[471]

BBS
鉄道解析ごっこ
mailto:
旧
新
Diary INDEX
Geo日記
雑談
Geo雑談
サイト内検索
内検索
戻る
LIST
主目次

舎人ライナー地震脱線事故
無用な走行路深溝部を埋められなかったか!?

 舎人(とねり)ライナーは日暮里−間の無人運転の新交通機関だが、一昨年10月の首都圏最大震度5の地震で脱線、乗客が負傷する事故となった。



新幹線駅の標準構造
この事故を運輸安全委員会が調べて調査報告書を公表した東京新聞記事が2月16日夕刊(右上)と17日朝刊(右下)に説明図まで重複して出ていて、報道機関には事前配布・一斉報道解禁のはずの事故調査報告書としては珍しいことになっている。編集部が意識しての朝刊夕刊記事重複はその旨注記が載っているから、注記無しの重複は配達地域の版分けが朝刊と夕刊で入り組んでしまっている地域に住んでいるためかも知れない。

 夕刊と朝刊の両記事を比較してみると、「ブレーキ・タイミング次第で脱線を避けられた」という部分が削除されて、一般的で妥当なものになっている。タイミングに無関係に発生する事象に「タイミング次第」で効かない場合のある対応では不十分で、本来、タイミングに依らず有効な対策こそ求められる。舎人ライナーは新交通システムとして車両両脇が外構物に限られているのだから、大きく傾いたら戻れないような不要な溝は予め埋めておけなかったのかという問題になる。

 かっての営団地下鉄日比谷線中目黒駅脱線衝突惨事2000/03/08にあたって、名鉄や新幹線-在来線間に脱線検知柵が設置されて停止信号を出すことを引き合いに、「日比谷線も脱線検知柵を設けるべきだ」「駅に即時連絡が必要」と考えた記者さんたちが居たが、「脱線と対向列車通過が重なると全く無効だから、運良く停められる場合もあるが一般対策としては極めて不十分で、上下線が当たらない誘導壁や誘導ガードレール、脱線防止ガードレール、線間距離拡大といった抜本策が必要だ。 脱線検知停止や即時連絡手段はあったに超したことは無いが、事故を発生させない根本対策では無い」という説明をしたのだが、釈然としないようで、その後の記事のトーンも変わらなかった。 今回の報道は夕刊-朝刊の間にニュアンスが切り替わっている。文系的・観念的になり勝ちなマスコミ論調が、実務的・理工科的な妥当な方向に変わってきたのかも知れない。


#38番分岐か、#18番か、#28番か
台湾新幹線仕様論争  <2>

 台湾新幹線建設は、当初、日本型で技術検討されて居たものが、経営側判断でフランス中心の欧州連合に仮受注となって仕様&規格制定が行われたが、台湾中部大震災被害で震災対応ノーハウに長けた日本型が見直され、線路は先行した欧州型基準となったが、車両を中心に日本側受注に切り替えられた。 ここで欧州規格と日本規格、台湾側の要求規格・仕様とが激しく争うことになったが、印象深い争点としては
  1. 複線か、双単線か
  2. 運転室ドアを客室と分離すべきか
  3. 非常脱出口を設けるか否か
  4. 無条件非常停止か、通信・信号による非常停止か
  5. #38番分岐か、#18番分岐か
 などが思い起こされる。

(T)項:双単線方式採用については、台鉄側がコンサルを引き受けた斉藤雅男氏に強調したのが「先行列車追い抜きの自由度」で、台鉄在来線では現実に走行中の貨物列車の脇を逆線の特急旅客列車が追い抜く運用が存在したそうだ。 日本では圧倒的に上下線で分ける複線方式で、例外的な双単線として知られるのは太平洋戦争中に単線トンネル2本として複線化された関門トンネルと、開通当時の湖西線の2本が知られている程度だった。 上越線新清水トンネルは下り専用運用されているが、土合地下駅に退避スペースがある様にも見えるが線路は無く下り線専用の模様。 単線運用されていた旧清水トンネルも近年土合駅の待避線が撤去されて居り、上り専用の複線運用と思われる。 新幹線は専用線で速達列車も各駅停車も最高速度は差がないので駅間途中では抜けないことと、対向側の列車間合いがかなり大きくないと採用不可能で、加えて高速鉄道として人が線路に立ち入る保守作業時間帯と運行時間帯を分けることで安全確保しているから通常運行では双単線方式に利点は生じない。
 東海道新幹線東京駅−大井電車基地分岐間の沿線火災で長時間の運行停止となって大混乱したときに、品川発着に切り替えて大井電車基地を活かして運行継続という臨時措置は双単線なら実施しやすかったが、品川駅より西での支障事故発生だとお手上げ。 在来線での代替線の多い品川駅の特殊性から東京−品川間は双単線方式が緊急時のバックアップになるから改造するのは良いが、卓効ありとまでは言いかねる。
 しかしながら、欧州系:TGVも元々双単線方式で、片線を停めて逆線運転をして保守作業していて、台鉄は双単線方式を採用した。 TGVは1時間2本の疎らな列車密度と、線間距離が非常に大きい区間があることで実施可能なのだろうが、1時間に4〜6本以上走る台鉄では双単線逆進運転など実施できない。
 双単線方式を重視する真の理由は、現在中共が仕掛けた社会主義武力革命の戦争中で休戦協定のない成り行き任せの停戦状態だから、戦闘再開のリスクは大きく緊急の戦時輸送に備えているのではないだろうか。 香港での暴虐支配や苛烈なウイグルなどでの民族弾圧、思想弾圧に見られる様に、力尽く一辺倒の習近平路線を見るときに台湾側の懸念は無理がない。 香港返還に当たっての1国2制度の国際公約を踏みにじって1国=共産党支配の習近平の暴挙に、台湾の中共への平和的な従属統一「1国2制度」(=国:共産党独裁支配従属の2制度)は有り得なくなった。
 戦争中、関門トンネルが双単線で開通したのも、米軍から集中爆撃を受けている超重要軍時目標「関門トンネル」を簡単には潰させない配慮だろうし、東西冷戦下に軍事侵攻に対する兵站線として若狭湾と大阪湾を繋ぐ重要幹線湖西線は双単線方式として脆弱性を少しでも排したかったのではないだろうか? 青函トンネルや大清水トンネルは新幹線の複線トンネルだが、スイスでアルプスを貫くゴッタルド・ベース・トンネルは単線トンネル2本で仏伊を繋ぐ国際路線となっている。 フランスは陸続きのドイツなど外国から直接攻撃され軍事占領されたり、逆に古くからの植民地宗主国として軍事侵略を繰り返した歴史もあり、フランス国鉄として特に慎重な対応になるのは理解出来る。

(U)項、超満員の乗客がデッキで酸欠状態になった経験のある東海道新幹線では、乗務員乗車口は必須だったが、台湾経営側には理解されず、乗務員も乗客扉からの乗車となっている。台湾新幹線は全席座席指定だから超満員の心配は無く客席ドアから乗車で差し支えないが、日本製車両で乗務員乗車口が客室内にある車両は小田急の展望室付きロマンスカー(全車指定席が建前)くらいのものだ。

(V)項、非常脱出口は東海道新幹線の試作編成などにはあって、運行の安定化とともに増備編成からは無くなっている。導入当初の不安から非常脱出口設置を仕様とすることに問題はない。

(W)項、停止信号による非常停止か、電源断による無条件非常停止かは、条件分けして併用で、低速になってからブレーキ緩解許容が穏当なところだろう。 強烈な地震波検出で一刻も早く減速して被害を抑えたい場面では無条件非常停止だし、安全な停止位置を運転士が選べる状況ならブレーキ緩解を許容する非常停止機能を設ければ良い。  走行直の信号系は遮断されると必ず停止となる方式だが、それに加えての「地震停止命令」などは、通信線・信号線が災害や事故で切断されてからでは非常制動命令が伝わらなくなるから、まずは停めるため停電させるという非常制動モードは日台で起こりうる大地震対応として大変妥当性がある。 津波浸水懸念箇所には停車したくなければ速度低下後にブレーキ緩解可能というのも妥当な仕様だ。蓄電池を動力源に一旦停止後に移動できる機能(N700S)は大変丁寧な仕様だ。 欧州勢は大震災被災の経験がないから無条件非常停止方式を排して信号停止方式採用に拘ったのだろう。
 欧州側が大変驚いた動作仕様は、運転士が特別高圧架線をスイッチで地絡させて変電所の高速遮断器を飛ばし、無電圧にして周囲の列車も停止させる、豪快な非常制動動作だった(電気屋の端くれとして私も驚いたがw)。 地絡接点がスパークで熔着することがあり、短絡動作後はハンマーで叩いて熔着接点を引きはがすこともあるのだとか。 日本での実運用が勝って、台湾新幹線にも架線地絡非常制動機能は残されているようだ。

(X)項の駅ホーム停車分岐を日本式の「#18番分岐」にするか、欧州の勧める「#38番分岐」にするかの論戦で、不必要で故障しやすく高価な#38番分岐が途中駅に採用されて、営業運転開始後、頻繁に運行の支障となって悩まされた。
 日本で#38番分岐(160km/h制限)が採用されている箇所は2箇所、上越新幹線から北陸新幹線が分岐する高崎駅先下り線と、京成スカイライナーが複線から単線に変わる成田湯川駅東側の分岐だけである。
 論争の実質は、「最小運転間隔3分」という仕様で運転するには、加速力・減速力の関係で実質機関車方式(=集中動力方式)の欧州TGVでは#38番分岐(160km/h制限)で副本線に逃して減速する必要があり駅区間が長くなるが、電車方式(=分散動力方式)の新幹線では#18番分岐(70〜80km/h制限)で足り、副本線で複々線幅を要する駅区間を小さく出来るということだった。
 すなわち、将来TGVが日本方式を巻き返して車両受注を得るには#38番分岐採用が当時の絶対条件だったので、駅設備(副本線部)の無駄の大きい仕様:#38番分岐採用に強く拘りゴリ押し採用させたもの。 欧州勢が良く仕掛ける標準規格戦争・諸規約改定の実質の中味である。 売り込む側自身の都合や競合相手排除の罠であって、ユーザーの為ではない。

 新幹線駅が#18番分岐を採用する根拠と思われるのは、東海道新幹線開業当時の0系車両16両編成400m長の加速度1.0km/h/sでフル加速して分岐通過速度制限を受けないで済む分岐角が#18分岐だったための設計協調と考えられる。See→新幹線駅構造図↑
 この起動加速度は次第に大きく設定されて、1.11km/h(0系改)〜現行2.4km/h/s(N700A)になって、#18番分岐の速度制限(70km/h)に達するので、発車時は70km/h現示信号で出発して、合流分岐の先に列車抜けだし検出コイルを置いて、最後尾が合流分岐を脱出後220〜285km/hなど本線の許容速度に現示アップする制御を行っている。
 2.4km/h/sフル加速出発を前提に駅を設計し直せば、#25番以上#28番分岐(120km/h制限)なら分岐速度制限には掛からず、フル加速の高速運行化できるはずである。2.4km/h/sは通勤電車並み(2.2km/h/s〜2.8km/h/s)の加速力で、それ以上の高加速は乗り心地悪化で通勤輸送でも採用しないから、更なる設計変更は求められない。
 なお、斉藤雅男氏が台鉄の相談に乗った内容を述べた鉄道ジャーナル誌連載記事では「#38番分岐か#18番分岐かの選択」と読み取れたが、台湾新幹線700T型の加速性能では出発時に一旦は70km/h制限に掛かって、加速が中断される。 だから、たとえ#18番分岐で3分間隔運転が可能だったとしても、#38番分岐を選択できる経済条件なら#25〜#28番分岐にして分岐速度制限に掛からなくするのが最適解だった。
 カネの成る木!儲け頭の東海道新幹線なら#28番分岐への換装、駅加速部・減速部の延長を試みて良いのではないか?東海道では車体傾斜方式を採用しても急曲線2400Rが285km/h制限で、これ以上の速達化を妨げている訳で、拡張可能な地形の駅で、駅進入速度、出発速度を現行70km/hから、#28番分岐120km/h制限現示等に上げるのは有効だろう。 在来線では既に高番数分岐への交換とか高速Y字分岐の採用で駅毎に異なった制限速度で運行している。新幹線でも多種の速度制限が採用可能だろう。See→日記#392-2

※分岐番数#Nとは、分岐のクロッシング部の角度≡分岐角θに対して、1/{2 tan(θ/2)} で定義される。
幾何図形的に説明すれば、分岐角θを頂角とする2等辺3角形の高さを底辺幅で割った値が分岐番数#Nである。
微少角の概数としては#N= 1/tan θ:(=cot θ )となる。
   #N= 1/{2 tan(θ/2)} ≒ 1/tan θ ≡cot θ が定義式。
    1/(2#N)=tan(θ/2)→  (θ/2)=tan−1{1/(2・#N)}
    θ=2 tan−1{1/(2・#N)}
    θ≒tan−1(1/♯N) ・・・・・簡易式
【計算例】#20番分岐(在来線高速分岐)の分岐角θ(#20)は
     θ(#20)=2 tan−1{1/(2・#20)}=2.864192[゚]
     略解:θ(#20)=tan−1(1/#20)=2.862405[゚]

2023/02/26 23:55

[Page Top↑] 旧
新
戻る
(A4版縦置き)