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技術領域へ踏み込む記事歓迎
だが正確を期して!

 「記者の目」といえば、3大紙の一角ながら読売など各紙の販売攻勢に追われて深刻な経営難に見舞われていた毎日新聞が1974年に紙面刷新の目玉として導入した新機軸で、米占領軍指導の「客観報道」の名の下に当然の判断をも避けたふにゃけた記事に留まらず、記者の個人名の許に「判断」をも記述して事象の全体像を報道しようとする報道機関としては画期的試みだった。またその形式なら反撃を受けたときに記者個人を生け贄の緩衝材にも使えてリスク有る内容に踏み込んで記事にできる。 (See→「記者の目」)
 これがTV番組にも取り入れられ、他社も小さな処や業界紙から追随して1文字違いの「記者の『眼』」として追随登場することとなった。右囲み欄の東京新聞「記者の眼」もその一つである。
 しかしながら現在は各新聞社幹部たちが経済同友会など財界の意を受けた「21世紀臨調」とか行政の各種審議会に取り込まれて財界・政府与党の政策をほとんどそのまま答申していることで本質を抉る報道の重しになって悪政を強行しやすい小選挙区制強行実施や、小泉・竹中弱者切り捨て路線・米軍事戦略盲従路線を推進する「ブル新」に堕してジャーナリズムの役割を果たせなくなり信頼感を大きく落とし、若者の活字離れと併せて自らの首を絞めている。現場の努力を上が無思慮に踏みつぶすお定まりの構図がここにもある。
東京新聞 2009年(平成21年)
11月30日(月)☆8面
解説 ◆記者の眼◆  西岡聖雄

尼崎JR脱線事故調報告書の検証

中身を精査、透明性を高めよ

 JR福知山線の尼崎脱線事故調査報告書の検証が十二月七日から始まる。  米国の事故調査機関に比べ、閉鎖的な運輸安全委員会(旧事故調委)。 密室審議で作られる報告善が初めて外部有識者らに検証され、開かれた委員会への第一歩となる。

 「現場カーブに新型ATS(自動列車停止装置)を優先的に整備すべきだった」。JR西日本は、この報告書案の文から「優先的に」の削除を漏えいした委員に求めた。新型ATSがあれば事散を防げたため、警察も着目する部分だ。委員は委員会で修正を求めたが賛同されず、「優先的に」の文字は報告書に残る。

 報告書案は事実認定のため、報告書の公表一カ月前に公式にJR西など関係者に送られる。不正に事前入手したJR西は、この部分を含む四十二点で修正意見を出した。一方、本紙が入手した問題の報告書案と報告書は数カ所で異なる。「片町線の新型ATS整備が(オーバーランを防げない)拠点型でばなく全線型なら、尼崎脱線事故の一年前に起きた片町線下狛駅の百bオーバーランを防げた可能性が高い」と案で記述した段落は、報告書にはない。

 下狛駅のミスで懲罰的研修を受けた運転士は「今度ミスしたら運転士を辞めさせられる」と恋人に語り落ち込むが、尼崎事故直前に同じミスを犯す。車掌に過少申告を依頼。車掌がミスを拒令に伝える無線に聞き入り言い訳を考えるなどした運転士のブレーキ操作が遅れ、高速でカーブに突入、脱線したとされる。
 案の記述が報告書から消えたのは「下狛駅に拠点型を含む新型ATS整備の計画はなかった」とのJR西の修正意見が認められたためらしい。

 下狛駅のミスも定時から十秒遅れるなど他のことに気をとられてブレーキが遅れて起きた。遅延時は通常、高速走行してカーブや停車駅でブレーキを遅らせ、急制動で遅れを短縮する。JR西によると、手前の駅との駅間が二分しかない下狛駅は遅れの回復が難しい。裏返せばJR西が望む定時運転を守ろうとするほどオーパーランの危険性も高まる駅だ。下狛駅のミスも新型ATS全線型なら防げたのは事実。再発防止の観点から、段落削除以外の修正方法がなかったのか疑問も残る。
 ただし、報告善案や案への修正意見、委員会議事録などは非公開で、現状では案と報告書の適いや修正点、修正経緯などの検証は難しい。報告書の公表後にこれらを公表するだけでも透明性は高まる。

 同様の事故ば米国でもあったが、海外事故情報をJR各社に流すJR海外事務所に触れないまま、報告書は新型ATSの整備遅れに理解を示した。

漏えい、働き掛け部分にとどまらず、JR西や国交省寄りの記載や欠落がないかも精査すべきだ。 (社会部)

中身を精査、透明性を高めよ
JR西や国交省寄りの記載や欠落がないか?
主張には骨子で同感

 右枠内の「記者の眼」が技術分野にも踏み込んで記事にしていることは大いに歓迎である。記事の主張である「中身を精査、透明性を高めよ」「JR西や国交省寄りの記載や欠落がないかも精査すべきだ。」も同意で、これに加えて更に「監督庁から事故調査機関の分離独立」、「過去の国鉄当事者調査で幕引きした大事故も洗い直して真相と教訓を明らかに」とあれば満点である。

未報道の新情報は

 JR西日本の事故調工作内容について、既報では、永瀬公述人に対して公述書から事故現場直前の運転曲線を削除するよう要求して断られたことと、裏で入手した事故調報告書を検討して「現場カーブに新型ATS(自動列車停止装置)を優先的に整備すべきだった」という一行の削除を提起させて否決され、そのまま公表されたことだったが、この「記者の眼」で新たに明らかにされた事実は、

  1. JR西日本の報告書案に対する工作内容が厳密には「優先的に」の4文字の削除を提起したこと。
  2. 報告書草案は公表1ヶ月前にJR西日本など関係者に配布されて事実関係の点検修正を受け、JR西日本として42点の訂正申請を行っていること、
  3. その結果、下狛駅の過走事故とATS-P設置の節が公表分から全文削除されていたこと、
  4. 同様の事故ば米国でもあったが、海外事故情報をJR各社に流すJR海外事務所の存在に報告書が触れないで、
  5. ATS-P設置の遅れに理解を示したこと
などが触れられていて大変興味深い。
 しかしながら、後述の通り、記事の事実関係に難がある。報道機関なのに内容のチェックを頼める専門家は確保していないのだろうか?癒着関係で報道が歪められる危険と裏腹の関係ではあるがもう少し正確な記事が欲しい。単なるワンポイントの間違いであっても、それが読者に良く分からないこと程、記事全体の信用性を疑われてしまうからだ。
 新情報である「米国でもあった事故」の概要は別枠囲み記事としてでも是非書いて欲しかった。

ATS-Pでは防げない過走
∵停止目標はATS設定に無関係

 記事で、下狛駅過走事故を引き合いに述べられていた、停止目標を行きすぎる「過走」は現行ATS-Pでは防げない。ATS-Pの機能は衝突防止と過速度防止だから、動作の基準点が信号機か、制限開始点であり、停止目標はシステムに組み込んでないのだ。停止目標から出発信号までの距離は30m〜200mほどあって、定位置停車には信号ATSとは別の制御データを必要とする。すなわち事故調報告の原稿が正しくなかったために全文削除となったもので「下狛駅のミスも新型ATS全線型なら防げた」というのは間違いだ。定位置停止装置TASC:Train Automatic Stopping Controller)とATSの混同がある。
 従って削除が認められた理由の推測が間違いで「JR西日本が主張したから」ではなく、ATS-P動作の詳細を誤解して報告案当該節を書いていたことが分かり全文削除となったものである。
 事故調が一旦は間違えるほど突っ込んだ内容での報道エラーは仕方ないとは思わないで欲しい。鉄道は広汎な分野を糾合して構成され、それぞれ専門があって、全分野を深く理解することには困難があり、逆にATS周辺の関係者や鉄ヲタなら普通に分かることなのだから。

本質報道か、センセーショナリズムか    <PS>

 「記者の目」発祥の毎日新聞といえば経営危機脱出に記者クラブから離れた独自取材に力を入れて、米ライシャワー駐日大使単独インタビューなど競合他社を出し抜くことに力を注いで「特ダネの毎日」などと呼ばれたが、反面記者クラブの他社には疎まれて適切な連絡を貰えず「特落ちの毎日」とも揶揄されたのが弱小「鉄道の毎日」の姿だった。他紙に無い記事を追うあまり、被害者を晒して窮地に追い込むことも意に介さず平気でバラしたのは社会党国会質問での西山太吉記者の扱いと同様だった。
 他紙も珊瑚破壊や田中長野県知事・伊藤律架空会見など「予定稿特ダネ」の朝日や、尼崎事故では場違いに吼えて威圧したり何でもK機長再来説の煽り主義、憲法改悪社説の読売など到底誉められたものではないが、かってある労働組合が新入社員合宿教育で連日徹夜の果て全員に対向ビンタを行わせるなどの暴力的ファッショ的な人権侵害研修についての調査チームを作って組合員総ぐるみで事実調査に取り組み、会社を追及して「組合機関として」事件を日弁連人権擁護委員会に提訴、法務省の是正勧告を得た事件があったが、組合は組合名での救済申立書を含めて詳細の資料を添えて記者会見を開いて説明しているにも関わらず、まだ試用期間中で正社員採用で不利益を受ける危険のある時期なのに「新入社員が告発した」と書き飛ばしてしまい、組合からの訂正要求に対し「委員長からそう聞いた」と居直って訂正拒否したのは毎日新聞だった。
 会見で記者たちに渡した申立書の表書き名義からだけでもそれは通らない。だが一旦報道されてしまったら訂正では復旧しきれない。組合は世論喚起に全力を注ぎ暴力新人研修に対する糾弾で、正社員採用発表は例年より10日ほど遅くされたが幸い全員正社員採用されてそれ以上の問題にはならなかったが、その毎日の言い分は「具体的裏を取らずに報道する」という宣言ではないか。不当な攻撃をする会社側が第1には悪いのだが、正社員採用拒否などの不当攻撃が想定される状態で、あえて当事者を晒すというのは犠牲に配慮せず事件を面白可笑しく大きくして売らんかなの乞食根性だと思った。そういう無理を含む報道をしても、朝日拡販団や読売の強引な拡販戦略に付いていけず、ずっと後塵を拝することとなった。
 沖縄返還米軍義務費用肩代わり密約を暴露した西山太吉記者が外務省女性事務官と「情を通じ」て機密情報を不正入手したとして訴追されると、国民だましの権力犯罪よりも不倫を重大視して首にしてしまった毎日新聞に偉そうなことを言える立場は無い。
 新聞なんてもともと、製作はインテリでも販売がやくざに担われてるといわれて居り「記事作りもインテリやくざで真相究明に徹して国民の利益を護る!」とでも開き直って「アウトロー西山太吉記者」を抱え込むべきであった。伝統の歌舞伎界とか相撲界、芸能スポーツ界などでは不倫は問題にもならず、「不倫は文化だ」とか、いにしえからずっと「歩く生殖器」などと品悪く揶揄される有名人が闊歩しているではないか。故田中首相だって国有地を払い下げて第2夫人に転売差益で家を建てさせている。国民だましは民事の不倫とはまったく別次元の権力犯罪である。また当の女性事務官だって国民だましの密約に公憤をたぎらせて事実を暴露したものの、権力に擦り寄るマスコミのバッシングに屈して検察が提供した「男に騙された被害者」というシナリオに乗らされたのだろう。必要な公電を抜き出してのコピー作業に「騙されて」というのは通りがたい。まだご健在なら本心を一言というのは過酷だろうか?

2009/12/19 19:55

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