【3相交流環状結線と歪み波形の吸収】

  トランス鉄心の磁気飽和により交流電圧・電流に奇数次高調波を発生するが、対称3相交流環状結線の場合はそのうち(6N−3)次高調波(3,9,15,21,27,33次……)は巻線で短絡されて影響が僅少になる。

  仮に正弦波の定電流励磁をすれば、鉄心の飽和特性で磁束Φ(θ)は台形状に潰れ、波形が上下対称で原点対称とすると、周波数成分としては奇数次の正弦波成分のみで、直流分はゼロだから,
Φ(θ)= Φmsinθ+A3sin3θ+A5sin5θ+A7sin7θ+…………+A2n+1sin(2n+1)θ+ ……(1)
コイルの誘起電圧V(t)は磁束変化率d/dt(Φ(t))×巻数N、 ……(2)
θ=ωt  だから ……(3)
V(t) =N・d/dθ{Φ(θ)}・dθ/dt
=Nω・d/dθ{Φ(θ)}
=Vab(θ)
=Nω{Φmcosθ+3A3cos3θ+5A5cos5θ+7A7cos7θ+
  ……+(2n+1)A2n+1cos(2n+1)θ+……}
 ……(4)
位相が2π/3遅れたVbc(θ)=V(t−(2π/3)/ω)=
=Nω{Φmcos(θ−2π/3)+3A3cos3(θ−2π/3)+5A5cos5(θ−2π/3)
  +7A7cos7(θ−2π/3)+……+(2n+1)A2n+1cos(2n+1)(θ−2π/3)+……}
 ……(5)
位相が4π/3遅れたVca(θ)=V(t−(4π/3)/ω)=
=Nω{Φmcos(θ−4π/3)+3A3cos3(θ−4π/3)+5A5cos5(θ−4π/3)
  +7A7cos7(θ−4π/3)+……+(2n+1)A2n+1cos(2n+1)(θ−4π/3)+……}
 ……(6)
(2n+1)/3×2π に着目すると、(2n+1)が3の倍数だと全体として2πの整数倍になり、環状結線の3つの電圧が同位相で加算され、この電圧が環状結線で短絡され、短絡電流の作る磁束で元の磁束が打ち消される。
  それ以外だと±2π/3が残り、ベクトルとしては総和がゼロとなり、循環電流は流れないからそのまま残る。だから、
環状結線による電圧の総和は(4)+(5)+(6)=
=3{3A3cos3θ+9A9cos9θ+15A15cos15θ+21A21cos21θ+27A27cos27θ+…
  ……+3(2m-1)A3(2m-1)cos3(2m-1)+…… }
 ……(7)
すなわち基本周波数の3(2n−1)倍:奇数の3倍のみ同相で加算されて短絡電流が流れて磁束を打ち消す。
  正弦波の定圧励磁の場合は、その電圧を励起するだけの補償電流が流れ込むから、電流の最大値が大きく増える。実動作では線路を含む電源インピーダンスで制限される。これが環状結線では奇数の3倍の周波数成分だけは環状結線内の循環電流となって送電線路にはあまり現れない。


2006/07/22 23:55

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Last Update=06/07/22 06/07/22