【 照査速度段階の選択 】
私鉄ATSに関する運輸省通達(s.42/1、鉄運第11号.通達廃止済)では、最高速度100km/h以上の路線で3段階以上の速度照査、100km/h未満では2段階以上の速度照査と、低速段を20km/h以下で照査することを求めていますが、速度段階の選択基準は各事業者に任されています.そこで適切な
速度設定基準を考えますと
1).速度を1段階落とすのに必要な制動距離がほぼ等しい(閉塞長に関連)
2).最低速段階は余裕を大きく取る(突破すれば先行車に衝突の危険)
2').省令制定の、在来線警戒YY現示25km/h、無閉塞運転15km/h、を基に算出してみます.
2").省令の速度の根拠は?
また、新幹線30km/h照査は恐らく25km/h+手動制御余裕5km/hがATC速度として定着したものでしょう.30km/h制限だけは他の照査速度と違い自動緩解せず確認扱いが必要です.
1).等減速度であれば、
減速制動距離={(初速)^2−(終速)^2}/(2減速度)
なので、減速制動距離を等しくするには、最高速度と、最低照査速度の間の、速度の2乗を均等割りすることが基本でしょう(減速度の低い高速側が若干詰まる)
3).V
0は、速度段階として上側の速度差の半分(=2乗なので1/4)に取ります.
以上の条件から最高速度V
m毎に照査速度を試算します。
V
mと、最低速照査速度V
0の2乗値の差をn等分し、
i番目の照査速度V
i、及びV
mとV
0の関係は
| Vi^2 | =(Vm^2−V0^2)/n・i+V0^2 …(i=0〜n−1) | ………(1)
|
| (2V0)^2 | =(Vm^2−V0^2)/n | ………(2)
|
| Vm^2 | =(4n+1)V0^2 |
|
※ | V0 | =Vm/sqrt(4n+1) | ………(3)
|
[例1] ここで分割数n=3、最高速度V
m=90、100、110、120、130km/h、
V
0=25km/h(省令:固定値)とするとき、
(1)式より照査速度V
0〜V
n−1を求め、
また、(3)式から V
0=を求めます.
計算結果は以下の表の通りとなります.
【 照査速度設定 】(在来線)
| 旅客 |
| 貨物(実速度:参考)
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現 示 | 照査速度段階 [km/h] | 備考 | | 照査 速度 | 2乗 | 2乗差 | 備考
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| | | | | | | | | | | | | |
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最高速度Vm | G | _90 | 100 | 110 | 120 | 130 | | _90 | | | 85 | 7,225−
| 照査2 V2 | YG | 75 | 83 | 91 | 99 | 107 | | 74 | | | 65 | 4,2253,000
| 照査1 V1 | Y | 56 | 61 | 67 | 72 | 78 | | 53 | | | 45 | 2,0252,200
| 最低照査V0 | YY | 25 | 25 | 25 | 25 | 25 | | 15 | | | 25 | 6251,400
| ※ (3)式V0 | YY | 25 | 27 | 30 | 33 | 36 | | − | | | − | | 625
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90km/h−25km/hの分割が丁度電車(改良路線云々)の制限に一致します.
[例2] 東海道新幹線の駅間閉塞での速度段階は、
開業時で
、30km/h、160、210、(260)、(分岐70)、(制限110)
現在時で
、30km/h、170、240、270、300.(分岐80)、(制限120)
この2乗差を計算しますと
【 新幹線照査速度2乗差点検 】
開業時 |
| 現在
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速度 [km/h] | 2乗 | 2乗差 | 備考 |
| 速度 [km/h] | 2乗 | 2乗差 | 備考
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| | |
| | (300 | 90,000) | | 最高速度
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260 | 67,600. | |
| | 270 | 72,900. | 17,100. | 32,400.
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210 | 44,100. | 23,500. | 最高速度 |
| 240 | 57,600. | 15,300.
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160 | 25,600. | 18,500. | |
| 170 | 28,900. | 28,700. |
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30 | 900. | 24,700. | |
| 30 | 900. | 28,000. |
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0 | 0. | 900. | |
| 0 | 0. | 900. |
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(70 | (4,900. | (20,700) | #18分岐 |
| (80 | 6,400. | 22,500) | >.05G上限
(110 | 12,100. | | |
| (120 | 14,400. | | 制限
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現在の照査速度段階は、冒頭の図に見る様に
,
240km/h〜300km/hを2分割してることと、最低速段以外は2乗値の差が良くそろっています.(新幹線開業時のみは駅#18分岐制限速度に合致)
#新幹線は減速度に速度依存性が大きい(=粘着力の低下する高速域を走行する)ので、それを修正した値が速度段階の基準になって分割されている。速度段階決定方法の基本としては正しい様です!
そこで疑問!網干衝突事故で導入された
中間Y現示45km/hはどこから導かれた数値でしょうか??当時の特急列車の最高速度が
90km/hとして、取り合えず半分の
45km/h。後年の解析でより適切な制限値がある事に気付いたものの、大先輩の決定を修正するには役所内の抵抗があり、「改良線路」という新概念を持ち込んで矛盾無く制定した!旧基準の速度制限で走る貨物は運転しづらくて良い面の皮!考え過ぎかなぁ(w
(注:在来線表の参考値をみる限り、高速側がタイトだが、一般貨物には概ね妥当な値。最高速度によりYGを2つ入れるなどの調整が必要)
org.=信号・標識・保安設備について語るスレ
721〜722 by 名無しでGO!
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Upd=2003/11/06
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