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Geo日記
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[84]. 事故調建議書と中間報告発表

  航空鉄道事故調査委員会が福知山線尼崎事故についての建議書と中間経過報告を9月1日に決議したと報道され、解禁日を定めてマスコミに配布されたそうだが、その解禁日は6日だった。同日正午前頃から以下のURLに公開されていた。
[建議書]
http://araic.assistmicro.co.jp/araic/railway/pdf/170906k.pdf
[中間報告]
http://araic.assistmicro.co.jp/araic/railway/report/経過報告2.pdf
[中間報告]修正(追記05/10/17)
日記88: 福知山線尼崎惨事中間報告に見落としエラーか?/DOC/diary/dry0088.htm
[事故調建議・経過報告・勧告]
http://araic.assistmicro.co.jp/araic/railway/proposal.html

(運輸安全委員会発足によるURL変更:
  http://araic.assistmicro.co.jp/araic/ → http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/ )
     事故調の建議は
  • ATSの機能向上
  • 事故発生時の列車防護の確実な実行
  • 走行状況記録計の設置と活用
  • 速度計の精度確保
の4項に分かれてそれぞれ妥当だが、(1).速度制限ATS設置基準として考えると曲線速度照査義務付けの建議は分岐器過速度防止装置や過走防止装置と全く同じものの設置基準であり、分岐での転覆脱線が多発した1968年には統一的な基準として発せられるべきだったし、設定計算基準も明確にして、過速度突入防止には役立たない処罰のためだけのネズミ取り型速照は高速側速照対を追加して有効な安全装置にさせる必要があるだろう。
(2).主電源の停電で防護無線を発報できず、予備電源に切替て発報する操作が必要な車両が混じっていて全車を順次改造中であることを車掌ら乗務員に教えてなかったというのも信じがたいミスだ。パソコンのUPS(無停電電源)の様に停電で自動切替が常識で、簡単なリレー1個数百円、あるいは防護無線機が直流電源なら電源ダイオード2個20円の話だろう。昨年の京成成田線実籾踏切事故でも'62年の三河島事故同様対向線を支障しながら防御措置を取らなかったこともあり、繰り返しの教育・訓練は必須だが、装置側の電源自動切替化促進も勧告したらどうか。
(3).記録装置はATS-Pには備えられていて本件事故解析精度を上げた.
(4)の精度管理は当然で、JR西日本の怠慢そのもの。狂い値そのものは転覆原因にはほど遠い値だったが管理限界の2倍狂った車両が続々というのは酷い。

 建議書に書かれなかった最も大きなものは、「日勤教育」の名で行われる不当な人権侵害の影響と、JR西日本の言い逃れ・嘘つき体質だ。必要な安全装置設置を最大限サボって引き延ばし、速度違反しないと守れないダイヤを強要し、晒し者・リンチに等しい懲罰で乗務資格を奪って物言えぬ職場にして、過酷な懲罰を避けるために異常隠しが蔓延する状況は、国労狩りに狂った'88/12東中野追突事故前のJR東日本に酷似している。ここを改めなければ、装置の簡単な改良・調整さえ提起されなくなってしまう。防護無線電源自動切替や、速度計較正、ATS自動投入自動切替の徹底(実施済の可能性)、ATS-P換装や建議書(1)項、速度制限ATS設置など、「稼ぐ」に反する方針は提起しようがない。
 事故後のJR西日本の対応を見ても、先ず踏切事故を主張、次いで置き石を匂わせて、更には「133km/hを超えると脱線の恐れを生ずる。それより低速での脱線・転覆は他に原因がある」とか「6月にはATS-Pに換装予定だった。そのため速度照査を設置しなかった」という素人騙しの嘘で非難を和らげようと図るなど、大事故に真摯に向き合う姿勢は全く見られなかった。もちろん過速度事故防止には過速度防止速照ATS設置が必須であり、ATS-SW/-Pを問わず速度照査地上子の設置が必要で停止信号での安全度を飛躍的に上げるATS-P換装だけでは防げなかった事故だ。会社側は自殺者まで出した「日勤教育」の正当性を強調し、尼崎電車区自殺事件裁判の追及を処分で押さえ込む方針を露わにしているから、この態度を改めて認諾なり和解なりをするのでなければ人の噂も75日で、事故のほとぼりが冷めたら再び元の木阿弥になるのは明らかだ。

 中間報告での直接の事故原因に絡む核はやはり(1)運転曲線、特に塚口駅付近で最高速度125km/h到達後から転覆まで、(2)伊丹での70m過走、(3)宝塚でのATS無視だろう。この日の運転士の運転ぶりは確かにおかしい。40km/h制限の分岐に60km/hで突っ込めば2倍以上の強い横G(約0.18g)を受ける(3)。ここでロング地上子から警報を受けて5秒放置したためATS-Sから強制の非常制動を受けているが、心此処に在らずの対応だ。激しい横Gとはいえ首都高制限など自動車からみれば約半分以下であり、確認ボタン操作不能なほど激しいものではない。首都高横G=(60km/h/3.6)^2/50m=5.555m/s^2=0.567g。そういうコンディションで宝塚から旅客を乗せて運行を開始して、伊丹駅で70mもの過走をして、停止寸前まで非常制動を使っていないが、非常制動よりも常用最大の方がブレーキの効きが良く、直ちに緩解して次の運転操作が出来るのだから特に遅れを嫌うラッシュ時の運転としては合理性があり、規則違反ではあっても異常ではない。電制を無効にするとか緩解に長時間必要などデスクワークが決めた非常制動の仕様が運転要求に合わないのだ。電制断とパン下げは客室側から操作できるようにして非常制動でも電制を有効にしておけば、非常制動でも減速度は落ちず、非常手配の後は衝突前に客室に避難してからパン下げ操作ができるだろう。

 また、某新聞が現役運転士にアンケートを取って、カーブでの転倒速度が制限速度の2倍近いと思っている運転士が少なくないことを報じていたが、これは早急に訂正されるべき非常に危険な誤解だ。
 その誤解の数字上の根拠と思われる値は、曲線のカント面に沿った安全比率が4以下を制限速度とする近年の制限速度基準を転倒−復元境界速度に焼き直すと√4=2倍になるという目の子算である。制限速度の決め方が、重力と遠心力の合力をカント面の法線方向と面に沿う方向に分解して、合成力が線路上より外に出れば転覆だから、軌間/2を基準にその安全比率分の1(この場合1/4)までに留めるという決め方だから、車体の外側への傾きによる重心移動や走行振動や曲率の変化による過渡現象(突発荷重)などにより転覆限界は安全比率倍より大幅に小さくなるからこそ、安全比率=4などという数値で転覆を防いでいる。それなのに制限の2倍弱というのは安全比率を限りなく「転倒値=1」に近づける暴挙なのだから。単に曲線の制限速度表を丸覚えさせる教育に止まらず、諸特性のバラツキまで含んだ有り得る転覆速度を示した方が実際的ではないのか?

 もう1点の問題は、ATS-SW/Sxの非常制動が働くと処罰の対象になる運営である。/Sx系は連続制御ではないから上限・下限に合わせたかなりの余裕(無駄)を含んで設定せざるを得ない。だから非常制動に当たったからといって危険領域深い運転がされたとは限らないのである。その制限に当たらない運転を続けると、輸送容量が減るのは確かだが、たまに動作するとパニックになり次の事故を誘発しかねない。01/04東海道線富士駅冒進支障事故はその典型だ。事前警報のない安全装置は、時々体験しておかないとイザという時混乱するばかりである。指令への連絡を緩解操作の条件にしているが、処罰とセットだから隠したいのは人情だ。防止のためではない摘発のための速度照査ATS設置は、本来味方である安全装置を乗務員の敵対物にしてしまい、抗って事故を誘発しかねない愚挙であり、設置禁止勧告を出して貰いたいものだ。宿毛駅での分岐10m手前の25km/h速照対などは典型的な処罰型ネズミ取り速照で、事故防止には何の役にも立たず大事故となった。(注:「速照による停止は緩解自由」という情報も寄せられているが、処分例はあるし、再開後の福知山線で特急たんごがこの速照に当たって大問題になっていた。あれは厳格すぎるネズミ取り設置の模様。詳細不詳.9/14追記)
 その点ATS-Pでは安全装置のための無駄がほとんどなく、パターン接近警報があり、動作した場合の条件内での緩解は自由で、積雪・氷結など特殊事情がない限り冒進はないから優れている。

2005/09/12 23:55
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