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Geo日記
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[135] 常磐線ひたちトレーラ衝突事故報告
   電制無効化問題も取り上げて!

 踏切で脱輪・立ち往生したトレーラに特急ひたちが衝突して重傷3、軽傷1の事故になった件につき9/6付けで国交省航空鉄道事故調査報告書RA2006-4が出され、事故経過として「線路上の視界遮蔽物に気をとられて特殊発光信号に気付かずブレーキ扱いが遅れ、常用制動を非常制動に切り替えたが、増圧速度以下に落ちていたので却って減速度が落ちて衝突した。常用制動のままなら衝突しなかったか、もっと小さな被害だった」とし、建議として「非常制動に切り替えても増圧が解除されない構造への改良」、「特殊発光信号動作時の警報音発生」を勧告した。
  RA2006-4 http://araic.assistmicro.co.jp/araic/railway/report/RA06-4-9.pdf
 建議内容は首肯できるが、非常制動が常用制動より効かないという車種は、昭和30年代の電気制動導入新性能国電前後から、国鉄・私鉄とも多数抱えているのを放置しての勧告はないだろう。両数でいえば100km/h未満での非常制動切替で増圧が効かなくなる車両よりずっと多いはずだが、現状の運転規則が非常時の「非常制動」に拘って、それより良く効く「常用最大制動」の使用を認めてない。原則非常制動だが、常用最大制動の方が減速度の大きい条件では常用制動使用を許容するとか運転者の努力を許容し認める規則にして貰いたいものだ。無論、運転手の救命・安全確保の目的で、非常ボタンを押せば非常制動、パン下げなど一連の操作を自動的にやって早期待避を可能にする考え方もあるが、それならパン下げ操作は非常ボタンが押された場合だけ客室側から操作出来るようにすれば良い。
 ブレーキ管の急減圧で非常制動が掛かる「自動ブレーキ」方式の場合は一刻も早く非常制動にすることが停止距離を縮めるから非常優先は当たり前の規則なのだが、自動ブレーキ方式時代の規準で特性の違う直通ブレーキや電制の操作を縛って、まして刑事罰の対象にしたりしてはいけない。

 電車では、発電制動や電力回生制動といった電制併用が新性能国電(s33)前後から標準的だが、非常制動を掛けた場合に電制を無効にする仕様や、衝突時の2次被害回避でパンタグラフを下げると電制が効かなくなって制動距離が伸びる車両が多い。極端には車種によっては応答が早く緩解の早い直通予備ブレーキの使用もあり得ることで、福知山線尼崎惨事の故T運転士が直通予備ブレーキを利用していたとしても、それは氏の「勉強家」振りを示すもので物理的には異常運転ではなく合理的な操作というのはあり得るのだ。
 運転士の多くはこうした特性を知っているから事故回避にギリギリまで常用最大制動などを利用したいのだが、その操作は非常時の非常制動優先の規則に触れ、自殺など人身が絡む場合はあべこべに義務を果たさなかったとして刑事責任を問われかねない。
警察・検察の不勉強と会社の怠慢が絡む問題だろう。

 衝突時のパンタ下げ規則でありふれた踏切事故が過速度転覆の惨事に至った例として1971年の富士急三ツ峠事故がある。踏切事故で主空気溜に至る配管を損傷してエアーブレーキが効かなくなり、手ブレーキは焼け切って三ツ峠付近の連続する30/1000勾配で加速されてカーブで転覆し14名死亡の大惨事になったが、後日の調査では、衝突時にパンタグラフを下げなければ、あるいは衝突後に再び揚げていたら発電制動が効いて転覆の惨事にはならず最終的に大月駅の車止めに低速で衝突するだけで済んだとされている。規則が基本以外を排除するものではなく、あの手この手のサバイバルを例外として許容・奨励していれば助かった可能性のあるケースだ。殉職した運転士はパン上げすれば発電制動が効いたことを知らなかったのか、思い付かなかったのか?船橋事故のATS-B停電動作同様、教わってなかったのは確かだろう。

 裁判上は機関士の信号見落としで決着させた参宮線惨事も、腕木式信号での場内信号機併設の遠方信号機が駅通過現示(=1つ先の出発信号が進行現示を予告)だった(=不慣れな駅側の誤操作で出発信号しか停止現示にしなかった=遠方信号を停止にするのが遅れた)とする乗務員の主張を否定する証拠は無かった様だし、出発信号停止現示を見て直ちに非常制動を取り扱ったが機関車が重連だったことで列車の後半には非常制動としては伝わらず、制動距離が伸びて転覆・本線支障に至り、そこに対向列車が突っ込んで惨事に至ったことは分かっている。「自動ブレーキ」での非常制動操作は特に速やかに行う必要があるのだ。
 重連で非常制動が列車全体には効かなくなる現象は重連運転が常態の上越線ではすでに知られていて機関車のブレーキ管に改良を施していたが、他線区には広げられず救えた条件の事故を大惨事にした。これは自動ブレーキ絡みの欠陥修正不徹底だが、乗務員を血祭りに強引に幕引きしてしまった事故だ。

 これら規則のたゆみない見直しと、柔軟性というのはもっと求められるべきだと思う。列車火災時の一律トンネル内停車を処分をもって強要して2度目の出火を大惨事とした北陸トンネル火災事故の愚は繰り返さないで貰いたい。

2006/09/08 02:00
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