75-衆-法務委員会-1号 昭和50年02月12日
○諫山委員 兵庫県養父郡を中心とした、南但馬一帯における部落解放同盟朝田・丸尾派の集団リンチ問題について質問します。
この問題については、本国会でもわが党の議員が本会議、予算委員会等でいろいろの角度から質問しました。それに対して、政府当局は、捜査中だからということで詳細な説明を避けております。しかし、この委員会は、その捜査が適正妥当に行われているかどうか、これを審査する舞台です。また、事件発生以来二カ月あるいは三カ月たっておりますから、法律的に見ても、いわゆる証拠隠滅のおそれあるいは捜査に支障を来すというような状況はほとんどなくなっているのじゃないかと思います。そういう観点で、捜査中だからとか、あるいはまだ結論が出ていないからということで答弁を避けられるのではなくて、検察行政、警察行政が適正に行われているのかどうかという観点から幾つかの問題を質問したいと思います。
そこで、この事件では昨年九月から十一月にかけてさまざまな刑事事犯が起こって、告訴、告発事件が、私の手元に資料があるだけでも十五件に上っております。この告訴、告発が検察庁で何件受理されているのか。そして被疑者が、私たちの調査では氏名不詳者を含めて数百名ということになっておるのですが、何名ぐらいになっておるのか、御説明いただきたいと思います。
○安原政府委員 八鹿高校事件につきまして、被害者から検察庁に告訴、告発のありました件数は十九件でございまして、概括的に申しますと、現在までに起訴された件数はそのうちの十一件でございます。そして、十一件で十三名が起訴されておりまして、ただいま調査中が八鹿高校関係では三名ということでございます。
○諫山委員 十九件の告発事件のうちに、捜査が終了して、検察庁としては事件処理を終わったものがあるのかどうか。あればどの事件なのか、御説明ください。
○安原政府委員 いろいろな告訴事件がございまして、一々即刻にお答えができませんで恐縮でございますが、八鹿高校事件、いわゆる四十九年十一月二十二日発生の事件につきましては、現在受理いたしましたのが十二名でございますが、起訴九名でございまして、なお捜査中が三名でございます。
○諫山委員 八鹿高校事件というのは、南但馬一帯で起こった暴力事件の中では最大の事件です。しかし、そのほかにたくさんの事件が告訴、告発され、捜査が進んでいると思いますが、捜査完了した事件があるかどうかです。
○安原政府委員 お尋ねの、捜査を完了したものはございません。
なお、八鹿高校事件以外に、南但馬地区一帯で発生した事件として起訴をいたしましたものといたしましては、生野駅の公民館の事件で起訴二名、それから大藪公民館の事件で起訴二名がございます。
○諫山委員 たくさんの告訴、告発事件で、警察も捜査していると思いますが、まだ警察の捜査中で送検されてないものがあるのかどうか。あるとすればどれなのか。
○佐々説明員 お答えいたします。
昨年九月以降現在まで、お尋ねの兵庫県南但馬地方において発生をいたしました事件は、警察が告訴、告発を受理いたしました件数十三件でございます。先ほどの法務省御答弁の件数と若干違いますが、これは重複をいたしたり、あるいは検察庁にのみ告訴、告発をしておる事犯がございます。十三件の告訴、告発事犯の内訳を申しますと、告訴告発事件五件、告発のみが一件、告訴七件でざいます。
兵庫県警では特別捜査本部を設置いたしまして、鋭意捜査を進めておりますけれども、捜査未着手の事件は現在までのところ一件もございませんが、現在まで送致をいたしました事件は、九月八日、朝来町におきまして発生をいたしました橋本哲朗教諭にかかわる事件、この事件を十一月十六日付で、被告訴人四名を、逮捕監禁、傷害容疑で神戸地検に送付済みでございます。
それから、十月二十日から同月二十六日までの間、朝来町におきまして発生をいたしました同じく橋本哲朗教諭自宅における事件、これにつきましては、一月二十二日、被告訴人一名外一名、計二名を、監禁、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反容疑で通常逮捕いたしまして、事件を送致いたしております。
また、十月二十五日、国鉄生野駅及び生野町南真弓公民館において発生をいたしました事件については、一月二十二日、被疑者二名を、逮捕監禁致傷罪容疑で通常逮捕し、事件送致済みでございます。
さらに、十一月二十二日、八鹿町八鹿高校において発生をいたしました集団暴力事件につきましては、十一月二十三日付、被害申告及び告発が行われておりまして、この事件につきましては、十二月の二日に四名、十二月の十二日に七名、本年一月二十二日一名、合計十二名を、逮捕監禁致傷及び強要罪容疑で通常逮捕をいたし、事件を送致したほか、なお共犯関係等について捜査を続けておるところでございます。
以上のように、十三件の告訴、告発事件、これは警察が受理をいたしました事件でございますが、このうちの四件、二十名を検挙して、それぞれ送致、送付済みでございます。残余の事件については目下捜査中でございます。
○諫山委員 十三件の告訴、告発事件のうちの九件はまだ送検されていないようですが、いつごろ送検が終わる見通しか、御説明ください。
○佐々説明員 この事件処理の見通しでございますが、一連の事件、いずれも数人もしくは数十人によるところの集団不法行為であり、被害者もまた複数である、複数でないのもございますが、特に十一月二十二日の八鹿事件等は被害者も複数であるというようなところから、非常に複雑な事件でございました。現段階では捜査終結を、おおむね二月末を目途に鋭意捜査をいたしておるところでございます。
○諫山委員 警察としては、この事件の捜査のために何名ぐらいの警察官を充てているのか。また、兵庫県警だけでやっているのか、よそからの応援があるのか、いかがでしょう。
○佐々説明員 お答えいたします。
特別捜査本部の専従要員は六十七名でございます。なお、この数字は、所要の警備措置のために配備をしておる警察官等を含みません。専従の警察官でございます。
よその県からの応援というのは、管区機動隊等、警備実施に所要の部隊をその都度動員をいたす等の措置をいたしておりますけれども、捜査は兵庫県警において実施をいたしております。
○諫山委員 専従が六十七名だそうですか、専従でない警察官は何名ぐらいこの捜査に参加していますか。
○佐々説明員 ちょっと詳細な数字を持ち合わせておりませんけれども、当然八鹿警察署員あるいは和田山警察署員、これがそれぞれ四十数名でございますが、これらの要員に加えまして、本部の応援派遣要員を加えましておおむね百名程度が非専従的な捜査に従事しておるものと思われます。
○諫山委員 検察庁関係を質問します。
いま、警察に告訴された十三件について説明がありましたが、検察庁に告訴、告発された事件で処理がすべて済んだというのはあるのでしょうか。
○安原政府委員 結論から申しますと、ございません。検察庁にこの種の八鹿町事件等で直接告発のあったものは、和田山関係、八鹿町事件を含めて、合計で十九件ございますが、そのうち、完了はいたしておりませんが、一部起訴したものといたしまして、先ほど申し上げました生野駅、生野町の南の公民館の事件、それから大藪公民館の事件がございます。
○諫山委員 検察庁はこの事件の捜査のために、どのくらいの検察官あるいは検察事務官を充てているのか、御説明ください。
○安原政府委員 この事件のために神戸地方検察庁といたしましては他庁から応援は受けておりませんが、神戸地検の公安部長以下十三名の検察官を投入いたして鋭意捜査に当たっておるわけでございまして、ちなみに、神戸地検は本庁のみで検事三十二名、併置の区検の副検事二十四名でございますが、そのうちの十三名の検察官を投入して捜査に当たっているというのが実情でございます。
○諫山委員 十三名というのは、この解同朝田・丸尾派問題に専念しているのですか。
○安原政府委員 そのとおり、専念をいたしております。
○諫山委員 警察は一応事件捜査の見通しを持っているようですが、検察庁としては、すでに告訴、告発された事件のすべてをいつごろまでに処理を終わるつもりか、見通しがありますか。
○安原政府委員 結論から申しますと、いつまでということは具体的に申し上げるわけにはまいらないのが実情でございまして、できるだけ速やかに処理を終わりたいという考えで鋭意努力をいたしております。
○諫山委員 警察の方に聞きます。
この一連の事件の中で、一番残虐で被害が大きかったのは十一月二十二日の八鹿高校事件です。この事件で送検するときに、被疑者は何名にしていましたか。
○佐々説明員 八鹿高校事件につきましては、被疑者数は、現在取り調べ中の者を含めまして恐らく数十名に上ると思われますが、現在まで事件送致をいたしましたのは、先ほど御報告をいたしましたように十二名でございます。
○諫山委員 数十名の被疑者のうち十二名だけを送検したというのは、残りは追って被疑者として送検する予定だということになりますか。
○佐々説明員 残余の者につきましては現在捜査中でございまして、そのうち被疑者が何名になるか、捜査結了を待たないとわからない状況でございますけれども、申し上げました十二名というのは、強制捜査によって身柄を逮捕して送致をした者でございまして、そのほか状況によっては任意送致事件も出ようかと思われます。残余の被疑者の数につきましては、捜査中の事件でございますので答弁を差し控えさしていただきます。
○諫山委員 私は、この事件の告訴、告発の代理人である弁護士からいろいろ事情を聞くし、起訴状も検討さしていただきました。そして疑問に思ったのは、八鹿高校事件などでは集団的な長時間にわたるリンチですから、暴力行為等処罰法あるいは不法監禁、そのほかさまざまな法律違反に、場合によっては暴力行為等処罰法の「数人共同シテ」こういう条文を適用する、あるいは刑法犯であれば共謀の規定を適用する、そして直接手を下していなくても、相当広範囲な人が刑事責任を負わなければならないという事件だったと思います。ところが、捜査の重点あるいは起訴のやり方を見ると、直接手を下した人だけに刑事責任が追及されているというふうに見えるのですが、そういう立場で警察は捜査を続けているのですか。
○佐々説明員 当面、捜査の第一重点は、実行行為者、加害行為者の捜査に向けられたわけでございまして、背後関係あるいは共犯関係、これの真相究明のための捜査を現在続けておるところでございます。
○諫山委員 そうすると、すでに送検した被疑者あるいは送検があるかもわからない数十名の被疑者というのは、単なる共犯関係は含まない、直接手を下した人という意味ですか。
○佐々説明員 強制捜査対象として最重点に選びましたものにつきましては、実行行為参加者を重点にいたしております。
○諫山委員 そのほかの数十名の被疑者はどうですか。
○佐々説明員 恐らくこの数十名の残りの者につきましても、実行行為に関与した者もあろうかと思われます。現在までのところでは、適用罪状は、先ほど申し上げましたように、不法逮捕監禁、不法逮捕監禁致傷、傷害、強要でございます。
○諫山委員 数十名というのは非常に幅のある表現ですが、これは三、四十名ですか、五、六十名ですか、あるいはもっと具体的に言えますか。
○佐々説明員 現在取り調べております関係者につきましては、情状により参考人に終わるものもあり、また任意の送致事件になるものもあろうかと思われますので、その数につきましては、捜査中の事件でございますので答弁を差し控えさせていただきます。
○諫山委員 そうするといずれにしても、数十名が具体的に何名になるかというのは別として、これは警察としては、直接手を下した被疑者というふうに目している数ですね。
○佐々説明員 直接実行行為に参加をした者に重点を指向いたしておりますけれども、それ以外の指揮、扇動その他の関係から共犯関係があるかどうか、この点についても捜査を進めております。
○諫山委員 いま警察がしぼっている数十名というのは、指揮者であるかあるいは実行行為者であるか、どちらかだということになりますか。そして共犯関係者はまだ被疑者としては挙げてないということでしょうか。
〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕
○佐々説明員 ただいま申し上げました数字は、現在取り調べを行っておる対象の数を申し上げましたものでありまして、実行行為に参加した者もあるいは共犯の疑いのある者も含んでおります。
○諫山委員 この事件では現場の生々しい写真あるいはフィルムが押収されているはずですが、それを被害者に見せて面割りをするというような捜査はやられていますか。
○佐々説明員 いたしております。
○諫山委員 検察庁関係で質問します。
この事件は、いま私が指摘しましたように、直接暴力をふるった、あるいは脅迫的な言葉を吐いた、だから犯罪人になるというようなものではなくて、十数時間にわたって集団的な暴力リンチ行為が行われたわけです。こういう場合は、直接手を下した人だけではなくて、この集団的なリンチ行為に参加した人はすべて刑事責任が問われなければならない。もっとも、これを起訴するかどうかは別問題です。情状の問題は残ります。しかし、刑事責任は集団行為そのものに参加した人すべてに及ぶというのが常識的な法律解釈だと思いますが、検察庁はそういう立場で捜査を続けていますか。
○安原政府委員 今回御指摘の事件につきまして、どの範囲において捜査をし、どの範囲において起訴をすべきだということは私どもの口からは申すべきではないわけでございますので、この場においても申し上げるわけにはいきませんが、一般論といたしましては、御指摘のとおり事案の真相を究明するというのが検察本来の使命でございますので、それが集団的犯罪であれば、そこにおける共犯関係というものについても深く捜査の手を進めるというのが当然でございますから、単に実行行為者のみならず、いわゆる共謀に当たる者、あるいは教唆に当たる者、幇助に当たる者につきましても、真相の究明という立場からは究明さるべきものと考えております。
○諫山委員 私はこの事件で兵庫県警本部と折衝したことがあります。ところが、糾弾行為は罪にならないという判例もありますね、というような言葉が警察関係者から出ているのです。糾弾行為が罪になるかならないかということは具体的な事件で決まることであって、そういう議論そのものはナンセンスだと思うのです。
ところで、この八鹿高校の事件というのは、十数時間にわたって公然とこういう糾弾行為が行われたわけですから、少なくともこの糾弾行為に積極的に参加した人は、起訴されるかどうか、逮捕されるかどうかは別として、刑事責任の対象にはなるというふうに見るのが法律家の常識だと思いますが、警察はそういう立場で捜査を進めていますか。
○佐々説明員 糾弾行為を認めた判例がありますが、という話が警察関係者から出たという御指摘でございますけれども、私どもは、いかなる主義、信条あるいは理由のいかんを問わず、暴力行為その他を伴う違法行為に対しましては、これを断固取り締まる、これを看過しないという基本的な姿勢で警察を運営いたしており、また、ただいま卸指摘のとおり、一般論といたしましては、刑事責任を実行行為者のみならず、共犯関係あるいは指揮、扇動を行った者、直接手は下さないけれども、指揮、扇動を行った者等にも及ぼす。真相をあくまで究明をしてこの事件の解明をする、こういう基本的な姿勢で捜査を続けておるところでございます。
○諫山委員 その一般的な原則は、八鹿高校事件の捜査にも当てはめて考えているというふうに聞いていいですか。
○佐々説明員 そのとおりでございます。
○諫山委員 八鹿高校事件で私たちは、解同朝田・丸尾派だけではなくて、教育委員会関係者、校長、教頭も告訴しています。そして現地ではすでにこういう人たちが検察庁の取り調べを受けていると聞いているのですか、これは参考人として調べているのか、被疑者として調べているのか、どちらでしょう。
○安原政府委員 八鹿高校事件につきましては、御指摘のとおり兵庫県の教育委員会の関係者四名が告訴をされております。これにつきましては、申すまでもなく告訴事件といたしまして被疑者として取り調べをいたしております。
○諫山委員 その人たちは警察からも被疑者として送検があっていますか。
○安原政府委員 ございません。警察からは送致を受けておりません。直告発事件ということでございます。
○諫山委員 じゃこれは、警察は被疑者として扱わなかったというんじゃなくて、真っすぐ検察庁が捜査を始めたというケースになりますね。そうすると、教育委員会関係者、校長、教頭は、どういう被疑罪名で調べを受けているのですか。
○安原政府委員 逮捕監禁、傷害等の共犯ということであると理解しております。
○諫山委員 私たちの調査では、八鹿高校事件では数十名が負傷を受けた。そしてたくさんの人が入院しなければならなかったということになっていますが、この傷害の程度、数、何名負傷し、重いのはどのくらいだったというのがいまの時点で言えますか。
○佐々説明員 負傷者総数は五十八名と記憶いたしております。入院者の数につきましては、ちょっといま詳細に覚えておりませんが、十名前後、一番重いものが肋骨骨折等による二カ月の入院と記憶いたしております。
○諫山委員 何しろ昨年の暮れ、相当長期間に継続的に集団的なリンチ行為が行われた。そしていま捜査は進められているようですが、それにしても捜査のテンポが遅いのではないか、あるいは八鹿高校事件のような集団的な残虐なリンチ行為に対する処理の仕方としては手ぬる過ぎるんじゃないか。これで暴力排除ということを言っている立場が貫かれると言えるのかということに、私非常に疑問を持ちます。法務大臣、いかがでしょう、いまの取り調べの状況を聞いていただいて。私はもっと捜査を促進すべきだ、そして不当なやり方に対しては厳重に処理していくということが必要だと思うのですが。
○稻葉国務大臣 伺っておりまして、同感を表すべきような気がいたします。
○諫山委員 きのう兵庫県の八鹿町と養父町で、わが党の不破書記局長が参加して演説会を行いました。ちょうどここでは町長選挙が行われているわけです。そのための公式な演説会に対して、解同朝田・丸尾派が再び襲撃して演説会を妨害しております。
八鹿の町民会館では二百名から二百五十名の解同朝田・丸尾派が演説会を妨害する。そのために一時間十分演説会の開催がおくれる。そしてこの妨害には近所の人だけではなくて、たとえば大阪府の高槻市からバスを二台貸し切って彼らが参加している。またこの行為には中学生も参加しているというようなことがきのうありました。しかも、これはわが党の不破書記局長も参加した公式の選挙のための演説会です。
さらに、養父町の広谷小学校の体育館では、多数の解同朝田・丸尾派が演説会場の一角を占拠しまして、演説が始まると、やじ、怒号、そして演説を妨害する。この数は約二百名です。演説会の途中で主催者が退去を要求してようやく退去するというような事態があったようですが、それにしても、この第二会場の広谷小学校には、解同朝田・丸尾派と言われている、保釈中の丸尾が参加して指揮をするというような事態が起こりました。
もし、警察、検察庁がもっと機敏で適切な処理をすれば、こういうことは防がれたと思う。こういうことがいまなお起こるようなことは許されないというふうに考えているのですが、この点、警察庁はどういうふうに考えているのか、また、どういうふうに処理しようとしているのか、お聞きします。
○佐々説明員 まず、丸尾良昭についてでございますが、丸尾良昭は、八鹿高校事件につきまして昨年十二月二日、通常逮捕をし、十二月四日、身柄つきで神戸地検に送致をいたし、神戸地検では翌十二月五日、勾留請求を行い、さらに十二月十四日勾留延長の上、十二月二十四日、在監のまま逮捕監禁致傷、強要罪で起訴をいたしましたが、神戸地裁では十二月の二十七日、保釈金五十万円で保釈を認めました。
その後、警察では橋本氏宅事件で、本年一月二十二日、丸尾良昭を再逮捕いたしまして、一月二十三日、身柄つきで神戸地検に送致、神戸地検におきましては勾留請求を行いましたが、神戸地裁は同請求を却下いたしましたので、神戸地検はさらに直ちに準抗告を行い、勾留請求却下決定の取り消しを求めたものでありますけれども、一月二十七日、神戸地裁はこの準抗告を棄却いたしまして、丸尾良昭の身柄は釈放されて現在に至っておる。
昨年の十二月二十七日の保釈条件も、朝来町にございます自宅に居住をすること、一週間以上でございましたか、旅行する場合には事前に裁判官に書面で許可を求めることという通常の保釈条件のみでございまして、その他の条件がついておらない。したがいまして、警察といたしましては、再び暴力行為その他がないよう十分これを視察し、実際にそういう事案を起こした場合には、これに対する所要の警察措置をとるという姿勢で臨んでおるところでございます。
○諫山委員 きのうの演説会については、事前に彼らの暴力的な干渉が予想されましたから、わが党の林百郎代議士が自治大臣に電話で厳重な取り締まりを要求する、警察庁にも同じような申し入れをする、そういう万全の措置をとりながら演説会を迎えたわけですが、それでも演説会が事実上妨害されるというような事態が起こっているのです。こういうのはどうにもならないのですか。後で刑事事件として処理する以外に対策はないのでしょうか。
○佐々説明員 ただいま御指摘のとおり、二月九日、中央におきましても、また兵庫県の県警に対しましても、警備、警護要請等がなされまして、これに対しまして、兵庫県警では地元八鹿警察署に現地警備本部を設置し、警察官八百四十一名を編成いたしまして、このうち、八鹿町民会館周辺あるいは不破書記局長のパレードのコース、養父町における広谷小学校周辺等に四百八十九名の部隊を配備し、身辺警護につきましても、不破書記局長の身の安全については万全の措置を講じて臨んだわけであります。
昨日の演説会の会場に、解同の人たち二百名が参加をしたことは事実でございますが、これにつきましても、主催者側におきまして会場で二時ごろから入場規制を行い、参加者を一列にいたしまして、マイクロホンを持っていないか、あるいは何かそういう凶器を持っていないか、あるいは町民以外の選挙権のない人たちが参加をしないかどうか、こういうような入場規制を厳格に行い、これに対して所要の警備措置をとるよう要請がございましたので、現場における制服部隊は、違法行為が行われないよう十分な監視体制をとっておるところでございます。入場がこういうことでおくれた関係もございまして、演説会が若干おくれたようでございますが、会場の中における状況も、やじその他はございましたが、主催者側の警告によって、「ただいまから不破書記局長の演説が行われますので、いやな者は退場をしてもらいたい」こういうアナウンスが行われたのに対して、丸尾良昭以下二百名が、「あほらしい、出よう出よう」ということで退場をしたというようなことで、警告に従って行動しておる。また、現実にスクラムを組んで阻止をするとか、あるいは集団暴力をもってこの会場に押し入るとか、こういう事案は昨日は発生をいたしておらないという報告を受けております。
もちろん、昨日午後起こった問題であり、私どもも完全に調査をいたしておるわけではございませんので、後刻いろいろな刑事事件容疑の事案についての事実関係が明らかになれば、もちろん所要の警察措置をとる方針でございます。
○諫山委員 暴力はいかなるものであろうとも排撃さるべきだというのは当然ですが、選挙を妨害するような暴力というのは特別悪質なわけです。公職選挙法によりましても、演説を妨害し、選挙の自由を妨害した者は四年以下の懲役もしくは禁錮、あるいは公職選挙法の二百三十条では、選挙に関し、多衆集合して演説を妨害した者は、首魁が一年以上七年以下、指揮者が五年以下の懲役というような特別重い刑罰を要求しております。現地の弁護団では告訴するというふうに言っているようですから、いずれこの事件は詳細に調査してしかるべき措置をとることを要望いたします。
そこで、法務大臣にお聞きするんですが、さっきの所信表明の中で、爆弾事件を排撃する、トロツキストの内ゲバを排撃するということを言われました。私も全く同感です。しかし、暴力には、私たちが強調しているように、部落解放同盟朝田派の暴力というのが最近非常に問題になってきた。さらに政党幹部に対するテロという問題も出てきております。こういう観点から、南但馬一帯で起こっている暴力事件というのを、私たちは民主主義の根幹にかかわるものとして重視し、その徹底的な追及のために闘っているわけですが、いまの質疑応答を聞いていかがでしょう。
○稻葉国務大臣 諫山さんと刑事局長、警備課長の質疑応答を聞いておりまして、南但馬地区の解放同盟がだんだん暴力化していると言われる現状に対する予防、取り締まり、捜査等の進め方、まあ一生懸命にはやっているんでしょうけれども、国民に歯がゆい、なまぬるいというような感じを持たれるとすれば、これは重大なことでございます。したがって、先ほどもお答えしたように、そういうことのないように――こういったような暴力を許して一体法秩序の維持という法務大臣の役割りを果たせるのかどうか、非常に心痛をいたしております。今後ともなお一層督励して、一日も早くこういう暴力事件等がなくなりますように、根絶されるように庫身の努力を傾けたいと存じております。
○諫山委員 警察は一応捜査終了のめどを持っているようですが、検察庁はいつ終わるかわからないという状況のようです。そして、私が現地で話を聞きますと、とにかく八鹿高校事件が大きいし、橋本先生の家の事件も大きいし、なかなかほかの事件まで手が回らないということが実情のようです。したがって、たとえば逮捕してみても、もう調べが本格化したときには証拠隠滅のおそれが薄らいでいるというようなことで、身柄拘束も非常に困難になるというような状態のようですが、私はその意味では、必要とあらば、たとえば他の県から応援を出すなりして、もっと検察庁の捜査も促進していただくべきではなかろうかと思うのですが、どうでしょう。
○稻葉国務大臣 この辺の具体的事件の内容は、特に同和問題というもののむずかしさもまざまざと経験させられた事件でございまして、大いに督励してやったらどうか、暴力事件なんだから遠慮することはない、どんどん人数もふやしたり費用も増したり、やったらいいじゃないか、指揮したらいいじゃないかということでございますが、具体的な事案でございますので、法務大臣から、どんどんやれとか、いつ幾日までにやれとか言うべき事案じゃございませんので……。私の一般論としては、国民に歯がゆさを持たしては暴力事件を掃滅することができないという所信は持っております。そういう点で、いまの具体的事案については、刑事局長から先生の御質問に対する答弁をさせます。
○安原政府委員 先ほど私が、いつ終わるかわからないという趣旨のことを申し上げたという御理解でございますが、大変な異常な決意をもって臨んでおり、一日も早く真相の究明をするというために異常な努力をしておりまするが、いつ終わるかを具体的に申し上げることはできないといった趣旨でございますので、もとより御理解いただいていると思いますが、そういう次第と同時に、先ほど来警察庁当局から御説明のとおり、まだ捜査中の事件もございますので、その送致事件の内容なり数に応じまして、検察庁全国一体でございますので、最寄りの検察庁その他から、足らぬときには検察官を投入いたしまして迅速な処理を図るという決意には変わりのないことを御理解いただきたい、かように思います。
※→八鹿高校事件関連国会質問一覧 1974/11/22〜1975/03/31