VVVF車加速特性 2002/03/16
基本的な特性曲線は抵抗制御と変わらない!
速度センサーで粘着限界一杯の制御をすればVVVFの方が高加速・高減速が可能。
VVVF車動作状況
VVVF車のモータがどんな条件で動作しているか、目の子ですが推定してみましょう。
まず速度と回転数の関係は、
v=πfD/K(p/2)×(1−S)
いま、極対数
p/2=2、ギヤ比
K=7、車輪直径
D=0.86m、最高速度
v=140/3.6m/s、
最高速度での誘導電動機スベリ率
S=0.01とするとき
f=vK(p/2)/{πD(1−S)}=140×7×2/{3.6×π×0.86×0.99}=203.55Hz
(=6,106rpm)、滑り周波数は
f−0.99f=2.04Hzとなる訳です。
従って、この周波数はVVVF制御により
2.04Hz〜203.55Hzの間連続調整されます。
(小型誘導電動機のスベリ率は
5%〜10%が多いが、鉄道車両用は特に低スベリ率の設計というので、仮に最大速度で
1%としておきます)
トルクとの関係は、まず
CVVF領域下限を最高回転数の何割から採るか、
次いで
VVVF領域上限をその
CVVF領域下限の何割に採るか、
という設定で決まります。
これは特性的にはそれぞれ抵抗制御車の特性領域下限、弱界磁領域下限に対応。
抵抗制御車と併結する鉄道も見かけるから、その場合の特性形状は非常に似通った
ものと考えられます。そうしないとトルクの強い片方に負荷が集中してしまいます。
そこで、
CVVF領域:特性領域下限を最高速度(最高回転数)の約
1/2の
72km/h、
VVVF領域上限をその
3/4の
54km/hと仮定します。
この間のスベリ増領域は、定出力(=定電流)に制御すればトルクは速度に反比例し弱界磁制御と同じになり、定トルクに制御すれば、出力が速度に比例することになります。
通勤電車を低
MT比で運行する場合は空転・滑走から
VVVF領域でのフルトルクは出せないから、出力一定制御ではトルクの低下するスベリ増領域で、定トルク制御を行って高速特性改善を行う余地があります。これは抵抗制御の通勤車でも弱界磁定格の方が大きい車両が存在するから、フルに増力は無いにしても
VVVF車としては十分有り得る特性です。「
VVVF車は高速加速が良い」という通説の根拠の一つは此処かもしれません。もう1つは
VVVFには起動抵抗損が無いので
VVVF上限をより高速度に設定して差し支え無いためその間の加速が落ちないことです。
E217系
11両編成の
4M7Tで、平坦地加速度
2.2km/h/sとして、
54km/hまで
それを維持すると、1両
28トン+乗客
200人
×60kgの概算で、
出力
=Fv=Mαv
=(28+200×60/1000)×(2.2/3.6)×(54/3.6)×11/4/4
=252kw 。
95kW定格の篭型誘導電動機を瞬時とはいえ此処まで使うか!と思いますが、
1ユニットカットで東京トンネル脱出
3%勾配に必要な加速度が
9.8×30/1000×3.6=1.0584km/h/sだから、フルユニットでその
2倍以上の
2.2km/h/s
というのは極めて妥当な値といえます。モータの篭型回転子の耐高熱特性の良さと、それに伴う格段の放熱性能、熱容量とで可能になっているのでしょう。主たる抵抗損を生ずる部分に熱に弱い絶縁物が無いというのは強いです!絶縁物は高耐熱品でも
200゚Cも温度上昇があれば劣化・絶縁破壊を起こしますが、アルミ鋳物やバー溶接の回転子では、鉄心の磁性が落ちる高温まで使えそう。熱がメタルのオイルを飛ばさない限りは回っていそうです。
(
E217が現実にどんな設定で作られているかは資料の足らない当推定計算とは別物ですが、そう遠くはないと思います)