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Geo日記
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[88]. 福知山線尼崎惨事中間報告に見落としエラーか?
   真相:1.事故後設置、2.正解!中間報告書修正!
   (06/12/20事実報告書案P8(14/174))

  先の尼崎惨事事故調中間報告の写真を見ていて、宝塚駅回送時の2度の非常制動についての解説に抜けを発見。中間報告書は分岐速照が働いたのを誤認して「手動による『常用制動』」「確認扱いをせず」と記載している様に思います。発見のきっかけはJO-AKKUN氏の10/11〜10/16 BBS書き込み事故調中間報告書の付図10添付の下側中央写真を精査して気づいたのですが、分岐手前のロング地上子:5,6RQ1と、ポイントの間にSx系と見られる地上子が2個見えてますが、中間報告書には本文(P9)にも図(付図10)にも記載がありません。しかし、設置位置としては分岐器過速度防止装置の最終段の速度照査地上子対の位置です。
    40km/h分岐速度制限標識の手前に見える2個の地上子は分岐速照か?
    (写真は尼崎事故調中間報告書付図10下側中央掲載を引用)

不明地上子対

  仮に「分岐器過速度防止装置の最終段速度照査」だとすると分岐制限速度標識が40km/hだから、速度照査設定値は+5〜10km/hの45km/h〜50km/hになるはず。ST地上子設置間隔Lを逆算すると、L=速度/3.6×0.5+0.5= 6.75m〜 7.44mのはず。 SW/SNでの地上子型名はSC-0/SC-2と表記されて青灰塗装が標準。ロングならSL型で白色塗装です。(そう思って見ると青灰色に見えてしまう危険があるので)写真からは青灰色かどうか判然としません。
  一方、付図10にはロング地上子位置17.981km、40km/h分岐速度制限標識18.008kmとあり、地上子から制限標識まで27mの距離がありますが、この標識側(奧側)に非記載の2個の地上子が写っている訳です。写真からその間隔を推測するのは画角からかなり困難ですが仮に27mの1/4とするとST/SW速照時素が旅客で0.5秒ですから、その設定速度は=(27/4)/0.5×3.6=48.6km/hとなって矛盾がありません。
[註:設置間隔の算出法]
 ATS-ST/SW時素式地点速度照査は2個の108.5kHz速度照査地上子に車上装置が応答するが、その応答の内法(うちのり)時間が車上タイマーTs(=0.50秒、貨物0.55秒)より短いと制限Vs超過の過速度として強制非常制動を行うものである。
 地上子の応答幅をW(=0.5m)
 設置間隔をとすれば、
 設置間隔D=Vs×Ts/3.6+W となる。
   ( ATS-ST設置間隔計算ロング位置計算

  そうすると、R現示のロング地上子5,6QR1上を約65km/hで通過、Sxの動作遅れ時間を限界規定(1秒)の半分として、確認扱いをせず放置すると更に5秒後に非常制動となりますが、その手前、最大27mで45km/h〜50km/h速度照査の非常制動が働くはずです。これは付図9−2の速度グラフと概ね一致します。
  その動作時間=27/(65/3.6)≒1.5秒後に動作となります。ロングの非常制動と速度照査の非常制動は扱いが違うという未確認情報もあり、それだと速度照査の非常制動分が記録されないため中間報告書では拾い漏れになったのかも知れません。この点、調査が必要です。写真の速度照査地上子は恐らく正常に働いていたでしょうから。
  確認扱いは無意識に行って事故になるほど反射的に行われるもので、それが無かったというのはかなり不自然です。その実例では02/02/22鹿児島線宗像海老津事故、88/12/05東中野追突事故、72/06日暮里駅追突、68/07御茶ノ水駅追突、67/08新宿駅タンク車衝突炎上事故と嫌になるほど挙げられます。中間報告書で見落とした可能性のある分岐器過速度防止装置の速照非常停止の方が無理がない様に思います。

  もし非常制動の第1原因が速度照査地上子だとすると、「運転士が確認扱いをせずに5秒放置した異常運転」「日航K機長型か」(読売型誘導結論)という前提が崩壊します。

  第2の非常制動は、誤出発防止装置のタイミング設定がらみに依るもので、第1の非常制動時に停車区間に進入し時素が起動しますので、非常制動緩解時間に食われて走行中に誤出発防止装置6R3Q2地上子が有効になってしまい非常停止を喰らったものでしょうから、誤操作に依るものではないでしょう。(6R3Q2地上子(18.318km)は7両編成停止目標(18.328km)から丁度10m手前にあるので、停止目標に停まっている先頭車のATS-SW車上子が連結面先端から5.3m後方位置に設置(付図7−2、7両目)なので正規停止時には4.7m過ぎて居り、7両編成向けではなく、その手前の6両編成向けの誤出発防止地上子だということです。手前の停止位置用の誤出発防止地上子で動作したということです)。
  非常制動を避けて直通予備ブレーキを使用するのも、非常制動の長い緩解時間を避けるのが主目的で、更に非常制動より直通予備ブレーキの方が良く効く車輌が多いための措置であれば、それは規則とは違う操作ですが合理性があり、決して非常識な異常操作ではありません。
  伊丹駅での70mの過走も、制動直前の110km/h余の速度でのブレーキ操作タイミングをみれば2.3秒[=70/(110/3.6)]だけ操作が遅れたに過ぎません。

  だからハッキリした運転操作エラーは宝塚駅進入時の分岐制限40km/hに最大65km/hで突入した件と、事故現場に高速・無制動で進入したことは確認できますが、宝塚駅進入時のロング警報に対する確認扱いをどうしたかは不詳で、設置位置と進入速度の関係から速度照査が先に働いたと仮定すると、必死に解除操作(=確認ボタン?)が行われて、それが記録に残らない可能性があります。「確認ボタンを押さなかった」とは言えないのです。
  第2の非常停止は、誤出発防止装置の起動を区間突入ではなく、もっと実停止位置に近い点を採る必要が有ることを示すものです。長短2段時素なら尚安定でしょう。最短編成停止位置直前の重力接触器で時素(タイマー)を起動してそれで誤出発防止装置を起動すれば、今回の宝塚駅到着時の2度目のような、回避できない無用な非常制動を避けられました。

  事故調中間報告は「判明した事実のみを記す」建前ながら、その「摘示事実の取捨選択」で以上の様に印象を大きく変える訳ですから、「解釈が大きくぶれないための一般的解説」というのは必要なのではないでしょうか。見ように依っては事故原因を高見運転士の特異な資質に閉じこめる「事実」は報告し、それを否定する事実は「気付かなかった」と勘ぐられかねない事態になっています。運輸省・国交省の指導責任も問われている中で、この中間報告内容とその評価報道のまま放置は適切ではないでしょう。事故調を監督庁とは独立の機関に改めないと、日比谷線中目黒事故検討会報告に続いての「マスコミ目眩まし報告書」になってしまうのでしょうか?
2005/10/17 23:00

中間報告書修正:   <hosoku>

 06/12/20に報道解禁された「尼崎事故事実関係報告書案」を見ると、本項第1のロング地上子と速照地上子の問題について、速照地上子は事故後に設置のもの(付表3P1中央下段写真説明)で、ロング警報の確認操作を終える前に非常制動が掛かったとあり、放置では有りませんでした。第2の非常制動は本稿での指摘通り、誤出発防止装置起動から44秒の設定時素を経て(6両編成用の)誤出発防止地上子(123kHz)が有効になり、これに当たって非常停止が掛かりほぼ7両編成停止位置に停止したと記されています。日航K機長型の故意の運転ではないことが分かります。
 (06/12/20事実報告書案P8(14/174)
2006/12/25 03:00
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