162-衆-予算委員会-21号 平成17年05月16日
ATS国鉄・私鉄差異質問 (中村博彦)

○中村博彦君 また大きな事故が起こってしまいました。JR西日本福知山線の本当に大きな事故でございます。私たちは本当に重く受け止めなくてはいけない、そして、二度とこのような事故を起こさない対策をしなくてはいけないと、こういうように思うわけでございます。本当に、人為的、行政的、政治的また企業的な、人為的な反省点、大きいものがあると思っております。
 びっくりいたしておるわけでございますけれども、JR東日本、東海、西日本は大きな利益を生んでおるわけでございます。それにもかかわらず、この新型ATS、ATCの整備率は、東日本では三五%、JR西日本では八%にしかまだなってございません。
 JR西日本を取って見させていただいても、この新型ATSの設備工事費は九八年から二十一億円、十六億円と、本当に大きな数字を示しておりません。そして、特に、二〇〇一年からは二億円、三億円、一億円、二〇〇四年は五億円と。経常利益が二〇〇〇年には四百三十億円、二〇〇一年には五百四十億円、昨年は七百四十三億円の連続増益をしながら、本当に大きな問題でないかと私は思うわけでございます。
 なぜこのような企業体質が生まれたのか、安全より利益重視の姿勢が生まれたのかは、本当に考えられないわけでございます。平成三年五月の信楽高原鉄道事故で四十二人の方が亡くなっておる。そして、JR西日本はこの事故にも大きくかかわっておるわけでございます。それにもかかわらず再発ということでございます。もう本当に企業体質、今、国土交通省担当副大臣としてどのようにお考えになられますか。
 それと、私は一番やはり問題なのは、国鉄民営化の三人男と言われた松田、葛西、そして井手さんでございます。そして、今なお相談役でありながら会長以下を引き連れてすべてに取り組まれておる井手さん、私は大きいやはり責任があると思います。その辺も踏んまえながら、副大臣、御答弁をお願いいたしたいと思います。

○副大臣(岩井國臣君) このたびの尼崎の事故につきましては、大変ショッキングで、しかも重大な事故であったと思います。誠に残念至極でございます。
 今回の状況を見ておりますと、やはりJR西日本の経営についての基本的な考え方あるいは安全管理技術面における対応の仕方、いろいろと問題があったのではないか。私の認識といたしましては、国鉄時代において培われてきたいろんな事柄があると思います、ノウハウがあると思いますけれども、それらが現在のJRにうまく引き継がれたのかどうか、その辺にも大きな問題があるのではないかと思っております。
 事の重要性にかんがみ、これは大変重要なことだと思いますけれども、今までの私どもの、国としての、国としての鉄道行政についても、安全基準あるいは監査のやり方などにつきましてきっちりと検証をしなければならないというふうに考えて、今いろいろと取り組んでおるところでございます。

○中村博彦君 御存じのとおり、今回の急カーブそして速度超過が防止できなかった事故でございます。聞くところによると、六月には新型ATSもでき上がっておったとはいいますけれども、やはり行政とJR西日本の怠慢としか言いようがないわけでございます。
 そこでお聞かせ願いたいんですけれども、このように、この急カーブでそして速度超過防止ができていない、新型ATSが付いていない。私は、本当に民間、民鉄でございますけれども、民鉄を見ますと、予算も本当に使われております、安全に対して。近鉄を見ましても、九七年が百九十三億、二〇〇三年が百二億というように、すべて新型ATS並びにATCが全部でき上がっておるわけでございます。それにもかかわらず、国鉄三社といいますか、これは大変な問題だと私は思うわけであります。
 そこで、もう一点お聞かせ願いたいのは、近代化資金というのがございます。これは財務大臣も御存じのとおり、近代化設備整備費というのがございます。すなわち、この近代化設備費につきましては赤字企業でなくては駄目だと、こうなっておるわけでございます。それを考えたときに、国民の安全というのは、赤字路線だから乗らない、黒字だから乗るんだと、新型ATSができておるから乗るんだと、乗らないんだというものではないわけでございます。そして、この近代化設備整備費というのは三島JRはいまだに使っておりません。JR北海道、JR九州、JR四国。
 副大臣、この危険と思われる急カーブですね、何か所ございますか。

○政府参考人(杉山篤史君) 今御指摘がございましたJR北海道、JR四国、JR九州の三社につきましてはATSが付いているわけでございますが、現在のATSは、赤信号の箇所に誤って列車が進入することを防止するためのATSが整備されているということでございます。
 しかしながら、御指摘がございました急曲線における速度超過を防止する機能を有するATSにつきましては、JR北海道のいわゆる津軽海峡線部分を除きましては設置をされておりません。

○中村博彦君 それじゃ、JR四国はこの危険と思われる箇所、何か所ございますか。そして、それに対して、現在、どういうような国土交通省として対応するか、現時点でのお考えをお願いいたしたいと思います。

○政府参考人(杉山篤史君) 現在、急曲線の箇所につきましては月内を目途に調査中でございまして、その調査を踏まえながら、私ども今後の急曲線対策というものをやっていきたいという具合に思っておる次第でございます。したがいまして、今申し上げましたように、急曲線対策、これは四国だけではございませんけれども、先ほど申し上げましたJR三島、いずれにつきましても急曲線対策のためのATSというものは付いておりませんので、今至急その箇所数を調査をしていると、こういう状況でございます。

○副大臣(岩井國臣君) 今、中村先生の方からATS、新型ATSの話が出ておりますので、今回の尼崎の事故に関連して、現在私どもどういうふうに考えておるか、そのことについて御報告申し上げたいと思います。  今回の福知山線におけます脱線事故につきましては、現在、もうお聞き及びだと思いますけれども、航空・鉄道事故調査委員会において原因究明のための調査が行われているところでございますけれども、国土交通省といたしましては、その調査の原因究明を待つことなく、待つことなく、今回の事故の再発防止のために緊急対策を早急に進めてまいりたいというのが基本的な考え方でございます。そのために、現在、国土交通省の中でございますけれども、福知山線事故対策本部というものを設置しておりまして、急曲線に進入する際の速度制限に関する方策、あるいは運転士の資格要件等の在り方、そういったことにつきまして鋭意検討を進めているところでございます。
 で、五月の九日、つい先般でございますが、福知山線事故対策本部、開催いたしました。その本部におきまして、既設のATSに急曲線区間の速度超過を防止する機能の付加を義務付けるということを決定させていただきました。同時に、対象線区、どういう線区についてそれを設けるかということですね、それから整備期間、時期の問題などにつきましても、その基準をやっぱり作らなきゃいけませんから、その基準を今月末までに決定したい、それを公表したいというふうに考えております。
 なお、特に列車の運転速度の高い区間、これいろいろあると思うんでございますけれども、そういうところにつきましては、原則といたしまして平成十八年度末までに整備を完了したい、そういう基本的な考え方を持っております。
 また、運転士の資格要件等の在り方につきましては、運転士の適性、教育訓練のやり方、方法ですね、それから健康管理などにつきまして外部の、これはちょっと外部のいろいろ専門家の意見聞かないといかぬと思いますが、外部の専門家の意見も聞きながら検討を進めて、できるだけ早いうちに議論の中間的な取りまとめを、まだちょっと時期申し上げられませんけれども、できるだけ早い時期に中間的な取りまとめをいたしましてそれを公表させていただきたいというふうに考えております。

○中村博彦君 早急にこの危険箇所といいますか、全国のJR、全国の私鉄を早急に調べていただいて、早急な手を打っていただきたい。ただ、JR四国管内でも五十四か所、事故が起こってもおかしくないという箇所が出てきておるわけでございます。そして、やはり赤字企業だとか赤字路線で対応していくときに、この近代化設備整備費は平成十五年が二十五億、そして十七年も二十五億、横ばいでございます。そしてこの事件が起こりました。そして、今これから総点検して、そして赤字企業に対してはこの近代化設備整備費再生プロジェクト予算というものを考え直さな、財務大臣、いかないのではないでしょうか。
 そして、一例を取ってちょっと申し上げますけれども、この近代化設備整備費の中に踏切保安設備整備費補助金があるわけであります。これが、再三事故が起こっていますよね。それにもかかわらず、平成十五年二億四千万、二億四千万ばかり。それから、平成十六年が二億一千万、平成十七年が二億と計画的に危険踏切を解消しようという行政の計画性も全くないとしか言いようのない予算が組まれておるわけであります。
 これに対して、もちろん財務大臣は直接的ではございませんけれども、やはり私はこの赤字路線だ、赤字事業体のみが補助対象だということをここで考え直さないかぬのでないかと、こういうように思いますので、財務大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

○国務大臣(谷垣禎一君) 今、中村委員がおっしゃいましたように、基本的に制度の立て方として、安全対策、これは鉄道事業者が行うべきものだという考え方で整理をいたしておりまして、ただ、それだけでは赤字路線等々で不測なことが起こってはいけないということで近代化資金の制度を設けてATSの設置改良等々含みまして補助率のかさ上げというようなことも入れて対策を立てていると。今後とも、私はこれは経営の悪いところには必要だと思いますし、これに関してはまた国土交通省ともどういう予算を、措置を講ずればいいのかというのは十分協議をして遺漏のないようにしていく必要があるというふうに考えております。
 委員のお尋ねは、さらにそれを超えて経営状況のいいところにも考えるべきではないかというお考えだと思いますけれども、私は、やはり鉄道事業者にとって最大の義務は何かということになれば、安全に対する配慮をするということが、安全対策をきちっとするということが鉄道事業者の最大の義務だと思います。収益を上げている鉄道事業者がそういうことをしないということであるならば、私は何をか言わんやというふうに思っておりまして、それはやはり鉄道事業者が本来お考えになるべきことでないか。ただ、それでは立ち行かない、とても安全対策手が回らないというところに対しては、それはきちっとやらせていただかなければならぬというのが私どもの考え方でございます。

○中村博彦君 今私が申し上げたのは、これは危険カーブを全部出す、それから危険踏切を全部出してまいりますと、JR東日本の範囲とか利益を出しておる私鉄だとか、そういうものにこの近代化整備費を使わせてというんではございません。ただ、これだけの数量がきっと出てくると、赤字路線がある、赤字企業では賄い切れないぐらいの危険踏切、危険カーブというものが出てくるんだと、そういうことを申し上げておるわけで、是非前向きに国土交通省と考えていただいたら有り難いんでないかと。手動式遮断機にしても、それから、皆さんが御存じのように、この遮断機に使われるさおでも千本以上折れるそうで、一年間に。それはJR東日本のところで折れたら、それはJR東日本にやってもらわないけませんよ、都市対抗野球まで持っておるんだから。それはもちろん、それはそれでいいと思いますけれども、やはり命、安全というのは、これは鉄道に乗る国民はすべて平等だという視点で対応願いたいと、こういうことでございます。

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