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Geo日記
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[77].罪作りな誤解の元かも
   ×「制限速度の倍までは大丈夫!」

  尼崎事故に関連して「制限速度の倍までは大丈夫!」との情報が本職の運転士たちに拡がっていたという報道は衝撃的で、気持ちが追われれば誤謬にすがって事故になりかねないと思いましたが、その源になった可能性のある記述は以下の通りです。読むほどに非常に紛らわしい表現です。
  久保田氏略歴をみると、技術系の大先輩であり、運転士たちがすんなり受け容れたとしても無理はないと思います。この妥当な解釈を現場に徹底する必要があるでしょう。√2倍を過ぎれば脱線の危険が非常に高まると。国鉄OB久保田氏自身の解説が一番説得力が有るのですが。官給の運転テキストの運転理論部もこの本とほとんど変わらない様です。
  なお末尾○久保田博氏の誤記、×斎藤氏。
信号・標識・保安設備について語るスレ4
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/train/1111260799/478n-480


478-480 名前:  [] 投稿日:2005/06/14(火) 13:12:33 ID:pK8ETYEN0
転倒限界記述:現物をupします。
鉄道工学ハンドブックP252〜251
久保田博著グランプリ出版95/09/19初版

13章.列車のスピードアップ
(3).カント不足量の限界(P252L8)
 曲線速度が,カントに見合う速度を超えてゆくと,カント不足による超過遠心力を生じて,安全性・乗り心地の影響などから限界がある。
 曲線での遠心力と重力の合力の作用点を,軌間の1/8以内(安全比率4)とし,許容カント不足量Cdmm,G:軌間mm,H:車両重心高さmmとすると
Cd:G=G/8:Hから  Cd≦G^2/8H となる
 すなわち,車両の重心高さにより多少の差はあるが,狭軌で約100mm,標準軌で約150mmと算定され,新幹線が最大カント不足量を90mmとして余裕を残している。

 また安全比率1(遠心力と重力の合力の作用点がレール上)とした場合のカント不足量を算定すると,狭軌で350mm(重心高さ1,300mmの特急車両),275mm(重心高1,650mm)となる。
その場合の速度(転倒直前)を試算すると,(1)での現行規定速度の約2倍となるが(※1),実際の車両の振動などの分が加わるため,転倒速度は2倍よりやや下回る

(4).風による転覆限界 (P253下L9)
 この場合の転覆させようとする力は,超過遠心力と重力分力の差の項(※2),振動慣性力の項,風圧力の項から合成される(※3)。転覆に対する危険の限界値は,静的には安全比率で1.5,動的には1.2程度とされる。

(2)曲線
(1)曲線制限速度 (P250L15)
 現在規定されている在来線の曲線制限速度は, 最も重心の高いH=1,650mmの車両(例:機関車・2階建て車両・貨車)で,カントを零として曲線の外方に働く遠心力と重力の合力が,線路中心から離れる度合い(2D)の軌間()との安全比率(図13-3G/2D)から,次式で算定される。

 曲線通過速度:Vkm/h,曲線半径:Rmとすると,
円心加速度α=V^2/127R=D/H=G/2aHより,
   V≦√{127GR/(2a・H)}=6.4√R/√a
 低重心で軽量の高性能電車やディーゼル動車と,その他の一般列車では,安全比率aを区分して(表13-2参照),
◇高性能列車は 安全比率a =3   として  V≦3.7×√R
◇一般列車は       =3.5 として  V≦3.5×√R  ……(?3.42?)

※引用者注
※1: 間違いではないが「速度(転倒直前)を試算」と書かれると転倒しない速度と誤解して無理はない.転倒限界基準の遠心力として遠心力と重力の合力が線路上に来る遠心力を求めているだけなのに、それを架空の速度に換算してしまうこと自体が問題。実際に使う速度は、「転倒限界遠心力の1/3になる速度」として初めて速度に換算される。
後述(4)項の風力による転倒での安全比率限界値を1.5としていることからも「速度で2倍弱」はかなり不用意な罪作りな表現と思われる。

※2:×超過遠心力と重力分力の差の項
   ○遠心力と重力分力の差の項,すなわち超過遠心力の項,
   単純誤記、(P250L15)では正しい表現になっている。
 この部分は「國枝の式」を下敷きに書かれたものと思われるが、斎藤氏久保田氏がその詳細に触れないのは現場では使わない研究者の式ということなのか?

久保田博氏紹介:1924年、長野県に生まれる。大阪大学工学部機械工学科卒業。国鉄に入職。鉄道工場、本社、鉄道管理局、支社の勤務を経て、小倉工場長で退職。高砂熱学工業会社に入り技師長で退職。東北大学などの講師(経営工学、工場経営、鉄道車両工学を講義)。現在は交通研究家。著書:略(鉄道工学ハンドブック等多数)
2005/06/16 04:10
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