75-衆-予算委員会-3号 昭和50年01月31日

○不破委員 それでは私は次の問題に移りたいと思います。
 次の問題は民主主義の問題であります。
 総理は、施政方針演説で、私はいかなる暴力にも反対するということを明言されました。私は、いま日本の国会で、日本の国の政治で暴力が問題になる場合、いろいろな暴力がありますが、国の政治ということを考えます場合、暴力に四つある。
 一つは、昨年自民党からも提案のありました一連の爆弾事件であります。この事件は、私どもの調べでも、七〇年代五年間に八十八件も頻発をしている、これも重大であります。それから、革マルとか中核とかいう、ああいう暴力集団。これは、去年一年間でも十一人の死者、五百人以上の犠牲者を出しました。最近七年間をとってみると、三十七名の死者、四千三百名を超える負傷者を出しています。いまでも全国の大学で、彼らが暴力をふるうために、学生が自由に登校できないのが無数にあります。
 さらに右翼のテロや暗殺。一昨年、熊本でわが党の委員長への襲撃事件がありましたし、成田社会党委員長への襲撃未遂事件もありましたが、こういう問題もある。
 それから最後に、昨年来われわれが国会で問題にしております解同朝田派によるさまざまな暴力がある。
 私は、政府が本当に民主主義の姿勢を貫くなら、こういう暴力について、この暴力はこういう理由があるから除外をするとか、そういうことではなしに、国民の生命と安全、権利を侵すような暴力に関しては、理由のいかんを問わずこれを抑える、反対する、こういう立場をとるのが当然だと思いますが、改めて総理の見解を伺いたいと思います。

○三木内閣総理大臣 いかなる理由によるにせよ、暴力というものが許されて民主主義というものは成り立つわけはないわけです。いかなる種類、いかなる場所においても、暴力というものは絶対に排撃するというのが、政府の強い態度であることを重ねて申し上げておきます。

○不破委員 いま挙げた四つの中で、私が特にきょう問題にしたいのは、解同朝田派の問題なんです。これは特別な理由があります。
 というのは、この解同朝田派の暴力というのは、ほかの暴力とは多少違いまして、ほかの暴力に関しても、いろいろな党利党略から、あれはみんな共産党反対だから、泳がしておいたほうが党略的には得だというような話も多少耳にすることがありますけれども、解同朝田派の暴力に関しては、それがふるわれるところでは、自治体であれ警察であれ教育委員会であれ、そういういわば公権力、公的な機関がその味方にされてしまう。よく西部劇などで、ギャングが保安官をやっていて、住民が恐怖に苦しむというようなものがありますが、いわばそういう状態が現出される。そこにこの暴力の特別な恐ろしさがあるわけであります。

 たとえば、私ここに、昨年、八鹿町の町民から私や党に来た手紙を持ってきておりますが、ともかくこわい。なぜこわいかというと、だれも守ってくれない。憲法は守ってくれません。警察も県教委も解同の手下です。だから、いろいろ警察から取り調べに来る。だれが本当のことを言えるでしょうか。言ったことが全部相手にわかるかもしれない。そうなったらだれが守ってくれるでしょう。そういうことで、何通も手紙があります。大抵の手紙にはそのことが書いてあります。いま八鹿町では、昨年国会で問題にしたときと違いまして、もう町民の方々もこういう恐怖の状態から立ち上がって、先日は明るい町づくりの会というのを結成して、青年といいますか、有権者七千五百人ぐらいの町ですが、三千五百人からの会員が立ち上がるというような、新しい町づくりの運動が起こっておりますけれども、しかし問題は、公的な機関がそういう暴力派の味方をするという状態は、残念ながらいまでも解決されていないのです。そこに問題があるのです。私たちは昨年来、福田自治大臣や永井文部大臣に、どうも八鹿町では、あるいは南但島では、町当局や県の教育委員会、町の教育委員会、学校当局、そういうものが暴力派の手助けをしている、この問題について、政治の責任として十分調べて対処をしてほしいと、何遍も要望してまいりましたが、いまだに事態は残念ながら解決しておりません。

 福田自治大臣に伺いたいのですが、昨年来の調査の中で、但馬の一帯で、こういう町当局と解同朝田派の暴力事犯との関係について、政府の調査で明らかになっていることがあったら伺いたいと思うのです。

○福田(一)国務大臣 暴力の問題に対する政府の見解につきましては、総理からお答えをしたとおりでございますが、八鹿町の問題について、具体的な捜査をいまいたしておる段階でございます。そこで、その捜査の段階でございますから、これをいまここで申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、われわれとしては、自治体の関係者も含めて、そういうものについて捜査をいたしておりますから、だからその捜査の問題は別として、方針を言われるならば、これはもうそういうような不公正なことがないようにできるだけ努めてまいるように、警察当局も努力をいたしております。現在でも八鹿町には相当数の警官を置いて、そういうような暴力行為が起きないように、いま対処いたしておるところであります。御了承を願いたいと思います。

○不破委員 町の問題ですが、ことしの一月十一日に、丸尾という、あなた方が二度逮捕されたこの主犯ですね、主犯とされている容疑のある人物ですが、彼を議長とする八鹿高校差別教育糾弾闘争共闘会議というものが、組織の再編成を行いました。ここにその再編成の文書がありますけれども、これを見ますと、驚いたことには、丸尾という容疑者を議長とした共闘会議があって、その下に、各町に共闘会議町本部というものがあります。それが八鹿、養父、大屋、関宮、美方、生野、朝来、和田山、山東、村岡と、十カ町の町本部ができております。この町本部の電話番号が書いてありますが、彼らの共闘会議の本部の電話番号は、全部町役場の代表番号であります。つまり町当局が主犯である丸尾を議長とする共闘会議の下部組織になっている。それで、実際に昨年事件が起きた当時は――去年、国会で議論になってからは、余り私が本部長だと名のらなくなりましたが、去年の段階では、大体どこの町長も、朝来にしても八鹿にしても、この町の共闘会議の本部長は私ですと、町長が平気で名のって活動している、こういう実態であります。

 この問題は、この事実を国家公安委員長の耳に報告をして、こういう状況の打開のために、政府がしかるべき責任を果たすことを要望したいと思うのですが、もう一つの問題、さらにそれにまさるとも劣らない重大性のある問題は、教育委員会の関与という問題であります。
 永井文部大臣、文部大臣は、県の教育委員会や町の教育委員会、学校当局のこの問題に対する介入の問題について、現状についてどういう報告をお持ちですか。

○永井国務大臣 この八鹿高校、朝来中学校における問題でございますが、特に八鹿高校において暴力が用いられた。これに対して教育委員会あるいは教育関係者、校長先生が暴力に加担しているかどうかという問題でありますが、これまでのところ、兵庫県教育委員会からの報告では、暴力というものに加担しているという報告は受けておりません。
 暴力それ自体の詳細な調査というものは、ただいま公安委員長から御報告がありましたように、事実関係というものを十分に調査しなければならない問題でございますが、それについては公安委員長が申されたとおりでありますが、暴力に教育委員会関係者、校長が参加しているというふうには、私たちはいままでのところ、報告を受けておらないというのが実情でございます。

○不破委員 文部省が県の教育委員会からそういう報告を受けていないということは、きわめて奇怪なことだと思うのです。
 この間、参議院で星野議員が、南但馬では一月の十八日に、事もあろうに中学生を全部集めて、そしてこの犯罪を起こした解同の丸尾派、これの応援の決起大会をやった、それについて学校当局が関与している疑いがあるかどうかと質問しました。文部大臣の答弁は、県教委の報告によればそういう事実はないと、こういう答弁だったと思います。ところが、いまはテレビ時代ですから、この永井文部大臣の答弁がテレビで南但馬にやはり放映されました。私どものところには、即座にさまざまな報告が上がってきました。文部大臣は全くうその発言をしている。正確に言えば、うその報告を受けている。
 たとえば、それで早速いろいろな書類が回ってきましたが、あの南但馬の中学生を集めた丸尾派の暴力事犯応援の集会場をだれが借りたかというと、これは中学校の教頭であります。ちゃんと書類もあります。だれが周りの町から中学生を運んだかというと、これは町当局が出したマイクロバスであります。それから、生野中学という中学では、十七日、前の日に、この集会に生徒を参加させるかしないかというのを、生徒を自習にして、職員が大職員会議をやっている。結論としては行かないということになった。ところが、放課後に、校長が生徒を全部集めて、あしたの集会には行きなさいということで、行ったという。ほかの関宮中学という中学では、行った数が少なかった。そうしたら、朝田・丸尾派に動かされている生徒の解放研から校長が結問されて、校長の訓辞の仕方が悪いから余り行かなかったのだ、解放研やその代表に、学校の職員を全部集めて、教育をさせろ、こういう要求が出ている。これは一例ですけれども、こういう無数の事実が即座に、私どものところへ上がってまいりました。文部省が本気で調べるならば、こういうことはすぐわかることであります。

 私がこの問題を言うのは、昨年、八鹿のあの暴力事件、五十何名の教師が十何時間もリンチを受けて、大変な被害を受ける。いまだに入院している人もあります。それが異常であるだけではなしに、それが明らかになった今日でも、あの南但馬の学校全体がそういう方針で支配されている。これが日本の教育にとって大問題だからであります。
 私はここにいろいろな資料を持っておりますが、たとえばことしの正月に養父町では、三つの中学校の共同の決起集会が中学生によって行われました。休み中であります。そのときに、建屋中学校というところでは――ここに書類がありますから、あとでお渡ししますが、中学校長、生徒会長、解放研部長の連名で、全校生徒への緊急連絡が出ております。「下記により養父町内三中学校共闘会議による決起集会が行われることになりましたので、緊急ですが、早昼を食べて午前十一時三十分までに中学校に集合してください。」。校長名の緊急連絡であります。
 それから、また同じ一月六日に出ていることですが、朝来町では、教育長職務代行者古川某という人物の名前で、隣の八鹿高校の生徒で朝来町に住んでいる在学生とその保護者に対して、学習会のお知らせが行っております。八鹿高校の問題は、部落問題抜きの特定思想のでっち上げにより全国規模の闘いになってまいりました、だから学習をしなければいけない、一月八日、町の福祉会館で学習をやるから来なさいという連絡であります。講師はだれか。丸尾という、福田さんの方で二度もつかまえた男であります。これが講師で、それに教育長職務代行者古川というのが並んで講師になる。町からの投書によりますと、実際に来たのは丸尾だけだったという。
 それから、また一月十一日には、朝来町で同じような集会がありました。これは自治大臣の管轄になりますが、そのお知らせは、区長会長、婦人会長、それから、これは文部大臣になりますが、その町の幼稚園、小学校、中学校全部の育友会長、PTAです。これの連名で全部の町民にお知らせが行って、三世帯に一人ずつ集まってください。つまり、町当局とそれから学校当局、教育委員会、これが全部一緒になって、そういうことをやっているわけであります。
 しかも、さらに重大な問題として報告しなければいけないのは――これは全部、私どもの独断ではなしに、彼ら自身が出した文書によって明らかにできることでありますが、最近丸尾を逮捕しました。朝来における橋本先生というのを、六日間も集団で包囲して、投光器や拡声機で攻撃をして、不法監禁したという事件であります。ところが、その事件の彼らが出した文書を見ますと、共闘会議のメンバー、この橋本糾弾闘争の参加者、共闘参加者がずらりと出ております。その中には、教育委員会の但馬教育事務所長、但馬文教府長、豊岡市教育委員会、但馬教育委員会連合会、そういうものがずらり名前を並べています。これがいろいろな努力によって解除をされて、一応この糾弾が終わったというときに、総括会議が今度やられている。十月三十日に朝来町の福祉会館で総括会議をやっております。その総括会議の記録を見ますと、きょうの会議の趣旨説明をやったのは、兵庫県教育委員会但馬事務所長上田先生。教育委員会事務所長です。何をやっているかというと、「橋本糾弾第一次は勝利した。闘いはこれからである。……赤旗のビラ」と書いてありますから、わが党がまいたビラに対して闘おうということを、教育委員会の但馬事務所長が総括会議をやっているわけです。
 さらに、八鹿事件が十一月の二十二日にありました前の日の二十一日には、但馬地区の教育事務所から但馬全体の教育委員会に連絡があって、教育長、教育委員全員が集められまして、緊急会議。そこで、八鹿における糾弾闘争では解同の立場を支持する、この決議を全部やって、応援する体制を相談し合っているわけであります。これはそれに参加をした豊岡市の衣川という教育長が、悪いとは思わないと、はっきり私どもの調査に応じて答えていることであります。

 しかも、あの十一月二十二日の十三時間にわたるテロのときには、県の教育委員会がその学校にずっと参加をしていました。以前から数日間にわたって参加していました。理由があるのです。いままで但馬でそういう糾弾が行われるときに、県の教育委員会が立ち会っていないと不法な犯罪ということになるので、糾弾がやられるときには全部、町の教育委員会か県の教育委員会が立ち会うことになっている。八鹿は県立高校ですから、町では間に合わない。県からわざわざ乗り込んでいって、参事が立ち会っている。そしてこの暴行当日、現場に出入りしているのが教育委員会の関係者。赤いはち巻きを締めて教育事務所長は出入りをした。そして警察から問い合わせがあったら、教育委員会の関係者と校長が、何も平穏無事であって警察は手を出す必要なし、そういう答弁をしたと言って、警察当局が大変怒っている状態であります。しかもそればかりか、校長が、まだ教員の数が足りない、逃げたのがいるということになって、欠席している教員の家へ全部電報を打って、業務命令で、来いということをやりました。この業務命令も、教育委員会の参加者が同意をして出しているわけであります。最後にすっかり暴力が終わって、傷ついた先生たちが一人一人引っ張り出される。確認会といって、謝らされます。謝らされるところには、ちゃんと立会人として、上田という教育委員会の事務所長が立ち会って参加をしている。問題はこれだけ深刻なんです。しかも、そのあと十一月二十五日には、兵庫県教育委員会の文教府から、この闘争の総括会をやりたいから集まれという指示がありました。これは文部大臣も御承知のとおりであります。それについて、私どもが抗議をし、現地でも抗議をし、文部省にも抗議をしました。ようやくその直前になって取りやめたわけであります。つまり、そういう八鹿の暴行、朝来の暴行、全部これが教育委員会の共謀のもとにやられているということは明白な事実なんです。その点について、文部大臣はいまだに何の報告も受けていないのか、何の調査もしていないのか、そのことを明確に伺いたいと思います。

○永井国務大臣 私が申し上げたいことは、この問題について、教育委員会から報告が来るのを待って拱手傍観しているということではないのでございます。そうではありません。ただいま御指摘がございましたように、但馬文教府の関係で開かれようとした会合、これもやめるようにというふうにして、それは開かれなかったことは、お言葉の中にあったとおりでございます。
 そのほかに、昨年の十二月十九日には、朝来中学校解放研の生徒が中心になって、八鹿高校事件の関係者尾崎竜に対する激励のはがきを出すというような事柄もございましたが、これに対して、校長がそれを取りやめるようにという指導を、兵庫県教育委員会もやりました。これに対して文部省は、こういう方向を進めるようにということもやったのでございます。
 そこで、さように申し上げているということは、万全の措置をとってすべてのことをみごとに処理したかというと、そうであると申し上げているのではないのでございます。私は実は関西に住んでおったんです。そこで、同和教育というものが、わが国の教育を推進していきますために非常に重要なものであるということを、相当程度は認識しているつもりでございます。同時に、これはなかなかむずかしい、それもまた認識しているつもりでございます。
 そこで、暴力は絶対にいけないのでございます。暴力は絶対にいけない。しかし、これを進めていく進め方につきまして、幾つかのポイントがあると思いますが、まず不破書記局長も御賛同いただけることの一つは、わが国の教育を進めていく上に、文部省というものに非常に責任があります。と同時に、単に中央集権的に進めていくということではだめなんだと思います。そのためにこそ教育委員会というものがあるわけでございますから、教育委員会というものがやはり責任と判断を持たなければいかぬ。そこで、それを十分に尊重しながら、われわれが非常に熱心に連携、そして連絡をとりながら事態に処していくということは、きわめて大事なことです。そこで絶えず連絡をとっている。(発言する者多し)

○荒舩委員長 御静粛に願います。質問しているのは不破君なんですから、静粛にしたまえ。

○永井国務大臣 次に、もう一つのことを申し上げたいのは、暴力は絶対にいけないんですが、同和教育というものは非常にむずかしい、そして重大なものでございますから、これに関しまして、これを進めていく上で、いろいろ違う考えというものもあるんです。この違う考えというものが、純粋に教育的に――暴力はもとよりのこと、政治的な配慮というものを持たずに、純粋に教育的にいろいろな考えというものがお互いに交差いたしまして、そこから実りある効果というものが出てくるように配慮しなければならない。
 そこで、私たちはなお、その気持ちを持って、大いに兵庫県の教育委員会と連絡をとりながら、実は山崎政務次官も行きました。いま申し上げたような幾つかの事例がありますが、かといって、それでもって満点であるというようなことを申し上げるのではない。なお一層の努力をしなければいけない。いま承りましたいろいろな資料というようなものも、十分に参考にして考えていかなければならない、かように考えております。

○不破委員 いま具体的な指導をしたと言われました。たとえば寄せ書きの問題についても徹底しないわけです。これはきのう現地から受けた報告ですが、生野小学校という小学校では――小学生ですよ、すべての学年の小学生に、丸尾らの逮捕者に対する寄せ書きを、先生が率先してやらしている。中学じゃないんです。そういうことが、文部省の指導にもかかわらず、起きているような異常なことがいま兵庫県では進んでいるんです。いま教育の中央集権の問題と地方自治の問題を言われました。そのとおりであります。しかし、県の教育委員会が、国の憲法にも合わない間違った立場に根本的に立ってしまって、異常な事態が兵庫県に進行しているとしたら、そのときには政府の責任きわめて重大なんです。だから、私はこのことを申し上げているわけです。

 そこで、教育委員会のことについて伺いますが、昨年の十二月十三日に、兵庫県の教育長白井に対して、部落解放同盟兵庫県連小西――朝田派の兵庫県連ですが、そこから抗議文が出されております。質問書が出されております。これに対して、県の教育委員会がどういう態度をとったか、報告を受けておられるでしょうか。受けているかいないかだけ伺いたいと思います。

○永井国務大臣 受けております。

○不破委員 兵庫県の教育委員会が出した回答についても御存じですか。

○永井国務大臣 存じております。

○不破委員 知っての上で、兵庫県教育委員会について、そういうことを言われているんだとしたら、私はこれは問題はもう少し深刻度が中央の方にも及んでいると見ざるを得ないかもしれません。というのは、この質問と回答は、きわめて日本の教育の歴史の中でも異常なものであります。
 紹介しますと、第一の質問は、「八鹿高校教師群に対して、どのような措置をとるのか。」つまり殴られて、暴行されて傷を負わされた教師群に対してどういう措置をとるのか、これが第一の質問であります。それに対する県教育長の回答は、「八鹿高校の教師群に対しては、」中をちょっと省略しますが、「継続的な指導説得をとおして、教職員の体質改善を図っていきます。また、人心一新を図るため、段階的、計画的な人事措置をも含めて考えていきます。」つまり、体質改善を図って配転するというんです。

 これは前歴があるんです。というのは、去年の四月でしたか、兵庫県立の姫路の高等商業で、朝田派に踊らされた解放研が五人の先生をボイコットする、そして県の教育委員会からも学校にたまたまちょうど来ている日に――また来ている日なんですが、その来た人物も、八鹿高校に行った人物と同じですが、その生徒たちによって、先生方がぶん殴られる、全治十日間のけがを負う、こういう事件があります。県の教育委員会がどういう措置をとったかというと、人事刷新の措置であります。殴られた先生方が、もう教壇に立つ必要はない、研修を受けろと言われて、いまだに四人の先生は、研修と称して教壇から追われている。その研修の中には、解同県連による教育を受けろ、こういうことまで県の教育委員会は要求している。去年のことであります。現に進んでいる事態であります。これが第一項。

 第二の質問は、「文部省に対して、どのような報告をなされるのか。」文部省への報告の仕方の質問であります。その答えは、「文部省に対しては、事件の現象面にとらわれず、」――現象面というのは暴力事件。「現象面にとらわれず、同和問題の本質を正しくとらえ、この視点にたって同校の同和教育の実態を、詳細に報告いたします。」つまり、先生方に問題があったんだという彼らの立場に立って報告をいたします。「なお、地元市町、解放運動団体の見解ならびに流布された差別キャンペーン等は別紙として添付いたします。」つまり、どんどんいろいろなビラも送って、暴力じゃない、問題はここにあるんだということを、文部省に対して報告をし、文部省の体質改善を図ろうというのでしょう。

 第三は、「県警に対して、どのような意思表示をされるのか。」今度は福田さんの関係であります。これに対しても、「県警に対しては、純すいな教育的視点から、差別解消を阻害している事実を明らかにし、部落問題の本質をふまえて対処されるよう申し入れます。」ややこしい言葉ですが、余り取り締まるなということを、その見地から申し入れたい、これが回答であります。

 最後に第四項。問われてもいないことに関して答えているわけですが、「今後は、同和教育を正しく位置づけ、解放同盟兵庫県連との連帯をはかりながら」やっていく。県の教育委員会が解放同盟兵庫県連との連帯を図る。

 いまあなたが言われたように、解放運動の中でも、同和教育の問題でも、いろいろ立場もあり議論もあります。そのどれが正しいかということに関して、ここで議論しても時間が足りないでしょう。しかし、そういう中で暴力的な事犯まで引き起こした解同朝田派との連帯を、県の教育委員会が基本方針として約束する、そういうことになったらば、教育の中立性はどうなりますか。教育委員会の責任が果たせるでしょうか。
 私は、このような回答を解同県連、朝田派に対して平気でやるような、しかもその日はまさに十二月十九日、この席で永井文部大臣が村上議員の質問に対して、教育の中立性に関して大いに強調されていた、まさにその日であります。そのときに県の教育委員会はこういう態度をとっている。これはまさに異常な事態であり、こういうことがあるから、あの南但馬のようなことが起こるのだ、問題はそれだけ深刻だということを言いたいと思うのです。

 しかも、兵庫県の教育委員会だって、昔からこのようなでたらめな態度をとっていたわけじゃないのです。ちょっと報告をしておきますと、事の起こりは七二年四月であります。ここで県の教育長が解同朝田派に徹底した糾弾を受けた。その結果、この四月に、教育委員会の指導主事を杢谷という教育次長が全部集めて、そこには解同の幹部も何人か参加をして、そこでいままでの非を全部認めて、これからは解同朝田派とその方針で県の教育をやる、これがわれわれの方針だということを、全部の指導主事の前で言わされたわけであります。それから兵庫県の教育の荒廃が始まった。問題は南但馬だけじゃないのです。あなたも調べて御存じでしょうが、姫路にも神戸にも尼崎にも、あるいは芦屋にも、県立や市立の高校が解同朝田派に握られてしまって、教育がもう大変荒廃してしまっている。それはその付近では周知だという高校が、そういう地方にも続々出ております。

 そういうところまで県の教育委員会が落ち込んでいるときに、この問題の禍根を絶つには、まさに日本の憲法に基づき、教育基本法に基づいた、あるいは教育の中立を保障した、同和教育についても、同対審の答申に基づいた正常なルートに根本から変える責任が文部省にある。日本の政府にある。その点に関して、永井文部大臣がどのような見解をお持ちなのか。もう文部省には本当の報告はしないということを解同朝田派に約束をした県の教育委員会の報告をいつまでも待って、それで日を暮らされるつもりなのか、そのことを伺いたいと思います。

○永井国務大臣 ただいまお読みになりました回答書でございますが、実は私もそれを持っております。そこでよく読んで検討したのです。それに対してどうしたかというと、こういうふうな回答書というものの内容、趣旨は不適切であるということを、すでに教育委員会に言っております。ということは、どういうことであるかというと、教育委員会が報告をしてくるのを待って、そうして、ああそうですかという仕事をしているのではないということでございます。そうではない。そこで、いまや教育委員会と一層話を進めていくべく、すでに着々と仕事をいたしております。しかし、今度は教育委員会のために申しておきたいことは、いままでの報告を受けましたところでは、暴力それ自体に加担しているという報告はない、このことは申し添えておく必要があります。

○不破委員 教育の問題は、これは非常に重大な問題であります。兵庫県の教育委員会のもとには、何百という、小学校、中学校、高校合わせると千二百十八の学校が預かられている。そこに通っている生徒、児童の数は七十八万人であります。そういう膨大な学校とたくさんの数の子供たちに対して責任を負っている教育委員会が、やることなすこと、文部大臣が不適切だと言わなければいけないような、そういうことを基本方針にして行動している。その結果いろいろな事態が起きている。私は、これは単に地方の問題ではなしに、国政上の重要問題として、ぜひ、この兵庫県の教育の現状について、文部省がしっかり調査をされて、この国会の予算委員会に、どういう点で不正常なのか、このことを報告されることを求めたいと思うのです。

 この問題が特に重要なのは、単に兵庫だけにとどまらないからであります。たとえば東京でも、何回もわれわれ国会でも問題にしましたが、東京の解同朝田派から要求書が出されています。学校の副読本をつくれ、彼らの立場に立った副読本をつくり、東京の中学、小学、高校の全部の先生を彼らの立場で研修をせよ、そういう立場に立たせろ、こういう要求が平気で東京都に出されているわけであります。こういうことがやられているのは東京だけでもない。関西各地でも、日本の多くのところでも、どんどんどんどん広がっている現状であります。その一番典型的な、一番極端にあらわれているこの兵庫の問題に関して、永井文部大臣の最初の仕事の大きな問題の一つになると思いますが、どうかぜひ全面的な調査をされて、その中間報告でもいいですから、この国会に報告をしていただきたい。教育の現状が正常であるかどうか、その問題について報告をしていただきたい、そのことをお願いしたいと思います。要望したいと思います。考え方を伺います。

○永井国務大臣 国会にどういう姿で報告するかどうかということは、これは検討しなければいけないと思いますが、しかしながら、すでにいろいろ調査を進めているのでございますから、その進めている調査というものを適切な方法で、当然ここで議論の材料にしていただくということは、私どもの務めであると、かように考えております。

○不破委員 あと一つ伺いたいのですが、兵庫県では、県の教育委員会が同和教育指導員というものを、五十六名ですか、任命しています。この中に、南但馬で言いますと、解同の組織の書記長であるとか、書記長代理であるとか、支部長であるとか、そういう者が任命をされるわけです。それで県から六万円ほどの給料をもらう。行動費は全部県持ち、行動は報告しなくてよろしい。つまり、そういう公務の役職を受け、人件費を保障してもらって、そしてそういうような糾弾会をやる。この指導員の一人が八鹿高校のテロ事件のときにも、ちゃんとその現場に居合わせたことは確認をされておりますが、そういうことがやられているわけです。
 だから、解同朝田派が行動する場合、これはそういう公の肩書きを使って行動する場合が非常に多いのです。しかもその行動の内容は、人件費は県が持っていますが、行動の内容は、彼らの組織の行動どおり、県に報告する必要もない。こういう制度が、教育の分野だけではなしに、大阪、京都、東京など調べてみますと、かなりの分野に広がっております。あるいは指導員だとか相談員だとか、そういう名称をつけて、実際に公務員でない者に肩書きを与えて、人件費を払って彼らの活動を保障する、彼らの無法な行動が公務の名のもとにやられるようにする、そういう制度が非常に広がっておりますが、自治大臣、この制度について御存じかどうか。御存じだったら、それが適切であるかどうか、そのことだけ最後に一言伺いたいと思います。

○福田(一)国務大臣 そのようなお話は聞いておりますけれども、実際にわれわれの方でまだ的確に把握してはおりません。しかし、いずれにしても、そういうこともありとすれば、行き過ぎは是正しなければならない。
 私は、同和対策というものは、やはり国としてはやらなければいかぬ、差別撤廃はせなければいかぬというたてまえに立っていきますが、そのやり方については、いままでのような対立関係がなくなって、そして差別がなくなるようにぜひしなければならない、また皆さん方にもお願いをいたしたい、こういう気持ちでおるわけであります。

※→八鹿高校事件関連国会質問一覧 1974/11/22〜1975/03/31