加速特性とギヤ比

Upd=2003/07/15-/21

同一モータでギヤ比(車輪直径)を変えた場合の加速を比較する

○1.基準車両として、加速度α=2.7km/h/s、並列フルノッチ速度V1=40km/h、
 弱界磁フルノッチ速度V2=60km/h、平衡速度Vm=120km/h ……(緑線)

 走行抵抗は速度比例として、平衡速度で加速力に等しいとする。
 この走行抵抗値は、ギヤ比を変更しても不変とする。
 (=実弱界磁率66.7%:弱励磁率≒35%前後=通称弱界磁率:JR通勤用車両…(赤)
○2.高加速車両として、α=4.0km/h/s(地下鉄max規格)を選ぶとこれに反比例して
 Vn*(α2.7/α4)→V1=40*(2.7/4.0)=27km/h、V2=60*(2.7/4.0)=40.5km/h、
○3.高速車両として α=2.0km/h/s を選ぶと、同様に V1=40*(2.7/2.0)=54km/h
 V2=60*(2.7/4.0)=81.0km/h、 ……(青線)

 以上の条件から走行特性を求める。
○1).〜○3).の加速力特性は以下の通り。
 α(v)=α0  …………………(  v≦V1)…全界磁領域
    =α0・V1/v  ………(V1≦v≦V2)…弱界磁領域
    =α0・V1・V2/v^2 ……(V2≦v  )…特性領域
Vm時の走行抵抗Brk(Vm)は、牽引加速度に等しいのだから、
  Brk(Vm)={α・V1・V2/Vm^2}=R・Vm
従って走行抵抗は
Brk(v)={α・V1・V2/Vm^3}v=(2.7×40×60/120^3)×v=v/266.7[km/h/s]
この走行抵抗を加速力から引けば実加速特性となる。(下側のグラフ)
実加速特性から区分求積法で走行距離と速度を求めたものが上側のグラフ。
弱界磁領域の特性が3種とも同一特性上(直角双曲線上)にある。

 高加速車が早いのは、27.5秒後の63km/hまでで、61秒後991m地点で逆転!
なるほど、低速制限の地下線向きなのが良く判ります。
電力消費は質量比例&速度2乗比例なんで、重くて高速を出さざるを得ない
103系は地下で大喰らいになるでしょう。
線形の良い地上区間では高加速の効果は大きくありません。
 積算に利用した区分求積法は単純な台形法です。
Δtを小さく採っても表計算ソフトが全計算を数秒でこなしますので神父村云々が
登場する余地がありません。昔はクルクル・チンのタイガー計算機で必死に走行
曲線を求めたんでしょうね。

 尚、711系の特性を見たところ、抵抗制御は一切なし(=電制なし、弱界磁なし)で
電圧制御のみに頼っている(=元々375V定格のモータを500Vまで使用の)模様で、
V1=V2=73km/hという特異な特性なので参考に鎖線で示します。 ……(橙鎖線)
1M2T編成は差詰め「ディーゼル置き換え、列車型特性」というところ。
広大平坦な北海道ならではの特性ですが、定格速度が高いのは弱界磁制御をせ
ずに電圧を上げているからでしょう。定格速度を抵抗制御車と比較しても無意味です。



  区分求積法とは

【区分求積法による運転曲線算出】
[概説] 区分求積法とは、函数をグラフ表示した場合の総面積を求める
に当たって、それを計算可能な微少片に分割して微少面積を算出し、そ
の総和として総面積を求めるものです。
 分割数を無限大に近づけて真値に収束させ定積分函数の算出を行うと、
積分に叙述函数があればそれが定積分の算出値となり、区分求積計算自
体は無用になります。
 しかし、適切な叙述函数がない場合は文字通り微少面積毎に区分求積
を行って加算し力尽くで総面積を求めることになります。

[運転曲線の算出]
 運転曲線は、加速特性自体が1つの函数形では表せず、しかも磁気飽
和や走行抵抗の非線形のため叙述できる函数を得ることが困難で、加え
て、加速力も走行抵抗も独立変数が時間ベースではなく、速度ベースと
いうことで区分求積法で計算することになります。

今ここで、初加速A0、瞬時速度v、並列フルノッチ加速度A1、同速度V1、
弱界磁フルノッチ速度V2、均衡速度Vm、加速度函数kasoku(v,A1,V1,V2)、
走行距離L、時間t、微少時間Δt、A0=A1(抵抗制御車の満載時特性)、
走行抵抗brk(v)=R・v  (Rは比例定数)とするとき、
  kasoku(v,A1,V1,V2)=A1 ……………………    v≦V1
              =A1・V1/v …………… V1≦v≦V2
              =A1・V1・V2/v^2 …… V2≦v ……(1)式:前出○3).
一方、平衡速度Vmでは加速力と走行抵抗が等しいので
  A1・V1・V2/Vm^2=R・Vm すなわち
  A1・V1・V2/Vm^3=R  …………… (2)’式
  brk(v)=A1・V1・V2/Vm^3・v  ………………………… (2)式
従って実加速力(加速余力)は (1)式−(2)式 になります.
  加速余力A(v)=kasoku(v,A1,V1,V2)−brk(v) ………… (3)式

初期条件として、t=0で、L=0、v=0、A(0)=A{v(0)} ……(4)式

Δt経過後
 t=Δt、v(Δt)=A{v(0)}・Δt+0、L=(1/2){v(0)+v(Δt)}・Δt+0

任意のiに対して
  ti=i・Δt、v(iΔt)=A{v(i-1)}・Δt+v(i-1)、
  L=(1/2){v{(i-1)Δt}+v{(iΔt)}・Δt+L(i-1)

i+1では
  t(i+1)=(i+1)・Δt、v{(i+1)Δt}=A{v(i)}・Δt+v(i)
  L=(1/2){v{(i)Δt}+v{(i+1)Δt)}・Δt+L(i) …… (5)式

以上、函数とΔt毎の微少区間の計算を表計算ソフトに埋め込んで累積
計算を行えば、速度、位置の瞬時値を求めることができる。微少区間は、
元の1行を必要なだけコピーすれば良い。

[定義函数]
Function kasoku(v,a1,v1,v2)
   kasoku=a1 '            ……… v≦v1 =全界磁
   If v>v1 Then kasoku=kasoku*v1/v' …… v1≦v =弱界磁
   If v>v2 Then kasoku=kasoku*v2/v' …… v2≦v =特性領域
End Function

Function brk(v)
   brk=A1・V1・V2/Vm^3・v '     (brk=v/266.7 に統一して試算)
End Function

  加速余力=kasoku(v,a1,v1,v2)-brk(v)


[設定パラメター]   (定数として表上に布数する:数値は前出)
                比較基準 高加速 低加速 (配置例) cf.711
  初加速A0 [km/h/s]    2.7   4.0   2.0   X$2  1.2
  並列フルノッチ加速度A1  2.7   4.0   2.0   X$3  1.2
  並列フルノッチ速度V1  40.0  27.0  54.0   X$4  73.0
  弱界磁フルノッチ速度V2 60.0  40.5  81.9   X$5  73.0
  均衡速度Vm [km/h]   120.0  −   −    X$6  −
  微少時間Δt [s]       0.5  −   −    X$7  −

[初期値] ……(4)式参照:t=0で、L=0、v=0、A(0)=A{v(0)}

[算出値]   (台形法に拠る)
  加速余力A(v)=kasoku(v,A1,V1,V2)−brk(v) ………… (3)式
   時間t =ΣΔt=Δt+Σ(i-1)Δt
   瞬時速度v=ΣA(i)Δt=(1/2){A(i)+A(i-1)}Δt+ΣA(i-1)Δt
   走行距離L=ΣV(i)Δt=(1/2){V(i)+V(i-1)}Δt+ΣV(i-1)Δt
すなわち、前行の算出値に、Δt間に変化した速度と、距離を加えれば
その行までの累積値が求められる。
運転曲線は、この表上に、
独立変数:時間t、従属変数:速度v&走行距離L、として求められてい
る。冒頭のグラフがその計算結果である。
但し、走行抵抗は比較基準の値を採用した。