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Geo日記
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[114]. 北陸トンネル列車火災の実際はどうだったか?

  「鉄道DATA FILE」113号P27,鉄道の歴史「北陸トンネル列車火災事故」記述に急行きたぐに火災が惨事化の背景になった寝台特急日本海北陸トンネル火災事故に触れないのは大変疑問だ.
 きたぐに火災惨事('72/11/06)後国鉄がトンネル火災実験をして,車体の難燃化と,運転規則を改めてトンネル火災では停止せずにトンネル外にでることにしたのは確かだが,実はその3年前('69/12/06)の寝台特急日本海北陸トンネル火災で乗務員が運転規則違反を承知でトンネル外まで走って消火して物損事故に留めて冷静沈着な行動と賞賛されたのだが、この事故を運転規則違反として処分したことでその後の火災発生列車をトンネル内に停車させて惨事化させた話を削ってしまうのはおかしいだろう.
 日本海北陸トンネル火災事故ですぐ規則を改めるか,確認実験をしていたら3年後の急行きたぐに火災惨事による30名の死者と714名の負傷は起こらなかったが,運転規則違反として処分したことで急行きたぐには危険なトンネル内停車を強いられて大惨事に至ったのだ.
 科学的検討より先にメンツ,規則の想定外の事態なのに危険が予想される措置を杓子定規に要求して処分した間違いの責任は伏せてはいけない.日本海乗務員の処分は急行きたぐに惨事後に撤回された様だが,それだけでは済まないだろう.

 鉄道の場合,運転者の目視では先が分からず異常があれば事故になるのを信号や通票:タブレットなどで安全だとして全速で走らなければならない,絶対信号が赤現示や無通票では絶対進行してはならないという「絶対の規則」で運営されるのだから,それは厳密に守る必要があり,強引に赤信号で出発すれば信楽高原鉄道正面衝突事故の再来になる.
 千葉動労が,無線指令一発で絶対信号である場内信号を全部無視して45km/h以下でホームに進入させる方式の導入に強く反対しているのは,こうした絶対性を崩す危険なものとして反対している.「故障区間に限って」という限定では3位式信号なら良さそうだが,4〜5位では先の信号の現示ステータスケーブルが錯綜しているだろうから故障に巻き込まれていてあまり意味はなく,連結時の誘導信号や無閉塞運転の制限15km/hの適用などの改善が必要だろう.
 だが,災害・火災対応は日常作業ではなく,一般的にどうした方が良いかという指標で,様々な具体的条件で最適な対応が異なるものだから,処分をもって強制する絶対的な縛りにしてはならないのだ.特急日本海乗務員たちの判断は大変適切で,被害を出火車両の焼失だけで抑えていて事故報道では賞賛された.これを規則絶対視で不当処分したことが間違いで,30人を死なせ多数を遭難させてしまった.事故の責任を問うなら現場ではなく,どう考えたって規則の妥当性をまともに検討することなく処分を強行した当局だろう.

 このきたぐに惨事に典型的に見られるような現場だけが生け贄の幕引きというのは刑事行政運営のバランス感覚,「正義」に著しく反する。警察・検察がこういう不公平なことをするから運良く救えれば良いが,こぼれたらそれを口実にお縄にされるような判断は最初から避けてしまうようになる.予見可能性が無いとなれば何が起ころうと責任問題は生じないのだから.予期せぬ突風,ダウンバーストなど中途半端な予見可能性がない方が気楽で良いに決まってる.数値化できない特性値では管理しない方針というのは訳の分からない刑事訴追からの自己防衛策なのだ.それを予測する善意の試行錯誤をすると予測が当たれば良いが,外れたら即刑事罰だなんて馬鹿馬鹿しい話はないだろう.

2006/04/19 23:55
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