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Geo日記
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鉄道総研の月例発表会が新宿工学院大の校舎で開かれたのを工事関連会社の身分で中身をのぞいてきた。月例発表会の存在は知っていたが講習料無料とはいってもヲタ個人の資格で潜り込むほど心臓に毛が生えてないもんでこれまで参加したことはなかった。案の定、質問者もJR各社関係者ばかりで
非常に実務的で地味なテーマが多くプロの集う発表会だった。その日は朝5時からの作業が入っていたが早々に切り上げて午後からの発表会をのぞきに行ったのだ。
製造業界では製造原価の算出に大昔から人件費を「秒担金13銭〜22銭」とかやっている訳でチマチマの経費削減が習い性に染みついているから工場での日常当然の課題の研究が鉄道総研でやられているという感覚になる。
最後の発表「電力変換装置の制御方法改良による省エネルギー運転法」では実車試験込みで、回生制動遅れ込め制御が有効だったとか、定速運転時は一部のユニットを停止して無負荷損を抑え残りを高効率の動作点で運転して損失を抑えるとか、電圧カーブを上げて銅損を減らすつもりで試験したら鉄損が増えて相殺し1%くらいしか違わなかったとかの、こちとらの業界の製造ベルトでの収率・不良率実験みたいなレポートに苦笑。
これはVVVF制御のそもそもを考えれば回転数比例の印加電圧特性というのは回転子鉄心の磁気特性が飽和とヒステリシスを示す手前一杯一杯の磁束を前提に、これが回転して電機子に誘起する3相電圧波形に巻線の電圧降下分を加えた電圧を3相インバータによって発生させて電力供給する方式だから、VVVFシステム設計時に「最適」とされた値より高電圧を加えれば鉄心のヒステリシス損が急増するのは当然だ。悪化して当然のものが良く「1%向上」などという実測結果が得られたものだ。モータの電圧余裕をかなり大きく採って設計している車両なのだろうか?ここは「ダメ実証実験」だろう。トランスの最大効率問題は実は工高電気科で実にトリッキーな証明計算で教えられていてその3相誘導電動機への適用だから、電気科出なら磁性材料の非線形限界の概念は叩き込まれている。だから電気科出身者ならこの実験は外して居て1%の改善を探せなかったかもしれない。それとも電圧的には飽和領域よりかなり軽めで設計していることを知っていての実証実験だろうか?(工高電気科では極大極小計算に数学でまだ学習していない2重微分法を使うわけにはいかないからトリッキーな証明になっている)。
また回生制動付遅れ込め制御が高効率なのは当然だが、超満員の15両編成が85km/h前後でホーム端に突っ込む様なタイトな運転が常態化していては、電制不足分を摩擦ブレーキに頼ってその分エネルギー効率を落とすことになる。東京近郊の通勤地帯は4M6Tが電制だけで済むほどヤワなダイヤではないだろう。
また急ブレーキが必要になったときの休止ユニットの立ち上げ時間は特性からみて結構掛かると思うが実際どうなのかは知りたかった。回生失効時と同様のメカブレーキだけで良いのだろうか?という疑問は沸いたが質問に行くだけの強靱な神経は持ち合わせなかった。(w
開発もので興味を感じたのは、バネ傾斜式と強制振り子機構双方を採り入れて2度+6度=計8度の車体傾斜を採り入れ限界支障を小さくし傾斜機構の振動制動をも考慮した「ハイブリッド車体傾斜システム」開発試験報告だ。現在の実用車700N系で採り入れられたのはわずか1度の車体傾斜だから、8度というのは大変な傾斜である。これにカントの最大傾斜5.6度が加わり急曲線での速度向上を図る。到達時間を短縮するには最高速度を上げるより、ネックとなる低速走行部を高速化する方が効果的なのだから車体傾斜機構は有効な手段である。
コロ軸受けに圧入される車軸が軸重で緩んで回り出す「内輪クリープ」現象がコロ軸受けを損傷するという仮説実験発表もあった。ベアリングの締まり嵌めが回転して悪さするとは当方電気屋には思いもよらなかった。
従前の半分の重量というセラミックディスクブレーキというのは、熱伝導は悪いが超高温の放熱効率の良さを利用して運動エネルギーを空気中に熱として放散させるもの。結局総廃熱量の問題に帰着し、ブレーキシューと車両に熱をこもらせずに放散させる問題だ。
最も過酷と思われる条件は碓氷峠での500mの標高差のエネルギーを過熱させずに放出させることだろう。短時間で下るほど時間当たりエネルギーが大きくなるのだから。MS−XPにおまけの電卓で試算すると勾配35/1000、速度270km/h、1両自重55tでの勾配降下の仕事率は約1,286kWに及び、500m降下のエネルギーは269.5MJ≒75kWH(一般家庭半月分の電力消費量?)に達するが、これを回生制動が失効した条件で約3分10秒間で走行抵抗とメカブレーキで安定して消費しなければならない。高速での空気抵抗がかなり助けてくれるのだろうか?
座学講義を受けるのは実に久しぶりで前回が何時だったかすでに記憶にないが、潜り込んで興味深く聴かせて頂いた。またどこかの工事屋さんの出張扱いで潜り込ませて貰おう。
2006/08/25 22:00
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