[286]

BBS
BBS
mail to: adrs
旧
新
Diary INDEX
Geo日記
戻る
LIST
主目次

ラダー(方向舵)一杯は急降下コマンド! ANA機背面飛行
自己平衡限界が問題になるのでは?

全日空便:「ほぼ背面飛行」
  今月6日の急降下…運輸安全委

 飛行記録などを基にCGによる動画で再現した140便の状況。背面に近い状態=国交省運輸安全委員会提供 那覇発羽田行き全日空140便(ボーイング737−700型、乗員乗客117人)が今月6日、浜松市の南約43キロの約1万2500メートルを飛行中に約1900メートル急降下したトラブルで、機体は当時、ほぼ上下逆の背面状態になったまま落下していたことが28日、分かった。国土交通省運輸安全委員会の後藤昇弘委員長が定例会見で明らかにした。

 安全委がフライトレコーダー(飛行記録装置)などを解析したところ、機体は最大で左に約131.7度傾きながら、下向きに最大35度の角度で降下していったことが判明。当時は基準のマッハ0.82を超える0.828の速度が出ており、加速度も機体設計上の制限値(地上の重力の2.5倍)を超える2.68倍。副操縦士が機体の姿勢を戻した時、機首は急降下前とはほぼ逆向きだった。

 客室乗務員2人が軽傷、乗客にけが人はなかった。後藤委員長は「ほとんどの乗客は着席し、シートベルトをしていた。急降下中はジェットコースターのように席に押さえつけられたような状態だったため、状況に気づかなかった人も多いのでは」としている。

 安全委によると、機長(64)がトイレから操縦室に戻る際、操縦席に座っていた副操縦士(38)がドアの解錠つまみ(ドアスイッチ)を動かすつもりが誤って方向舵(だ)調整スイッチ(ラダートリムコントロールスイッチ)を作動させたため、機体が傾いたとされる。

 全日空の長瀬真副社長と全日空グループのエアーニッポンの内薗幸一社長らは28日、国交省で会見し「多大な迷惑をかけて深くおわびする」と頭を下げた。飛行データ記録装置(QAR)などを解析し、7日時点で機体の大きな傾きを把握していたというが、内薗社長はこれまで発表しなかった理由について「(QARは)フライトレコーダーとは異なり正式なデータと認識していない」と釈明した。

 また、全日空はこのトラブルにより、体調不良を訴えた人が6人いたことを明らかにした。【川上晃弘】

毎日新聞 2011年9月28日 21時19分(最終更新 9月28日 23時28分)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110929k0000m040089000c.html

用語概説

ラダー
方向舵:垂直尾翼の末端操向可動部
エレベータ
昇降舵:水平尾翼の末端昇降可動部
エルロン
補助翼:機体を左右ローリング方向に回転させる主翼後部の小翼。左右で相互に上下逆に動く。旋回時に機体を傾けて遠心力とバランスさせる。同時にエレベータを引いて上昇させることで水平旋回となる。
トリム
操縦桿がニュートラルで直進できる様に、水平/昇降の偏倚を打ち消す機構で、ラダートリムエレベータトリムエルロントリムがある。エルロントリムは単発機ではプロペラトルクの反作用を吸収してニュートラル特性にする。
 高速航行のジェット機では安定板そのものの取り付け角度を変えて調整、低速のプロペラ機では方向舵・昇降舵のさらに末尾に設けた小翼(トリムタブ)の角度を調整して方向舵/昇降舵を押して偏倚打ち消し力を得て直進性を得るもの。
 小翼方式トリム(トリムタブ方式)の場合高速でフラッター振動を起こして空中分解する事故があって巡航速度が高速であるジェット機には使われず、安定板全体の方向を動力で動かす構造にしてフラッターを防いでいる。零戦では急降下中のフラッターによる空中分解事故を起こしたため配備後に最高許容速度を大幅に制限した。
尾翼
安定板:水平尾翼/垂直尾翼(水平安定板/垂直安定板)+昇降舵/方向舵。飛行機の進行方向を安定させるため尾部に設置する小翼で、尾部に設置のためその空気抵抗は機体を直進方向に向ける働きをして、先翼式に比べ自動平衡性に優れるため現代の飛行機の標準構造になっている。ライト兄弟機や幻の局地戦闘機「震電」などには先尾翼があり、完全デルタ翼のコンコルドやスペースシャトルの様な例外も存在している。
フライトスポイラー
「ブレーキ」とされているが、主翼面に立てることで有効翼面積を減らして沈下率(垂直降下速度)を平衡降下角より大きくしても飛行速度を上げないで滑走路に接近できる装置。これが無いと増速してしまい着陸不能になる。沈下率を大きくできれば飛行場近くに山など障害物を許容しやすくなる。
グランドスポイラー
着陸後の減速のため、主翼面に立てて空気抵抗を増し、浮力を無くすことで主車輪に機体重量を掛けてその摩擦ブレーキを十分に効かせる装置。
フラップ
離着陸時、主翼後縁部に迫り出して翼面積を広げることで離着陸速度を下げて滑走距離を短縮する補助翼。制動距離は概ね速度の2乗に比例。低速離着陸は滑走距離を大幅に短縮する
スラット
隙間翼:主翼前縁に配置して、前に迫り出すと隙間から気流を主翼面に吹き出して失速を防ぐことで(失速仰角を大きくして=)失速速度を下げて離着陸距離を少なくする
主翼
飛翔時に機体重量を支える翼。
高翼/低翼
飛行機の胴体を中心にみて主翼取付位置が上にあるものを高翼、下にあるものを低翼という。高翼機は左右に傾いても胴体の自重で釣合位置に復元するモーメントが働く
上反角/(下反角)
主翼を上向きに取り付ける角度。左右に傾くと左右の翼の有効面積が変わり釣合方向への自己復元力を生ずる。F104戦闘機の主翼には15度の下反角が付いていて傾きを増やす不安定な構造に見えるが、機体の重心が翼の揚力中心より下にあり、その復元力と丁度相殺してニュートラル特性にして戦闘機に求められる運動性を良くしている。
T型尾翼
垂直尾翼の上端に水平尾翼を設置。尾部にエンジンやタラップを設置しやすくするが、機体や主翼乱流に巻き込まれてディープストールと呼ぶ回復不能の悪性失速に陥りやすい欠点がある。
揚力尾翼
水平尾翼:水平安定板にも揚力を持たせて荷重を負担させる方式。燃費改善などの目的で採用
 ANA機が乗客を乗せて「背面飛行」をしたことで特に大きな問題になっていますが、機体座標に対する合成加速度の方向が機体床に対して傾いておらず、負の加速度を生じていなくて、操縦者の意思で元に戻せる状態であればそれは絶叫マシンと同じで、それだけなら危険度は見かけの派手さよりは少なかったのでしょう。現に重い負傷者は出ていません。むろん低空で誤操作した場合は建て直し前に大地に激突する非常に危機的な状況だったのは確かです。
 誤操作は唯1点、間違えてラダートリム(方向舵偏倚調整)を左いっぱいに回してしまったことですが、そのミスにいつ気付いたのかで、場合によっては回復不能の錐揉み飛行状態になって墜落する条件があったことが大問題。


YS-11
MD-11:尾翼面積DC-10の30%減

F-104 戦闘機。下反角に特徴
(写真は総てWikipedia当該記事より)
 次いで、異常姿勢の原因である誤操作に気付いて正規に戻してから、正常飛行に回復できるのかどうか!どこまでに回復操作すれば正常復帰可能なのか、が問題で、機体が自己平衡性を持っていて操縦桿を真っ直ぐに保てば最終的には正常飛行に収束するのなら異常操縦に慣れないパイロットでも助かりますが、訓練などで得た特別の技術を行使しないと正常飛行に戻せないで深刻化する飛行特性ですと墜落のリスクはずっと大きくなります。
 近年の機体は燃費向上のため安定板(尾翼)の面積を昔の機種より小さくしているものがあり、自動回復機能が弱く、脱出不能の異常飛行になりやすいという懸念があります。根本に特徴ある大きな垂直尾翼が目立つ木村秀政型YS-11機とMD-11を見比べればその違いは一目瞭然でしょう。MD-11機は全損事故率が極端に大きいことから総て貨物機に改造されて既に運行をやめています。トラブル機ボーイング737-700はどんな飛行特性を持っているのでしょうか?

 「正常な飛行には復帰不能な状態」といいますと、錐揉み飛行状態のまま放置しますと制御不能の水平錐揉みとなって墜落するとか言われますし、ディープストール(Deep stall)と呼ばれる失速状態があり、T型尾翼を採用したBAC1-11型機開発時にこれを起こして墜落事故になっています。失速した主翼の乱流が尾翼を包み込み全く制御不能となって墜落したのです。

 同様にT型尾翼を採用した機種はボーイング727、DC9、トライデントなどがあり、1966年(s.41)2月に発生したANA羽田沖墜落事故ではそのDeep Stallの可能性も指摘されましたが、事故原因としては操縦ミス説の推定と、某研究者の部品不良発生説などはあるものの確定できていません。
BAC One-Eleven History
 Early trials gave problems, with the prototype crashing a few weeks into testing.
 早い試行は、試験飛行数週間で試作機の墜落という問題を与えた。
 An unrecoverable deep stall was found to be the cause, the T tail being caught up in the air disturbance from the main wing.
 T型尾翼が主翼からの乱流に捕らえられた、復旧不能な深い失速(deep stall)が原因と分かった。

【なんじゃこれ↓自動翻訳】
プロトタイプがテストに2、3週を粉砕して、早めの裁判は、問題を与えました。取り戻せない深い露店が原因であるとわかりました。そして、T尾が主翼から航空妨害に巻き込まれました。

   (自動翻訳がこんなにもイミフですと、私の極々苦手な「良・可」語学でも使えるかもしれないと、ン10年振りに挑戦)

 そういう安定性・復元性についての疑問を抱くきっかけは、実は大昔のラジコン機の操縦方法です。あれは操縦ボタン1個でラダーかエルロン(方向舵や(左右回転の)補助翼)を右−左−直進と切り替えて、急降下させて飛行速度を上げ、宙返りを演じるなど操縦をしていまして、ラダートリム左(右)いっぱいという操作はまさに急降下させるための操作です。急降下で速度が上がったらラジコン操作を直進に戻しますと、その過速度で宙返りを演じます。
 ラジコン機の機体としては安定性・自己平衡性を高くするために、高翼で上反角を大きくし水平・垂直の安定板面積を大きめに取って、操作がニュートラルなら正常飛行になる様にしていました。また自己回復性について極端な例を挙げれば、胴体が角材1本のライトプレーン模型飛行機なら飛行中に特別高圧線に衝突して墜落を始めても大抵は地面衝突までには姿勢が回復しますが、丸胴・角胴機体ですと回復しきれず墜落になることは良くあります。機体毎に安定性・自己回復性はかなり大きく違うのだろうか?ということです。飛行機については実物と模型が密接な相関があり戦前は国策として模型飛行機雑誌が刊行されて航空機の設計計算を一般国民に広めていました。
 今のラジコン機ですと多チャンネル比例操作で実機同様の制御をして、ヘリコプターではさらにジャイロまで積んで自己制御を加え安定性を高めていますが、初期のラジコン機では、超小型真空管(サブ・ミニチュア管)式の超再生受信機を使い、ゴム動力でソレノイドで制御する「エスケープ」と呼ぶ装置で翼を動かし「右−左−直進−−エンジンコントロール」とやって旋回、急降下、宙返りなどの操縦をしていました。「サーボ」といってモータ駆動の操向装置もありましたが動作はエスケープと同じボタン一つで左右直進制御です。サーボは確か加藤無線の製品でマブチ・モータではなくミツミ電機製のマイクロモータが載っていました。すぐ墜落したり、電波が届かなくなって逃げられたりと、散々の苦労を重ねて楽しんだものだそうです。私には直接の体験はありません。真空管ラジオの話題(日記#134)同様またも年代の話題になりそうでタメネン(w

 制御をニュートラルに戻せば正常飛行に収束していくのか、訓練された特別の操縦が必要な領域にすぐに達し、さらに回復不能領域に陥るのか、この辺の規定はどうなんでしょうか?燃費改善に安定板の面積を非常に小さくする設計が許されているのをみると、現在、自己平衡性の弱い機体が飛んでいるのではないかという危惧がどうしても生じます。そういう不安定な機体では、パイロットエラーの許容度が小さくて、エラーに気付いても回復できないで墜落するケースが出やすいでしょう。そうした安定性を示す管理数値は何を選べば適切でしょうか?現在運行している全機種について、その数値で点検してみたいところです。

 それにしても、ハイジャック対策で設けたドアロックスイッチと間違えて操作して重大事故になり掛かったとは、操縦系統と、その他系統を分ける必要があるのでしょう。勘違いしやすい配置で致命的事故に至る重要操作ノブがあるというのはそれ自体で欠陥設計です。安全問題は一筋縄では行かないことが間々ありますが、設計・運用には十分な配慮をして貰いたいものです。

2011/10/07 05:00

[Page Top↑] 旧
新
雑談
Geo雑談
戻る