162-衆-予算委員会-21号 平成17年05月16日
ATS国鉄・私鉄差異質問 (菅直人)

○菅(直)委員 現在、私は、民主党の中で、国土交通ネクスト大臣という役職を仰せつかっておりまして、JR福知山線の事故についての対策本部長も務めております。きょうはこの問題を中心に、時間があれば外交問題についても総理の考え方をただしていきたいと思っております。
 まず冒頭に、百七人の方が亡くなられたあの大事故について、亡くなられた方の御冥福をお祈りし、御家族に対して心からのお悔やみを申し上げたいと思います。また、多くの方がけがをされ、今日も療養されております。そういう皆さんの一日も早い御回復を、これも心からお祈りをいたしたいと思います。
 私も、事故のあった翌日の昼、現地を訪れまして、あの二両目あるいは一両目、まさにマンションの壁に手が届くところで現場を拝見させていただきました。最初のうち一両目が見つからなかったという話を聞いて、そんなことがと思いましたが、現地を見てみて、そのことが決して大げさではない、一両目が完全に駐車場に半分ぐらいの長さが入り込んで、しかも、駐車場にあった昇降機のようなものを全部はね上げて、自動車のタイヤが横からはみ出している。車体そのものは、車が入る方向、よく撮影される方向の左側ですが、そこから見てもよくわからない。こんな状況でありまして、懸命な救出活動がまだ続いている段階でありました。
 そこで、今回のこの大きな事故、なぜそれをとめることができなかったのか、あるいはなぜこういう大きな事故が起きたのか、もう少し大きな観点から議論をしてみたいと思います。
 総理、小泉総理は、民でできることは民に任せるとよく言われますよね。そういう意味では、JR西というのは、小泉総理流に言えば優等生ですね。つまり、官営であった国鉄からJRに変わって、そして近隣の私鉄との競争に打ちかってシェアをどんどん伸ばしてきた、業績をどんどん伸ばしてきた。まさに、民でやれることを民でやって、官から民に移して大変な業績を上げた。小泉学校の優等生ですよね、小泉さんの話をそのままちゃんと受けとめれば。
 しかし、そのことが何を招いたか。つまりは、一分、場合によっては一秒のおくれさえ報告しろという効率優先、競争優先、そういうものが、安全性やあるいは人間性を無視し、軽視した、そういう大きな背景が私はこの事故を招く背景にあった。また、このことは、単に今回の事故にとどまらず、日本社会全体がまさに小泉流の、強いやつはどんどん競争に勝てばいい、弱いやつはどんどん負けて、それは仕方がないんだ、そういう社会に向かいつつある今日の一つの私は大きな警告として存在する、このように思います。
 総理に、まさに小泉学校の優等生、JR西の今回の事故についてどういう見解をお持ちか、しっかり総理御自身の考え方を述べていただきたい。

○小泉内閣総理大臣 菅さんの話を聞いていますと、国営から民営化されたからこの事故が起こったんだというふうに受け取られますが、私は、民営化したから、効率性を優先してきたからこの事故が起こったんだ、そういう一面的にとらえるべき問題じゃないと思います。民間の会社も安全第一ですよ。その上で効率を考える。  私は、今回の事故が国鉄の時代だったら起こらなかった、民営化になったから効率優先になったんだというような言い方というのは賛成できません。私は、民営化の会社でも安全第一、そういう中で、いかに競争を通じて国民によりよいサービスを提供するかと努力している会社はたくさんありますし、国営だったら安全、民営化だったら効率優先だから安全でないというふうにとられるような意見はいかがなものかと思います。

○菅(直)委員 これが小泉流なんですよ。私は、国鉄だったら事故は起きなかったなんて言っていません。実際に大きな事故はかつて起きました。
 そうではなくて、JR西が小泉さんの言っている優等生じゃなかったですかということを言っているんです。そのことを何も言わないで、急に、何か国鉄だったら、いわゆる国有鉄道だったら事故は起きなかったのかなんという、私が言いもしないことを取り上げて反論するというのが、これが小泉流なんですよ。
 そこで、小泉総理……(小泉内閣総理大臣「委員長、ちょっと言わせてください。私が言っていないことを言っているから」と呼ぶ)ちょっと待ってください、私の発言ですから。これから話をしますから、よく聞いてください。
 では、小泉総理は、そういう安全第一という責務を果たしていたのかということが問題になるわけです。
 きょうは国交大臣ももちろん来られておりますが、国交省は、民営化したJRに対しても、あるいは私鉄に対しても、多くの点でいろいろな責任あるいは権限を持っています。このときの事故を起こした列車の平成十五年から今日までの時刻表の変化が、皆さんのお手元に、総理のお手元にもお渡しをいたしております。どういうことになったのか。
 まず、国交大臣にお聞きしますが、こういう列車のダイヤ変更ということについては、安全性を含めて、適切であるかどうか、これをチェックする責任が国交省にある、法律にはそう書いてあると思いますが、そういう認識でいいですか、国交大臣。

○小泉内閣総理大臣 菅さんも、私が言っていないことを総理が言ったと批判されているけれども、私がいつJR西日本が優等生と言いましたか。(菅(直)委員「私が言ったんですよ」と呼ぶ)だから、私があたかも言ったように、総理がそういうことを言っていると。そんなこと、私は言っていませんよ。私が言っていないことをあたかも私が言ったかのようなことを言わないでいただきたいということです。

○北側国務大臣 菅委員に御答弁申し上げます。
 ダイヤの変更については届け出が当然なされます。安全の確保をすることは何よりも大前提でございますので、そのダイヤの変更について、当然、届け出があったものについて安全面からのチェックをするのは国交省の役割であると考えております。

○菅(直)委員 総理も何か耳が悪いのか、私が、JR西は、小泉さんが言う、民ができることは民でやるべきだということに対する優等生ではなかったんですかとお聞きしたら、急に、国鉄だったら事故が起きないのかと言われたから話がおかしくなるので、よく聞いておいてください。
 そこで、国交大臣が今言われたように、国交省にはそういうチェックをする責任があるんです。
 この資料を見てください、総理も。ちょっとよく見てください、そばにあるのを。
 平成十五年の十月まで、宝塚発のこの列車は、中山寺を通過していたんですよ。そして、宝塚から尼崎まで十六分で運行をしておりました。それが、平成十五年の十二月になって中山寺に停車するんですね。そして、その後小さな変更がありますが、平成十七年、つまり事故を起こしたときの時刻表を見ていただきますと、宝塚から尼崎まで十六分二十五秒となっております。
 どういうことかというと、駅が一つふえて、宝塚から川西池田駅まで行くのに、当初五分五十秒で行けたものが、三分十秒と停車駅十五秒とさらに三分十秒で六分三十五秒、平成十五年十二月にはかかっていた。つまり、六分三十五秒ということは、四十五秒延びたわけですね。その後も、平成十七年を見ていただいても、中山寺駅の十五秒を含めて所要時間が、三分十五秒、十五秒、三分十秒で六分三十五秒。つまりは、中山寺駅を通過よりも四十五秒川西池田駅に着く時間が延びるわけです。これは当然ですよね、一駅ふえたんだから。しかし、その延びた時間をその後で取り戻して、つまり、二十五秒所要時間が延びるだけに抑え込んでいる。
 そこでどうしたか。十五年の十月と十七年の三月の比較を見ますと、まず、川西池田から伊丹までの所要時間を十秒切り下げる、四分を三分五十秒にする。伊丹駅の停車時間を、二十秒というのもかなり短いんですが、何と十五秒に五秒短縮する。そして、伊丹から尼崎に五分三十秒かかったのを、ここも十秒短縮する。川西池田から尼崎に至るこの間を、何とこの短い間で、十秒、十秒、五秒、二十五秒短縮をした、そういう新しいダイヤになっているわけです。そこが、あの直線から半径三百メートルという急カーブに至るところです。
 私は、このダイヤを見て、ちょっときついんじゃないのと。その下の方を見てください。出発時間が違う七時四十八分とか八時四分の時刻表、同じようなルートを通っている時刻表の変化を見ますと、まだ停車時間が四十秒とか五十秒とか、短くなっても三十五秒とかあって、所要時間も十七分二十秒ぐらい。あの事故を起こしたものよりは約一分長い時間で宝塚から尼崎まで行くダイヤになっているわけです。
 これだけ厳しいダイヤを組んで、どうですか、これが国交省が安全第一で考えていたんですか。総理が安全第一で考えていた、それがこういうものを見逃すことになぜつながるんですか。答えてください。

○北側国務大臣 首都圏においても、また関西圏におきましても、いわゆる過密のダイヤというのは、もっとこれ以上の過密ダイヤというのはございます。
 大事なことは、ほかの面も含めまして、安全上の基準がすべて守られているかどうか。この件に関しましては、制限速度を守るというのは当然の話でございます。それが守られていたならば今回のような事故が起こらなかったわけでございまして、私は、そこにむしろ大きな問題があると考えております。

○菅(直)委員 だんだん国交大臣も総理大臣に似てきましたね。
 私が聞いているのは、まずダイヤのことを聞いているんです。当たり前です、制限速度を守らなきゃいけないなんというのは。しかし、その前提として、ダイヤについてチェックをする責任があるんじゃないですか。日々の運転士がどれだけスピードを出していたかを国交大臣に見てくれとは言っていません。そんなこと、できるわけないじゃないですか。ダイヤはちゃんと届け出があってチェックすることになっているから、その責任があるところを聞いていたら、そのことは答えないで、スピードの問題です、何とかの問題ですと。全く、これが小泉政権のもとの安全第一なんですよ。
 そこで、具体的にさらに詰めていきます。
 結局、あの事故は、伊丹から尼崎まで五分二十秒、秒数にすると三百二十秒で行く予定になっていたのに、前の駅のオーバーランで一分三十秒、九十秒おくれたわけですよ。秒数でいいますと、本来三百二十秒かけて伊丹から尼崎まで行くところが、九十秒おくれちゃったものだから、二百三十秒で行かなければいけない。つまり、本来なら約三百秒で行くところが二百秒で行かなきゃいけない、三分の二の時間で行かなきゃいけない。  当時、JR西は定時運行確保というのをやっていましたね。きょうはJR西にも来てもらっています。社長にお聞きします。定時運行確保で、何秒おくれまで報告義務がありましたか。

○垣内参考人 JR西日本の社長の垣内でございます。
 ちょっと、お答えさせていただく前に、今回私どもが起こしました脱線事故によりまして、百七名の方がお亡くなりになられました。また、五百名を超えるお客様が負傷されました。亡くなられた方々の御無念や、大切な御家族を失われた御遺族の方々の御心情をお察し申し上げ、私としても胸の張り裂ける思いでございまして、まさに痛恨のきわみでございます。
 ここに、改めまして、お亡くなりになられました皆様の御冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、御遺族の皆様に深くおわび申し上げます。同時に、負傷された皆様と御家族には心からのお見舞いとおわびを申し上げますとともに、一日も早い御回復をお祈り申し上げます。本当に大変申しわけございませんでした。
 ただいまの先生の御質問でございますけれども、お客様の利便ということから、定時運転にするように、慫慂といいますか、そういうふうなことはしておりますけれども、列車がおくれることについてはいろいろな事情があるわけで……(菅(直)委員「報告義務は何秒までですか」と呼ぶ)そういう報告義務、何秒までというものはございません。

○菅(直)委員 おかしいじゃないですか。国交委員会で言ったことと違うんですか。定時運転確保ウイークで、一秒単位で遅延報告義務がある。私、国交の委員会、全部見ていますよ。もう一回答えてください。

○垣内参考人 お答えをいたします。
 一秒単位での報告といいますのは、これは年に何回かでございますけれども、ダイヤ改正を行った後等、特に新入社員だとか新しい学生が多くなったようなときには、列車に乗りなれていないこともありまして、そういったときには、一秒単位といいますか、いろいろな、ダイヤ上、実際にそのとおり動いているかどうかにつきまして調べておるわけでございますが、それらは、次のダイヤ改正においてそれらの資料をもとに改善するためにしているものでございまして、日常的におくれをきちっと報告するというふうなことにしておりません。(菅(直)委員「事故のとき何秒単位だったんですか」と呼ぶ)

○甘利委員長 指名してから質問してください。

○垣内参考人 事故のときにはそういう報告をいたしておりません。(菅(直)委員「だから、何秒単位で報告義務」と呼ぶ)

○甘利委員長 指名して。
 菅直人君。

○菅(直)委員 私は国交委員会に出ていますから、あるいは全部テレビで見ていますから。そのときは特別な定時運行確保ウイークだったんじゃないですか。そのとき一秒単位だったというふうに答えていませんか。議事録を見ればわかりますよ。

○垣内参考人 先ほど申し上げましたように、実態とダイヤがうまく合っているかどうかを調べて次のダイヤ改正に生かすための調査ということでございますから、例えば、四月でいいますと新学期の開始から一週間というふうなことでございますし、五月についてはゴールデンウイーク明けから一週間ということでございますから、四月二十五日はその報告義務がございません。
 以上であります。

○菅(直)委員 少なくとも国交委員会での答弁とちょっと食い違っていますが、私が聞いているのは、定時運行確保ウイークで、一秒単位で報告義務があったと。議事録を精査してください。これは理事の方にもお願いしておきます。
 そこで、せっかくきょうは事故調にもおいでいただいています。事故調査委員会は、あの信楽鉄道の事故から鉄道についても範囲を広げたわけですね。
 事故の兆候という言葉があります。事故の兆候があったときには、それで防ごうということです。どこまでの権限があるかによりますけれども、私は、事故の兆候あるいは危ないなという指摘はいろいろなところであったと思いますが、こういう場合、事故調はそれに対応できるんですか、あるいはしているんですか。それとも、国交省に基本的には任せているんですか。お聞かせください。

○佐藤参考人 お答えいたします。
 航空・鉄道事故調査委員会は、法令に基づきまして、事故や重大な事故の兆候、これは重大インシデントというふうに申しておりますが、この調査を行っております。そうしまして、調査報告書を作成して、これを公表いたしております。
 また、事故及び重大な事故の兆候の調査過程におきまして調査、分析されて明らかになりました事故及び事故の兆候に結びつくような関与要因につきましても、事故及び事故の兆候の再発を防止するという点から、調査報告書に記載しまして、これを公表しております。

○菅(直)委員 少なくともこの事故については、そういう兆候をきちっと把握して、とめることができなかったわけです。
 そこで、国交大臣、国交省として、大臣が就任する前かもしれませんが、こういった問題が国会で指摘をされたことがあったんじゃないですか。このJR西日本では、理由は別ですが、少しのおくれでいわゆる日勤教育というのを受けた運転士が自殺したという事件がありまして、その事件をめぐって国会でもそのことが取り上げられて、マニュアルはこうなっていてもあえて列車をとめるとか、そういうことが大事なんじゃないかと思っているんですよ、それが一番安全なんです。マニュアルがこうなっているから、時間をおくらせたら大変なことになるとか、そういうことが余り強調されると本当に大きな事故につながりますよということを最後に言って、またこういうことが二度と再び起こらないようにぜひ御指導をお願いしたいと思います、こういう議論があったんじゃないですか。役所として理解していますか。

○北側国務大臣 鉄道輸送において、当たり前の話でございますが、安全に輸送するというのは大前提のことでございます。ですから、何よりも、例えば速度の問題でいいましたら、決められた速度をきちんと守るということ、たとえそれがおくれていようとも、制限速度をきちんと守っていくということが優先であることは当然であると思います。

○菅(直)委員 どうも、本当にみんな小泉症候群でして、こういう議論があったことを役所としてちゃんと理解しているのかと聞いたんですよ。
 もう一回聞きます。あらかじめ聞いたんですよ、私は国交省のお役人に。国会での議論があったんじゃないですかと。知らないんですか。

○北側国務大臣 そういう事案があったことは聞いております。

○菅(直)委員 平成十三年十一月八日、参議院の国交委員会で、北側大臣と同じ政党の弘友和夫議員から、この件についてしっかりとした質問が出ているじゃないですか、こういうことが二度と起こらないように指導をお願いいたしたいと思いますと。どう対応されたんですか。

○梅田政府参考人 先生の御指摘の議論は、西宮の、これは現在訴訟になっておりますけれども、日勤教育によって、それが原因で自殺をしたという運転士の件だろうと思います。
 この件につきましては、御指摘のような国会での御議論がございました。我々といたしましては、その後裁判になったことでございますので、今件については、その裁判の推移を見ていたということでございます。

○菅(直)委員 結局、何もしなかったということじゃないですか。何もしていないということじゃないですか。  もうちょっと前のところを読んでみましょうか。今の局長の説明で、要するに逆転、というのは、これは先頭車が入れかえで、あるところに着いて、ターミナルに着いて戻っていくわけですが、要するに逆転の何か機械を動かしたらそれでもとに戻るような程度のものを、よくわからないで、呼んで点検したのでおくれたんだ、本人の責任だ、こう会社の方が言われているということを今言われたんだと思うんですよ。私は、この考え方を変えないと今後大きなミスに、事故につながりますよと言っているんですよと。
 つまりは、事柄はいろいろです。しかし、その場合には、ある駅に着いた。二十分間時間があったんですが、今度は先頭車両が逆に、一番最後の後方車両が先頭車両になってそこに行った。そうしたら、後ろの車掌室のライトがまだついている。何か逆転の装置をやればよかったんだけれども、そこに気がつかないか、確かに知識が不十分で、歩いて、おりてまた後方車両まで行った。いろいろとだれかに聞いて、やっとわかって戻ったら、出発が五十秒、一分おくれて、十三日間日勤教育をやらされた。そして、その翌日に命をみずから絶った。
 この事件に対して弘友さんが、それは、日勤教育というのが安全性のためにやられている、その建前は大いに結構です。ベテランの人について教わるとか、大いに結構です。しかし、草むしりをやらされたりいろいろなことをやらされてこういうことになった。
 裁判は裁判です。しかし、この中で弘友さんが言っているのは、そういう五十秒のことが起きたときに、おまえのやり方が悪かったから五十秒おくれたと言うのか。いや、しっかり後ろまで見ていって、それは、本当なら、ベテランならもっと簡単にできたかもしれないけれども、そこまで丁寧にやったことについては、少なくともそのことをもって、懲罰的なと言われている日勤教育をやらせるというのはちょっとおかしいんじゃないですかということがここに含まれているわけですよ。
 それを、今局長は何ですか。裁判だから、裁判の様子を見ていると。結局、この弘友さんの質問の最後のところに指導をちゃんとお願いしますよと言っているけれども、全く無視しているじゃないですか。事故につながりますよと言っているじゃないですか。北側さんの同僚じゃないですか。ちゃんと答えてください。

○北側国務大臣 言われております日勤教育の問題につきましては、昨年九月にJRの関係者の方から、そうした懲罰的な再教育としての日勤教育、具体的な事実関係の指摘がございまして、それは問題ではないかという指摘がございました。
 それを受けまして、JR西日本に対し事実関係の調査を連絡し、昨年の十月に、運転取り扱いに必要な教育とは別に職場の環境整備の一環として実施しているという回答をJR西日本がしてきましたけれども、その際、再教育として、今おっしゃったような草むしりなどの懲罰的なものは含めるべきではない、そのような指導もしているところでございます。

○菅(直)委員 とにかくいろいろな背景があるわけですが、少なくとも安全第一というものが貫かれていたとは、今のどの答弁を聞いても、どうです、聞かれている皆さん、どこにそのかけらがあるんですか。悪いのは本人だから裁判だとか、草むしりはやめさせたとか、当たり前の話じゃないですか、そんなことは。草むしりをやめさせることが安全第一なんですか。安全第一と言うなら、例えばちゃんとベテランの運転士が同乗して、君はここはこういうふうに運転したらいいよとか、そういうことならわかりますよ。
<ATS>(index)
 そこで、JR西の投資についてちょっとお聞きしたい。
 まず、ことしの利益と安全に対して、特にATS―Pというんですか、それに対する投資額。投資額は、数年前はそれでも何十億かあったのが最近減っていると聞いています。その変化も含めて、利益を上げて民間企業としては大変優秀だけれども、安全に向かっての投資が極めて細っていたのではないかという指摘がありますが、数字も含めて簡単に説明してください。

○垣内参考人 お答えさせていただきます。
 私ども、鉄道事業をやっているわけでございますけれども、安全が第一であるというふうなことでこれまでも経営をしてまいりました。それで、安全投資につきましては、私ども、全体、およそ九百億から一千億ぐらいの投資をしておりますが、そのうちの約半分、五百億前後が安全投資でございまして、最も重要視している投資だ、こういうふうなことでございます。
 御指摘の点につきましてはATS―Pの整備のことなのかと思いますけれども、これらにつきましても、安全輸送を確保する上で大変重要ということで、特に京阪神地区におきまして、線区における列車本数とか列車種別利用人員を総合的に勘案いたしまして、順次進めてきておるところでございます。
 以上でございます。

○菅(直)委員 これに関して、国交省、大臣、JRが民営化するときに、基本的には民間と同じ基準になるべきところだと思いますが、きょうの新聞にもありまして、私もいろいろな資料を見ておりますと、ATS―PあるいはATSの速度照査型というのが新しい形で、旧来型は単に赤信号に突入したらブレーキがかかる。この速度照査型というのは、本来のスピードより高過ぎるとそれを落としていくという機能がついている。基本的にこれについては、ある範囲は設置しなければいけないという基準になっていたのに、JRが民営化するときには、一遍にやらせるのはなかなか大変だからといって、それにしてもいいけれどもそれでなくてもいいということになって、私鉄なんかに比べておくれてきたのではないか、こういう指摘があります。
 つまりは、国交省がそういう緩い基準しかJRに課していなかったために、業績第一、たしかことしは八百億近い利益ですよね、社長、そうでしょう。そういう利益が上がりながら、この分野については二億円とか三億円とかしか投資をしなかった。それが可能になったのは、国交省のそういう、つまりは、安全性に対して私鉄に比べて緩い姿勢にあったんじゃないですか。どうですか。

○北側国務大臣 詳細は鉄道局長の方から答弁させますが、そのようなことはないと聞いております。

○梅田政府参考人 まず一点、誤解をしていただきたくないんですが、速度照査型のATSというのは、ついていないのとついているのはどう違うのかということでございますが、ついているものは、信号機の手前で、急ブレーキではなくて、徐々に速度が落ちていってとまるということでございます。ついていないのは急にとまる、こういう点でございます。
 そこで、今の話でございますが、昭和三十七年に三河島事故が起こりました。そこで、国鉄は、昭和四十一年に全線でATSをつけました。これは、先ほどおっしゃいましたように速度照査型ではございません。ございませんけれども、全部つけました。その際に、ここ一年ぐらいの間に、四十二年でございますが、民鉄で三件立て続けに、信号の見直しによって事故が起こりました。そこで、大手民鉄につけるように指導いたしまして、昭和六十二年の国鉄改革の際にATSの設置を義務づけました。
 最近、二年ぐらい前になってようやくATS、最低限のATSでございますが、地方のローカル線を含めまして、民鉄は設置されたというのが現状でございます。

○菅(直)委員 答えていないじゃないですか。私が言ったのは、旧型でも構わない、民間よりも新型でなくてもいいという配慮が今日まで続いていたんじゃないか、これは幾つかの指摘があるんですよ。きょうの新聞だけじゃありません。そこのイエスかノーかを聞いているんですよ。

○梅田政府参考人 国鉄もJRも、それから民鉄も基準は同じでございます。信号機の赤信号のところで、これは鉄道の場合、閉塞区間というのがございますから、前に列車があったら入れません。その手前に信号機がついています。その信号機のところで列車をとめるという役割でございまして、この点においては、国鉄も民鉄も全く同じ基準でございます。

○菅(直)委員 これも国交委員会でもさらにやりますけれども、少なくとも、速度照査型というものの義務づけが緩かったんではないかという指摘があることは事実でありまして、それについては、今の答弁で果たして正確なのかどうか、さらに委員会でやらせていただきたいと思っています。
 そこで、せっかく尾辻さんにも来ていただいていますが、尾辻さんは、何か厚生省として答えられていますよね。労働安全衛生法に基づいて、日勤教育などを含めて、どういう形で安全性が維持されるのか調査するというようなことを記者会見等で言われていますが、どういう結果になったでしょうか。

○尾辻国務大臣 厚生労働省といたしましては、事故発生当日、直ちに所轄の兵庫労働局とそれから尼崎労働基準監督署において職員を派遣いたしまして、事故対策本部を設置いたしました。そして、労働基準法でありますとか労働安全衛生法上の問題がなかったかという観点から調査を行っておるところでございます。私も徹底して調査しろという指示をいたしておるところでございます。
 今、調査中でございます。

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