162-参-本会議-19号 平成17年04月27日
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平成十七年四月二十七日(水曜日)午前十時一分開議
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○議事日程 第十九号
  平成十七年四月二十七日 午前十時開議
 第一 国務大臣の報告に関する件(西日本旅客鉄道株式会社福知山線列車事故について)
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○本日の会議に付した案件
 一、日程第二より第七まで
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○議長(扇千景君) 去る二十五日発生いたしました西日本旅客鉄道株式会社福知山線における列車事故により、多くの尊い人命が失われましたことは、誠に痛恨の至りに堪えません。犠牲となられた方々の御冥福をお祈りし、その御遺族に対しまして、衷心よりお悔やみ申し上げます。また、負傷された方々に心からお見舞いを申し上げます。
 ここに、犠牲者の御冥福を祈り、黙祷をささげたいと存じます。黙祷。
   〔総員起立、黙祷〕
○議長(扇千景君) 黙祷を終わります。
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○議長(扇千景君) 日程第一 国務大臣の報告に関する件(西日本旅客鉄道株式会社福知山線列車事故について)
 国土交通大臣から発言を求められております。発言を許します。北側国土交通大臣。

   〔国務大臣北側一雄君登壇〕
○国務大臣(北側一雄君) 西日本旅客鉄道株式会社福知山線における事故について御報告をいたします。
 四月二十五日午前九時十八分ころ、西日本旅客鉄道株式会社福知山線の尼崎駅―塚口駅間において列車が脱線し、多数の死傷者が生じる事故が発生をいたしました。事故に遭いお亡くなりになられた方々の御冥福を心からお祈りし、御遺族の皆様に衷心よりお悔やみを申し上げる次第でございます。また、多くの方々が事故で負傷を負われました。一刻も早い御回復をお祈り申し上げます。

 この事故は、宝塚駅発同志社前駅行き七両編成の快速列車のうち前の五両が脱線し、そのうちの前の二両がマンションの一階部分に衝突したものでございます。約五百八十名の方が乗車をされておりましたが、これまでに判明したところでは、死者は九十一名、負傷者は四百五十六名に上っております。
 言うまでもなく、安全は運輸サービスの基本であり、安全性の確保こそが利用者に対する最大のサービスでございます。今回、このような重大事故が生じたことは誠に遺憾と言わざるを得ません。
 政府といたしましては、この重大事故に対しまして、現在懸命な取組を行っているところでございます。現在も昼夜を徹しまして、官邸対策室を中心に国土交通省、消防庁、警察庁、防衛庁、厚生労働省等の関係省庁が一丸となって、被害を受けられた方々の救助を最優先とした事故への対応を行っているところでございます。
 国土交通省の対応といたしましては、私を本部長とする福知山線事故対策本部を設置するとともに、現地でも近畿運輸局に福知山線事故対策本部を設置し、事故の対応に全力を挙げているところでございます。
 私自身も事故当日、鉄道局長を伴い事故現場に急行いたしました。事故の実態を把握するとともに、西日本旅客鉄道株式会社の社長に対しまして、次の二点を強く要請をさせていただきました。
 事故の被害者に対して誠実かつ万全な対応を期すること、二点目は、事故原因の究明につきまして、航空・鉄道事故調査委員会等関係機関に対し全面的に協力をすること、この二点を強く要請をしたところでございます。また、その旨を改めて鉄道局長名で文書にて警告をいたしました。
 現在も、現地の方では国土交通省の岩崎政務官に残っていただき、現地での対応に当たっていただいております。
 国土交通省といたしましては、公共交通機関に係る安全対策の徹底を図る観点から、事故直後の二十五日に、国土交通大臣名で公共交通事業者あてに文書にて、改めて安全対策の徹底を図ること、その際、本社の安全担当の責任者が直接現場に赴き確認することについて強く求めたところでございます。
 加えて、今後の状況を踏まえつつ、できるだけ早い段階で、JRを含みます、また航空事業者を含みます主要な交通事業者に対しまして、私自身が自ら赴きまして、輸送安全総点検の実施状況について、現場での取組状況等を直接聴取し、確認する機会を設けたいというふうに考えております。
 また、事故の調査については、航空・鉄道事故調査委員会において、事故当日、委員二名と調査官五名を派遣をしており、翌日、追加で委員二名を派遣、さらに本日、専門委員一名を派遣いたしまして、総勢十名で今回のこの事故の原因究明に向けまして全力を挙げて今調査に取り組んでいるところでございます。
 今後につきましては、まずは被害を受けられました方々への対応を最優先とするとともに、事故原因の究明、さらには今後の事故再発の防止に向けまして全力を挙げて取り組む所存でございます。
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○議長(扇千景君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。末松信介君。
   〔末松信介君登壇、拍手〕
○末松信介君 おはようございます。自由民主党の末松信介でございます。
 扇議長を始め先輩、同僚の先生方のお許しをいただき、自由民主党を代表いたしまして、このたびのJR福知山線で起こりました列車脱線転覆事故につきまして質問をいたします。
 事故後、自由民主党本部の連絡を受け、直ちに現地に赴きました。現地の惨状は言葉に言い表しにくいものであり、先頭車両がマンションの一階ガレージに一つの塊となって潜り込んでしまい、二両目は車両の上下が完全に分かれて、上部は一枚のステンレスのようになってしまっておりました。そのわずかのすき間からレスキュー隊員による懸命の救出作業が続けられておりました。しかし、救出作業ができる場所は極めて限定されており、各地から派遣された消防当局の皆様方も、ただ祈るように見守るしかなかったわけであります。
 何時間かたつうちに数人の方々が救出をされましたが、一人を除けば残りの方々は全く意識もないようで、血の気のないだらりとした白い腕が見えた瞬間、毛布がかぶせられ、病院へ搬送されていかれました。全く心が痛むのみであります。
 改めてお亡くなりになられました方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、けがをされた乗客の皆様方の一日も早い御回復をお祈りいたしております。
 さて、なぜこのような最悪の事態が生じたのでありましょうか。
 小泉総理は、事故直後に緊急対応と再発防止を指示され、事故発生から約三十分後に政府に対策本部が設置されました。
 総理直轄指揮下の下、国土交通省、消防庁、警察当局はもちろんのこと、JR西日本は、事故原因の徹底した究明を行い、安全対策の確立と国民の信頼回復に努めなければなりません。
 JRは、国鉄時代から世界一と言われたダイヤどおりの運行を受け継ぎ、駅舎の新築や快速電車の増発などサービスの向上に努めてきたことは国民の高い評価を得ているところでございます。しかしながら、それにより採算性を重視して、ダイヤ編成や定時の運行等に無理が生じ、安全運行のための運転士の育成、安全確保のための技術を軽視することが常態化してしまったのではないかという声が上がっております。
 事故の直前、運転士は手前の停止駅でオーバーランしており、以前にも同様のミスを犯しております。経験十一か月とのことでありますが、運転適性検査や社員教育の在り方に問題があったと言わざるを得ません。また、ステンレス製の車両は軽くてコスト削減の効果があります。しかし、強度に疑問があることは何よりも事故現場の状況が物語っております。乗客の安全性は確保されているのでしょうか。
 安全設備の不備も発覚いたしました。現場は速度オーバーに対応しない旧式のATSであり、現在新型に切替え中で、不運が重なりました。五年前の営団地下鉄日比谷線の脱線死亡事故後、国土交通省は急カーブ区間の脱線防止ガードレールの設置を指導されました。しかし、今回の事故現場は、時速七十キロ制限の半径三百メートルの急カーブにかかわらず、脱線防止ガードレールが設置されておりませんでした。
 言い過ぎかもしれませんが、採算重視、安全軽視の経営感覚が存在していることを危惧いたします。目に見えるところだけサービスを向上させ、目に見えない安全へのコストを抑え利益を生むならば、これは利用者への裏切りであります。信楽高原鉄道の大事故の反省と教訓はどこに行ったのでありましょうか。
 事故の調査には、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会が合わせて十人体制という鉄道事故としては過去最大規模の調査体制で臨まれております。徹底した事故原因の究明を求めます。
 折から、国土交通省では、鉄道事業会社すべてに対して緊急総点検を実施中であり、四月末までの報告を求めることになっていると伺っております。昨日の国土交通委員会で北側大臣が、総点検というのは一体どういうことを指すのか、どういうように事業者が実施しているのか、直接現場を見たいというお気持ちを述べられました。  この際、すべての鉄道事業会社があらゆる問題点を共有して、安全対策が図られるよう国土交通大臣の指導力発揮を強く期待するものであります。
 以上、私の思うところを述べさせていただきましたが、国土交通大臣としての所感と事故究明に対する取組、今後の安全対策等についてお伺いをいたします。
 最後に、亡くなられた方々の御遺族、けがをされた多くの乗客の皆さんの救済について、また今は元気でも今後PTSDや体調を壊す方々も予想されますが、万全の体制をお約束していただくことを要請をいたしまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

   〔国務大臣北側一雄君登壇〕
○国務大臣(北側一雄君) 末松議員にお答えをさせていただきます。
 安全対策の確立と鉄道に対する国民の信頼回復に取り組むべきとのお尋ねがございました。
 かねてより、安全は運輸サービスの基本であり、安全性の確保が利用者に対する最大のサービスでございます。今回、このような多数の死傷者が生じるような重大事故が発生したこと、誠に遺憾でございます。
 今も現場では、消防の方を始め警察、自衛隊、医療関係者の方々、懸命な救助救援活動に取り組んでいるところでございます。政府関係機関一体となりまして、被害を受けられた方々の救助を最優先とした事故への対応を行っているところでございます。
 事故原因の徹底究明、さらには今後の事故再発の防止に向けまして政府一丸となって全力を挙げて取り組むことにより、一日も早く鉄道に対する国民の信頼が回復されるよう全力を尽くしてまいります。
 次に、採算性と安全運行についてお尋ねがございました。
 安全確保は鉄道輸送の基本でございます。鉄道事業者は安全の確保を最優先に事業を行う必要があり、国土交通省といたしましても、従前より、輸送の安全確保に最大限の努力を傾注してきたところでございます。事業の効率化を図っていくことも必要でございますが、その場合であっても、効率化のために安全が犠牲になってはならないと考えております。
 国土交通省といたしましては、引き続き、安全確保に関する責任をおろそかにすることがないよう、全国の鉄道事業者を適切に指導してまいります。

 適性検査や社員教育についてお尋ねがございました。
 鉄道に関する技術上の基準を定める省令では、鉄道事業者は、運転士などの乗務員に対し必要な知識及び技能を保有するよう教育訓練を行うとともに、必要な適性、知識及び技能を保有しているかを確認しなければその作業を行わせてはならないと規定をしております。
 JR西日本においても、乗務員に対する運転に係る教育及び訓練、視機能や聴力等の身体機能検査、クレペリン検査などの適性検査を定期的に行うよう実施基準を定めており、これに従って行われているものと聞いております。
 今回の事故につきましては、現在、調査委員会において事故原因等を調査しているところでございます。今後の調査の状況を踏まえ、引き続き指導をしてまいりたいと考えております。
 近年、多くの鉄道事業者において、車体の軽量化、塗装の不要化等によりコスト削減が図られることから、ステンレス製の車両が導入されております。車体の強度に係る基準では、使用される材料にかかわらず、通常の運転で想定される車体への荷重に対して十分な強度を有しなければならないこととしております。この想定される荷重については、具体的には踏切における自動車との衝突等を考慮しており、今回の脱線事故のようにマンションに衝突するという特殊な状況は車両の設計上考慮しておりません。
 しかし、平成十二年の営団地下鉄日比谷線や、平成十四年のJR九州鹿児島本線の事故を踏まえ、現在、鉄道総研におきまして車両の衝突安全性に関する研究を行っているところでございます。今回の事故原因の分析・調査によって得られる知見も踏まえながら、車体の強度、構造等の在り方について検討してまいります。
 脱線防止ガードレールの設置の指導についてお尋ねがございました。
 脱線防止ガードレールの設置については、日比谷線脱線事故を踏まえ、低速走行時の車輪の乗り上がり脱線を防止するため、半径二百メートル以下の曲線等について設置するよう指導しているところでございます。今回事故が発生した現場の曲線は半径三百メートルでございまして、この基準に該当していないため、脱線防止ガードレールが設置されておりません。

 鉄道各社への指導についてお尋ねがございました。
 鉄道の安全確保に関しましては、施設、車両の構造、運転取扱い等に関して、安全確保のために鉄道事業者が遵守すべき技術基準を鉄道に関する技術上の基準を定める省令において規定をしております。最高速度や列車本数等の輸送の特性に応じた安全確保を図らせるため、省令に基づき事業者ごとに詳細な実施基準を定め、国土交通省に届出させることとしており、必要に応じ変更を指導しております。
 さらに、安全に係る法令の遵守状況等の確認を行うため、鉄道事業法五十六条の立入検査に関する規定及び関連の規則等の定めに従い、事業者に立ち入り、業務の状況を監査し、適宜必要な改善指導を実施しております。  このような制度に基づき、今後とも、すべての鉄道事業者に対し、安全の確保に全力を挙げるよう指導してまいります。
 事故検証を共有し、安全対策を図ることについてお尋ねがございました。
 これまで各地で発生いたしました鉄道事故の状況や原因究明に関する情報については、すべての鉄道事業者に提供するなど、事故情報の共有化を図っているところでございます。
 現在、国土交通省において、更に詳細な事故情報に関するデータベース化を進めるとともに、鉄道総研を通じまして、全国の鉄道事業者が利用できるシステムの構築に取り組んでいるところでございます。事故情報の共有化を進めてまいります。
 今後、こうした取組を通じて、鉄道事業者間での情報の共有化を進めることにより、一層の安全対策を図ってまいります。
 御遺族、負傷者の方々の救済についてお尋ねがございました。
 事故直後、先ほど申し上げましたように、私からJR西日本の社長、また会長に対しましても、事故の被害者に対して誠実かつ万全の対応を期すること、事故の原因の究明につきまして調査委員会等、関係機関の調査に対して全面的に協力することを強く要請をしたところでございます。
 したがいまして、御遺族の方々、負傷者の方々に対する救済措置につきまして、JR西日本において今後とも、適切に指導をしてまいる所存でございます。(拍手)
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○議長(扇千景君) 辻泰弘君。
   〔辻泰弘君登壇、拍手〕
○辻泰弘君 私は、民主党・新緑風会を代表し、去る四月二十五日、兵庫県尼崎市のJR西日本福知山線において発生した脱線事故につきまして、官房長官、国土交通大臣及び国家公安委員長に御質問申し上げます。  まず、このたびの事故で亡くなられた犠牲者の方々とその御遺族の皆様方に対して心から哀悼の意を表しますとともに、負傷された方々に対し心からお見舞いを申し上げます。
 民主党は菅直人前代表を本部長とする事故対策本部を設置し、私はその副本部長として、当日の午後、事故現場に駆け付けました。痛々しい現場を目の当たりにし、大変なショックを受けた次第であります。このような悲惨な事故を二度と起こさないため、原因の徹底究明と再発防止対策に万全を期さなければなりません。  そこで、まず、現在把握しておられる事故による被害の状況並びに発生当初から現在に至るまでの政府、関係各省庁の対応について、官房長官から御報告をいただきたいと存じます。
 同時に、何ゆえこのような悲惨な事故が起きたのか、国土交通大臣、国家公安委員長に現時点で明らかとなっている事実関係及び原因についての御所見と今後の事実解明に向けての方針をお伺いいたします。
 原因に関して、JR西日本は、レールの上に置き石があった可能性を示唆しております。私自身、レールの上の痕跡を確認してまいりましたが、政府としてそのような事実をどのように把握、認識しておられるのか、お答えいただきたいと存じます。
 また、伝えられるところでは、この快速電車は前の伊丹駅でオーバーランをし、通常より速度を速めて運転していたと言われております。しかも、あろうことか、四十メートルのオーバーランの距離を、運転士と車掌が口裏を合わせ、八メートルと伝えていたとのことであります。この事故の背景に、大勢の人間の命を預かる運転する側にモラルの低下があったと言われても仕方がありません。
 速度優先、ダイヤ優先の体質など、JR西日本の運行管理上の問題点を指摘する声もありますが、国土交通大臣はどのように判断しておられるでしょうか。
 さらに、運転士は、見習期間を含め過去に三たび訓告や厳重注意処分を受けていたと言われております。大勢の乗客の命を預かる運転士の資格、適性というものは極めて厳格に見極め、配置されなければなりません。  同社においては乗務員の教育訓練、身体検査、適性検査などが十分に行われていたのかどうか、あわせて、これまでの全国の鉄道各社に対する国の指導はどのようになされてきたのか、また、今回の事故を教訓としていかなる指導を行っていくつもりなのか、国土交通大臣にお伺いいたします。
 同時に、これまで半径二百メートル以下の急カーブ等に設置するよう求めてきた国土交通省の脱線防止ガードの設置対象基準拡大の必要性及び速度超過を防止する新型のATSの全国の路線への普及促進についての国土交通大臣の御所見をお伺いいたします。
 私は、兵庫県の出身者として、阪神・淡路大震災において大変悲しい体験をいたしました。震災は自然災害でありますが、今回の事故は人災と言うべきでありましょう。
 自然災害への備えに努めるとともに、かかる人災が二度と起こらぬよう、原因の徹底究明と再発防止対策に万全を期すことを重ねて政府に強く求め、私の質問を終わります。(拍手)

   〔国務大臣北側一雄君登壇〕
○国務大臣(北側一雄君) 辻議員にお答えを申し上げます。
 まず、事実関係及び原因等についてお尋ねがございました。
 四月二十五日に発生いたしましたJR西日本福知山線における列車脱線事故では、塚口駅―尼崎駅間で、宝塚駅発同志社前駅行き七両編成の快速列車のうち前の五両が脱線し、そのうちの前二両がマンションの一階部分に衝突したものでございます。約五百八十名の方が乗車をされておりましたが、これまでに判明したところでは、死者は九十一名、負傷者は四百五十六名に上っております。
 安全は運輸サービスの基本中の基本でございます。安全性の確保が利用者に対する最大のサービスでございます。今回のような重大事故が生じたことは誠に遺憾と言わざるを得ません。
 国土交通省といたしましては、事故発生後直ちに私と鉄道局長が現場に急行をいたしました。私を本部長とする福知山線事故対策本部を設置するとともに、近畿運輸局に運輸局長を本部長とする福知山線事故対策本部を設置し、事故の対応に全力を挙げております。
 事故原因につきましては、航空・鉄道事故調査委員会が、現在、総勢十名で派遣をされておりまして、調査に全力を挙げて取り組んでいるところでございます。
 まずは、被害を受けられた方々への対応を最優先するとともに、事故原因の究明、さらには今後の再発防止に向けまして全力を挙げて取り組んでまいります。
 レール上の置き石の可能性がある痕跡に関する把握、認識についてお尋ねがございました。
 JR西日本がレール上に置き石の粉砕痕と思われる痕跡があったと発表したことについては承知をしております。しかしながら、この痕跡については、置き石によるものなのか又は他の原因によるものなのかどうかは確認できておらず、また、脱線の原因とどのような関係にあるかは現時点で不明でございます。
 現在、航空・鉄道事故調査委員会が全力を挙げて詳細な調査を実施をしておりますので、その調査を通じて事故原因が明らかになるものと考えております。

 JR西日本の運用管理上の問題点についてお尋ねがございました。
 安全確保は鉄道輸送の基本でございます。鉄道事業者は、安全確保を最優先に事業を行う必要があることは当然のことでございます。御指摘のように、今回の事故に関連いたしまして、JR西日本が公表した内容が翌日大幅に変更されるなど、その信頼性が問われるようなことがあったことは非常に残念であり、遺憾でございます。  国土交通省といたしましては、鉄道事業者は公共交通機関としての使命を果たすため、利用者から信頼されることが重要であると考えております。今後とも、JR西日本に対しまして厳しく指導してまいります。

 乗務員の教育訓練などについてお尋ねがございました。
 鉄道に関する技術上の基準を定める省令では、鉄道事業者は、運転士などの乗務員に対し、必要な知識及び技能を保有するよう教育訓練を行うとともに、必要な適性、知識及び技能を保有しているかを確認しなければその作業を行わせてはならないと規定しており、定期的な運転適性検査等の具体的な実施方法を指導しております。  これを受けまして、JR西日本においても、乗務員に対する運転に係る教育及び訓練、視機能や聴力等の身体機能検査、クレペリン検査などの適性検査を定期的に行うよう実施基準を定めており、これに従って行われていると聞いております。
 今回の事故につきましては、現在、航空・鉄道事故調査委員会におきまして事故原因等を調査しているところでございます。今後の調査状況を踏まえまして、引き続き全国の鉄道事業者に対しまして適切に指導をしてまいります。
 脱線防止ガード設置対象基準の拡大や新型ATSの普及促進についてお尋ねがございました。
 御指摘の脱線防止ガードは、本来、主として日比谷線事故のような低速走行時の車輪の乗り上がり脱線を防止するために設置されたものでございます。今回のような脱線に対して効果があるのかないのか、その検証をしていく必要があります。

 また、ATSの改良その他の対策については、現在進めている航空・鉄道事故調査委員会による調査の最終結果を待つことなく、原因分析の調査中に得られる情報等も踏まえながら、その効果、適用範囲等を検討し、必要なものから逐次実行に移していきたいと考えておるところでございます。

   〔国務大臣細田博之君登壇〕
○国務大臣(細田博之君) 辻議員にお答えいたします。
 一昨日発生いたしました西日本旅客鉄道株式会社福知山線における列車脱線事故に関しまして、まずは事故に遭いお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈り申し上げ、また御遺族の皆様に心からお悔やみ申し上げますとともに、事故で負傷された方々の一刻も早い御回復を心からお祈り申し上げます。
 本件事故による被害状況につきましては、北側大臣の答弁のとおりに、現在、死者九十一名、負傷者四百五十六名に上ることが確認されておりますが、現在なお懸命の救出活動を継続しておりますことは御存じのとおりでございます。
 政府の対応についてでございますが、事故発生の一報を受け、直ちに、すなわち午前九時四十五分に官邸連絡室を設置するとともに、被害状況を踏まえまして官邸対策室に改組いたしましたほか、国土交通省を始め消防庁、警察庁などの関係省庁においてもそれぞれ対策本部を立ち上げ、被災者の救助、救援を最優先に対処したところであります。
 また、官邸で開催した関係省庁局長会議におきまして、国土交通省を中心に関係省庁が連携し、被災者の救助活動、救急医療活動等に万全を尽くすこと、消防、警察及び自衛隊が現場において緊密に連携し支援することなどの政府方針を確認し、現在まで政府一丸となって取り組んできておるところでございます。

   〔国務大臣村田吉隆君登壇〕
○国務大臣(村田吉隆君) まずは今回の事故で亡くなられた方々の御冥福をお祈りするとともに、負傷された皆様にお見舞いを申し上げます。
 また、警察といたしましては、兵庫県警察及び大阪府警の広域緊急援助隊を中心に、現在も列車内に閉じ込められている方々の救助活動を継続中であり、一刻も早く全員を救助できるよう最大限の努力をしているものと承知しております。
 今回の事故については、事故当日、兵庫県警察において、尼崎市内JR福知山線における死傷者多数を伴う列車事故事件捜査本部を設置したところでございます。
 今後、御指摘のレール上の痕跡も含め、事故原因の解明に向け、事故現場における実況見分、関係者からの事情聴取等、鋭意捜査を推進しているものと承知しております。
 今後とも、本件事故の原因解明に向けた捜査を徹底するよう警察を督励してまいる所存でございます。
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○議長(扇千景君) 谷合正明君。
   〔谷合正明君登壇、拍手〕
○谷合正明君 公明党の谷合正明でございます。
 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりましたJR西日本福知山線列車脱線事故について、北側国土交通大臣に質問をいたします。
 まず、今回の事故により犠牲となられた方々の御冥福をお祈り申し上げるとともに、御遺族の方々に衷心よりお見舞い申し上げます。あわせて、負傷された方々の一日も早い回復を切望いたします。
 さて、今回の列車脱線事故は、現時点で犠牲者九十一名、負傷者四百五十六名を数える大惨事となりました。私も、昨日、公明党の調査団の一員として尼崎の事故現場に参りました。先頭車両がマンションの一階の駐車場に完全にのめり込む形で原形をとどめていない様子に、事故のすさまじさを思い知りました。まだ車内には閉じ込められている方が十数人いると現場で聞き、涙が出る思いがいたしました。私の知人の関係者も負傷者の中におりました。
 今回の事故に関しては、安全軽視の速度超過や、オーバーランの距離を偽って報告していたことが判明されるなど、言葉に尽くせないほどの憤りを覚えました。JR西日本は、御遺族の方々、そして負傷され、今なお傷のいえない方々に対して、その補償問題に誠心誠意取り組むことが必要であります。
 そこで、鉄道事業者を監督する政府においても、被害者への支援のため、JR西日本に対して力強い指導力を発揮していただきたいと要望するものであります。監督官庁である北側国土交通大臣の決意をお聞かせください。  また、あわせて、安全を最優先した鉄道行政への取組と再発防止策について納得のいく御説明をお聞かせください。
 今日の巨大な技術システムは、いったん事故を起こすと、そのシステムの巨大さゆえに、正に大惨事と言うべき事態に陥ります。システムがいかに高度かつ複雑になっても、その事故原因は案外身近で日常的な側面を持っていて、こんなささいなことでと驚かされることが少なくありません。
 一件の重大事故には二十九件の軽微な事故と三百のささいな事例があると言われます。今回の事故では、従来から従業員や経営者の心構えの緩みがあったのではないかと思わざるを得ません。安全にかかわる技術システムが巨大で複雑になるに従い、かえって基本的なところに盲点や落とし穴が生じ、往々にしてシステムの新しさや高度な仕組みに目を奪われる余り、その危険性を見落としがちであると思いますが、この点についての御見解をお伺いします。
 鉄道の事故といえば、近くは平成十二年の地下鉄日比谷線の列車脱線衝突事故、平成三年の信楽高原鉄道の衝突事故が脳裏によみがえります。
 政府は、日比谷線の事故について、鉄道事業者は、他社の事故事例を基に自社の安全対策を再点検する目を持つことが重要である、また、事故情報の周知、適切な安全対策の策定及びその徹底を図ることが重要であると指摘しております。信楽高原鉄道の事故の原因は、列車運行に最も重要な安全の確認に関する基本ルールを守っていなかったことにあるとの報告を行っております。
 正に安全対策の再点検、安全の確認に関する基本ルールの遵守の必要性が指摘されているにもかかわらず、本件を含めた列車事故は、このような極めて初歩的な基本ルールに違反して起きているのではないかと言わざるを得ません。大臣の御所見をお伺いします。
 十九世紀の鉄道事故の多くは、車両や線路の構造上の弱さと材料の欠陥及びシステムの不完全性に求められました。二十世紀に入ると、安全システムが整う中で人間のミスによる大事故が目立ち始めたところであります。二十一世紀においては、安全にかかわるすべての技術システムにおいて、あくまでも人間を核心に置いた体系的、戦略的な安全対策が必要であること、そして安全対策には終わりがないことを肝に銘じるべきであります。
 最後に、この点について国土交通大臣の御所見をお伺いして、私の質問とさせていただきます。(拍手)

   〔国務大臣北側一雄君登壇〕
○国務大臣(北側一雄君) 谷合議員にお答えいたします。
 被害者の方々への補償に関するお尋ねがございました。
 今も事故現場では、消防の皆さん、警察、自衛隊、医療関係者の方々など、先頭車両に残された乗客の皆様の救出、救援に懸命に今取り組んでいるところでございます。政府といたしましても、関係省庁等が一丸となりまして、被害を受けられた方々の救出を最優先とした事故への対応を現在行っているところでございます。
 被害に遭われた方々への対応につきましては、事故当日、私は事故現場でJR西日本の社長にお会いをいたしました。事故の被害者の方々に対して誠実かつ万全の対応を期すること、そして、調査委員会も入りますので、事故原因の究明について関係機関に対し全面的に協力をすること、このことを強く要請をしたところでございます。被害を受けられた方々への補償につきましても、JR西日本において適切に対応がなされるものと認識をしております。
 安全対策に対する鉄道行政の取組などについてお尋ねがございました。
 従来より、安全は運輸サービスの基本中の基本でございます。安全性の確保が利用者に対する最大のサービスでございまして、このような考え方を基本といたしまして鉄道行政に取り組んできたところでございますが、今回のようなこのような痛ましい事故が発生したことは誠に遺憾と言わざるを得ません。
 今回の事故につきましては、現在、航空・鉄道事故調査委員会において事故原因等を調査しているところでございますが、今回の事故を教訓として、このような事故が二度と起こらないよう全国の鉄道事業者に対し厳しく指導してまいる所存でございます。

 事業者等の心構えについてお尋ねがございました。
 御指摘のとおり、重大な事故には多くの軽微な事故やささいな事例が潜むと言われております。特に、鉄道及び航空の分野において人的要因と考えられる事故等が多発していることにかんがみ、本年三月に、輸送安全総点検の緊急実施についての通達により、鉄道事業者に対しまして輸送の安全に万全を期すことを指示し、事業者の長自らの責任で点検、確認し、経営者から現場の輸送に携わる一人一人の職員に至るまで、安全に対する意識を高めるように指導をいたしました。
 このような輸送安全総点検中にこのような事故が発生したことから、事故直後の二十五日に、改めまして、公共交通事業者に対し、安全対策の徹底を改めて図ること、その際、本社の安全担当の責任者が直接現場に赴き確認することを強く要請をいたしました。
 加えて、今後の状況を踏まえつつ、また、このような安全総点検中にこうした重大事故が起こった、こうしたことをかんがみまして、JR、また航空事業者も含めまして、主要な交通事業者に対し、できるだけ早い段階に私自身が参りまして、輸送安全総点検の実施状況について現場での取組状況等を直接聞かしていただきたい、また確認をさせていただきたいと思っているところでございます。

 安全対策の初歩的な基本ルールの遵守についてお尋ねがございました。
 公共交通機関における最大の使命は輸送の安全であることは言うまでもありません。その安全を確保するためには基本ルールの遵守が不可欠でございます。今般の事故の原因につきましては、現在、調査委員会が全力を挙げて調査をしているところでございますが、いずれにいたしましても、鉄道輸送の安全確保のためには、鉄道事業者自らがいま一度基本に立ち返り、万全の対策を講じていくことが極めて重要と考えております。経営トップから現場の職員の方々まで、社を挙げて、社全体として、安全サービスが、安全の確保がサービスの基本、それが大前提ということを肝に銘じていただきたいというふうに思っております。

 今後の安全対策の継続的な取組についてお尋ねがございました。
 鉄道輸送については、不幸にも発生しました事故を教訓としつつ、安全性を確保するためのシステムが構築され、安全性の向上が図られてきたところでございます。この結果、安全性を確保するためのシステムはより高度化されたものとなっておりますが、それでもやはり、委員の御指摘のように、人間による取組も依然として重要なファクターとなっていると考えます。
 鉄道の信頼性を向上させるためには、ヒューマンエラーを可能な限り減らすことに加え、仮にヒューマンエラーがあったとしても事故につながらないシステムの構築に向けた継続的で真摯な取組が不可欠でございます。  御指摘のように、安全対策には終わりがないという認識の下、今回の事故を貴重な重要な教訓といたしまして、国土交通省といたしましても、鉄道が更に安全な交通システムとして国民の信頼を回復できるよう、全力を挙げて取り組んでまいる決意でございます。(拍手)

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