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誤差に触れず
津波予報不信を増す「改善策」!

 津波警報を聞いても避難しない人が多数で、問題になっていたところ、3.11大震災ではさらに、初回津波警報が波高6mだったため、防潮堤で防げると理解され、その後10m超の大津波に訂正されたことが伝わらずに犠牲を増やしたという話もあり、予報内容を正確に伝え、適切な避難行動を起こしてもらえる工夫として検討会を開いて論点整理し、「切迫性のある表現を工夫」し、広く国民に意見聴取することが報じられました(右囲み)。
 役所での論議がどうも未整理で、地震を感じない津波警報で避難した人が数%という極端な狼少年傾向をさらに強化する危惧を感じるので発言します。

津波警報 表現に切迫性
「大震災クラス」「壊滅的」   日経11/12/17土13版38面

気象庁、津波警報の改善案公表
 一般から意見募集        <C1>

 日本大震災を教訓に、気象庁は16日、津波警報の表現法の改善案をまとめ、一般からの意見募集を始めた。来年2月までに最終的な改善策を決め、来年中に運用を始める予定。

 マグニチュード(M)8超と判断される巨大地震では、第1報は過小評価を避けるため津波の高さ予測の数値は発表せず「巨大」などと表現。「東日本大震災クラス」など過去の顕著な事例を盛り込み「壊滅的被害の恐れ」「直ちに高台など安全な場所に避難」といった表現で切迫性を強調、迅速な避難を促す。

 第2報以降は津波の高さ予測を発表するが、現行の「50センチ」から「10メートル以上」の8段階だった高さの区分を「1メートル(予想される津波20センチ以上1メートル以下)」「3メートル(同1メートル超3メートル以下)」「5メートル(同3メートル超5メートル以下)」「10メートル(同5メートル超10メートル以下)」「10メートル以上」の5段階に変更。

 震災の被害調査に基づき、高さ区分3メートルで人が巻き込まれ、5メートルで木造家屋が全壊、10メートル以上だと津波が堤防を破壊し壊滅的な被害と想定。高さ区分1メートルの予想で津波注意報、3メートルで津波警報、5メートルから10メートル以上を大津波警報とする。

 M8超の地震で津波の高さ予測を発表しない場合、津波の規模の表現は大津波警報で「巨大」、津波警報は「大きい」、注意報では「大きい恐れ」とする。

 津波の第1波が観測された際は、最大波と誤解されないよう到達時刻と押し波か引き波かだけを発表。第2波以降も「津波観測中」とし、具体的な観測値は公表しても避難の妨げにならないと判断できた後に発表する。

 改善案への意見は、メールか郵送、ファクスで受け付ける。来年1月18日必着。
問い合わせは気象庁(電)03・3212・8341。

ブルートレイン:悲しき、青い流れ星
「日本海」と「きたぐに」廃止、 来春ダイヤ改正−−JR西

 JR西日本は16日、来春のダイヤ改正を発表した。「ブルートレイン」として親しまれてきた寝台特急「日本海」(大阪−青森)と、夜行急行「きたぐに」(大阪−新潟)は運転を取りやめる。これで大阪始発の夜行列車は、札幌行きの「トワイライトエクスプレス」だけとなる。

 日本海は1950年に急行として運転を開始。68年に寝台特急化され、きたぐにも大阪−青森間で運転を始めた。近年は乗客が減少。いずれも来春以降は臨時列車として運行される。

 ・・・・・・・・・・・(省略)・・・・・・・・【亀田早苗】

波高予報が
期待精度を外れ続けて狼少年化   <1>

 これまでの津波警報を振り返ると、第1波の到達時刻はかなり正確ですが、波高となると予報の1/3〜3倍と精度が出ていません。
 到達時間予測では正確で、直下型地震に近い奥尻島津波では5分以内に襲撃されて予報時刻どころではなかったことが例外ですが、波高では近年は常に低めに外していて、1960年のチリ地震津波が例外で、伝播途中のハワイ太平洋津波警報センターでの第1波被害が小さかった(実際は10m高に見舞われた地域もあった)ことなどから日本では予想した波高を大きく越える6m余の津波となり多数の犠牲が生じました。
 2010年チリ地震津波でも、3m高の予報に対して実際は1.5m高だったことから、不正確な予報をしたと気象庁が謝罪会見(記#243)していますが、予測能力の誤差範囲のものであることに触れていません。

 ということは、気象庁方針として報道されるような、津波の波高についていくら切迫性のある表現にしたところで、その推定誤差が大きいことから却って不信感を増すので逆効果になります。対応方針としては的外れで間違い。誤差幅を意識して最高値としては1/10程度しか的中しないけれど、浸水1mでも落命しうることを訴えて空振り承知の避難行動をしてもらえるような繰り返しの教育宣伝がまず必要だということです。

予想高さ6m、最大15m、最小2.4mの津波
避難命令発令!・・・・で行けぬか?
危険水準と確率で、安全側対応呼び掛け    <2>

 論議としては、現状の技術水準での推定誤差範囲があるのだから、推定中心値、上限値、下限値が存在して90%が下限から上限までの間に入るという場合、
安全側だけを取って上限値だけをリアルに伝えると、多くの場合上限に達しないから現状のように狼少年になり信用されなくなってしまう。下限値はあまり意味はないが警報に添えることで警報誤差範囲を示して信用性を落とさない様になる。すなわち、警報で推定中心値と上限値、下限値を示して万一上限値でも安全な避難行動を取るよう求めれば、たとえ実際の津波が低い波高であっても今よりは納得を以て迎えられるのではないでしょうか。大きな推定誤差が避けられないものを、確定値予報をやれば、自ら警報を信じない、従わない人達を作り出してしまいます。

明確な意思の伝達「避難命令」    <3>

 津波警報では緊急を要する避難行動の勧告趣旨が非常に分かりにくかった。あれは「避難命令!」と表現した方が即座に分かりやすい表現です。権限の問題は、処罰による強制がなければ全く問題ないのに、なぜあんな言い訳的な表現にしたのでしょう?へそ曲がりで従わないヤツはどうせ説得して避難させるので、皆が一斉に避難する雰囲気を作った方が住民安全確保の目的を達します。
 法律に基づく強権発動の場合は、根拠法と罰条など、別の説明を加えれば良いでしょう。強制権限の無いことを緊急時にいちいち断る必要はありません。

緊急地震速報利用法の周知徹底
TV即時起動機能は?    <4>

 今回3.11大震災の津波警報は、TVのスイッチを入れてないなどで、かなり聞き漏らした人も多かった様で、予報があとから大きく訂正されたことも受信していない人が多数いました。また、緊急地震速報は、誤報が多かったことは今後の重要な改善課題として、デジタルテレビではそのデコードのため受像器側で2秒余の遅れが出て、無効半径を16kmほど拡げており、遅延のない警報受信法&即時電源投入法の開発普及が望まれます。
 また関東圏では揺れ始めから最大震度までの時間が3分余ありましたから、緊急地震警報か地震の揺れ始めからの余裕時間にきちんと衝撃回避姿勢を取るなり、物陰に入ることを徹底していれば、天井落下の直撃を受けて亡くなってしまった九段会館の事故はずっと軽減できた可能性があります。あれはマサカの思いもありますが、被害回避のチャンスはあり残念でした。


とうとう廃止!特急日本海、急行きたぐに
北陸トンネル火災事故列車    <5>

 JR西日本が来春から寝台特急日本海と、夜行急行きたぐになどの廃止を発表しましたが、両列車は共に北陸トンネル内で車両火災事故を起こした列車です。
 特急日本海は乗務員の機転でトンネル外に脱出して地元消防の協力を得て出火車両1両全焼の被害に止められた事故ながら、殊勲の乗務員は「トンネル脱出が運転規則違反」と因縁を付けられ不当処分を受けた事故。以降、列車火災は無条件で停止となりました。
 一方の急行きたぐには、運転規則通りトンネル内に停車、火元の車両の切り離し作業をしているうちに全車に延焼し、死者30、負傷714の大惨事となったもの。急行きたぐにというのは先の火災事故を起こした特急日本海を整理統合して、空いたダイヤの一つで新設された夜行急行列車です。

 特急日本海は1969年12月6日06:20頃、青森から大阪に向かって北陸トンネル通過中に乗務員が火災発生に気付き、火災時にトンネル内で停車しては危険だからと外へ脱出してから地元消防と協力して消火に当たり被害を出火車両の焼損に留めたことで、乗務員は機転を利かせた好判断をしたとして賞賛されたが、国鉄当局は「火災で即時停止しなかったのは運転規則違反」として不当処分を強行し、3年後の急行きたぐに火災惨事の引き金を引きました。

 急行きたぐに北陸トンネル火災は1972年11月6日01:09頃、大阪発青森行きで敦賀駅を出発直後、北陸トンネルを進行中、食堂車オシ17から火災発生.乗客の通報で車掌が非常弁を引いてトンネル内に停止。消火できず、切り離しを図るが機関士には慣れない切り離し作業で火の回りの方が早く、架線地絡で停電して動けなくなり、30人死亡714人負傷の大惨事となりました。
 車両可燃物燃焼の必要酸素重量を考慮すればトンネル内での停車は自殺行為なのは明白ですが、国鉄当局は3年前の特急日本海乗務員への処分を以てトンネル内停車規則を強要していて、トンネル内に停車するしかありませんでした。
 国鉄は、外部学識経験者を含む「鉄道火災対策技術委員会」を設置し、大船工場での車両燃焼実験72/12、狩勝峠実験線での走行中車両燃焼実験73/08、宮古線猿トンネル内での車両燃焼実験74/12を経て、トンネル内火災は停車せず脱出した方が危険が少ないという結論を出して、ようやく運転規則を改め、車両の難燃基準を改訂しました.3年前の特急日本海火災での殊勲の乗務員処分はこのとき撤回されました。
 この火災事故で機関士は殉職、残りの乗務員が刑事訴追の対象とされ長期の裁判に曝されましたが無罪判決で確定、惨事誘発の真犯人は、実車による大規模な火災実験で様々な知見を得るという触れ込みで、トンネル内停車の危険性についての予見可能性が無かったとするアリバイ実験を続けて責任を逃れることになりました。
   cf.→●北陸トンネル列車火災の実際はどうだったか? (日記#114:06/04/19)
   cf.→●ノーハウの敷衍で防げた可能性のある事故72/11/06'04/06/27

2011/12/19 19:00

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