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Geo日記
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[93].   (続)強風についても予測管理導入を #96

「観天望気」を何か非科学的な予言の様に思う「都会人」が少なくありません。落語や講談本などで「一天にわかに掻き曇り」とか「馬の背を分ける雨」という定型的物語記述が文学者特有の誇張表現だと思っても無理ありませんし、実際、言葉の彩で書いているだけのライターも多いでしょう。現に「観天望気」はATOKでもMS-IMEでも変換辞書に登録されていません。今は言葉さえ知らない人が多数派なのでしょう。
 しかし実はアベコベで、観天望気は出漁時の天候急変予測など命の掛かった経験則の蓄積であり、科学の基礎たる帰納法そのものです。自然現象に関心を持って見れば、豪雨と晴れの境が走るのは見られますし、特に寒冷前線が絡むと穏やかな天候が激変します。それを見ない都会人が観念論で否定しているという訳です。

 私自身の少ない経験でもいくつか印象的な場面があります。
  1.  都内の友人の猛暑の下宿にいて、突然窓から吹き込む冷風に外を見ると夜目にも垂れ込める雲が見え思わず「あっ、にわか雨だ!すぐ洗濯物を取り入れて!」といったのだが、友人の方は半信半疑、私の言い方の迫力に押されて洗濯物を取り込んだとたん大豪雨と激しい雷鳴で「えーーっ!何で判るの??」と、まるで化け物に逢った様な顔をされてしまった。京都育ちの超方向音痴で、天候など気に掛けたことも無かったようだ。しかしながら夕立直前には黒雲に続き冷突風の吹き出しは付きもので、そこを体験しているとかなりの高率で予測が当たる。おそらくこの吹き出しの大規模なものがマイクロバーストとかダウンバーストと呼ばれるものだと思う。

  2. 母の生家のある隣町の祭り見物に行って神輿を追って5丁目に居たら、急に黒雲が空を覆い冷風が吹き出して様子がおかしいので約20分の道のりを帰宅することにしたが、300mも歩かないうちに強風に変わり、海岸に並べた海苔を干している井桁の桟が突風にバタバタ倒れ宙を舞い、内湾なのに大きな白波が道近くの岸に押し寄せてきた。そして猛烈な雷雨が1時間ほど吹き荒れ、途中雨宿りさせてもらった。あの突風と雷雨は単なる熱雷ではなく寒冷前線の通過絡みだ。

  3. 夕立など激しい雨の場合、水のカーテンの様な雨域の境が移動してくるのは結構良く見えます。夕日でシルエットになったりすると熱い雲の下にくっきりと直線的な雨域がよく見えることがあります。また沖縄で経験した梅雨はまるでスコールで乳灰色の雨のカーテンが移動していくのが分かります。
  結局、観天望気を否定する人たちは天候を解析的に見たことがない人たちで観念論的否定だということでしょう。
  観天望気や蓄積データによる天気予報というのは時には命懸けの壮大な経験則の蓄積で、それは鉄道技術に良く似たところがあります。特に今回の羽越線最上川第2橋梁強風転覆事故発生時の天候を見ますとこの壮大な経験則の警告を何重にも踏みにじって惨事に至っており、運行制限規定を気象関係者を交えて制定していたら避けられた事故だとの印象を強く持ちます。

 すなわち事故当時は「暴風雪波浪警報」発令中で、『警報』というのは「注意報」より切迫した最大限の強さを示すものです。予報としては「25日夜から26日に掛けて20mを超える強風が吹き荒れる」とされ、天気図には50hPa余もの深い気圧の谷の南端に気象関係者に通称「爆弾低気圧」と呼ばれる大荒れの低気圧(中心気圧994hPaに対し大陸の高気圧は1046hPaでその差圧が52hPaもある台風並み低気圧)が近くの海上を高速で通過中で、寒冷前線直近。そして現地では雷鳴が鳴って非常に活発強力な寒冷前線であることを示していました。しかも現地は風力発電実験設備設置が真っ先に決められ、強風災害に苦しめられる屈指の強風地帯で道路には要所に防風柵が設置され、強風抑止も多い地域で、吹きさらしの現場近くには対岸橋詰に応答速度の遅い=突風検出を逃しやすい円椀型(ロビンソン)風速計があるだけで、予測制限の運用は全く定めがないというのですから、転覆事故発生は必然でしょう。少なくとも寒冷前線を追ってその前縁付近は速度規制を掛けていれば死亡事故は防げていた可能性があります。風に関しては気象を軽視しすぎたということでしょう

2005/12/30 16:00
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