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Geo日記
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[109]. BUG出し不足のATC-NS!

  12日付け各紙朝刊に拠れば,先月東海道新幹線で稼働開始したデジタルATCでの非常停止が続発して原因を調べていたが,車両側のプログラムに問題があり処理能力を超える演算で停止していることが分かり改修することをJR東海が発表した.

  デジタルATC化で新たに加わった主要な機能はATS−Pの速度照査方式である「停止基準点からの距離と自車の減速性能で現在の制限速度を逆算する」方式をATCに導入して列車間隔を詰めて輸送容量を増やし,無駄な徐行距離を削減して若干の時間短縮を図ろうとするものであり,それをデジタル方式で構成するかアナログ方式で構成するかはその機能に関係ない.

  ATS-Pでは地上子から信号までの距離と下り勾配値,あるいは速度制限点までの距離と制限区間長をコマンド・パラメターとして車上に送り,車上では自車の制動特性とコマンド受信以降の走行距離から基準点との相対位置を求めて上限速度を算出して速度照査することが基本原理だから,安全確保のための無駄が極少なく(赤信号)冒進の起こらない優れた方式だ.

信号・標識・保安設備について語るスレ6
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/train/1137513600/406n
406 名前:名無しでGO![sage]
  投稿日:2006/04/10(月) 21:32:22 ID:top420230
 何かDS-ATCとATC-NS(九州:KS-ATC)の違いって分かんないなぁ。
データベースの持ち方や速照の仕組みは車上装置の処理能力次第なんで、地上→車上のインタフェースだけに絞って比べると、こんな感じみたい。

DS-ATC
搬送波 1500Hz/1600Hz 上り/下り
変調方式:電源同期MSK(搬送波±16Hz)
変調速度:64bps
フレーム繰返し周期:1350ms
伝送内容:前方停止軌道回路番号、現在位置軌道回路番号
その他:トランスポンダによる現在位置補正

ATC-NS(KS-ATC)
搬送波 575Hz/625Hz Ch1/Ch2(全区間上下線同じ)
変調方式:電源同期MSK(搬送波±8Hz)
変調速度:32bps
フレーム長:46bit(Ch1)、48bit(Ch2)
伝送内容:Ch1 開通区間数・進路コード・
       現在位置軌道回路ID
     Ch2 臨速制限開始軌道ID・
       臨速制限速度・即時停止信号
  このATS-P型速度照査方式はデジタルATCであるD-ATC,DS-ATC,ATC-NS,KS-ATCとしてATCに採り入れられたのだが,単純に相対距離を伝えるATS-Pとは違い,右カコミ内に示される様な、絶対位置情報を伝えて車上データベースに照合し相対距離を求めるなど,複雑な演算処理方法を導入して今回のトラブルに至った.同じ動作をさせるのならシンプル・イズ・ベスト!一目瞭然の分かりやすさが優先される距離直接送信法が良いと思ったが,敢えて採用理由は在来線のATS-P/-PNなら600m前後で足りるケーブルが高速のSKSではkm単位に格段に長くなるため演算は大変だが車上データベース方式で省略するらしい.
  車両側に路線状況のデータベースを持つ方式は制御式振り子電車の傾斜タイミング制御に導入されてATS-Sx地上子位置情報を照合して動作させた方式ではあるが,振り子車制御の場合は制御が全く動作しなくても横Gが乗り心地限界値を超えるだけで安全性には全く問題なかったから,安全装置ATS/ATCの主要動作部に車上データベース方式が採り入れられたのはデジタルATCが初めてである.

  同様の処理能力不足よるトラブルは埼京線開業時のCTC自動処理能力が不足して列車を捌けなくてソフト改良まで約1ヶ月間手動切替で切り抜けた事があり,また山手線にATCを導入したときもトラブルだらけだったから,初期不良だと逃げればそれまでだが,全線を処理した埼京線のケースと違い,1列車分の処理だから大して情報が錯綜する訳でもなく,コマンド受信バッファーを設定して演算終了までBUSYで待たす程度の機能のある常識的なソフトだったら普通は発生しないトラブルだから,この程度を「想定外」だったと言うのは演算BUSYのタイムアウトを短く採りすぎたというのだろうか.この手のバックアップは大きな余裕を採って絶対に許容できない値に出来るものが多い.それを有り得るギリギリに設定して「想定外」で落としたのだろうか?デジタルATCのシステム設計にATS-Pの様なスマートさがどうも感じられないのは,あれこれ詰め込んでいるからだろうか?

  更に引っかかるのは相互乗り入れの可能性の残るJR東日本とJR東海、西日本、九州のATCシステムの互換性を全く考慮しなかったことだ.従前はATC-1D仕様として電源周波数50Hz/60Hz両区間で動作できる方式に統一していたためJR東日本の車両は50Hz区間から長野新幹線の60Hz区間への直通が容易にできた訳である.
  ATS-P開発の大成功後,その特長の一般向け解説を間違えたままなのかもしれない.新幹線ATCでのP型照査実現には極端な話,地上側は次の停止点閉塞境界あるいは制限速度開始点までの距離を伝えるトランスポンダ増設だけで済ますことさえ出来た.そうすればJNR−ATCの欠点である閉塞区間入口からの早期の減速を無くして1段制動化は可能だったのだ.古い電子部品が入手できない問題があってそのままというのが辛いこともあるのだが,東海、西日本、東日本各社とも上位コンパチ改良の方向は考えなかった様だ.

  またデジタルATCでの1段制動導入の主たる理由は重ねて報道されているような「乗り心地改善」ではなく車間を安全に詰められることによる「線路容量の増加」である.TGVの様な最高速度以外取り柄のない低性能の列車を使って増線で輸送量をこなすよりもSKSの様な高性能列車とその能力を引き出せる信号系(ATC)の改善で輸送能力を増す方が安上がりなのだ.
  諸外国からの新幹線視察団が最も驚くのが速度よりも毎時12本+回送もの運転密度なのだそうだ.その辺は都心部通勤国電の毎時30本運行を初めて見るお上りさんの感覚と似たようなものだろう.この高速高密度運転を安全に実現する技術が大変優れている.
  中国が日中戦争正当化の急先鋒靖国神社への首相参拝にあれだけ長期に激しく抗議を繰り返して最終決定を引き延ばしてきたが4年間で5度目の参拝強行でタイムリミットとなりとうとう高速鉄道建設事業から日本を排除した.小泉変人首相は金にもならない不当な日中戦争正当化行動で日中平和友好条約(=戦争終結条約)の趣旨を踏みにじってSKS中国輸出を潰したと「歴史に名を残した」のだ.しかしその実,いまだに車両輸入などねばり強く技術導入への門戸を閉ざしてないのはこうしたSKSシステムの優秀性を交通大学出身の江沢民前主席など政治レベルまでも熟知しているからだろう.中国国内の輸送需要から云えば当面安価なTGV仕様で足りるが,自国産業としてのその後の輸出競争力と技術蓄積を考えたら「有人衛星打ち上げ技術を持つ国」の誇りを掛けてSKSシステムの水準を追わなければ喧嘩にならないだろう.
  同様に総武快速横須賀東京トンネルや山手貨物線(=埼京線)のATC廃止ATS-P換装は輸送力増強にこそ最大の意味があり総武ATC老朽化はそのきっかけだ.ATS-Pへの換装に合わせて新宿湘南ライン誕生だし東京駅解結のNEX増強と,遅延の波及を断つ普通列車の東京駅折り返し増加だ.ここを隠した宣伝は社員まで誤解させてしまう.
  JR関係者によるATS-Pの解説は(主にデジタルだけ強調するテキストの解説から来るのだろうが)その本質的な良さを理解していないのではないかと思えてならない.

  今回の事態は危険側の誤動作ではないが,無人線区での充分な試験はなぜやらなかったのだろう?ATS-Pは開業前の京葉線で実車試験していたし,DS-ATCも開通前の八戸区間で試験,ATS-NSだって先行して九州新幹線で供用しているはずだが,タイトな試験はしなかったのか?それとも東海道区間の錯綜振りが想定外なのか?初期不良としてBUGが残るのは仕方ないが,どうも「想定」不十分だった気がしてならない.

ATC-NS不具合問題報道 
2006/04/12朝刊

日経コンピュータhttp://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060412/235109/

東海道新幹線が車載コンピュータの原因で緊急停止、
5月末までにプログラムを改善

 東海旅客鉄道(JR東海)は、東海道新幹線で発生していた列車の緊急停止が新しく列車に搭載したコンピュータの仕様によるものと明らかにした。4月11日、報道各社に説明した。

 JR東海は3月18日のダイヤ改正を契機に、東海道新幹線の全列車に新しい列車自動制御装置(ATC)を導入した。新ATCは各列車が先行列車の位置を取得し、各列車に搭載したコンピュータが自律的にブレーキを操作するシステム。従来はセンター側で集中制御していたが、「新ATCで各列車が最適な減速パターンを選択し、なめらかなブレーキ操作が可能となる」(JR東海広報)。

 ところが、新幹線に搭載した新ATCの仕様に不十分な所があり、処理が異常と判断した新ATCのコンピュータが列車の緊急停止措置を取ったケースが3月18日以来19件発生している。ATCをリセットすることで運行を再開できるが、最大で10分程度の遅れが発生したという。

 トラブルは大きく二つの要因で発生している。一つめが各新幹線に搭載したATC用コンピュータのメモリ不足。先行している新幹線の速度が相対的に速いと、自列車のATCの取得する相手位置の情報が増える。この情報を格納しておく領域が不足した結果、コンピュータが異常と判断したという。これが19件のうち12件を占める。もう一つがATC用コンピュータの処理能力の問題。0.1秒以内に、先行列車と自列車の位置情報を同時に受け取ると、コンピュータが処理しきれずに異常と判断するという。線路上のトランスポンダと呼ばれる装置から位置を取得している。このケースが3件あった。

 JR東海は「詳しい内容はお答えできないが、コンピュータのプログラムを改善することで4月12日から対処を始めた。5月末にはすべての列車への対策を終える」(広報)している。
(市嶋 洋平=日経コンピュータ) [2006/04/12]
東京新聞[28]11版S社会面4段
JR東海 

ATCにプログラムミス
先月導入新幹線の緊急停車続発

読売新聞[38]13S社会面4段

東海道新幹線ソフト不良
先月,新型導入 非常停止19件


 東海道新幹線が走行中に「停止信号」を受信し,緊急に停止するケースが相次いでいることで,新ATC(列車自動制御装置)のプログラムミスが原因であることが11日,JR東海の調べで分かった.
 JR東海は,3月18日のダイヤ改正で新ATCを導入.それ以降に続発した緊急停止では,車両などに異常がないのに,運転台が「停止信号」を受信していた.車両点検のため,ダイヤが乱れるケースが4月10日までに22件発生している.

 同社が調べたところ,新ATCの列車側プログラムに,位置情報を含む膨大なデータを一度に処理できなくなるなどのミスがあることが分かった.

 新ATCは,列車の位置情報を正確に検知した上で,車両性能や線路条件を加味して,コンピュータ制御でスムーズな減速を実現,乗り心地を高めるシステムになっている.
 JR東海が3月18日のダイヤ改正から東海道新幹線の東京−新大阪間に導入した新型の自動列車制御装置(デジタルATC)にプログラムミスがあり,列車の非常停止や遅れなどのトラブルが19件,相次いでいることが分かった.同社は12日から全123編成のプログラムを改修する.東海道新幹線に乗り入れるJR西日本の約34編成についても改修を要請する.
 デジタルATCは,前方を走る列車までの距離や減速するべきカーブ,駅までの距離などの情報を,車両側のコンピュータが受信して適切な速度を計算.従来より滑らかにブレーキをかけ,乗り心地を良くするように採用した装置だ.
 JR東海などによると,3月23日午後4時ごろ,大阪第1車両所を出た「ひかり」にブレーキがかかり,新大阪駅到着が9分遅れた.その後も「のぞみ」などが走行中,非常ブレーキがかかって止まった例が今月10日までに18件あり,うち8件で最高13分の遅れが出た.
 同社の調べによると,デジタルATCのプログラムでは,列車の速度が遅く,前方の列車との間隔が離れているケースや,0.1秒以内に複数の情報を受信するケースなどを想定しておらず,こうした場合にコンピューターの計算処理能力を超えるため非常停止することが判明.コンピューターを搭載している先頭と最後尾の車両計246両を改修することを決めた.
 JR東海は「想定外のミス.ただ,トラブルがあれば停止するなど,システムが安全側に働いているので危険はない」としている.


2006/04/12 Last 23:50 09:50
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