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Geo日記
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[98]. 規則遵守か?実質か?

  安全確保のために規則を守れ!という主張は大変説得力があり、少しでも齟齬があれば大問題になります。その点だけでみれば、ATS-Pで衝突安全性は保証されて中間現示速度制限は安全性に無関係とはいえ、規則を守らない行動は認められないとの主張は力を持ちます。

  特に鉄道は先を目視できない=異常を発見してブレーキを掛けても停まれない状態で、信号や通票を頼りにその地点の最大速度で走ることを義務づけられているものですから、絶対信号の現示など冒すことの出来ない規則があり、これは絶対遵守事項です.信楽高原鉄道惨事'91/5でJR車両が信号所の出発信号が緑であったことで、対向列車が未着なのに通過したと責められましたが、鉄道信号のそうした性格上、乗務員には止めようがありませんでした.(信楽高原鉄道指令への連絡要求灯が点灯していたけれど、その表示の意味がJR西日本側に伝えられて居なかったため最後の砦も突破し正面衝突の大惨事に).この絶対性が鉄道人の思考・行動様式を律しているのではないかと思うほど、軍隊的上意下達型な行動がみられます.

  一方、2度に亘る北陸トンネル内火災事故での特急日本海乗務員と急行きたぐに乗務員の対応の違いで、火災時のトンネル内停車に危険を感じてトンネルを走り抜けて消火作業をした日本海は物損事故に留めながら運転規則違反として処分を受け、後のきたぐにでは死者30名、負傷者714名の大惨事になって危険な規則通りの作業をした機関士は殉職、生き残った乗務員3名が生け贄人身御供として長期に刑事裁判に晒されることになりました.こういう絶対的ではない規則も含んでいる訳で、軽々な監視活動は有害なことも多々あり極めて慎重であるべきです.

  現実の運行は、運転規則をきちんと適用するとそれは「遵法闘争」として逆に処分対象になってしまうほどタイトな運行が日常的に行われています。特にATS-Sx系では確認扱い後にエラーがあれば、赤信号に最高速度で冒進可能で防御が穴だらけです。
  それは事故に際して「運転士が規則違反をしたのが原因」と会社側が責任逃れをするための規則とさえ疑いたくなる状況ですが、実質の危険をはらみながら40年もの長きにわたり放置され、運輸省・国土交通省までが1987/04国鉄民営化にあたり安全性の高い私鉄ATS通達(昭和42年鉄運第11号通達)を廃止して東中野追突'88/12など充分救えた事故を重ね、尼崎惨事直後の国会審議でも「国鉄ATS-Sx方式も私鉄ATS通達方式も赤信号までに停止させるので安全性は同じ」と虚偽答弁(05/05/16対民主党答弁等)までして国鉄JR型欠陥ATSを擁護したままです。破損度にほぼ直結する冒進速度の運動エネルギー比で表せば、直下地上子がある絶対信号の場合でもATS-Sx=120〜130km/h:私鉄ATS通達=20km/h:ATS-P=0km/h=36〜42:1:0、(停止信号の)冒進距離でいえば同比率の500〜587m:14m:0m(減速度4km/h/sと仮定) という決定的大差があり、更に、一般の閉塞信号には直下地上子はなく無防備なのに、これを隠した虚偽答弁で国会を切り抜けています.
  管直人氏も前日5/15の赤旗新聞報道や5/9読売新聞報道をパクって質問するのなら事前に問い合わせしてレクチャーを受けるなどして何が本質的問題なのかを深く理解した上で逃がさないできちんとトドメを刺して欲しかった!氏は多くの法文系政治家とは違い学力では東大より優秀とされる東京工業大学理学部応用物理学科卒で、もし仮に在学中から政治学専攻だったとしても腐っても流石鯛でありまして、この程度の基本的な高校物理:力学の問題など何てことないはずなのですから.

  ところがATS-Pで言えば、その「現示アップ機能」というのは制動限界速度=パターンはそのままで全く影響せず、運転士向けの現示だけをいじって、パターン速度一杯の運転を許容しようとするもので、中間現示制限に拘らなくて良ければ、全く無用の機能です。Y制限値は各社で自由に設定出来ますから、問題となっているりんかい線を電車専用線と割り切り、閉塞割りを調べた上で差し支えなければY現示制限80km/hとすれば一挙に問題解決してしまいます(資料が見つからず、うろ覚えで申し訳ないのですが、関西の私鉄にY現示制限80km/hがあったと思います。近鉄本線?だったかも)。こちらの「違反」はATS-Sx擁護の様な実質犯ではなく、直接安全を阻害しない形式犯なのです。

  中央線東京駅ホームでは更に、信号制限に当たると自由にブレーキを緩解出来ないことから、0km/hの速度制限パターンを前置して緩解可能にすることでパターンギリギリの運転を可能にして進入時間の短縮を図っています.ですから、結氷でもして必要な制動条件を満たせなくなると、過走の可能性が高いリスクの大きい状態で運行していることになります。耐雪ブレーキ投入指令と同時に減速度の制限指令を出すのは必須といって良いでしょう。

  こういう状況で、第2場内信号のない折り返し駅の場内信号がY現示で55km/h制限のところ、そこを確実に停まれる80km/hで進入するからといって「違反運転」として糾弾して良いものか、当ページのBBSで意見を求められましたが、私には大変疑問です。公開質問状提出自体が糾弾になり、実態に疎い部局は運転士を庇うより、機械的な規則遵守を要求して運転操作を無用にタイトにするでしょう。
  運転士が嫌みな小姑の目を逃れたく遮光幕を下げたい気持ちも良く分かります。鞄と上着で前の見えない電車がなんと増えたことか。

  なお、最近の電車では「非常制動」と「常用最大制動」の減速度定格が同じ値(たとえば4.0km/h/s)の車両がかなりあり、減速度の変化率が小さければ支障はなく、レッテルだけの判断は意味がありません。

2006/02/13 00:50
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