75-衆-本会議-4号 昭和50年01月28日

○津金佑近君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、三木内閣の当面する内外政策について、総理並びに関係閣僚に質問いたします。  まず第一に、政治に対する総理の基本姿勢についてお尋ねいたします。
 三木総理、・・・・・・ (略) ・・・・・・
 第三にお尋ねしたい問題は、現在の地方自治体財政の危機をいかに打開するか、この問題であります。とりわけ、過去五年間で一兆円に及ぶと言われている超過負担の解消は、保守、革新を問わず、全自治体関係者の痛切な要求となっております。
 わが党は、当面、超過負担解消特別措置法を制定し、全国知事会議など、地方六団体を含む調査特別委員会によって超過負担の実態を調査し、過去五年分については、国の責任で三年間でこれを解消することを提唱しておりますが、いまこそそういう措置をとるべきではありませんか。
 また、現行の三二%の地方交付税率を四〇%に引き上げるとともに、生活関連公共施設の用地費、建設応対する起債枠を大幅に拡大する考えはないか、政府の明確な答弁を求めたいと思います。

 今日、地方財政の危機にさらに拍車をかけている問題に、部落解放同盟朝田派の財政食い荒らしの問題があります。
 日本共産党は、戦前のあの軍国主義の暗黒時代のもとで水平社があった時代から、あらゆる迫害に抗して、一貫して部落差別をなくし、基本的人権を確立するために闘ってきたただ一つの政党であります。(拍手)自治体の同和行政、財政を正しく行うことは、差別撤廃の上できわめて重要な意味を持つものであります。
 ところが、今日、部落解放同盟朝田派は、差別撤廃の名のもとに、少なからぬ地方自治体に対し、暴力、脅迫を手段として、途方もない同和予算を要求し、一般市民に対して逆差別の状態をつくり出し、多くの自治体を重大な財政危機に陥れているのであります。七十四国会において、南但馬一帯の地方自治体が解同朝田・丸尾派らの強要のもとに深刻な財政破綻に陥っていることは、八鹿高校事件に関する質問の中で明らかにしたとおりであります。

 福田自治大臣は、はち巻き、ゼッケンに至る、彼らの蛮行のために支出されている問題について、「同和予算の使い方としては間違いであると思っております。」と、こう答弁をされましたが、その後どのような是正措置をおとりになったか、お伺いしたいのであります。(拍手)
 あわせて、丸尾らの蛮行に加担した八鹿高校校長や教頭、兵庫県教育委員会の関係者などの捜査、これに対する文部省の調査及び是正措置はどのように行われているのか、この際、改めてお尋ねしておきたいと思うのであります。(拍手)
 さらに、八鹿高校事件で逮捕された保釈中の主犯丸尾ら七名が、国会再開直前の一月二十二日に、朝来町における橋本先生宅の不法監禁事件などで新たに逮捕されました。この刑事事件の概要についても、政府の説明を求めたいと思います。
 今日、不法、不当な同和予算が強要されている典型は、大阪の各自治体であります。しかし、それがいかにひどいものであるかということは、大阪府下の各市町村での総予算に占める同和予算の比率を見れば明らかであります。
 すなわち、四十八年度では、和泉市二三%、富田林市の場合は、人口八万七千のうち同和人口千八百人、約二・一%で同和予算は二四・五%、泉佐野市は四・三%で三五・九%、泉南市に至っては、同和人口六・五%で同和予算四九・七%という、驚くべき数字に達しているのであります。大阪市の浪速区では、同和事業として、一校五十億五千万円もかけた小学校、三十五億二千万もの解放会館、二十五億九千万の買い物センター、十五億六千万の老人センターなど、これだけでも合計百二十七億二千万円を人口一万五千人の同和地区に費やすなど、驚くべき事態が生まれているのであります。一方、大阪市の非同和地域では、老朽校舎、プレハブ教室など、緊急整備を要する学校が延べ三百七十五校にも及んでいるのであります。
 これは大阪市だけではありません。堺市の市立解放センターでは、七階建てで市職員百三十七人、人件費だけでも年間三億円であり、同市の市民会館の職員十四人とは雲泥の差であります。総理はこうした現実を御存じでしょうか。

 これはまだ氷山の一角にすぎませんが、政府はどのような措置をとってきたのか。また、このような同和予算が、同じ地域内でも解同朝田派に属さない者には適用されていないという実態があることを御存じですか。また、これに対してどのような措置をおとりになっているか、お伺いしたい。
 このような事態は、東京都においても、いまや例外でなくなっております。現に、解同朝田派は、昨年十二月、東京都に対して百四項目に及ぶ「一九七五年度要求」なるものを突きつけ、その中で、東京都の全教職員の研修、さらにはPTAへの啓蒙活動さえ要求するに至っております。もしこれが実行に移されるならば、同和行政はもとより、教育の中立性も侵され、子供の教育と未来にとって重大な事態を招くことは、余りにも明らかであります。
 東京都では、昨年八月来、応急生活資金など同和行政の各種資金の貸し付けなどに対し、解同朝田派には無条件で貸し出すが、そうでない者に対しては研修を条件とするという、この点では日本じゅうどこにもないやり方が行われております。こうした朝田派の無法な要求に屈服した状態が続くならば、東京都でも、さきに述べたような無法な要求が実行に移され、ついには大阪市や堺市のような事態にならないという保証は全くないのであります。
 福田自治大臣並びに永井文部大臣は、これら一連の事実について、いままでどのような措置をとられたのか、また今後どうされるつもりなのか、明確かつ具体的にお答えをいただきたいのであります。
・・・・・・ (略) ・・・・・・
 総理並びに関係閣僚の誠意ある答弁を求めまして、日本共産党・革新共同を代表しての私の質問を終わりたいと思います。(拍手)

○国務大臣(永井道雄君) 津金議員から、同和教育につきましてきわめて重要な御質問がございましたので、それに対して御答弁申し上げます。
 まず、八鹿高校事件でございますが、学校の場におきまして暴力が用いられたということは、きわめて遺憾であることは申すまでもございません。これに対して、文部省はどのような立場で臨むかということでございますが、第一は、申すまでもなく、教育の場においては暴力というものは絶対に排除するということであります。
第二は、同和対策審議会の答申の精神に基づきまして、法のもとにおける平等、人権の尊重という精神によって、差別というものをわが国からなくしていく。
第三に、教育を推進していくわけでありますから、教育の場に政争というものを持ち込まない、すなわち教育の中立性の原則を守るということであります。(拍手)
 ただ、この文部省の方針を進めていきます上でどのような手続が必要であるかと申しますならば、申すまでもなく、わが国におきましては地方自治を尊重いたしております。そして、地方自治におきましては、一般行政との協力、協調のもとに教育委員会が教育に当たっているわけでありますから、その判断と責任を重んじると同時に、これに対して指導、助言を行うというのが文部省の立場でございます。

 さて、そのような立場をもちまして、八鹿高校事件につきましては、昨年十二月、指導を行ってまいりましたが、指導の内容は、学校を正常化するということでございましたが、授業が再開されるに至りました。しかし、御指摘のように、あるいは校長、教頭、県教育委員会の関係者などが事件に加担しているのではないかという御質問がございましたが、これにつきましては、重要な事実でございますから調査をしておりますが、今日までのところ、その報告に接しておりません。

 次に、東京都の問題でございますが、東京都の問題について申し上げますと、部落解放同盟東京都連合会委員長から、昭和四十九年十二月、東京都知事あてに同和行政全般にわたっての要望書というものが出ておりまして、その中に、「全教員の研修を保証すること」というのがございます。これにつきましても、文部省の立場というのは先ほど申し上げたとおりでございまして、教育の中立性を守るということです。そして、人権を尊重して差別をなくすようにしていく、そのことにつきまして、東京都教育委員会との連絡を保ちつつ、その責任と判断のもとに、先ほどから申し上げました原則を実現するように、指導、助言をもって臨んでいるということでございます。(拍手)

○国務大臣(福田一君) 津金さんにお答えをいたします。  まず第一は、地方財政の問題でいわゆる超過負担の問題、それから交付税率の問題、それから起債枠の問題、この三つについて御質問がございましたが、過去の超過負担の解消につきましては、これは交付の申請、交付の決定というものがすでに行われておりますので、これをもう一度見直すということは非常に困難であると考えております。
 今後の超過負担をどうするかということについては、私は、単価を適正にすることによってそれがないように、今後大いに努力をいたしたいと考えておるものでございます。

 次に、同和問題について御質問があったのでありますが、そのうちで、まず八鹿高校の事件の経緯について御質問がございましたが、ただいま八鹿高校の問題につきましては、十二名を実は逮捕いたしまして、今日まだ捜査を続けておる段階であります。
 丸尾某という者を再逮捕したが、その経緯を十分説明しろ、こういうことでございますが、お尋ねの事件は、昨年の十月二十二日から同月二十六日までの間、被疑者ら多数が、兵庫県の朝来郡朝来町所在の橋本哲朗宅を包囲いたしまして、マイク等を使用して脅迫するとともに、自由を拘束して不法に監禁したという、監禁並びに暴力行為等処罰ニ関スル法律違反事件であると私は承知をいたしております。

 次に、地方同和予算を不当にゆがめて使われておるのではないかという御質問でございますが、これはいま調査をいたしておる段階でございまして、調査の結果を待って適当に処理をいたしたいと考えております。  なおまた、同和対策費が地方財政を非常に圧迫しておるじゃないかというお話でありますけれども、私たちは、同和対策費は、これからも、国費においても大いに伸ばしていくべきものであると考えております。しかし、それを伸ばしておるからといって、三分の二は国費でございます。三分の二は国が負担するのです。三分の一は地方が持たなければならない。だから、国費をむやみにふやすと、三分の一の負担をするというのについて地方財政が圧迫されやしないかという問題も考えられないわけではありませんが、いまのところ、それほどの予算を組んでおるわけではございません。
 問題は、いわゆる地方自治の精神にのっとりまして、単独事業というものを同和のために相当大幅にやりますというと、それは地方財政を圧迫する傾向がございますので、そういう点については、われわれとしても懸念を持っておるということを表明させていただきます。(拍手)
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※→八鹿高校事件関連国会質問一覧 1974/11/22〜1975/03/31