74-衆-地方行政委員会-4号 昭和49年12月24日

○和田(貞)委員 まず私は自治省のほうにお尋ねしておきたいのですが、私たちが仄聞するところでは、近く自治省が同和行政についての通達を出すのじゃないか、こういうようにいわれておるわけなんですが、そのことの真意をこの機会にひとつお聞かせ願いたい。そうでないのかどうか。

○林政府委員 同和行政につきましては、これはたいへん重大な問題だといたしまして、きょう私の省ももちろんでございますが、それぞれの所管の各省、これらを取りまとめております総理府でもって常々その正しいあり方についての指導をやっておる次第でございまして、最近起きました一つの不幸な事件もございました。これらを契機にさらに同和行政の全般の正しいあり方というものを各省とよく協議いたしまして、地方団体のほうにもしかるべき指導をいたしたい、こう考えております。

○和田(貞)委員 正しい同和行政というのを一応自治省として各省間の意見の調整もおありのことだと思いますが、同和行政の正しいあり方というのは、これは一つしかないと思うのです。したがって自治省として、いま申し上げましたように通達を出そうとしておるのであれば、一体どのような考え方が同和行政としては正しいのだ、こういうように思っておられるのか、あわせてお聞かせ願いたいと思います。

○福田(一)国務大臣 行政、でございますからして、同和行政の場合においても、これは同和関係の人たちに公平に行政の恩典が浴するということが原則でなければなりません。この点においては明瞭だと思うのであります。
 ただ疑問になっておるのは、市町村がその経費の一部を何かある一つの団体の運動をするために出しておるというようなことがありますれば、これは私は考え直してもらわなければならないと思っております。

○和田(貞)委員 特定の団体が運動するために予算を使っておる、こういうことですか。

○福田(一)国務大臣 市町村の経費の支出の内容におきまして、これは市町村の自治でございますから、必ずしもそれにむやみに干渉することがいい悪いという問題はございましょう。しかし、いずれにしてもその経費のうちに何かある特定の団体にだけ経費を支出しておるというような面がありとすれば、こういうものは是正をしてもらいたいと思っております。私は同和の中に一つ、二つ、三つの団体があるように聞いておりますが、どの団体に属する場合においても、どの団体の仕事をする場合においてもそういうようなことがあ、ってはならない、かように考えております。

○和田(貞)委員 私は、特定の団体に予算を使わせよというような、こういうやぼなことは言うておらないのですがね。いま大臣の言われたように公費ですからね。公費を特定の団体に上げてその団体が使うというようなことは、これはいま大臣の言われたとおり。しかし私たちの言いたいのは、これは同対審答申が出されたこと大臣も十分御記憶のとおりであると思うのです。同対審答申が出されたその過程というものを十分見きわめてもらわなければならぬ。同対審答申にはっきりと書いておるわけですが、これはもう過去の長い間の歴史の中で戦後なお差別が厳存しておる、こういう認識の上に立ってこの差別を、心理的な差別にしても実態的な差別にしても、これを抜本的に解消しなくちゃならない。そのためには国が責任をもって国民的な課題として、しかもその事業を進めるについてはその地域の住民の自主的な運動過程の中で調和を保ちながら、協力しながら同和事業というものを進めていかなければならないというのが、これは同対審答申の基本であるし、それに基づいてつくられたのが特別措置法である、こういうように思うわけなんですが、そういう認識の上に立っての先ほど来の発言であるかどうか、お聞かせ願いたい。

○福田(一)国務大臣 ただいま和田さんがお話になりましたような趣旨で行なわれなければならないと思っております。

○和田(貞)委員 通達が出されるという場合も、そういう観点に立って通達が出されるということでなくてはならないと思うのですが、それでいいのですね。

○福田(一)国務大臣 今度八鹿町に起きたような事件もございますので、ひとつ内部的に騒ぎが起きるとか、闘争とか、対立とかというようなことがないようにできるだけしてもらわなければならないということと、それからそういうような疑問のある経費などというものはなるべく使わないようにしてもらいたいという趣旨があってしかるべきだと私は思っております。

○和田(貞)委員 だから、私はいま言われたことではなくて、私が先ほど申し上げた同対審答申の精神にのっとって同和事業というものは進めていくのだということが基本的な考え方に立っての同和行政でなくてはならないし、その観点に立った政府通達であるべきだと思うのだけれども、それでいいかどうかということです。

○福田(一)国務大臣 その通達があるにかかわらず間々こういうようなことも起きておるやに見られるから、そういう点も十分考えてもらいたい、こういう趣旨になるだろうと思います。そうでなければ通達を出す必要はないのです。すでに通達は出ておるのだから、いまさらそんな通達を新しく出す必要はない……

○和田(貞)委員 通達は出さないのですか。

○福田(一)国務大臣 いや、そうじゃない。もうすでに通達のそういう趣旨は明らかになっているのですから、同対審の審議会の方針でも、答申でも何でもはっきりしているのですから、そのまま行なわれておれば、何らそれに屋上屋を重ねるようなことは必要ないと思う。だけれども、今度のような八鹿町のようなことが起きますと……

○和田(貞)委員 それはまたあとから話します。

○福田(一)国務大臣 あとからにしても、今度通達を出すのはなぜかというお話だから、原因を言わなければわかりません。だから、申し上げておるのです。そういうようなことがあったものですから、そういう場合においてはそういう疑義が起きるようなことはなるべくしないで、ひとつ仲よくやって、いわゆる公平の原則に従って同和行政が行なわれ、そうして差別というものがなくなるようにしてもらいたいという趣旨の通達になるべきではなかろうかと思う。
 ただし、これは私は原案をつくったわけでもありませんし、まだ見ておるわけでもありませんから、いまあなたがどういうものを出すのだと言われるから、御趣旨に従って、中心になるようなものはこんなことじゃないだろうかということを考えている。しかし具体的にまだ起案しておりませんから、はっきり申し上げるわけにはいきません。

○和田(貞)委員 時間の関係もありますので、あと進みたいと思いますが、方針としては変わっておらない、ものの考え方というのは変わっておらない。大臣の口拍子に出されました、かりにそういうことがあるとすればという、仮定の話をされておることもわかります。それが事実であるかどうかという、いま大臣の言われたようなことが、特定の自治体が特定の目的のために特定の団体に出すというようなことがあったとするならばということを言われたわけですからね。そのことはあるかないかということは仮定の問題ですからね。しかし今後出される通達としてもやはり政府の方針としては、先ほども申し上げたように、同対審答申の精神にのっとった同和行政を進めるという、こういう考え方のもとに、何回通達を出しても、その通達に流れる基本というものはそうでなくてはならないということを私は言っているわけであるから、その点については異議ないわけでしょう。

○福田(一)国務大臣 そうです。

○和田(貞)委員 そこで、一つは大阪の羽曳野市における同和向け住宅の入居の問題について現地でごたごたしているわけですね。その点についてひとつ、大臣が先ほど言われた公正、民主的、平等でなくてはならないというものの考え方に、私はいろいろと話をしながら、大臣だけじゃなくて関係各省のほうにお尋ねしていくわけなんですが、まず大阪のいま申し上げた同和向け住宅、これは解放行政の一環として、地域の環境をよくするという立場に立った地区の改良住宅あるいは公営住宅の建設という事業であるわけですが、大阪府では昭和二十六年、赤間文三さんが知事をやった当時ですね。赤間文三さんの知事の当時から、同和事業を実施するには公益法人大阪府同和事業促進協議会、略称府同促協というようにいっておりますが、こういう公益法人の団体をつくりまして、そして行政が同促協と協力してより効果あらしめるという考え方のもとに同和事業を進めてきておるわけです。念のために申し上げておきますが、この同和事業促進協議会には知事ももちろん入っておりますし、府下の全市町村長も入っておりますし、もちろん運動体としての部落解放同盟の代表者、役員あるいは学識経験者も入っておる全く政治色のない財団法人です。ところが昨年の十一月に羽曳野市に建設された同和地区向けの公営住宅、百戸建設されて、いま二十四戸建設中でありますが、この百戸の住宅が建てられたのは、部落差別に反対して解放行政を求めて、そしていま申し上げましたように、その一環である住宅の建設のために部落解放運動に結集した部落大衆の苦しい戦いの中で実現ができたわけです。にもかかわらず、建設が終わったこの百戸の住宅が約一年間今日まで放置され、そしてその間におきましては、先ほども申し上げました府同促協の第二十三回の定例総会の決議として、地元の実施機関の長である羽曳野市長に勧告をいたしております。あるいは五月に入りまして知事が調停に入りまして、知事、市長、そしていま申し上げた府同促協の三者による確認書が次のようにつくられておるわけです。その当時は羽曳野の津田一朗市長は、府下でただ一人だけ、彼が市長に就任するや府同促協を脱退しておるわけです。そこで知事が調停に入りまして三者で協定いたしましたのが、府同促協に復帰をする、これが一つ。したがって、羽曳野市も七月十六日にこの府同促協に復帰をいたしております。だから、もとどおり全府下の全市町村長がその府同促協の構成員になっておるわけです。二つ目は、住宅問題については府同促協との協議の上に立った入居選考委員会や実態調査を経て実施する、これが二つ目の協定事項です。この二つを骨子とした協定事項ができた。あるいは入居選考委員を選考するにあたっては部落会長、自治会長ですね、町会長です。その部落会長の意見を聞いて選考していく、こういう約束を部落会長との間にしておるわけです。いま申し上げましたようなそういう経緯を再びほごにいたしまして、十一月十九日、突如として記者会見をやりまして、その三つの経緯を振り捨てて、新旧区長さん八名おりますが、この八名を一方的に選考委員として委嘱状を送っております。そして委嘱を受けておらない者もある、受けた者もある。ところが、その委嘱を受理されなくても十二月のかかりになれば入居を行なう、こういうように記者会見で発表をしておるわけです。したがって、再び入居についての混乱が起こる、こういう原因をつくり出しておるわけです。(「市町村長がやるんだよ」と呼ぶ者あり)これが十二月十四日から十五日の未明にかけての羽曳野市の住宅入居紛争事件であります。羽曳野市の大西という市長公室長は、そのような記者会見のあとで何度も市長に進言したが市長は聞いてくれなかった、こういうように嘆いているくらいであります。これが羽曳野の住宅問題の紛争事件の最近におけるあらましなんです。
 そこで、この一方的に市長が八人の選考委員を委嘱して四人しか受理しなかった。その四人で選考してしまった。もちろんその前に受け付けをするところにも問題があったわけであります。
 私は、話をあとに進めるにあたりましてこの機会に建設省に……。公営住宅というのは一般向きの公営住宅もあれば特定目的を持つ公営住宅もあります。一般向きの公営住宅というのは住民一般を対象とするわけでありますから、これはどの自治体でもやっておることは大体同じようなことをやっておられると思う。しかし、特定目的に合致する公営住宅というのは、まずその特定目的に合致する資格があるかどうかということです。一般向きの住宅のように、さあ収入はどうであるとか家族構成はどうであるとかということだけでなくて、その特定目的に合致する資格があるかどうかということが一番大事な問題でありますから、だから、この点につきましてはやはりむずかしい問題なんです。そこで建設省は、こういう特定目的のところの公営住宅の入居にあたってどういうような事務をやればいいかということを行政指導されておるかということについてまずお聞かせ願いたいと思う。

○吉田説明員 お答え申し上げます。
 ただいま御指摘がございましたように、一般向けといわゆる特定目的でございますが、特定目的の内容はいろいろございまして、母子世帯でございますとか身体障害者世帯、その他いろいろあるわけでございますが、特に同和向けの場合が御質問の点かと思いますが、いずれにいたしましても最終的には事業主体が判断するわけでございますが、その判断にあたりまして、同和向け公営住宅の場合にはそうした事情に精通している方あるいはそういった関係の団体、そういう方々の意見を入れましてその御協議によって運営していくのが一般的な形と存じます。

○和田(貞)委員 いま建設省が言われましたように、今後自治省も行政指導するにあたって聞いておいてほしいのですが、母子家庭、心身障害者、老人向け、それぞれの特定目的がある。これは市町村長が、この世帯は母子家庭である、この世帯は老人家庭である、この家庭は心身障害者の持っておられる家庭であるということは証明できます。住民票からいってみても、あるいは手帳からいっても証明ができます。市町村長が証明することができます。けれども、同和地区向けを目的とした住宅については市町村長は証明できません。先ほどうしろのほうから市長が、市町村長がと言われる発言もありましたけれども、この世帯は部落住民であるということは一体だれが証明するのですか。(「最終的には市長だよ」と呼ぶ者あり)そうですが。市長がこの世帯は部落民であるということを証明できるのですか。(「できますよ」と呼ぶ者あり)できるか……

○伊能委員長 静粛に願います。

○和田(貞)委員 できないのです。だからこそいま建設省が言われたように、同和地区向けの住宅については証明ができないのだから、その地域の自主団体として自主的に運動しておる団体に相談を投げかけて、相談をし協力を得なければ、この特定目的を達する事業というものはできない、こういうことですね。にもかかわらず、いま例をあげました羽曳野市長は意見を聞いておらない。意見を聞くということを約束しておるのです。にもかかわらず聞いておらない。念のために言っておきますが、この羽曳野市長というのは共産党員の市長です。だからひとつそのことについては、いま建設省が言われたような行政指導は今後なおしてもらわないと困ると思うのですが、さらにこの行政指導を建設省や自治省はやってもらいたいと思うのですが、どうでしょうか。

○福田(一)国務大臣 いまのようなお話は、原則論を申し上げますと、やはり具体的な問題についてこういう委員会でいずれが是でありいずれが非であるという判定を下すことは私はむずかしいと思います。現地においてどういうようなことが起きておったかというのは、知事とかあるいはまた市長とか町長とかいうような人が一番よくわかっておるわけなんです。いまあなたがおっしゃったことは間違いだと申しているのじゃありませんけれども、こういう場所でいずれが正しいか正しくないかという判断をすることば間違いであります。原則論しか言えないと思うのであります。
 そこで原則論になりますが、いまのようなお話になりますと、一体同和の人たちがどれくらいいるかもわからないのに、建設省が戸数を何戸つくるとかなんとかいうようなことを一やはり全国的に基準で、ここには何百人いられる、だからここへはどれだけつくる、ここには百人いられるからこれだけつくるという基準というものがなければいけない。
 私、実は同和のしろうとで教えていただきたいのですけれども、そういうふうなことは大体わかっているのじゃないか。私の聞いているところではいろいろの団体が三つばかりあるように聞いておる。その三つあるのはみんな同和の方であると認定をするのが、政治的に見れば正しい認定のしかたであると私は思うのです。その三つのものを対象にして建設省としては、あるいはその他のことにしても、保育所をつくるとかいろいろなことはほかにもあるだろうと思うのですが、そういうことをおやりになるについては、やはりそういうものを、全体の数字を一応は把握しているのじゃないかと思うのです。そこいらが私は実に残念なんですが、何とかもっと仲よくしてもらえないだろうか、行政をやっているわれわれとしては、何とかもっと仲よくしていただきたいと思うのでありまして、そういうような具体的な問題になって、適用が正しかったかどうか、羽曳野市の市長がやったのが正しいかどうか、あるいは府同促協がやられたことが正しいかどうかというようなことは、この委員会では判定すべき筋合いのものではない。これは場合によってはそういうことは申すと非常に問題になるのなら、やはり委員会でもって実地踏査をするとか、そこへ行って見てくるとかいうことでもしなければ、結論は出ないと思うのです。
 私が先ほどから申し上げておるのは、とにかくそういう意味で予算を出すのだから同和関係の人はみんな仲よくして、みんなに平等に渡るような努力をしてもらいたい。それで市町村が何か金を使うような場合でも疑わしいようなことはしないようにしていただきたい、こういうことを言うことはちっとも差しつかえないのじゃないか。いまおっしゃったあなたのお気持ちを決してそこなっておらないのじゃないかという考え方でおるわけであります。これがいいか悪いかということになりますと、ここではちょっとお答えできない……

(林(百)委員「委員長、議事進行ですが、市長が共産党だとかなんとか、どうしてそういうことを言うのですか、それこそ差別ですよ」と呼ぶ)

○和田(貞)委員 事実を言っておるのですよ。(林(百)委員「そんなことを言う必要はない、委員長、注意してください」と呼ぶ)

○伊能委員長 静粛に願います。(林(百)委員「議事進行ですよ。市長が共産党とは何ですか、何党だっていいじゃないか」と呼ぶ)

○吉田説明員 ただいま自治大臣のほうからお答えがございましたが、建設省といたしましても同和向け公営というものにつきましては、もちろん公営住宅でございますので、公営住宅法の規定に従うということは当然でございますが、その性格上同対審の答申でございますとかあるいは同和対策事業特別措置法、こういった趣旨にのっとりまして、地域の実情に即応したように適正かつ公正に実施していくようにという方針で指導をいたしておる次第でございます。

○和田(貞)委員 自治大臣、いま建設省はそう言っておられるのだから、これは専門ですから、特定目的を持った住宅については、やはり特定目的に合致するような事業が達成できるようにしなければならぬということがいわれておるわけですね。自治大臣はちょっと先ほどから誤解をしておられる点があるのですが、三つか四つ団体がある。仲よくしていったらいい。私はけんかするというようなことを一つも言っていない。私は、大臣が先ほど言われたように、公正、民主的にやっていかなければならぬと思うのです。だから、公正、民主的にやっていかなければならぬにもかかわらず、私がいま一つあげましたようにこの羽曳野市では、先ほども言ったでしょう、知事が調停して公正、円満にやっていこうということで、市長も同調して協定を結んだのに、市長がその協定を破って、一方的に八人の選考委員に委嘱して、その八人が全部受理されておらないのに、四人の選考委員だけで選考してしまったという無理があるわけです。だからそういうようなことは、公正、民主的であるというようにだれも思わないし、さらにそれでつけ加えて言うならば、これは実施機関がそれぞれやられるわけですから、羽曳野市という実施機関が入居者を募集された。募集されたということであれば、その募集にはかくかくしかじかという条件がある。まず申し込む資格というものがある。ところが、その申し込む資格要件があるにもかかわらず、受け付けたときにその資格があるかどうかということを調査されなければいかぬのですね。あまり長くなりますので、ここで一つ例をとって言いますと、たとえば市役所の職員ですが、桝野繁子という人がおる。桝野繁子という職員が申し込んでおるのですが、現住所欄には羽曳野市向野三の七の十一、住民票もそうなっているのです。ところが、同じ申し込み書の中の、住宅に困っている事情の欄には、現在すでに改良住宅に入居して六名以上の家族数になっているということを住宅に困っておるという事情にしておるのです。しかも、住民票に記載されておる住所と、住宅に困っておるという事情の中に書いておる住所と違うのです。さらに、実際はどうかというと、桝野繁子というのは別なところに住んでおるのです。向野の南団地というところに、夫の桝野昭重名義で二百三十三号に入っておるのです。一室を持っておる。ところが、その一室はからっぽなんです。そういうようなでたらめな受け付けをやっている。これが公正、民主的であるかどうかというようなことを判断願う一つの例なんです。あるいは当選をして入居者がきまった。せっかくきめておきながら、きめた中に資格のない者がたくさんおるのです。たくさんおるということに対しまして、これは公正、民主的な方法でやってないじゃないか、公正を欠いておるじゃないかということで、先ほどお話しいたしましたように、十四日から十五日の未明にかけて市長が入居を強行しようとしたときに、それは公正を欠いておるじゃないかということで、執行を中止してくれ、こういう申し立てを知事にやり、そういうような行政は不服だということで、住宅の選考に漏れた人たちが不服審査請求をやって、知事がその行政不服審査請求を受理するかどうかということはまだ結論が出ておらない。そういう中で警察官を百名動員いたしまして、警察官の協力の中でその入居の手続を強行している、こういうことでトラブルが起こっているわけです。その結果、ついこの間ですが、十二月二十一日に市長が入居を発表いたしました。当選しておった吉岡喜三郎、これは資格がなかったということで取り消しておる。あるいは北本慎介というのは、実は地区外に住んでおったということがわかっつてみずから辞退をしておる。あるいは市長が、すでに入居を決定いたしました、先ほど申し上げました市役所の職員桝野繁子あるいは和島義和、万野幸一、この三人についてはまだ保留するというような発表をするという、非常にずさんな形で募集され、ずさんな形で入居者が決定されておるというのが、この羽曳野の住宅紛争の大きな原因である。これが公正であるか、民主的な方法でやられたのか、平等なのかということをまずひとつ判断してもらいたいと思うわけです。
 そこで、結論を申し上げましたけれども、そういうような公正でない、民主的でない方法で入居者が決定される過程を踏んでおるわけなんですが、にもかかわらず、なぜ警察がそういう不当な入居をさせようとする市長をたしなめないで、警察官を百人動員して入居手続をとらす協力をしたか、こういうことをひとつお答え願いたい。

○福田(一)国務大臣 私たちといたしましては、どういう事情がありましょうとも、そこに傷害事件が起きるような事態が起きた場合には、そういう傷害事件が起きないような措置をとることは警察の任務だと思っております。それが正しい主張であっても、正しくない主張であろうとも、そこに暴力が起きるようなこと自体を取り締まるのが警察でございますから、その点はひとつ今後もそのような方針で臨ませていただきたいと思います。われわれは暴力というものには絶対反対でございます。

○和田(貞)委員 これは何も暴力はしていないのですよ。

○福田(一)国務大臣 私のほうで聞いているのでは、警察のほうからあれしたらいいと思いますが、ガラスが割れたり何かあるのですよ。何にも暴力がないのに、ガラスが割れる道理がないのです。やっぱりそれは何かがあるわけなんです。そうすると、ガラスが割れるようなことがあれば、そこでまたなぐり合いが起きないとは限らない。予防的な措置をとるということを一応認めていただきたい。
 行政が公正でなかったとかなんとかということは、私はここでいまそのことをあなたから話があったから認めるというわけにはいきません。そういうことを一々自治大臣がやっていたら、これはとても生きてはいられない。(和田(貞)委員「警察でいい」と呼ぶ)いや、その原則を申し上げておるわけです。
 では、警察のほうからそのときの事情をひとつ説明したらいいでしょう。
○山本(鎮)政府委員 十一月十四日のケースでございますが、いまお話しのあったような形で入居するかしないかという問題でございますが、これをめぐって部落解放同盟側の方が現場に八百人ほど、部落解放同盟正常化府連の方が四百名ぐらい集まって、非常に緊迫した事態になったということで、一応管理者である市長からも、何とか不祥事件が起こらないように適正な措置をとってもらいたいというようなこともございまして、このまま放置しておきますと、いろいろな暴力事案、衝突事案が起きるおそれがある、そういうことで約五百名の警察官が現場で警備的な措置をとったということでございます。
 それから、府のほうにもいろいろと行政不服審査法に基づく審査請求あるいは執行停止の申し立てを行なっていることは承知いたしておりますが、まだこの決定もないということでございますので、一応市長の管理権に基づく要請を妥当なものとして、そのような措置をとったわけであります。
(「仮処分が出ているんだよ」と呼ぶ者あり)

○和田(貞)委員 裁判所の仮処分が出ておるということは知っておる。わかっています。けれども一方では、先ほどのような不公正があるのでということで、入居に漏れた者たちが知事に対して行政不服審査請求をしておるのですよ。その結論が出ておらないのだからということ、現場の警察はそういうことも判断して、市長から何回も要請があったけれども、なかなか出なかったのですよ。しかも夜間のことでもあるし、道路が狭いし、非常に混乱してけが人が出たらいかぬということを憂慮されて、市長から再三の要請があってもまだ市長に対して、朝になってからにしたらどうですかということを警察の署長は判断して、市長にも意見具申をしておるのですよ。
にもかかわらず、なお市長は、これは新聞に載っておりましたけれども、けが人が出てもいいからやってくれ、こうでしょう。これは市長としてのやり方じゃないでしょう、考え方じゃないでしょう。むしろ私は現場の警察署長の判断のほうが正しかったと思う。しかしながら警察に強硬措置の依頼を再三再四するから、そこまで言われるのであればということで、警察官が道をつくって入居者を団地に入れた、こういうことなんです。しかもこの団地にはまだガスもついてないのでしょう、水道もついてないのでしょう、電気もついてないのでしょう。一年もたっておるのだから、市当局が認めているように、補修せぬと生活できる状態じゃないということなんです。それをなぜ夜中にそこまでせにゃいかぬかという、こういう点が疑問視されるでしょう。建設省、どうですか。大体住宅に入居者が入れるというような正常な条件というのはどんなことですか。

○吉田説明員 公営住宅の措置につきましては、事業主体の状況判断できめるべきことでございますので、その実態の背景その他がどうなるかということによって事情はあるかと思いますが、先生おっしゃるように、非常に深夜であるとかあるいは電気もガスも出ないというような状態で入居するというケースはあまりないということは事実だろうと思います。

○和田(貞)委員 正常な生活できる条件の中で――夜中に行ったところで、電気屋へ行ったところで電気が入らぬでしょう、水道屋へ行ったところで水道は入らぬでしょう、ガス屋へ行ったところでガスは入らないでしょう。しかも、一年もたっておるのだから壁の塗りかえもせにゃいかぬし、建具も張りかえなければいかぬ。そんなときになぜ夜中にそんなにせにゃいかぬ。しかも普通の状態で入居するというたら、やはりいかに道具が少なくてもトラックやあるいは軽四輪で家具を積んで入居していくというのが普通の姿ですよ。ところがそうじゃない、ほうき一本持って入居しにいく、毛布一枚持って入居しにいく。ただ入居したという事実をつくる、こういうことを何とかしよう、こういうことにほかならないのじゃないか。
 そのような不正常な入居のやり方あるいは不正常な入居手続のしかた、あるいは建設省が先ほど言われたように特定の目的を持った公営住宅について、やはり特定の目的に合致するような、目的が達成することによって初めてその事業というのは効果があがることであるし、まして同和向けの住宅という問題については、これは解放行政の一環として住宅が建てられておるわけですから、その住宅が一つ一つできていくことによって部落の解放というのがなされていく、こういう効果をあげるような行政にしていかなくてはならないと思うわけであります。  このようなことについては、一つは警察にお願いしたいわけですが、やはり現場の警察署長の判断が正しかった、そういう正しい警察署長の判断というものをもっと強く市長に要請してほしかった、こういう希望がありますし、建設省に対しましては、さらにそういう特定目的が達成できるような事業が進められるよう、今後なお自治体に対しましてひとつ行政指導をやっていただきたい、こういう希望を申し上げておくと同時に、自治省としてもひとつ各自治体に対してそういうような行政指導を今後ともやってもらいたいというように思うわけなんですが、簡単にひとつお答えをいただきたい。

○福田(一)国務大臣 御趣旨は、一応あなたのお話で、そういうような公平なやり方をすべきであるということはわかります。しかし、私は警察の立場から申し上げますが、とにかく夜入るのもおかしいかと思うけれども、それに関連して五百人も四百人も相対峙した形においてそういう事態が起きておれば、やはり警察としては何か事件が起きないような予防措置をとるということも警察の大きな任務だと私は思っておりますので、その点まではひとつお許しを願いたいと思います。大体、人が入るのに十人や十五人が、これは困るとかなんとか言ってわあわあ言っているぐらいのことで警察が出てきて、これはけしからぬとかなんとか、そういうことはやめなさいと言うことは私はいかぬと思いますけれども、何といっても百戸の住宅に入るのに双方千人ぐらいの人が出てわあわあけんかするかのごとき事態が……(和田(貞)委員「むちゃするからそういうことになるのですよ」と呼ぶ)いや、むちゃであろうと何であろうと、そういう暴力が起きるようなことはできるだけ防ぐというのが警察のたてまえでなければならない、私はこう思っておりますので、その点は自治体として公正にやれという意味ではよくわかりますけれども、そういうようなことが起きないようにお願いすると同時に、やはりあまり多数の威力を行使するような姿はなるべく差し控えるようにまた指導をしていただきたいと思うわけでございます。

○吉田説明員 建設省といたしましても従来と同様に、公営住宅でございますので公営住宅法の規定に従うのはもちろんでございますが、同対審の答申の線に即して適切に、かつ公正に運営されるように公共団体を指導してまいりたい、かように思います。

○和田(貞)委員 先ほど例をあげました羽曳野市のような不公正な非民主的なやり方で、住宅をせっかく建てながら、公費を使いながら効果をあげることができないような結果に終わることのないように、ひとつ建設省のほうも自治省のほうも自治体に対する行政指導を強く要望しておきたいと思います。

 その次に、八鹿高校の問題について触れてみたいと思うわけでありす。
 十二月二十日の朝日新聞で、日教組が中央執行委員会の決定で公式見解を発表いたしております。それによりますと、この問題の発端は八鹿高校の教師集団が被差別部落の生徒たちの教育要求に対する話し合いをかたくなに拒否し続けたことにあるとしている、こういうことが報道されておる。しかし、この日教組も、もちろんわれわれもでありますが、一部の生徒が言っておりますように、一部の生徒が暴力を肯定するとかそんなようなことにつきましては、日本社会党あるいは現地の部落解放同盟も暴力を肯定するというような考え方は全くない、こういうことをこの機会に明らかにしておきたいと思うのです。
 なお、日教組の公式見解が出されましたように、やはり原因がある。十一月二十二日という時点から遠くさかのぼって、ことしの初めごろからその十一月二十二日の事件が起こるという原因がやはりあったのだ。これは簡単に申し上げますならば、兵庫県下でこの八鹿高校の同和教育というものは一番すぐれておる、一番先進的な同和教育をしておるといわれておったわけです。またそういうように言っておる方もある。ところが実態はそうであったかといいますと、残念ながらそうでなかったのです。八鹿高校の同和教育の実態というものは、いまあらわれておるわけですが、この八鹿町の地域全般に全く差別意識というものが充満いたしております。町の中でもあるいは学校の中でも、今日考えられないような差別発言がまき散らされるというような状態になっておる。学校の中で生徒たちが部落の出身の生徒をつかまえて、ヨツ、エッタ、こういうことばを平気で使う状態になっておるのであります。林田留里子という女生徒がおりますが、この林田留里子が一年生のとき、おととしです。教師が、同和教育の時間ですよと言いますと、生徒たちの中から、留里ちゃんの時間やよと、こういう発言があるというくらいであります。コーラを飲みに行くと、エタの留里ちゃんがコーラを飲みに行く、こういう生徒の発言がある。留里ちゃんは家に帰って泣きながらおとうさん、おかあさんに話しました。おとうさん、おかあさんは、この子をいまささえてやらないと自殺するかもわからないよという心配をいたしまして、夫婦で相談しておるのです。ある日二階で留里ちゃんが寝ておると、そっと母親が上がって、手を口のところに当てて、まだ息がしておるということで安心をしたくらいだということをこのおかあさんが訴えております。
 これが学校における一つの例でありますが、そのような、白昼堂々と学校の中で、しかも部落の出身の生徒たちをつかまえて差別発言をまき散らすというような、こういう姿を見て、はたして先進的な同和教育であったか、進んだ同和教育がなされておったか、このことを非常に疑問に思うわけであります。こういうことについて文部省見解を明らかにしてほしい。
  〔発言する者あり〕
○伊能委員長 御静粛に願います。 ○山崎(平)政府委員 ただいまの御質疑に対しましてお答え申し上げますが、特に具体的例とされまして日教組の八鹿高校問題についての見解、これをもとにお話がございましたが、この件につきましては、その前文にもあらわれておりますように「更に時間をかけて究明する必要があるが、二度にわたる調査の結果を現段階で集約し、中間的に、その見解を」明らかにするということが表明されておりますが、文部省側といたしましても中間的な報告は受けておりますけれども、まだ実は最終的の詳細なる報告を受ける段階には至っておりません。しかしながら基本的にこの問題は、先般来文部大臣もいろいろ表明がございましたように、特に十一月の二十二日の事件が、外部等の者の暴力によりまして同校の教職員に多数の負傷者を生ずる不祥事件が発生いたしまして、そのため学校の運営も混乱状態におちいったことはきわめて遺憾でございまして、まことに憂慮にたえないと存ずる次第でございます。
 文部省といたしましては、この事態に対しましてまず何よりも考慮すべき問題は、授業の再開、回復ということをはじめといたしまして、学校運営の正常化をはかって、生徒の教育についてはもちろん、学校に対する父兄をはじめ地域住民の信頼を確保するのが第一であると考えまして、兵庫県の教育委員会と緊密な連絡をとりながら同教育委員会がそのために全力を傾け、具体的な措置に遺憾がないように期していただくよう指導してきたところでございます。
 たまたま私去る十二月三日に、大臣――前の三原文部大臣でございますが、命を受けまして兵庫県庁を訪問したわけでございます。当日はたまたま県会中でございまして、昼休みの四十五分に限ってということでございましたので、非常に限られた時間であり、限られた話の範囲でございましたが、山口副知事それから教育長の白井さん、教育委員長の印部さん、この三人の方々を中心に四十五分間、十分に意見を取りかわしたわけでございます。
 その内容は、私といたしましては、たいへん大きなけがをされた方を含めて二十七名入院されておられますが、そのときの病状、傷の模様はどうかということをお尋ねしましたが、大体いろいろ予想されておりましたように、軽傷の方々は職場に復帰する日も遠くあるまいという状態でございました。その十二月三日というのはたまたま国鉄のストライキの日でございまして、同校はそれを理由に授業を取りやめておりました。ところが前日の二日、御承知のようないろいろ警察当局の手が入りまして、たいへん危険な状態でもあったわけでございまして、私としてはできるなら病院を見舞いたいと思っておりましたが、それも差し控えまして、実は県庁だけの会談にとどめたわけでございます。このことは、県庁側及び教育長の話によりますと、事はすでに五月ごろからいろいろの模様が見えた節もある、そういうことで、実はこういう問題についてもう少し早くから積極的な手を打つべきであったという点については遺憾の意が表されたわけでございます。
 ともあれ私どもといたしましては、まだ二十七名の方々が一日も早く職場に復帰していただくこと、現時点では、御承知と思いますが、きょう二十四日が終業式になっております。きょう授業を終わるわけでございますが、二十七名中すでに十九名の方々は退院しておられます。八名がまだお気の毒にも入院加療中でございます。そういう状態で、実はその教員の不足分を三十名ほど用意いたしまして、そのうち、事実お手伝いした者は十三名でございましたけれども、手伝い員を派遣しておりまして、その先生方の助力によって実は授業は、その後の日報をいただいておりますが、私が参りました翌四日からほとんど正常状態に近い状態に戻ったわけでございます。
 そこで問題は、さらにこまかい問題も後ほどお答え申し上げなければなりませんが、文部省といたしましては、県知事及び教育委員長からいろいろ文書の御回答を願っておりますが、その中に表明されておりますことは、やはり先ほどの日教組の状態と同じで、現時点の中間的な報告ということで、詳細はできるだけ早く報告をいただくということになっておりますけれども、したがって、現時点では文部省として考えますことは、今後教員間に流れております差別感、その教育のやり方、そういうものをどのようにして早く解消するか。できるならば、要すれば、ある程度の異動等も考えましても、その差別感を少しでも早くなくすように、そういうことが目下緊急の要務であろうか、かように考えておる次第でございます。
 いずれにいたしましても、一応授業は再開され、当時心配しておりましたところの無期限の休校などになりますと、受験を迎える生徒等もございますので、その点は最小の混乱にとどめ得た、かように思っております。ただし、まだ入院加療中の先生もおられますので、一日も早い快癒を祈るわけでございます。

○和田(貞)委員 事後処置について、これは御苦労さんです。私はその点については、努力されたことについては敬意を表します。
 私がお尋ねしておるのは、先ほども一つの例をあげましたように、いまちょっとお触れになられましたけれども、やはり十一月の二十二日という時点だけをとらまえるのではなくて、そういうようになってきたという奥深い同校の同和教育のやり方について私は問題があったということを指摘しておるのですが、その点はどうです。
(「どうして学校に行かないのだ、自動車で行けば行けるじゃないか」と呼ぶ者あり)

○伊能委員長 静粛に願います。

○山崎(平)政府委員 その点は先ほど申し上げましたように、県の教育長からの文書の回答がございますが、その中でも遺憾の意が表明されております。読み上げますと、「解放研生徒の願いを拒否しつづけた教師群の行為にみられる差別性や、校内における差別的言辞の事実など、同校の教育が差別教育であったところに、この事態の原因があると考えます。」、こういうふうに明記されておるわけなんです。ところが、その後の詳報という問題は、申し上げたようにそのあとに、「文部省に対しては、事件の現象面にとらわれず、同和問題の本質を正しくとらえ、この視点にたって同校の同和教育の実態を、詳細に報告いたします。」こういう約束はされておりますけれども、まだ実はこの段階に至っていないわけでございます。こちらは待ちあぐんでおるわけでございます。

○和田(貞)委員 前段の、教育委員会が文部省に報告しておるように、先ほど次官が読まれたように、やはり解放研生徒の願いを拒否し続けたこの教師集団の行為に見られるこの差別性、あるいは差別的な言辞が校内でまき散らされておる、そういう中で同校の教育が差別教育であった、こういうことは文部省としては認められておるわけですね。
(「なぜ教師に会わないんだ、文部省は。教師に会わないで一方的に判断できるか」と呼ぶ者あり)

○伊能委員長 静粛に願います。

○山崎(平)政府委員 お答えいたします。
 八鹿高校の同和教育が公正、中立の立場から適切に行なわれていたかどうかについては、県の教育委員会で調査中の段階でございまして、その回答を求めているところでございますが、文部省といたしましては、元来、学校教育におきまして同和教育が今後とも適正に進められるよう努力いたしておる次第でございます。

○和田(貞)委員 文部省が各県の教育委員会に指導されている同和教育の基本方針、基本指導の方針、これをひとつこの機会に明らかにしてください。

○柴沼説明員 文部省としましては、同和教育は総合的な同和対策の重要な一環であり、その中心的な課題は同和対策審議会答申にも述べられているように、「法のもとの平等の原則に基づき、社会の中に根づよく残っている不合理な部落差別をなくし、人権尊重の精神を貫ぬくことである。」と考えております。
 文部省におきましては、従来から同和教育の推進につとめてまいっておりますが、今後とも同和対策審議会の答申に沿いまして、同和対策事業特別措置法及び同和対策長期計画に基づきまして、同和教育の一そうの充実につとめてまいりたいと存じております。

○和田(貞)委員 その中に、同対審答申でも述べられておるように「同和地区における住民の自主的、組織的な教育活動を促進し、住民みずからの教育水準の向上を助ける」ということもその目的に入っているんでしょう。

○柴沼説明員 同和教育を進めるにあたりましては、地域の実態に即しながらあくまでも公正、中立な立場で進めてまいりたい、そのように考えております。

○和田(貞)委員 そうすると、この八鹿高校にあった五年の歴史を持つ部落研、部落問題研究会、せっかくありましたこの部落問題研究会に部落の出身の生徒も参加しておった。ところがこの部落問題研究会の活動というものが、先ほどお話しいたしました林田留里子をはじめといたしました部落出身の生徒たちは、せっかくの同和教育、せっかくのクラブ活動がなされても、ただ部落の歴史だけを話す、こういうことだけでは、先ほど例をあげましたように、留里ちゃんの時間やで、あんたらの時間やで、こういうように事済まされる、むしろないほうがいい、そういう同和教育をなされるのであればむしろ部落の出身の生徒たちは非常にみじめだという、こういう悲観的な観念を形成していっているわけです。そして部落研をやめる、こういうことになっておる。そういう中で、やはり差別にうちかっていく強い生徒をつくっていく、差別観念を克服して差別と戦ってうちかっていく生徒をつくり上げていくというのが同和教育の基本でなくちゃならない。それがためにこの部落の出身の生徒たちが、自分たちみずからのそういう強い力をつくるために部落解放研という自主的なクラブ活動を認めてほしい、こういうことを学校に要求をしておるわけです。学校側に要求しておる。
 時間もありませんのでそう長く言えないわけでありますが、具体的に言えないわけでありますが、それがもうことしの卒業式のときから始まっている、もっと前から始まっている、それが何回も何回もそのような生徒たちの要求が入れられなかった。そこでついに十八日からすわり込みになった、二十一日の午後から断食に入った。そして先生たちに私たちと話してほしい、解放研の私たちとして話をしてもらえないのであれば、先生と生徒という間柄で話をしてほしいというところまで解放研の諸君たちが、部落出身の生徒たちが先生だちに訴えておるのです。そのようなことさえも聞かれなかった、拒否された、そういうところに問題があるわけです。(「顧問があるんだよ、顧問をつけろというのですよ」と呼ぶ者あり)いま顧問ということが言われておりますが、そのほかの体育部門や文化活動に対するいろいろなクラブ活動がありますが……
  〔発言する者あり〕

○伊能委員長 静粛に願います。

○和田(貞)委員 そういうようなクラブ活動では、先生たちの中で、おれはこのバスケットボール部のクラブ活動の顧問になってやろう、私がこの何々の顧問になってやろうということであれば、先生たちの意思によって顧問になっておるにもかかわらず、この解放研をクラブ活動に正式に認めてほしいということになりますと職員会議を開きまして、個人個人が自分の意思で顧問になってはいけない、解放研の顧問には個人個人の意思によってなってはいけない、職員会議の決定によってならなければいかぬというように、この解放研をクラブ活動に認めることだけに限って、先生方個人個人の意思さえも職員会議という名のもとに封じておる、ここらに問題があるわけなんです。それこそ全く他のクラブ活動と、解放研のクラブ活動を認めるにあたって差別性が充満した教師の態度と言わなくてはならないと思うのですが、どうですか。

○柴沼説明員 いろいろ学校の中で差別的な言辞があったとかあるいはその指導に問題があったとか、そういうような点につきましては、私ども現在県の教育委員会に具体的な事実がどうなっているのかということで調査を依頼しております。ただ、県の教育委員会としては、現在授業の正常化あるいは教員の安全をはかるとか、そういうようなことに力を注いでおりまして、まだ現在の段階では詳細な報告が参っていない段階でございます。  ただ、いずれにしましても、先生方は自分の学校の生徒に対して指導を尽くすという職責があるわけでございまして、教員側に生徒との話し合いを進めて事態の穏当な解決をはかるように県教育委員会としても十分指導して、十分というのは言い過ぎかもしれません。県教育委員会として指導してきたわけでございますが、このような事態になって私どもとしてもたいへん残念に思っております。

○和田(貞)委員 実態は把握できなかった。少なくとも私が先ほど申し上げましたように、学校における解放教育の主体というものは先徒にあるのです。申し上げましたようなせつない生徒の願いにこたえるというのが教師のつとめじゃないですか。そういう生徒の学習権の保障がないというような姿にしてしまう教師というものは、これは明らかに教育を放棄した、こういうことをいわなければならないと思うのですが、そのような考え方についてはどうですか。

○柴沼説明員 授業放棄ということが学校教育一般論としまして…
  〔発言する者あり〕

○伊能委員長 静粛に願います。

○柴沼説明員 授業放棄ということは許されないことはもとより当然なことでございまして、御指摘のごとき当日の状況につきましては、現在、先ほど申し上げましたように兵庫県教育委員会からの詳細な報告を待ちまして慎重に判断してまいりたい、そのように思っております。

○伊能委員長 和田君に申し上げますが、そろそろ結論をお願いいたします。

○和田(貞)委員 教師が生徒の言い分を聞かないというような教育がありますか、教師がありますか。それが実態なんです。
  〔発言する者あり〕

○伊能委員長 静粛に願います。

○和田(貞)委員 私はここで、法務省来ておられますので、法務省に一回見解を明らかにしてほしいと思うのですが、一年間に法務省が把握しておる差別事案というのは一体どのくらいありますか。

○森説明員 お答えをいたします。
 法務省におきまして年間取り扱っておる事件の数でございますが、まず同和問題に対処をするために開設されました特設相談取り扱い件数、これは私どもいわゆる人権相談事件と、こう申しておりますが、人権相談事件、昭和四十六年度におきまして二万五百十九件、昭和四十七年度におきまして三万一千六百八件、四十八年度におきまして三万五千三百九件であります。このうちいわゆる差別事件として私どもに地方法務局を通じまして救済の申し立てがありましたものは、昭和四十六年度において三十一件、四十七年度におきまして四十一件、四十八年度におきまして三十八件、こういうことに相なっております。

○和田(貞)委員 いまお聞きのように、年間三万件をこえるようなばく大な人権相談が法務省の出先にある。けれども、その差別事案として取り上げているのは三十件、四十件、この程度しか取り上げておらない。いま申し上げたように学校の中でも、町のまん中でもそういうような差別事犯というものがどんどん起こっておる。こういう訴えがなされておるけれども、それが処理されておらない。
 そうすると、警察にお尋ねしますが、警察官が前におって、そうして部落の住民をつかまえて差別言辞を吐いたら、これは差別事犯の現行犯でしょう。それでも警察は何とかできないというのが実態じゃないですか。

○山本(鎮)政府委員 差別的言辞というのはどういうあれかわかりませんけれども、それが侮辱なり脅迫なり、そういうことになれば、その要件を満たせば、それは犯罪事実として問擬することができるというふうに考えております。

○伊能委員長 和田君、次の質問者がお待ちでありますからおまとめ願います。

○和田(貞)委員 具体的に言いますと、部落の住民をつかまえてエタ、ヨツ、こう言われても、現行犯として警察官が逮捕しますか。

○山本(鎮)政府委員 その間の事情をよく聞いて、そしてそういうふうに言われた人がたいへんな侮辱を受けたということがはっきりすればそういう問題になるという場合もあり得るというふうに考えます。

○和田(貞)委員 されてないのですよ。警察は手のつけようがないと言うのです。しかし差別言辞を吐かれた側にとってみたら、そのことによって命を捨ててしまうというような事件が何ぼでもあるのですよ。一年間に何ぼあると思うのです。全くこの差別言辞というものは、文章で表現したりことばで表現するというようなことは人の命を奪ってしまうというような大きな暴力なんです。法務省は、そういうように差別言辞というものは暴力であるというように見解をとられないのですか。

○俵谷説明員 暴力というのは何かということでございますが、刑法の判例あるいは学問の上におきましては、最高裁判所あるいは大審院の判例によりまして、有形力あるいは物理的な力の行使、これがあった場合に暴力、こういうことになっておりますので、ただ言論等によりましてどのようなことばが用いられたとしましても、それは普通は暴力犯にはならないのではないか、こういうふうに考えられます。もっともこの言論等で用いられますことばが脅迫になるとかあるいは人の名誉を棄損する、こういうようなことになりますと、これは脅迫罪あるいは名誉棄損罪あるいは侮辱罪、こういった別の観点の犯罪が成立するのではないか、かように考えております。

○伊能委員長 和田君、恐縮ですが、おまとめを願います。

○和田(貞)委員 はい。大事なところですからね。そういうように差別発言がまかれただけでは暴力というようには断定できないから、警察側がそれを暴力だというように暴力事犯として扱えない。ところがいま申し上げましたように、差別発言がまかれたことによって本人が命を断ってしまう、自殺未遂に終わる、そういうようなことはあなた方はわかっておるでしょう。現実にそういうことが同対審答申にも認められておるのです。そうなってくると、差別を受けた側にとってみたらどうするのですか。命がなくなるというような暴力を受けて警察が手当てをできないというような中で、差別を受けた側にとってはどうなるのですか。そこに起こってくるのが糾弾じゃないですか。そこに起こってくるのが確認じゃないですか。その差別言辞を吐いた人間に対して反省を求める、事実を確認する、そして今後そういう差別発言をまき散らさないような人間になってもらう、これが糾弾です。これが糾弾会です。そういう糾弾会というものは、それじゃ法務省は一体、これは暴力というように思っておるのですか。
(「糾弾で自殺した者はどうするんだ」「黙れ」と呼ぶ者あり)

○伊能委員長 静粛に願います。

○俵谷説明員 お尋ねの糾弾会あるいは確認会と申しますものの実態がどういうふうなものであるかつまびらかに承知いたしておりませんけれども、民主主義社会にありましてはどのような形のものでありましても、またどのような原因あるいは動機あるいは主義主張に基づくものでありましても、暴力あるいは暴力的な行為は容認されない、かように考えますが、具体的にこの糾弾会あるいは確認会が暴力行為であるかないかというようなことは、その行為の具体的な内容が実際にどうであるか、その実情いかんによってそれが暴力行為に当たったりあるいはそうでなかったりということになるんだろうと思います。したがいまして、一がいに糾弾会、確認会なるものがどうであるというようなことは申し上げかねる、こういうふうに考えております。

○伊能委員長 和田君に重ねて申し上げますが、時間がだいぶたっておりますから……。

○和田(貞)委員 暴力だとは断定しないのでしょう。するのですか。

○俵谷説明員 これは申し上げておりますように、ケースによりまして暴力の行使あるいは威迫等が行なわれましたならば、暴行あるいは傷害あるいは暴力行為あるいはいろいろな世の中の犯罪に当たる場合だってあり得るということでございます。

○和田(貞)委員 そういうことを言っておらぬ。あなたは現場をよく知っておるでしょう。確認会や糾弾会が、差別を受けた側にとってみたら、やる場合に必ず第三者を入れておるでしょう、あなた方の出先が入っておるでしょう。それでも暴力ですか。あなた方が出先の行政の代表として、責任者としてその糾弾会や確認会に出席しておるじゃないですか。それでも暴力ですか。暴力でないというように断定できないのですか。

○俵谷説明員 それは個々のケースによりまして、事情によって違う、かように申し上げておるわけでございます。

○和田(貞)委員 だから、その糾弾会や確認会というのは暴力であるというように断定しないということでしょう。そうでしょう。首を振らぬとうんと言うてくれぬと議事録に残らぬじゃないか。

○俵谷説明員 先ほどお答え申し上げましたように、個々のケースによりまして具体的に判断さるべきである、かように考えております。

○和田(貞)委員 首を振るということを議事録に入れておかなければならぬ。
 ことばだけじゃないのですよ。文書で「部落民イコール暴力団。」部落解放同盟というのじゃないのですよ。「部落民イコール暴力団。部落差別促進同盟。ヨツというのは四本足、けだものということや、エタというのはよごれが多いということや、そんなヨツ、エタは公害よりも悪い、汚染源と違うか。」こういうような文書も書いたり、「エタ、非人のくせに大きな口を言うな、おまえたちは人間でなく動物なんだ、動物め」一例をあげましたらこういうようなことがどんどんどんどんとまき散らされておる。
(「だれの文章だ、はっきり言え」と呼ぶ者あり)
はっきり言いますと、ちゃんと書いてますよ。私は「赤旗」を読みまして、というように書いてますよ。
(「だれだ、名前を言ったらいい」と呼ぶ者あり)
ここにあるから、見せるから見なさい。

○伊能委員長 静粛に願います。

○和田(貞)委員 名前まで書いてありますよ。学校の子供たちに書かせていますよ。こういうものをも暴力だといえないか。

○伊能委員長 和田君、質問ですから静かにお願いいたします。

○和田(貞)委員 現実にそういうように出されておるじゃないか。
(「実際に書いたかどうか、当委員会で調査しよう」と呼ぶ者あり)
住所、名前まで書いておる。「赤旗」あるいは「兵庫民報」では抗議をどこどこへ出せと、こういうように書いておる。その中で一、二見てごらん。私は「赤旗」新聞を見てこういうように思いましたということを書いておるのですよ。
 さらにどうですか、この姿が。この姿がどうですか。一体どうですか。警察庁、あなたの出先の兵庫県警本部長があの八鹿問題に協力したのですか。文部省、どうですか。兵庫県の教育長、共犯者ですか。警察庁、文部省、これはどうなんだ。
(「共犯者と書いておるのか」と呼ぶ者あり)
共犯者と書いておる。わざわざその共犯者のところにはテープを張ってある。テープをとるとこの姿だ。どうだ、文部省、兵庫県の教育長が共犯者か。警察庁、兵庫県の県警本部長が協力したのか。答えてくれ。協力したりしたらけしからぬ話だ。

○伊能委員長 和田君、穏やかに政府にお尋ねを願います。少し不謹慎なおことばがあります。静かに願います。
(「挑発されるからですよ」と呼ぶ者あり)
ですから、静粛に願いますと言っておる。
○柴沼説明員 今回の事件は八鹿高校における同和問題に関する生徒の部活動に対しまして、学校当局と教員側との指導の混乱に端を発したものでありまして、そのために兵庫県教育委員会としては混乱の拡大を防ぎ、生徒の指導が円滑に行なわれるよう、事件前から指導主事等を派遣して指導につとめたものであると私ども聞いております。校長やこの指導主事等が、事件当日学校施設内で暴力事件が発生するに至るに対して、これを防ぎ得なかったことについてはきわめて残念に思っておりますが、それをもって校長や指導主事等が暴力に加担したものとはいえないのではないかと思っております。

○山本(鎮)政府委員 兵庫県警察本部長が本件犯人の共犯、協力者というようなことは絶対にございません。

○和田(貞)委員 私はやはり警察も文部省もその点は信用しますが、しかしその文書によれば共犯者であり協力者なんです。まことに遺憾だというようにあなた方こそ思わなければいかぬのじゃないですか。
 委員長から時間の促進を受けておりますので時間がないわけなんですが、いまそのような新聞、そういうようなものがまき散らされると、いま渡しましたようなはがきになってあらわれてくる。ごく一部持ってきただけです。電話で、ことばで、はがきで、手紙でこういうようにどんどんどんどんと普遍的にある差別意識というものが蔓延するようにかり立てておるじゃないですか。そういう結果になっておるじゃないですか。
 時期の問題にいたしましても、この機会に警察のほうにお尋ねしておきますが、たとえば共闘側のほうも負傷者が出ておるのですよ。共闘側のほうにも、たとえば坂本逸雄、左ひざ関節挫傷、診断書が出ておる。黒川弘美、右肩骨骨折、三カ月の入院を要すということで、いま和田山の病院に入院いたしております。あの路上におけるトラブルというのは全く二十二日だけじゃなくて、十八日以降まことに計画的に二十二日を迎えたというような、こういうような向きもあるのです。たとえば十七日の日曜日の日に先生たちに集まれということで神鍋のある旅館に集めて、十八日以降具体的に、十八日はどうするか、十九日はどうするか、二十日はどうする、二十一日はどうするかというような、こういう対策会議と称して戦術会議をやっておる。そして具体的に十八日、十九日、その二日間は、朝八時になったら警察前に集まれ、そこで二列になって学校へ集団登校しよう。三時何分になったら一斉に二列になって下校していこう、そして晩はどこどこの旅館に集まれ、こういうような具体的な計画が立てられておるんです。そうして二十二日に至っておるわけなんです。
 二十二日の場合は、十八日、十九日、二十日、二十一日と同じように集団登校してまいった教師集団が、一たん職員室に入ってそして一定の指示をいたしております。教師たちは各教室に入って、きょうは授業は中止や、帰れ、こういうように指示しておる。しかも生徒に授業は終わりやということを告げると同時に、きょうは校門前でどんなことが起こるかよく見とけ、こういうように言っておる先生も数名おります。あるいは一つの教室の黒板に、いま申し上げましたように、きょうは校門前でどんなことが起こるかよく見ておけということをしたためております。そうして一たん図書館に集まった教師たちは、これも打ち合わせをしたとおり――打ち合わせもここにある。打ち合わせをしたとおり、各主任の連中、できるだけ年のいった人たちを先頭に配置をいたしまして、スクラムを組んで、教頭が出ていったらいかぬ、授業をやりなさい。これをけっ散らかし、校長がはだしになってそれをとめにきたにもかかわらず、そのことも聞かない。PTAの副会長がたしなめにきたけれども、それも振り飛ばして、わっしょいわっしょいと校門を出ていって、校門でその新聞に出ておる丸尾君が、何とか生徒と話をしてやってほしい、ほかの父兄たちも子供たちと話をしてやってほしい、校長もずいぶん努力をいたしておりますが、教師集団はそれを聞かないで学校から約三百メートル離れたところでトラブルが起こっておる。
そして学校へ帰ってきた。学校へ帰ったきて体育館に入るまでに、どうですか、教師集団が学校を出ていくときに、子供たちが二階の窓からヨツ帰れ、エタ帰れの差別言辞をまき散らし、今度帰ってきたときには再び新館の二階から生徒たちがヨツ帰れ、エタ帰れと怒号しておるんです。そういうような背景の中で、差別を受ける側の部落住民が腹が立たないというのはおかしいじゃないですか。激高しないというのはおかしいじゃないですか。おこらないというのはおかしいじゃないですか。そういう背景の中で、これから警察がいろいろと取り調べられているらしいわけでありますが、そういう二十二日の事案というものは、問題というものは起こったわけです。  こういうようなことを十分頭に入れながら、原因というものを十分に探究しながら、ただ十一月の二十二日の時点だけをとらまえてどうこうするということだけじゃなくて、学校の運営、学校の教育のあり方、先生が生徒たちに対するところの態度、そういうものを十分踏んまえて今後の捜査活動というものを、それこそ公正、平等に取り扱ってもらわなくてはならないと思うわけなんですが、そのことについてはどうですか。

○山本(鎮)政府委員 現在八鹿警察に本件の捜査について特別捜査本部を設けまして、多数の捜査員を投入して暴力事件を中心に捜査を進めておるわけでございますが、もちろんそういう大規模な捜査を進めるにあたっては、その事件の背景、原因、いろいろな問題も当然調査しあるいは参考人から聞いて、事件の適正、公正な捜査をとらなければいけない、このように考えております。

○伊能委員長 これでよろしゅうございますか。

○和田(貞)委員 もう一つだけ。

○伊能委員長 それでは簡単に願います。

○和田(貞)委員 いまの十一月二十二日の問題については、これは司直の手によってやられるべきであろうと思いますが、私が長い間しゃべりましたその原因、十一月二十二日までになった原因というものを十分頭に入れなければいかぬ、そういうことを私は言っておるわけです。
 さらに、私は警察のほうに質問しますが、先ほど法務委員会でわが党の横山議員が警察庁に質問いたしておりますあの本会議で金子満広君が質問した内容についてであります。それは非常に間違った発言がなされておるのです。正確に言わないとなんですから議事録を見ますと、たとえばこういうことを言っております。女教師まで裸にして水をかけるなど、――先ほど法務委員会でわが党の横山議員の質問に対してそういう事実は確認しておらないというようにあなたは答えておられる。あるいはこれも赤旗新聞で私は拝見したわけでありますが、赤旗新聞だけではございません、近畿の高等学校の教職員組合の協議会である近高連という組織が発行した新聞、それと赤旗の記事。バスケットのネットを写真に入れて、その下に「切れたチューブ、逆さづりのあとが歴然と」こういうように書いてある。これは私たちは事実調査をいたしましたが、何かわからぬけれども、そのバスケットのネットの裏側の支柱にあるちぎれたゴムチューブというものは、いまじゃなくて一年も二年も前からちぎれたあとがあった。そのことについて、町の高等学校の卒業生である山田正道というのと西田清隆というのでありますが、この二人が卒業生だから一番よくわかっておる、証言しますまで言っておる。金子満広君が本会議で発言いたしました、女教師まで裸にして水をかけるというような事実はありません。私たちが調査したところによりますと、先ほど名前を出しました林田留里子のおかあさん、担任の先生が平松という先生です。その平松という先生を、長くなりますのではしょって話しますと、実は女の人の月のものであった。その手当てを一回は便所で、一回は校長室の隣の応接室で、男の先生もおられたので二枚の毛布を目隠しにして、そしておかあさんが中に入って月のものの始末をして下着を着がえさせておるんです。それを水をかけて裸にしている、水をかけたことになりますか。
 こういうようなたぐいを見てみましても、あまりにもひどい一方的な発言であり、一方的な報道であります。そのことによって結果的に、何回も繰り返しますが、充満する差別意識というものをよりあおり立てる結果になるというようなことをひとつ十分わきまえていただきまして、今後とも法務省なりあるいは文部省なり遺憾のないように措置をされると同時に、徹底して同和教育あるいは同和行政の推進のために努力をしていただき、これまた自治省としても、これからもひとつ万全の対策を立てて適正な行政指導をしてもらいたいと思います。ひとつこれを機会に、特別措置法に基づく同和行政がなお一そう充実した同和行政であって、一日も早く一切の差別がなくなるような世の中に仕立てていくように政府としても御努力をいただきたい。
 このことについて、きょうは大臣が一人しかおられませんので、政府を代表して自治大臣のほうから、その政府を代表する決意のほどを述べていただくことにして、私の質問を、時間が来ましたので、やむを得ず終わらせていただきたいと思います。

○福田(一)国務大臣 ただいまいろいろと御説明になりましたことも踏まえて、同対審の方針に基づいて、ひとつ今後いわゆる差別の撤廃がなされるように、政府としても努力をいたしたいと思います。
 ただ、お願いをいたしたいことは、その間にあって行き過ぎとか、これはやはりいろいろの騒ぎが起きるのは何かそこに原因がありますから、そういうものがないようにお互いにひとつ御努力をお願いしたいということだけは御要望を申し上げます。
  〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕
※→八鹿高校事件関連国会質問一覧 1974/11/22〜1975/03/31