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線路は電鉄の電流帰線だが、そこでどの程度の電気抵抗・電圧降下があるのかは資料や記事が見あたらない。しかし、その構成は比較的単純なのでそこそこの精度で推定できるのではないかと思い立って直流饋電について以下のように試算したが、レールの電圧降下は意外に大きかった。帰線である線路の電圧降下は電蝕の原因電圧でもあり、烈しい電蝕被害は無理もないと思った。
See→[日記106-C項]=支柱全160本中50本余が腐食折損
[鉄道総研饋電法解説]
鉄比重・密度SFe | =7.874 [g/cm3] :(=比重) = 7874 [kg/m3] | |
鉄抵抗率ρFe | ≒10.00×10-8 [Ωm] :鋼鉄 | |
銅抵抗率ρCu | ≒ 1.55×10-8 [Ωm] :純銅 ………([×10-8 Ωm]=[μΩcm]) |
レール重量 Wr | =60 kg/m (長さ=25m) | ||||||||||
ボンド等価長 Lb | =0.5 m
架線直径 φt
| =16 mm
| 給電部総断面積比 K
| = ×3倍 (給電部実断面積/架線断面積)
| 給電距離 Lt
| = 2km (最大変電所間隔4kmとす)
| 負荷 P
| =6000 kW : (負荷電流 4000A)
| 供給電圧 Vt
| =1500 V :(1300〜1600V)
| |
SFe×Sr×L=Wr×L
∴Sr=Wr/SFe : (×2本)
Rr=ρFe×L/2Sr=ρFe×L×SFe/2Wr
Rt=ρCu×L/St=ρCu×L/{(π/4)φt2×K}
∴Rt/Rr=(ρCu×2Wr)/
[ρFe×SFe×{(π/4)φt2×K}]
以上により
Rr/L=10.00×10-8×7874×/(2×60)×(25.5/25)
=6.693×10-6 Ω/m
Rt/L= 1.55×10-8×4/{π×(16/1000)2×3}
=25.697×10-6 Ω/m
∴Rt/Rr≒25.697×10-6/6.693×10-6=3.839 倍
2km地点で6000kW:4000A負荷に対する電圧降下は、
Vd=(Rt/L+Rr/L)×L×I
=(25.697+6.693)×10-6Ω/m×2000m×4000A
≒259.1V
並列饋電方式で、両側の変電所が半々で負担すると、≒259.1/2V=129.5V(並列饋電)
架線の許容電圧が1300V〜1600Vとしたとき、この電圧降下を許容するには供給電圧を高めの1600Vなどとして調整することになる。
この電圧降下のうちレールでの電圧降下は、抵抗値比例として
Vr=259.1×6.693/(6.693+25.697)=53.54V(並列26.77V) : (意外に大きな値)
地中電流についてはイオン化電圧(接触電位差)1V前後が電流の出と入りで生ずるとして2V前後に対しレールの電圧降下53.5V(並列26.8V)という値は大変大きく、電流が大地に流れ出る個所で金属をイオン化してしまう。すなわち変電所から大きく離れた個所のレールと、変電所直近の構造物から大地に流れ出てレールに戻る個所の金属構造物が電流でイオン化して電蝕を受けるが、レールの電蝕は定期交換で対応できるが、構造物の鉄筋やガス管水道管については逆電流を流す(強制排流)とか均圧線を結ぶなどの電蝕阻止対応が必要となる。(以上、略図参照)
また、他の電車列車が1本3〜4ユニット10両〜15両とすれば目の子で加速時電力3000kW〜4000kW、これが120秒間隔で、表定速度40km/hで走ると、変電所間隔4kmを抜けるのに1/10時間=6分間、この距離に2分間隔で複線の片側に均せば3本の電車が走っている。力行時間は、加速度2.5km/h/sで30秒間として75km/hに達し、残る90秒間は惰行と考える。
そうした場合の平均電力としては、3本×4000kW×30/120=3000kW:2000A 程度。加速タイミングが重なるなどで2.5倍〜3倍とすれば複線の瞬間最大で5000A〜6000A、180秒間隔運転なら2000kW1333A、瞬間最大3333A〜4000Aということの様だ。(概要のシミュレーションとしては、給電部架線総断面積比 K=3倍で良いのか?もう少し大きいのでは?という検討点もあるが、概ねこんなもので良さそうだ)。
こういう厳しい路線にいきなり6000kW機関車=4000A(〜4800A)負荷(=EF200)を突っ込めば、タイミング次第で変電所を落とすのは無理からぬ処だったろう。
それは「並列給電方式」の採用と、ΔI遮断を両側方向の電流の和で行うよう改めて、場所によっては饋電区分所で上下線を短絡し並列化他線の電流変化量を1/3化してクリアした筈だが、JR東海からインバータ機関車について電流制限≒2600A(3900kW:EF200)〜2751A(4100kW:EF210)等を申し渡されてフルパワーは出せなくなってしまった。
JR東海の静岡区間は現在1ユニット電車が主で、大電力は必要ないとはいえ、かってはこだま、ふじ(151/181系)が3ユニット12両だったし、重連の電気機関車も走っているからインバータロコにだけ厳しい制限を課すというのは説得性が乏しい。「電圧が下がると更に負荷電流が増える特性を嫌っての措置」との俗説が拡がっているが、架線電圧を見ながらノッチを調整するものだし、インバーター車の方が低電圧には弱いので電力を取り込めないから、これも説得力に欠ける。
最低電圧遵守を条件に国鉄型重連の負荷電流までは許容して良いのではないだろうか?(静岡区間など重連運転では最低電圧維持不能の区間もあるらしいが……架線電圧維持を条件にして運転すれば差し支えないはずだ。現に宇野線では151系とEF58が電源を取り合ってもお互いに相手の加速を待って走っていたではないか)
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