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過速度転覆は「予見可能性なし」か??

 先の日記#197で「会社幹部にも事故責任追及か? 画期的試み」と書いたが、**日に報道通りに送検され、送検意見としては96/12の線路付け替え関係だけが有罪相当とされているが、その程度は(身柄ではなく)書類送検に留まり、起訴されたら罰金・科料を払って決着する「略式起訴」に相当するものらしい。

 従前の刑事処分では、事故に遭遇した乗務員・現場係員の行動を洗って、言い掛かりに近い「不足」を見つけては幕引きの人身御供に祭り上げている例が少なくなかった。同日記#197の一覧表をみても無実・無罪が疑われ、事故の幕引きのために当人達には無関係な会社側のミスの刑事責任をかぶせられているケースがかなりあることが判る。生け贄を仕立てて世論の処罰感情を満たし必要な対応策を見えなくするだけの、やってはならない愚行である。

 寝台急行きたぐにの北陸トンネル火災惨事'72/11の乗務員3名の起訴はその最も極端な例だし、同一パターンでは日比谷線中目黒事故'00/03で管理限界到達と安全限界到達を混同して無罪の保線関係者5名を送検した例など、典型的な事故幕引きのための生け贄にされ、国鉄の火災時トンネル内停車強制、営団の輪重調整作業導入拒否により脱線という惨事化の真相がマスコミ世論としては隠されることとなった。
 参宮線事故でも裁判こそ乗務員の有罪で決着したが、それは「疑わしきは被告人の利益に判断」すべき刑事裁判の基本原則に反するものだが、刑事処罰に晒すことで、先出の表に示す様な事故発生防止体制の不備を覆うものとなった。

 新型貨車導入に当たって運行試験を省略したことで軽荷重時の走行特性の欠陥を見落として曲線出口緩和曲線(=カント逓減捻れ部)で脱線して多重衝突惨事の発端となったという重要な事実をつい最近まで隠し通した鶴見事故'63/11や、きたぐに惨事の3年前に発生の寝台特急日本海北陸トンネル火災事故でトンネル外に引き出してから消火作業を行い物損事故に留めた殊勲の乗務員達を不当処分して、急行きたぐに火災車両のトンネル内停止を強要して惨事化させた様に、乗務員・係員を生け贄にすることによって世論の不満を逸らして幕引きを図り、会社組織としての安全維持管理義務の存在を見えなくさせたもので、事故防止策推進には何の意味もない却って有害なものとなっていた。

 そうした経過からすれば、鉄道会社幹部の責任を問う今回の捜査は、従前の現場生け贄型処分とは全く趣を異にする画期的なものというべきだ。急曲線で過速度脱線転覆が起こりうることは物理的には当たり前に過ぎることで、予見可能性は当然にあり放置して惨事を防がなかった責任はあるが、それが刑事処分に値するほどの違法性があるかどうかの問題だ。
 例えば自動車では運転ミス発生を予測できても一定の就労・整備条件を保障していれば管理者責任は問われないが、産業界や鉄道の場合には比較的簡単な安全装置で事故を回避できることが多いため、あり得るトラブルを予見して対応策を検討して適切な対応を準備しているかどうかが問われる。対応不能なら不可抗力として処罰されることはない。

 世の中の流れとしては死亡事故についてはパロマ湯沸かし器欠陥事故、三菱自工欠陥隠し事故などについて会社トップの刑事責任追及が始まっており、それからすればJR西日本幹部の安全無視追及はしかるべき流れではあるが、かっては司法警察権を持つ巨大官僚組織でもあった国鉄幹部を最後まで追及しきれるかどうかの問題になっている。松下電器の死亡事故が立件を免れた背景として、有力な警察官僚OBを天下りさせていたことが理由ではないかと報じられているが、そういう匙加減が働いての不起訴・起訴猶予は十分にあり得るし、加えて大企業には裁判所もかなり迎合的だから公正な結論を得るには世論の継続的な注目・監視が必要だろう。日立製作所相手の民事裁判では上級裁に行くに従って主流の判例を覆しての不当判決が目立っている。残業拒否解雇有効、研究所組合副委員長不当配転容認………と。

2008/09/11 01:55
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