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Geo日記
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果たして「過失犯」か?
高速道路のランプでマイクロバスのドアが開き、小学生が転落して後続のトラックに轢かれて亡くなるという痛ましい事故が起こってしまったが、後続のトラック運転手も逮捕と聞いて、回避可能だったかどうか、=生け贄処罰ではないか検討したくなった。
報道では、走行速度がマイクロバス70km/h、後続トラック80km/h、車間距離22m、現場の制限速度40km/hとなっていて、試算に必要な空走時間、減速G、落下した人体の路面減速G、障害物認識時間、ランプの設計速度などの値が不足で、それらを仮定していく必要がある。
また、ドア閉自動−手動切替レバーを操作したのは最終的に誰なのか(乗客生徒の可能性もある)
乗用車では走行速度が上がると自動ロックだが、なぜマイクロバスは自動ロックではないのか?
ランプ部の設計速度はどれほどか(日本の高速道路は設計よりかなり低い制限が課せられ、実際にはほとんど守られていない)といった論点が残っている。
- 車の減速度B1は、初速50km/hでのブレーキテスト規格に0.5Gが採用されていたから、高速ではこれより落ち、滑走限界Gはこれより大きくなることが多いから、平均的な値として0.5Gを採用。
- 落下して路面との摩擦による減速度B2は、当日天候から乾燥路面として車と同じ0.5G
- マイクロのドアから後端までの距離を3m
- 路上障害を認めてからの空走時間T1を1秒、
- 停止を必要とする障害物と認識できる時間T2を3〜10秒(後続車の追突リスクで即急ブレーキは避けたい)と仮定。
以下、報道値を
- マイクロバス走行速度V1初速=70km/h
- トラック走行速度V2初速=80km/h
- 車間距離L初期値=22m
- ランプ制限速度40km/hに対し設計速度は60km/h〜80km/h。(処罰基準は40km/hだろうが)
として
落下した生徒の位置Lmと速度V1km/hは
(V1/3.6)2=2(B1・9.8)L、 L1=V12/(2・3.62・9.8・B1)
制動・停止距離試算
B1= 0.5 G 前側減速度
B2= 0.5 G 後側減速度
L= -25 m
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初速 km/h | | 空走時間[秒]
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| 0 | 1 | 2 | 3 | 6
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40 | | -12.4 | -1.3
| 9.8 | 20.9 | 54.3
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50 | | -5.3 | 8.6 | 22.5
| 36.4 | 78.0
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60 | | 3.3 | 20.0 | 36.7 | 53.3 | 103.3
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70 | | 13.6 | 33.0 | 52.5 | 71.9 | 130.2
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80 | | 25.4 | 47.6 | 69.8 | 92.1 | 158.7
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90 | | 38.8 | 63.8 | 88.8 | 113.8 | 188.8
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100 | | 53.7 | 81.5 | 109.3 | 137.1 | 220.4
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という関係で、これに初速を代入すれば落下後の滑走距離が求められる。すなわち
L1=702/(2×4.9)/3.62=38.58m
同様に後続トラックの速度V2km/hと位置の関係は
L2=V22/(2・3.62・9.8・B2)−L
=V22/(9.8・3.62)−(22+3)
L2−L2=L=25 mで、
この場合、両方の減速度が等しいから減速中は一定値で地面に停止後後続車が止まりきれるかどうかの問題だ。
この距離で止まりきれる速度Vmaxは
Vmax=sqrt{2αL}m/s=3.6・sqrt{2・0.5・9.8・25}km/h=56.34km/h
これでは空走距離と状況判断距離は取れない。
ランプの設計速度60km/h(?)、制限速度40km/hで、空走時間全3秒〜7秒として制動距離を加えると、右の表のようになり、報道内容の数値が正しければ転落した小学生を轢かずに済ます条件は現実的には存在しないことが分かる。1秒というのは転落と同時にブレーキを踏んで実現できる空走時間であり、落下物を判定する時間は取れないし、それは後続車を追突させて荷台下に突入させ死傷事故を起こしかねない危険な操作である。ランプで車間距離22mというのは、試算結果が示すように大変危険なのだが、誰もが意識せずに過小な車間距離で走行しているのが実態だ。
こんな状態で後続運転手の「過失責任」を問うのは困難で、強行すれば報復主義的世論を鎮める生け贄処分になってしまうと思う。また、誰が自動・手動切替ハンドルを操作したのか、乗用車の量産品があり採用が楽なはずのオートロックをなぜ採用しなかったかは、少なくとも情状としては大きく働き、詳細に検討されるべきだろう。警察・検察は慎重な原因捜査を行って、日比谷線中目黒事故での保線労働者5名送検、北陸トンネル急行きたぐに火災事故での乗務員3名起訴のように無実の生け贄の処罰を求める愚は繰り返さないでもらいたいものだ。
P.S.
前項が「ユーザー定義函数」なので、右上の表も当然?L-123に函数定義をして作成だ。(この程度だと函数ではなく式で構成して全く差し支えないが)
また、試算式は鉄道の衝突推定とほぼ同じもの。具体的な減速度が大きく異なるだけだから、解析方法は基本的に変わらない。
Function LB(V,B,L,T)
'V:速度km/h
'B:減速度G
'L:オフセット距離m
'T:空走時間S
LB=V^2/(2*3.6^2*9.8*B)+L+V/3.6*T
End Function
[表の先頭要素]
@LB($B8,$C$4,$C$5,C$7)←@LB(速度,減速度2,-25,空走時間)
2007/12/27 23:58
後続運転手、処分保留で釈放
今日5日の朝刊は、後続トラック運転手は処分保留で4日に釈放されたと報じている。12/24事故発生から警察で2日+勾留10日で釈放、マイクロバス運転士は更に勾留延長10日が付いたということだ。後続車が転落現場からもっと離れて追走していれば過失として刑事責任を問われる余地はあるから事故レコーダーの記録でも出てきて追走距離が計測できれば逆転起訴は有り得るが、追走距離22mで80km/hでは速度違反と安全距離不十分の交通違反の立件の範囲で収束するのだろう。現情報では妥当な措置だと思う
一方のマイクロバス運転士も、ドア開閉制御を手動にしたのは誰で、どの時点かを詰めないと起訴はなかなか難しい。ステップに降りていたという情報もあり、子供達のいたずらの可能性も捨てきれないからである。更に、なんで乗用車並みの走行ロック機能を付けなかったのかという設計側の背景事情もある。乗用車よりは多人数が利用するものだからせめて乗用車並みの装備は欲しいではないか。
犯罪に処罰は必要だが、悲惨な結果に対して無辜の人を捧げる生け贄処分になってはいけない。
2008/01/05 16:00
2008年01月12日15時31分 朝日web
東京・練馬の東京外環道でマイクロバスからサッカー少年(当時11)が路上に転落死した事故は、運転していたコーチがドアのロックをかけ忘れたうえ、そばにいた少年の体がレバーに触れた拍子で走行中に開き、少年が外に投げ出された、とさいたま地検は11日、結論づけた。悲劇を繰り返さないためにはどうしたらいいのか。車の構造に詳しい長江啓泰・日大名誉教授(自動車工学)に同型車に乗ってもらった。
事故発生はクリスマスイブ。同地検などの調べでは、その日の遠征で1軍の試合に初めて出た少年は、時速60〜70キロで帰路を急ぐトヨタ・コースター(29人乗り)の昇降口ステップにいた。サッカーボールの上に座っていたという。
長江さんが検証した同型車で見ると、ステップの広さは新聞紙大だ。少年は身長約140センチ。ボールに座り、ステップで車の揺れで体が動けば、頭か肩のあたりが開閉レバーに触れる可能性がある。
ドアがロックされていない状態で、長さ約12センチのレバーを、人さし指でゆっくりと動かしてみた。左へ45度ほど傾けたとき、「カチャ」という音とともに開いた。バネばかりで計測すると、かけた力は3キロほど。乗用車のドアを中から開ける場合に必要な力とほぼ同じだった。
道交法は走行中にドアが簡単に開かないようにするなど安全運転を義務づけており、運転していたコーチは11日、自動車運転過失致死罪で起訴された。今回の事故は車の「取扱書」に従っていれば起こらないはずだった。ドアは運転席でしか開かないように操作したうえで、ドアの窓部分のボタンで2重にロックする仕組みという。「取扱書」では、走行前にロックを確認するように「警告」していた。
長江さんは「今回は運転者の不注意のため走行中に開く状態だったことが問題だった。ただ、車の安全装備で人為的ミスを補うことができる」と訴える。
長江さんは、走行すれば、自動でドアにロックがかかる「速度感応型」か、ロックがかかっていない状態で走ると警報が鳴るシステムの導入を提案する。前者はすでに乗用車に使われており、マイクロバスでも十分可能な技術という。「乗用車より多くの人が乗るマイクロバスなら、安全装備はより重要だ」
少年の父親は事故直後の記者会見で「走行中にドアが開かないよう、メーカーの技術者の方に工夫して頂きたい」と震える声で訴えた。
トヨタは今回の事故を受け、事故防止策を検討中だという。
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起訴されているのに、証拠隠滅の可能性などないこの種の事件で保釈されないというのは私選の弁護士を頼んでないからでしょうか?扱いが酷いなぁ。
2008/01/13 16:00
毎日新聞昨14日朝刊30面に依ると、マイクロバスから転落した小学5年生を跳ねて逮捕、処分保留で釈放されていた後続トラック運転手が前日13日に「容疑不十分で不起訴処分」とされていた。
公表データからすればトラック運転手にとって回避の可能性のない事故ではあったが、直接轢いての死亡事故であり、過速違反はあったからその点は処罰されるのかと思っていたが、刑事罰としてはスッキリ無罪放免で落着した。反則金など行政罰は残るのだろうか?当人の「人が落ちたとは思わなかった」という談話で「実はもう少し車間距離が空いていたのか?」との疑いもあるが、刑事罰を科すだけの確実な証拠は得られないだろうから、刑事事件としては妥当な決着である。
しかし、民事補償として考えると、刑事処罰はできなくとも、賠償責任の一部は負うべきブレーキ操作の遅れがあったという解決も有り得る。たとえば実際の車間が50mだったというなら、もしかして助けられた可能性もあったかもしれない。何か落ちてきたら、普通道ならまずブレーキだが、ランプというのは、大事故防止の安全確保に急ブレーキを回避し覚悟を決めてぶつかるべき高速道か、止めるべき普通道か微妙な場所だからだ。犬猫の飛び出しは急回避せず見殺しの対象とされている。
ドアを開けたのは少年自身?
2点疑問なのは、ロックを外したのはいつ誰が?運転者がグランドでか、子供達の誰かか?確定できる証拠があったのかどうか。
もう1点は、座席を離れてドアレバーを操作したのは少年自身でしょう。
マイクロバスの構造として戸締め警報もオートロックもないわけで、運転中に後方乗客をどの程度監視できるかとなると、解雇確実の長期拘留を課して刑事罰を与えるべき事故かどうかははなはだ疑問がある。子供なんて突然思わぬいたずらをはじめるもので、こういう形の処罰にされたら、怖くて時間外休日のボランティアなんか引き受けられなくなってしまう。保険で決着できる民事責任の範囲に留まるべき事案じゃないのかなぁ。
2008/02/15 23:59