A-1

製作方法  (上図内解説復刻)<TXT>

(A3横置き113%印刷)
 この機体を作られる諸君は右下方にある模型を前、上、横から見た三面図をよく研究して、どういふ設計
であるとか、どの位の大きさであるとかをよく頭に入れてから作らねばならぬ。
 そして一人で一台を作るよりも、なるべく大勢で作ることをおすすめする。それには(一)主翼班(二)
尾翼班(三)胴体班にわけ、最後の組立には全員が協力して仕上げるとよい。作る場合に全員が、一番気
をつけなければならないことは「図面の寸法通りに作る」といふことである。●これに要する材料は材料表
に書いてあるものを買えば間にあうわけであるが、プロペラは完成したものでなく、素材を買って総て自分
が作った方がよい。

(主翼班の仕事) 先ず主翼の小骨を作るために中央に書かれてある1、2、3、4の翼型を薄い紙に模しこ
れを厚さ一ミリ半の薄板にそのまま写し取って各々二枚づつ切り抜く。
 小骨が出来たら、次に主翼周縁のヒゴは直径二ミリの中ヒゴで作る。翼端の型は、治具といって、厚い板
で翼型を作り出したものを使えばよいが、無ければ時々図面にあはせいづれも火で熱し乍ら左右同じ型の
ものを作る。平らな板の上に図面から左右翼を写した製作図を貼り、周縁ヒゴの外側にあたる處に釘か●●
●の針を打ちつけ、前に作った主翼翼●や共●周線材を釘の内側に置く。ヒゴの継ぎ目は竹を斜めに削って
糸で縛るか、或はアルミニューム管でつぐ。此の場合は管の中に接着剤だとか糊を入れておくとよい。
 次に主翼・・・・を・に撓んだまま1を●た小骨を正確に全部取り付ける。そして小さい日本紙とかハト
ロン紙に糊をつけて小骨とヒゴの接している處を補強する。 出来たものは乾くまで放って置き、決してはず
してはいけない。

(尾翼班の仕事) 水平・垂直尾翼はともに直径一ミリ半の小ヒゴで、主翼を作った要領で作る。垂直尾翼で
胴体に取りつけられるところは、火熱で急な曲げ方を要し、水平尾翼で胴体にあたる中央部分のヒゴは斜に
削り糸で縛る。

(胴体班の仕事) 胴体主棒先端の四ミリ幅の面にコの字型軸受を糸で縛り縛り接着剤を塗って置く。其のヒ
ゴは直径二ミリの中ヒゴを用ひ、図面の如く胴体に縛りつけ、此に12の車軸を通す。車輪は直径二五ミリ位
の桐板で作るがボール紙でもよい。直径は二二ミリ以下では規則違反になる。ゴム掛けの針金は鋼鐵線が最
もよいが、お母さん方の使ひ古した頭の髪をとめるピンでも作れる。但し尾翼のゴム掛けは、先端を胴体に
差し込み糸で縛って接着剤を塗っておく。

(組立の仕事) 出来た水平・垂直尾翼を胴体に正確に取りつけ糸で縛って接着剤を塗り、乾いたら少し湿っ
た髪を貼る。 次にプロペラとゴム(一ミリ角なら長さ四、五〇〇ミリ位)を取りつけた上で、胴体を糸で釣
るし重心を測る。重心は糸を中心に左右平均になった處であるが、その点より更に三ミリ後の方に印をつける。
 組み立てた主翼を釘からはづし、中央部を糸でつるし左右の釣合を見る。片方の翼の重くて傾いた時は、そ
の方のヒゴを削って水平になるやうにした上、主翼中央部を火熱で曲げ、左右翼が約十二度の等しい上反角
になるやうにする。若し主翼にそりやひねれがあったらこれを直す。 次に小骨1の先端から三分の一の長さ
の處に鉛筆で印をつけ、この点と前に胴体につけて置いた印の点がピッタリあふように胴体にとりつける。
この時の小骨1の主翼の前のヒゴが胴体の上面に乗るから之にあふやうに、又後のヒゴが胴体の下に
来るからこれとも合うやうに取り付けねばならない。これが出来たら主翼のヒゴを取り付けるが、主翼の位置は
左右あくまで正確になるやう糸で縛って接着剤を塗る。最後に紙を貼るが、貼る部分は上面のみで裏には決
して貼ってはいけない。又紙の目は正しく、シワが出来ぬやうにすることも大切である。

(プロペラの削り方) プロペラを自分で削るには、長さ二二〇ミリ、幅二〇ミリ、厚一五ミリの朴を先づ
(イ)図から(ロ)図のやうに削る。次に(ハ)図の如く鋸の目を入れ、この部分を小刀で削って、紙やす
りをかけ平にする(ニ図参照、この面がプロペラの裏面になる)次に別に書いてある●の格好を●しこれ
を未だ削ってない面(この面がプロペラの表面になる)に●●して(ホ)図のやうに切り抜き、更に未だ削
ってない部分にはやはり鋸の目を入れた上で小刀で削り紙やすりをかける。この時のプロペラ表面は前縁か
ら三分の一の處が一番厚くなるやうにする。

(飛ばせ方) 最初に試験飛行をする。風のない広い部屋で飛行機の胴体中央を持ち軽く突き放してやる。正しい
姿勢で、五〜六メートル先に着陸するのがよい。尾翼が上がったり、機首が上がったりするのは主翼取付位置が
正確でないからで、左右に旋回するのは尾翼が曲がっているか、又は主翼にひねれがあるからで直す。いよいよ
出来上がったら風のない日を選んで戸外で飛ばす。初めはゴムを百回巻いて飛ばし、次に三百回、次に五百回
巻く。正確な模型ならば初めに急に上昇して行き次第に水平飛行に移り、ゴムの力がなくなると滑空機のやう
に滑空する。

 風の強い日に飛ばせてはならぬ。この飛行機は最大毎秒四メートル位の速度で飛ぶから、これ以上の風の
る日は、飛ばしても無駄で、丁度本物の飛行機を大暴風の日に飛ばせるやうなものである。

昭和一八年六月一五日 印刷
昭和一八年六月二十日 納本
定価●● 金四銭      
    発行所
東京市芝区田村町一ノ三  
   大日本興行教育出版社
     振替東京五六九九
  ●●●
発行人


印刷人

  東京市芝区田村町一ノ三
大日本興行教育出版社
  代表者 荻原 四郎

東京市大森区千束町七七二
昭 興 社
    東京一八〇〇番
A-1型(部品表)
部品
数量
部品名部品
番号
材料寸法[mm]
2主翼第一小骨1.5×7.2×120
2主翼第二小骨1.5×6.9×115
2主翼第三小骨1.5×6.0×100
2主翼第四小骨1.5×4.5×75
1同 周縁ヒゴ2(直径)×368
22(直径)×325
12(直径)×388
2水平尾翼周縁1.5(直径)×280
1垂直尾翼周縁1.5(直径)×245
1胴体主棒104×6×450
2降着装置11ヒゴ2(直径)×???
1車  軸122(直径)×1?0
2車  輪13直径25
1ゴム●フック14鋼鐵線1.0(直径)×45
1コ型軸受15アルミニューム
1プロペラ軸16鋼鐵線1.0(直径)×70
1プロペラ2015×20×220
3南京玉硝子
1翼  紙330×650
1動力部品ゴ  ム
改良A-1型(追加部品表)
部品
数量
部品名部品
番号
材料寸法[mm]
1降着装置(脚)11ピアノ線
1コ・メタル15朴の木
1翼台224×15×140
1S冠23アルミ
2止めゴム24輪ゴム
1ゴム潤滑剤25リューブリカント
2軸受潤滑剤26グリース/ポマード
1ワインダーゴム巻機

注:試作・飛行に当たって

 本機を試作し正常に飛行させるには、左記の図面注記に加えて
  1. (1).コメタル(部品番号15)の軸の方向を胴体中心線より数度右下に向けて取付け、プロペラ&ゴムの反動を打ち消し、ヘッドアップを抑える必要あり。 通称「サイド・スラスト」&「ダウン・スラスト」。 朴の木ソリッドで作成可。これが最低限必要。
    ※垂直尾翼の紙は進行左側のみに貼る。
  2. (2).重心調整作業の困難は、主翼を取り付けた翼台を設けて、ゴムで胴体に止める独立構造にして前後調整可能にして解決する。 正確な重心調整は翼台の重量増に卓越する。
    ※ゴムとプロペラの取付は胴体下に変更する。
    ※降着足はピアノ線製が軽量
  3. (3).プロペラは市販品が圧倒的に高能率.図示の自作品では到底敵わない。
  4. (4).プロペラの滑空抵抗の軽減策として
    プロペラ空転装置、あるいは
    折り畳みプロペラ、を用いる。
    (飛行中に重量を変えてはいけない規則)
といったノーハウが存在する。
               (復刻者注記)

【現尺図面@A3版100%尺度プリントアウト】

↓部分図大リスト
A-1原図
↓改良機体↓尾翼A3版現尺
A-1機体・尾翼
↓元機体↓尾翼A3版現尺
A-1機体・尾翼
↓左主翼
A-1左主翼
↓右主翼
A-1右主翼
↓主翼翼型リブ
A-1主翼小骨
原資料:A-1図面 :http://www.vsha.jp/g/g-4-5-11-1.jpg  :参考→日記#429 2019/02/16復刻