1P14L9〜L20]。かなり批判的立場で見ている。
 佐藤淳造委員長は、運転士自殺事件高裁判決を引用した丸尾副社長の懲罰的日勤教育正当論に対し直ちに、「日勤教育の名の下に行われたあれこれが問題になっているのだから、それが総て問題ないと判示されたかの主張は、事故原因究明のこの場にそぐわない。撤回せよ」(同速記録1P13L7〜P14L4)と取り消させ、西労組書記長公述で日勤教育がマスコミに大きく取り上げられたことについての西労謀略キャンペーン説(速記録3 P24L6〜P25L14)への感想として「他の組合の行動の告げ口はするな!」(速記録3P29L4〜L8)と一喝している。
 さらに西労前川中央副委員長公述に対しては「お話を伺っていて、正直なところ、安全問題に関する公述と、労使問題に関係した公述とが、間に線が引けないなと感じました」(速記録4P41L5〜L6)と述べて、日勤教育が組合攻撃の不当労働行為として運用されている実態を公述で理解したことを述べている。
 鉄道部会長佐藤泰生委員も佐藤淳造委員長も、会社側には厳しい姿勢を見せて、論旨のすり替えなどはその場で糺していることが分かる。これらの遣り取りにみる限り幸い事故調委員は全体的にはJR西日本の工作には屈しては無さそうである。せいぜい「言い方を和らげた」程度だろう(w。

現業擁護か、幹部擁護か?事故調の予見可能性判断

 唯一論議になりうるのがカーブでの過速度転覆脱線の予見可能性について、最終報告書は「・・・・・・同社がその危険性を、曲線速照機能の整備を急ぐことが必要な緊急性のあるものと認識することは必ずしも容易ではなかったものと考えられる(最終報告書P229(pdf240)L10〜L19節のL14)などとした文節だろう。設計現場がATS-P速度制限の規定も読まずに速度制限算出ソフトを利用し、入力設定部でJR西日本独自の+α部をゼロ設定して、70%以上も誤設定してしまった現実に照らせば、速度制限の原理原則を当たって危険性を知り優先を認識できなかったことなどで、不適切な思い込みも拡がっていた人達に対して刑事罰を科するには躊躇いがある。しかし、設計計算方式を作ったりする優れた解析力のあるエリ−ト層にはその程度の責任は取って欲しい。山崎社長等の工作内容はまさに根幹部分の予見可能性についてだから、状況は非常に良く分かっていて、それも「後出しジャンケンで処罰するな」と、事故発生まで危険性に思い至らなかったことを強調して無罪を主張している。現場の弁明ならまだ受け容れても良いが、技術のトップが言うことではないだろう。
 従前の鉄道事故では常に現場労働者を人身御供に幕引きを図ってきたのだが、事故調報告の以上の記述は現場労働者を庇ってのものか、それともトップ層を庇って書き加えられたものか?後者ならそこが工作の結果かもしれない重大問題だ。

 返す返すも不用意な国鉄一家型非公式接触に応じたのは残念だ。最低限、他委員や事務局など誰か「お邪魔虫」を同伴することと、その行動と情報を委員会全体で共有する体制を作って接触すべきであった。
 事実認定については一発勝負の裁判判決より丁寧で、個々の情報提供に並行して、中間報告、意見聴取会用事実認定案、理由・結論を加えた事故調査最終報告と、情報公開で世間の批判に晒しながら修正を図り、最終結論を得ている。これは内容の変遷が公開であり結論を歪めにくい大変妥当な方法だ。

他の公述人は

 また事故調が参考人として公述を求めた黒田勲日本ヒューマンファクター研究所長は「JR各社に於いて、安全のものの考え方に大変大きな格差が出てきている(速記録1P31L17)」、「安全に関する考え方はどんどん変わっている・・・・・・そういう面に於ける学習の仕方はJR西日本は大変悪いな」(同速記録1P33L1〜L7)とやはり手厳しい。

 丸尾副社長の陳述内容もに立ち入ると、背景改善に渉る事故防止の対応を尋ねられて「・・・・・・意識の徹底を含めて、PDCAをきっちりと回していく、実態をきっちりと把握しながら、それで改善をしていく」としている。
 PDCAというのは1950年代後半から進められ60〜70年代に最盛期を迎えた「総合品質管理:TQC/TQM」向上の具体的実施に際しての手順を、立案Plan、実施Do、点検Check、実行Actionと分けてたどる「デミングサークル」の各段階頭文字を指している。総合品質管理TQCの進歩に功績のあった民間団体、個人に「デミング賞」を授与しているが、実はこれも職場の運用次第で滅私奉公思想改造に使われたのは他の生産性運動と同様である。
 PDCAは、対応法が分からないものを結果から修正改良してゆく試行錯誤法であり、制御で言えば「帰還制御」に相当するものである。何処にも適用できて優れた方法ではあるが、原理的欠陥として「制御アルゴリズムの放棄」と指摘されていて、試行錯誤の間、整定時間が必要で、その間の急変には対応しきれない。これに対しては「予測制御」が対置されて、それは周囲条件により直に出力を定める方法で、試行錯誤の無い分、非常に応答が早いが、系の特性を熟知して予め動作設定することが必須である。この「予測制御」の考え方は、羽越線特急強風転覆事故'05/12/25対応でも論じられ、強風を検出してから抑止指令で減速停止するまでの間に高速で転覆脱線することが考えられ、それが帰還方式(あるいはPDCA方式)の致命的弱点なのだ。国鉄JRは土砂災害についてはこの予測制御を成功させており、場所毎の累積雨量管理などで事前抑止して、線路は復旧困難な程の大災害は起きているのに、人身事故はほとんど起こしていない。
 事故防止の新しい考え方として、危険を予測して回避することが求められている時に、'07/02/01の意見聴取会で丸尾副社長が従前のPDCAのデミングサークル試行錯誤を強調したのでは、トレンドから大きく遅れている!と非難を浴びることになる。そういう流れをJR西日本として全く掴んでいなかったことを明白にした丸尾公述だったから、同日3人後の陳述だった黒田勲ヒューマンファクター研究所長のサカナにされて当然だった。

( 「速記録」というのは話し言葉でかなり冗長だが、書かれた文書よりは楽に読みこなせるものだ。「朝日新聞の受け売り」を潔しとせず、自分の頭でひねり出した結論を持ちたい人は、特に一読をお勧めしたい。最初からの書面や、要旨記録とは違い、その場の雰囲気までかなり伝わってくる良質の資料である。)

2009/10/30 23:55

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