衝突時のエネルギー消費

   (一般解:0≦反発係数e≦1)

  衝突時に運動量は保存されるが、運動エネルギーは塑性変形などに費消された分減少する。運動エネルギーが保存されるのは反撥係数e=1の場合だけであるが、その衝突損失E−E’を定量的に算出する。
運動量保存: ↓’衝突後 ↓衝突前
M1・V1’+M2・V2M1・V1+M2・V2  ………………………… (1)
(V1’−V2’)−e(V1−V2)………………………… (2)
衝突前エネルギーE  (1/2)M1・V12+(1/2)M2・V22…… (3)
衝突後エネルギーE’ (1/2)M1・V12+(1/2)M2・V22 …… (4)
衝突によるエネルギー消費E−E’…………………………… (5)
以上の連立方程式からV1’、V2’を求める。
(2)×M2
M2・V1’−M2・V2’=−e・M2・V1+e・M2・V2 ………………………………… (2)’
(1)+(2)’ 
(M1+M2)V1’= M1・V1+M2・V2−e・M2・V1+e・M2・V2
V1’= {(M1−e・M2)V1+(1+e)M2・V2 }/(M1+M2)
V1+{−V1(M1+M2)+(M1−e・M2)V1+(1+e)M2・V2 }/(M1+M2)
V1’=V1−(V1−V2){(1+e)M2/(M1+M2)} ………………………… (6)
(2)×M1
M1・V1’−M1・V2’=−e・M1・V1+e・M1・V2 ……………………………… (2)”
(1)−(2)” 
(M1+M2)V2’= M1・V1+M2・V2+e・M1・V1−e・M1・V2
V2’= {(1+e)M1・V1+(M2−e・M1)V2}/(M1+M2)
V2+{−V2(M1+M2)+(1+e)M1・V1+(M2−e・M1)V2}/(M1+M2)
V2+{+(1+e)M1・V1+(M2−e・M1)V2−V2(M1+M2)}/(M1+M2)
V2’= V2+(V1−V2){(1+e)M1/(M1+M2)}  ……………………… (7)
V1’V2’は、(e=0で)元々の速度に、衝突相対速度を質量反比例で按分して加えたものとなる。

次に(6)(7)を(4)に代入し衝突による費消エネルギー(5)を求む
(4)(5)式より、衝突後運動エネルギー
E’= (1/2)M1・V12+(1/2)M2・V22 …………………… (8)
E = (1/2)M1・V12 +(1/2)M2・V22   ………………… (9)
E−E’= (1/2)M1[V12−V12]+(1/2)M2[V22−V22…… (10)
V12V12−2V1(V1−V2)[(1+e)M2/(M1+M2)]
+(V1−V2)2[(1+e)M2/(M1+M2)]2

………… (11)
V22V22+2V2(V1−V2)[(1+e)M1/(M1+M2)]
+(V1−V2)2[(1+e)M1/(M1+M2)]2

………… (12)
−2・(10)式←← M1・(11)式、M2・(12)式を代入
2(E’−E)= −2V1(V1−V2)[(1+e)M1M2/(M1+M2)]
+(V1−V2)2・M1[(1+e)M2/(M1+M2)]2
+2V2(V1−V2)[(1+e)M1M2/(M1+M2)]
+(V1−V2)2・M2[(1+e)M1/(M1+M2)]2
−2(V1−V2)2[(1+e)M1M2/(M1+M2)]
+(V1−V2)2・[(1+e)^2/(M1+M2)]・M1・M2
(V1−V2)2・M1・M2・[(1+e)/(M1+M2)][−2+(1+e)]
−(V1−V2)2・(1−e2)[M1・M2/(M1+M2)]
E−E’= (1/2)(V1−V2)2・[M1・M2/(M1+M2)]・(1−e2) ……(13)
反撥係数e=1では衝突によるエネルギー消費E=E’ …………… (13)-2
食い込んで離れない様な場合: e=0 では、
   E−E’=(1/2)(V1−V2)2・[M1・M2/(M1+M2)]  …………… (13)-3
片方の質量が極めて大きい場合は、相対速度の2乗×小質量/2が失われるエネルギーとなる。
limM2→∞(E−E’)= (1/2)M1・(V1−V2)2   ……………………… (13)-4

# 高校物理の参考書を書店で調べたが、衝突時の運動エネルギー消費量の一般解は、まず記述がなかった。河合塾講師著の本で「運動エネルギーは保存されない」と強調していたのが目立つ程度で、唯一計算結果を挙げているのが教研出版 「新物理TB・U」 (下記)だけだった。結果式が判りやすくきれいに整理されていて証明前でもいかにも正しそう。初版から34年間も高校生の支持を得て続いている優れた参考書。教科書と違い参考書は面白くなければすぐ絶版の世界だから、忘却激しいオジさん頭の再生にも適する。上記はその式の確認計算である。式の整理には若干トリッキーな変形が必要だった。

  cf.チャート式シリーズ チャート「新物理TB・U」 力武常次・都築義弘著
   教研出版刊T102-0073千代田区九段北1-12-11 tel03-3265-0811
   初版69/02第94/071603/04\1,620.+税

報告書検討 事故調数値
からの試算
東中野
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