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増殖炉もんじゅ運転再開! 「高速増殖炉」は語感詐欺!
「高速中性子炉」、「増殖炉」ではなぜダメなのか?

 ナトリウム漏れ爆発火災事故で無期限に運転休止していた増殖炉もんじゅが試運転を再開し臨界に達した様ですが、高温の溶融ナトリウムを熱媒質に使うため烈しい腐食性と、漏洩時の大量の水素発生による爆発火災発生の危惧から日本以外の国では開発を中断していたしろもの。ナトリウム漏洩爆発火災事故以来14年運転停止して老朽化しての試験運転再開で案の定のトラブル続出で先行きが危ぶまれているものの、実用炉として開発の方向は変わらない様で、これによりフランスが再度増殖炉開発に参入することになったと報じられています。
増殖炉
出典:「原子力・エネルギー」図面集2009 7-25
高速増殖炉は、発電しながら消費した以上の燃料を生み出すことのできる原子炉です。「もんじゅ」の場合は消費した燃料の約1.2倍の燃料(プルトニウム)を新たに作ることができます。

 左下に「高速中性子炉なので減速材はない」とある:電気事業連合会サイト
 高速増殖炉の仕組み (さよなら原発神戸ネットワーク)
 危険性が特に高くトラブルだらけなのにこんなに世論の支持が強いのは「高速増殖炉」という命名が、核燃料を高速で増やしていく様な誤解を与える大道香具師の口上の様なものだから?

 まずは電気事業連合会と、 さよなら原発神戸ネットワークのサイトを読み比べてみましょう。
 電気事業連合会サイトの図に「高速中性子炉なので減速材はない」とあり、増殖炉内で劣化ウランから転換したプルトニウムは炉から取り出して再処理工程での抽出を経て燃料に加工するので、燃料が高速に増殖するのではなく、それも電事連記事で1.2倍、さよなら原発ネットでは実際に増殖できるかどうかも怪しいとされています。

 核反応を起こさせるのに核分裂直後の高速中性子を利用するのか、減速材を働かせて低速の中性子を使うのかは、原子炉の燃料に拠ります。通常原発に使うウラン23592Uに吸収されやすく核分裂させるのは低速の熱中性子ですから中性子の減速材として黒鉛(炭素)、重水、水などを用いますが、プルトニウム23994Puと、劣化ウランの主成分であるウラン23892Uの原子核に吸収されてPu239を核分裂させ、あるいはU238をプルトニウムに転換させられるのは高速中性子なので、増殖炉では高速中性子を用いるため減速材は使わないということで、名前の由来も高速中性子で動作する原子炉ということですから、核燃料が高速で増殖するかの印象を与えてしまう「高速増殖炉」という命名は一般人の誤解による支持を狙った大道香具師の口上に近いものがあります。そういう騙しのないニュートラルな命名としては「高速中性子炉」とか、あるいは単に「増殖炉」が適切ではないでしょうか。

【補足雑学】

劣化ウラン    <1>

 ウラニウムから核分裂しやすいウラン235を濃縮工程により抽出した残りのウランで、天然ウランよりもウラン238含有量が多い。比重が重く弾丸に使えば貫通力が強いとして放射能を含む劣化ウラン弾が用いられてその地域に放射能によると思われる健康被害が起こるようになった。

熱中性子    <2>

 環境の温度で周りの物質と熱平衡状態になった中性子を熱中性子という。その平均エネルギーは室温で0.025eVであり、速度は約2,200m/sである。 高速の中性子を有効に減速し、熱中性子にするためには、なるべく質量数が小さく、かつ中性子を吸収しない物質を用いるのがよく、水、重水、黒鉛などが使われる。熱中性子は原子炉内でウランを核分裂させるのに用いられる。 原子力防災基礎用語集:文部科学省

高速中性子    <3>

 高速中性子(こうそくちゅうせいし、Fast Neutron)とは、エネルギー値の高い中性子を指す。核分裂で発生して、熱中性子にまで速度が落ちてはいないもの。
 厳密な定義は無いがエネルギー値が0.1 - 1.0MeV(メガ電子ボルト)よりも大きいものを指すことが一般的である。 中性子の速度は、そのエネルギー値から求める事が出来る。
* 1eVの中性子速度 = 1.4 × 104 m/sec
故に、1MeVの高速中性子の速度は、1.4 × 107 m/sec(毎秒1.4万km)である。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2008/11/24 13:20 UTC 版)

 ウランによる吸収と核分裂

[補足]

 中性子をウラン原子核が吸収する確率(原子力界では「断面積」)は、低速度ほど高い確率の吸収領域がある(参照→p31〜p32)ので一般の原子炉では黒鉛や水、重水素といった様々な減速材で熱運動程度の速度に落としてウラン23592Uに吸収させて核分裂反応を促進するが、増殖炉で中性子を吸収し2度のβ崩壊核を経て燃料プルトニウム23994Puに転換させるウラン238は、中性子速度の高いところに中性子を吸収しやすい領域があるため意図して高温の高速中性子の多い原子炉としてウラン238の燃料転換を促進している。不安定で危険なプルトニウムPuを燃料に使い、溶融ナトリウムを冷却剤(熱交換機の熱媒)に使うのはPuが高速中性子で核分裂連鎖反応を起こせ、Naが中性子を減速しないためである。従って「高速中性子による核燃料転換炉」が実態であるり、再処理工程を含めて実際に増殖できるかどうかも一部からは疑問視されている。核分裂反応が不安定と言うことはウラン燃料の原子炉より制御が難しく暴走の危険があるということだ。
 ところが発表や報道ではこれに触れることなく、運転すれば核燃料が増える「高速増殖炉」と繰り返すので、一般人は「高速度で燃料を増殖させる夢の原子炉」と誤解している向きが少なくない。

2010/05/26 23:55

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