74-参-地方行政委員会-3号 昭和49年12月25日

○神谷信之助君 文部省来てますか。――時間がもうありませんから、ひとつ簡潔に答えてもらいたいと思います。
 昨日の衆議院の地方行政委員会で、社会党の和田貞夫委員が、八鹿高校教職員七十名、それに対する解同朝田派の暴行リンチ事件について質問しておりますが、その事件の原因として、
一つは解放研の設置を認めない、そして話し合いを拒否した、そこに教職員の差別観、差別性が問題だと。
第二は、八鹿高校は同和教育の先進校なんかではなしに、実は差別教育をやっていたということで、暴力やリンチを受けた――
加害者に対して指導を行なうんじゃなしに、被害者であるところの教職員に対する指導を文部省に迫っています。
 これに対して文部政務次官らが、兵庫県の教育委員会の中間報告、これを引用して、兵庫県の教育委員会が、教員間に流れている差別観をできるだけ取り除きたいとか、ある程度の八鹿高校教員の異動を考えて差別感をなくすことが必要だというようなことを報告をしている、それを引用してお答えになっている。事はそうなると、同和教育というのは一体何かということで、これは兵庫県の教育委員会の見解ですが、文部省としては一体どうお考えか、きわめて重大だと思うのです。

 そこで、御承知のように、同対審の答申に同和教育の基本的方針についてうたっていますが、時間がないので全文は読みませんが、そこで言われている中心的な内容は、憲法、教育基本法の精神にのっとった基本的人権尊重の教育、これを全国的に実施するものであるということ、さらに、同和地区に限定をされた特別の教育ではなしに、全国民の正しい認識と理解を深めるという普遍的教育であるべきだと、さらにまた、同和教育推進にあたっては教育の中立性が守られるべきであること、さらに、同和教育と政治運動、社会運動の関係を明確に区別をして、それらの運動そのものも教育であるという考え方を避ける、こういったことがその中心的内容になっているというように思いますが、そのように理解をしてよろしいでしょうか。時間がありませんから、イエス、ノーで簡単に答えてもらいたい。

○説明員(奥田真丈君) けっこうでございます。

○神谷信之助君 そこで、それでは教育の中立性を守るとか、あるいは同和教育と政治運動、社会運動の関係を明確に区別をするというこの同和教育の一つの原則に関連をしてお伺いしたいと思うんですが、御承知のように、解放研の設置を認めない、それから話し合いも拒否した、これが八鹿高校の教職員の差別性があるということの証拠だというように、県の教育委員会やあるいは一部政党は主張しあるいは非難をしているわけであります。
 そこで、それならば、その部落解放研究会いわゆる解放研というのはそれは一体どういう団体なのか。それは社会運動団体である部落解放同盟朝田派の指導でつくられ、そして朝田派と一体となって活動をしている団体ではないのか。この点についての御認識はいかがですか。

○説明員(奥田真丈君) このたびの八鹿高校の事件につきましては、教育の場でああいうことが行なわれたことにつきましてはきわめて遺憾なことだと思っております……。

○神谷信之助君 質問した点だけ――時間がありませんからね。そのいまの解放研についての認識について、わかっているならわかっていると答えてもらったらいい。わかっていなければわかりませんと。

○説明員(奥田真丈君) 御質問の解放研、部落研の問題につきまして、この事件が起きましてから、文部省といたしましては県の教育委員会と連絡等をとり資料を得ておるわけでございますが、いまの御質問の点のような詳細な点については、まだ明確な資料、報告を得ている段階ではございません。

○神谷信之助君 それじゃ具体的に申し上げますが、ここに、八鹿高校の生徒の自治会が、この事件の真相を日本全国の人に知っていただきたいということで、十二月二十五日付の日付で最近発行した新聞があります。「八高11・22その日 第一集」というやつです。これによりますと、この八鹿高校の解放研なるものが、すでに六月の二十二日、二十三日、但馬の教育委員会とこの解同丸尾派が招集をした一泊二日の確認会において、集会に招集をされた教頭が屈服をさせられて、そして七日までに解放研をつくるということを約束をさせられたことが明らかになっております。すなわち、この研修会なるものに、各高等学校の校長、教頭、それから同和教育推進委員らが招集をされて、そして八鹿高校の教頭は、丸尾らが直接指揮をして行なったところのモデル確認会で糾弾の対象とさせられて屈服させられた。こういう脅迫による屈服であったことは、その教頭自身が、六月二十五日の職員会議で「出席したことは悪かった。」ということを述べて、そして「精神的圧力と感情におぼれてうけ入れた。」と語り、この約束の、いわれる解放研を設置するという約束を撤回するように努力した、反省している、こういうことが経過日誌で明らかにされています。しかも、教頭はこの六月二十五日の職員会議でそういうことを言っただけではありません。その後も、その後の職員会議でも、引き続いて七月段階でも、職員会議で同じように校長も教頭も反省をする、そして約束を撤回をするように努力をするということを職員会議で言っています。こういう経過からもはっきりしますように、外部団体であるところの解同朝田派、あるいは丸尾派、これらが外部から介入をして設置をしようとした、これが解放研。これが教育の中立性、あるいは同和教育と社会運動、政治運動、これらとの明確な区分をすべきだというこの答申の同和教育の原則から見て問題はないとお考えか、問題はやっぱりあるというようにお考えか、端的にお答え願いたいと思います。

○説明員(奥田真丈君) いま御提示いただきました資料につきましては、私ども入手いたしておりません。したがいまして、詳細にいまお話しの件につきましては事情は承知していない段階でございます。十分に資料あるいは情報、現状、実態、そういうものを総合的に判断いたしまして、どういうものであるかということについての私どもの判断も持ちたいと思っております。

○神谷信之助君 高等学校における生徒のいろいろな自主的なサークル、これは生徒自身が自主的に判断をして組織されるものでしょう。それが外部の圧力やあるいは外部の勧誘に基づいて、生徒とは関係なしに、校長なり教頭が屈服をさせられてつくられている。これを自主的なサークルあるいは組織、こういうように認めることができるのか、この点はどうですか。

○説明員(奥田真丈君) 高等学校教育におきましては、教育課程の基準を国が定めております。でありますから、各高等学校におきましては、国の定めました教育課程の基準に従いまして、それぞれの学校で教育課程を編成し実施することになっております。いまお話に出ましたようなサークル活動と申しますか、高等学校におきましても、各教科、国語とか数学の教科のほかに、教科以外の活動は教育課程の中に入れてし得ることになっております。たとえばクラブ活動とか部活動とかあるいは修学旅行とか……

○神谷信之助君 それはよくわかっているのだから、簡潔に言ってください。

○説明員(奥田真丈君) ですから、その中の一環として、教育課程の一環として、たとえば部活動の一つの中に何を取り入れるか、あるいはそれを生徒たちの教育活動としてさせるかどうかということにつきましては、学校長が責任を持って教育課程を編成するのでございますので、学校においてその活動あるいはそういう部を、クラブをつくること、そういうことは学校において決定することでございます。したがいまして、かってに生徒たちがいろいろなサークル活動をするというようなことではございませんで、学校が教育課程の管理下に、そういう活動を位置づけまして認めた場合に、部活動として、教育活動として位置づけるわけでございます。

○神谷信之助君 的確に簡単に答えてください。
 それでは聞きますが、外部の圧力に校長が屈し、そして学校側がつくるという、そういうクラブ活動、これは認められるのですか。

○説明員(奥田真丈君) 仮定の問題でございますが、外部の圧力だけによって校長が認めるというようなことはあり得ないと思っています。

○神谷信之助君 この問題は先ほども経過が明らかになっていますように、そういう彼らの招集をした研修会なるもので、精神的圧力を加えられて、そしてそういう誤った約束をした、これを撤回をするということは、校長や教頭が六月段階、七月段階でもうすでに明らかに教職員会議で言っているわけです。そういう外部の圧力に屈しない、そして同和教育の基本原則を守っている教職員のほうが、屈しなかったのが差別性の証拠だということがどうして言えるのか、この点についてはどうですか。

○説明員(奥田真丈君) いまの御指摘のような問題につきまして、詳細にまだ事情を私ども判断しかねておりますので、お答えできないわけでございます。

○神谷信之助君 さらに、ハンストまでしている解放研の生徒との話し合いを拒否をした、これが事件の原因で、そこでも教師の差別性のあらわれがあると言って、県の教育委員会や一部の生徒は主張しています。ところが、それまでの、五月ごろからあの地域一体に起こりましたいわゆる話し合いというのは一体どういうものであったのか。具体的に、この八鹿高校のいわゆる解放研の諸君の話し合いの前提条件、これはどうだったかというと、それは一つは八鹿高校の同和教育が解放教育でないということを認めること、そして外部団体者も含めて話し合いを持つこと、これなどを要求をしている。ですから、外部の者も参加をする話し合い、これを拒否をしたということがどうして悪いことだということになるのか。この地域でずっとそういう事態が起こっておりまして、その中では自殺者も出ている、そういう状況がある中で、そういう話し合いには応じられない、生徒となら話し合いをしましょう、外部者でなしに、こう言って、そういう不正常な、あるいは外部の圧力に教育が屈することを強いられるような話し合いを拒否するということが、これは教員の教育の中立性を守るということになるのかならないのか、この点について御見解を聞きたいと思います。

○説明員(奥田真丈君) 教師、校長いずれも学校教育を担当しておるものでございますので、その学校に通学しております生徒たちとはきわめて密接な関係を持って、学習の面のみばかりではなく、生活の面等につきましてもいろいろ話し合いをし、あるいは指導を適切にしていく使命があると思っております。

○神谷信之助君 もう簡単に、時間がないのだから。

○説明員(奥田真丈君) 外部の者がどういうように話を持ち込んでいったかということについては、詳細を存じておりませんので、その点につきましてはわかりません。

○神谷信之助君 さらに、先ほど言いましたように、兵庫県の教育委員会は、八鹿高校の教職員を配転をさせるために百名の教員を用意する、二、三十名ならいつでも派遣できる、そして中間報告の中でも、ある程度の異動を考えたということを明らかにしています。しかし、このような配転を許すということは、八鹿高校の教職員の人たちの差別性なるものを前提とするわけですし、それを認めることになります。これは重大なことだと思います。すなわち、教育の中立性を守るために、あるいはまた同和教育の正しい発展を願って、そういう暴力行為、リンチまで受けてもそれを守ってがんばった先生方を、お前たちは差別者だといって、そして配転をすることになるわけです。これはきわめて重大な問題だというように思います。したがって、特にこの点については、文部省は同和教育のこの基本原則に従って正しく指導することが必要だと思うのです。
 この新聞の中に――もう時間がありませんから多くを紹介するわけにいきませんが、その高校の生徒たちが自分たちの手記を載せています。これは三年の女子ですが、「先生たちが解放研の要求する話し合いに応じなかったのは彼らのいう話し合いとは相互批判の場ではなく自分たちの言う事を一方的に認めさせ、相手を屈服させる罵倒の会であることを、各地の地方自治体、小、中、高校を見て来て知っておられたからです。学園の自由な発言、教育、自治を守るためにあそこまで闘われたのです」、こういうように三年の女子生徒は言っています。

 まあたくさんありますが、時間がありませんから省きますが、あるいはこれも三年の女子生徒ですが、彼女の手記にこう言ってます。「最後に一言 校長先生・教頭先生、お願いですからやめて下さい。我々は、あなた方がいる限り安心して学校にこれません。今度のような事件を二度とおこさないという確信めいたことを、もうあなた方の口からいう権利はないのですよ」、こう言って、まさにその子供たちの不信の感情を率直にこの手記として明らかにしています。あるいはこれは三年の男子の生徒ですが、「最後に、入院しているある先生の涙ながらの言葉が、とても心にのこったので、ここに記しておく。生徒が、解放研の生徒が、教師が、そして一般の人が部落の人が、みんな心から手をつないで生きていける世の中になったら、どんなに素晴しいことだろう」、まさにひどいリンチを受けたその先生がこういうことを子供たちに言って、それが非常に子供たちの、心をとらえたということも明らかになっている。どうしてこういう教育が差別教育でありましょうか。これを差別教育と言うなら、真の同和教育というのは成り立たない。たいへんなことだ。教育の混乱を導くと思います。しかも、生徒自治会の要求事項の第九項に、県教委は、この二十二日の事件を理由にして先生の教壇復帰以後の不当な人事異動あるいは免職をするなということを決議をしております。こういったことも十分文部省は調べてもらいたい。また、これだけの時間がたって、国会でこれだけ問題になったのに、文部省自身が、そういったものについてみずから調査をして事の本質をつかもうとしていないという態度は、私は怠慢であり、許せないと思う。この点を特に強く要求をしておきたいと思います。

 最後に、時間がありませんから、自治大臣に一言お伺いをしたいのですが、この国会を通じて、これらの同和行政が暴力によってゆがめられてきている事実は明らかにしてまいります。そして大臣自身も、すでにこのような不公正な状態を正すためにそういう指導強化をするということをお答えになっていますが、具体的にどのような準備をなされているか、一言最後にお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。

○国務大臣(福田一君) 同和問題については、差別をなくしようという意味で国としましては経費を支出しておるわけであります。ところが、その同和関係の中でまた別の差別ができて、そして非常に差別をなくす経費が差別を増加する経費になっているような形は、われわれとしては非常に残念に考えております。何とか部落の方がみんな仲よくしていただけるようなくふうを考えていただきたい、かように考えておるわけであります。なお、それにいたしましても、暴力とかあるいは特に差別のことがあればこれはいけませんから、これについては各省ともよく連絡をして措置をとりたいと考えております。

※→八鹿高校事件関連国会質問一覧 1974/11/22〜1975/03/31