73-衆-文教委員会-3号 昭和49年11月25日

○山原委員 大臣の所信表明演説がありまして、これに対する質疑が当然行なわれるべきところだと思います。
  〔委員長退席、森(喜)委員長代理着席〕
また、各党ともいろいろな文教行政上の諸問題をかかえておると思いますが、ただいま理事会におきまして、緊急性のある問題のみを質問をするということで、私が質問をすることになったわけです。
 私の質問の内容は、去る二十二日に兵庫県養父郡八鹿高等学校で起こりました事件につきましての質問であります。これまで私どもは文部省に対しまして、去る十一月十三日に、この地方、兵庫県南但馬郡一帯における教育上のきわめて不正常な状態について要請もし、また一定の回答もいただいているわけですが、この問題はそれに引き続きまして二十二日に起こった事件であります。事件の概要につきましては、すでに大臣も御承知と思います。これは、十一月二十二日、八鹿高等学校の七十名の教職員が学校から下校する際に行なわれましたところの襲撃事件、監禁あるいはリンチ、この事件であります。

 この事件は、午前十時から翌二十三日の深夜午前零時過ぎまで行なわれております。そして七十名の教職員に対しまして丸尾良昭を先頭とする部落開放同盟と称する者が数百人襲いかかりまして、顔面、頭部を皮長ぐつでけり上げ、あるいは髪をわしづかみし、腹部をける。さらに、これはある女教師の場合ですけれども、二本の足を押えて約二百メートル道路を引っぱって、そして同校の体育館に連れていくわけですが、これは多くの教員がそういう目にあっております。そして、その体育館の中で長時間にわたる暴行が加えられております。服を脱がせ、そして意識を失えば何回も水をかけるというような事態。またあるお産をしたばかりの女教師は、ほとんど下着一枚になり、乳房も出ておるという状態の中で、人事不省におちいって入院をいたしております。

 かくて重体五名、重傷者二十九名、こういう結果が生まれてまいりました。二十三日の午前零時に及ぶ、実に十四時間にわたる集団暴行事件、まさに殺人行為であります。その中でこの片山という先生の場合、いま生命危篤という状態で八鹿病院に入院をされておりますけれども、この方は顔はゴムまりのようにふくれ上がっております。そして幾人かの教師には、たばこの火で顔を焼いておる、その状態もあらわれております。おそらく日本の教育史上、かつてないできごとだと思います。私の関知する限り、もちろんこのような事件はありません。これはどう弁解しようとも弁解することのできない暴行事件でありまして、学校がこのような事態になったことに対して、私は非常に大きな憤りを感じております。
 さらに、一番ひどくやられた片山さんの場合は、もう内臓破裂、手術もいたしているわけですが、いま面会謝絶の状態に置かれているようです。これらの事実につきまして、文部省は御存じでしょうか。まず最初に安嶋初中局長から伺っておきたいのです。

○安嶋説明員 八鹿高校の事件につきましては、昨晩来現地兵庫県と連絡をとりながら、概要につきまして実情は把握をいたしております。

○山原委員 三原文部大臣も御承知でしょうか。

○三原国務大臣 安嶋局長から現地状態の報告を受けて、概要を了承いたしております。

○山原委員 この概要につきまして、文部大臣としてどういうお考えをお持ちでしょうか。

○三原国務大臣 人権尊重の精神に徹しながら平和教育をやります学校の周辺においてかかる事態ができたことは、まことに遺憾だと考えております。さっそく局長にも申しつけたわけでございまするが、現地の教育委員会と連絡しながら、ぜひひとつ善処してほしいという指示をいたした次第でございます。私もこの問題は重要視いたしまして、今後ともその推移については十分監視しながら善処してまいりたいという考えでおります。

○山原委員 具体的にお聞きをいたします。このような事件がなぜ起こったのかという問題です。これは去る十一月の十三日も文部省に私のほうから要請をいたしましたけれども、それらに対する一つ一つの手が行政機関として打たれていないところに問題があります。
 たとえば警察当局の態度です。これは住民の間に非常に大きな不信感を呼び、あるいは憤激を買っております。
 さらにもう一つの問題は、マスコミがこのような問題をほとんど取り上げないという問題があります。これは現地におりますところの新聞記者の人たちに聞いたわけですけれども、私たちは幾ら書いても記事にならないんだということをほんとうに怒りをもって発言をされております。したがって、警察もほとんど、住民の不信を買うような、適切な手だてを構じない、新聞には出ない、まさに密室の中で行なわれているような事態があるわけです。
 さらにもう一つの重要な問題は、これは教育行政の問題です。この事件に必ず兵庫県教育委員会の責任者あるいは教育次長あるいは教育事務所所長、次長あるいは地方教育委員会が参加しておるという問題です。これもおそらく前代未聞のことだと思います。
 この点について最初に警察庁に伺いたいのです。まず第一番に、警察庁としてはこの事件をどう調査して、そしてどういう対策を立てているのか、どういう措置をするのか、はっきりとさせていただきたい。

○佐々説明員 お尋ねの八鹿高校の事件について、警察の現在までの捜査結果並びに今後とるべき措置についてお答え申し上げます。
 警察が本件を探知いたしましたのは、二十二日の午前九時五十七分ごろ、一般の方から一一〇番がありまして、店先で多数の人がけんかをしておる、こういう通報がございまして、パトカーが現場に急行するとともに署長以下二十名が現場に急行をいたしましたところ、御指摘のような八鹿高校の先生たちのうち、当日二十二日、こういうような不正常な状態では授業を行なうことが困難であるということで授業を中止をいたしまして集団下校をされた四十九名の教師団の方々と、戻って授業をすべきであろうということを主張しておる解放同盟の人々約百名が言い争いを行なっている状態を目撃したわけであります。
 警察部隊が到着いたしました時点におきましては、両者の話し合いが成立をした形で、これから学校に入って話し合いをするのだということで学校へ戻りつつあった時点でありまして、十時四十五分の時点で校内に全員入ったわけであります。

 八鹿署長は、内部の状況を確認するために八鹿高校におもむきまして教頭先生にお会いをして事情を聞いたところ、教育問題について学校内部として話し合いをするので、警察が直ちに入ることは混乱を惹起するので、しばらく待ってもらいたい、こういう申し向けがございました。さらに校長先生から、午前十一時から教育長、校長、教頭の三者の協議が行なわれます、事態収拾のための話し合いを行ないますので、警察部隊が直ちに学内に介入することはしばらく待ってほしい、こういう要請がございました。署長はこの間、十一時三十分から十一時五十分までの間、役場におもむきまして八鹿町長に、さらに午前十一時五十五分から午後零時までの間、八鹿高校校長に会いまして事態収拾について善処方の申し入れを行なっております。
 なおこの間、御承知のように二十二日はたまたまフォード大統領が大阪空港から韓国に向けて離日をされる日に当たっておりまして、兵庫県の機動隊はこの警備のために大阪空港におもむいておりました。そういう状況でございましたが、署長は念のため県警本部に対しまして機動隊をこの八鹿町に急派することを要請をいたしております。  その後話し合いの状況が続いておる模様で、校長先生は、現場には教頭、県の教育委員関係者もおられて話し合いを続けておるのでしばらく待ってもらいたいという状況が続いておりましたが、午後になりましても解散の気配がありませんので、午後三時二十分ごろ解放同盟側の責任者である山本解放同盟南但馬支部長を呼んで、こういう状態について問いただし警告を行なったところ、先生との話し合いは午後六時三十分をもって打ち切るという回答を得たわけであります。

 その後解放同盟側は、午後五時四十分ごろから午後七時四十七分の間、八鹿高校本館前におきまして、解放同盟並びに八鹿町職員組合など七千名を集めまして集会を実施をいたしました。署長といたしましては、先ほど申し上げましたように県警本部の応援派遣を要請するとともに、隣接署に対しまして応援派遣を要請し、夕方午後五時ごろの時点で七百十四名の警備体制を現地において整えてこの事態に対処をいたしました。
 その後も集会が継続をされておりますので、署長は解放同盟県連の山口書記長に対しまして厳重警告を行なったところ、山口書記長はあと十分待ってくれ、もうじき終わるというような状態が続いておりましたが、十時四十五分に至りまして、事態を黙視し得ずということで、八鹿署長は警察部隊十個中隊約六百名を八鹿高校の構内に入れまして、私服三十一名をもって構内を調査をいたしました。同校職員室に三十三名の先生がおられ、解放同盟側はこの時点では引き揚げておるという状況でございましたので、この先生方を救出をして出てきたわけでございます。

  その後の捜査の結果、この先生方の中に、先ほど先生から御指摘のございましたように、負傷者がおります。ただ数は、私どもの調査では、八鹿病院の記録によりますと、入院を要する者が二十七名、そのほか通院で治療を要する者を含めまして全部で四十四名の先生たちがけがをしておられる。一番重い方が、先ほど御指摘のありました片山先生のようでありますが、片山先生は、八鹿病院の院長の言によりますと、第八、第九肋骨が折れ、左の第二、第三、第四腰椎突起骨折という状況で、あと打撲傷がございます。内臓破裂の疑いはなく、けさ流動物も食べ、開腹手術は行なわないという院長の答えを私どもは得ておりますが、いずれにせよこういう負傷者が出ておりますので、警察といたしましては、三十三名の捜査班を編成いたしまして、現在この被害者につきましてすでに十六名から事情聴取を終わり、なお目下十四名事情聴取中ということで捜査に着手をいたしております。  なお事案の再発防止のために現地に派遣をいたしました警察部隊は六百名そのまま現地に残り、警戒を続けておるという状況でございます。

 今後の捜査方針でございますが、以上のような被害者の事情聴取を終わりました段階で被疑者を特定をし、傷害あるいは不法逮捕監禁の容疑が出ておりますので、これに対する厳正なる捜査を実施する予定でございます。

○山原委員 いま警察庁のほうの調査の現場把握の状態が出されましたけれども、話し合いがなされておるから待ってくれとか、集会だとかいうことばが出てまいりましたが、これは結果を見ればわかります。あなたが発表されましたように、入院を必要とする者二十七名、そして負傷した者、通院をする者四十四名、しかも長時間にわたる、こういう状態でしょう。そうすると、これは単なる話し合いなどというものではないでしょう。しかも肋骨が何本も折れるとかいうようなこと。しかも路上で双方が口論をしたというようなことではないんです。七十名の先生方がその日、身の危険を感じて、各ホールムールで生徒に話をして、きょうは非常に危険な状態だから、生徒の皆さんもきょうは帰ってくださいということで、個々に帰ればあぶないから集団を組んでこの日は帰る、そういう前提の状態があるわけです。帰ろうとするところへ車でぱっと来て、そしてこの丸尾という人物がかかれと言って、そしてそこですでになぐる、けるが始まり、そして足を引っぱって体育館へ連れていく、こういう状態から始まったこの十数時間の体育館における状態というもの、これは私は具体的に当たっています。けれども、ここでそれを一々説明をする余裕はもちろんありません。けれども、これだけのけが人が出たというこの事態、これを見ましても全く異常な事態です。言うなればこれは現行犯逮捕です。はっきりしているんです、こんなことは。路上で人がけんかしたって逮捕するでしょう。しかもこれだけのけが人を出しておる。

 あなたの御説明になったことはどこから入手した情報か知りませんけれども、八鹿の署長などは、いままでの一カ月以上前から起こっている異常な事態、幾つも幾つも傷害事件が起こっている事態は知っているのです。十月の末から約一週間にわたって橋本哲朗教諭の家を数百名が包囲して、朝から晩まで投光機をつけ、そしてマイクをつけて、中には八十八歳、九歳のおばあさんもおいでのところへ連日包囲して、不法な監禁をしている。裁判所は、その行為は不法行為だ、だからやめなさいという仮処分の決定をしておる。しかもそれが、裁判所の決定があってもその包囲は解かないで一週間続けている。またそのほかにもたくさんのけが人が出ている。こういう状態の中でこの事件が起こっているわけです。八鹿の警察署長はそういう事態を知っているわけです。あなたがいま御説明になったようなそういうなまやさしい状態ではなかった。午前零時まで続けられた、しかもその中で二十七名が入院しなければならぬというこの結果を見れば、これはすさまじい状態であったということは御想像がつくでしょう。

 しかもその中で、さすがにいまあの地域においては、人々は言いたいことが言えない、みんな住民が涙を流している、ほんとうに言いたいことも言えない、言ったら差別者だといって糾弾をされる、そういう状態の中で初めてこの八鹿高校の生徒諸君が、先生方が目の前でやられている、先生が殺されるといって、千名の生徒が集まって、そして警察署へも行っている。何とか助けてもらいたい。しかし、なかなか警察は動かない、こういう状態が続いたわけです。そして最後の段階、おそらく校長や教頭が、あなたの言われるように、警察の介入は待ってもらいたい、この間に猛烈なことが行なわれている。しかも最後の段階で、警察が入る前に、警察が救出したというよりもほうり出されているのです。その最後の段階で相当めちゃくちゃなことが行なわれている。いわゆるおわびの確認書に判をつく、名前を書く。みんなふらふらになっている、人事不省になっている、そこで書かされた、こういう状態が行なわれているわけですね。

 こういう状態でありますから、警察は当然住民の警察に対する不信をはっきりと解消するための具体的な行動をとる必要があると思うのです。いま私の申し上げました丸尾良昭という人物は、これは但馬における朝来町沢部落の解放同盟の支部長をしておる人物であります。この人物も今日まで何回か告発されている。しかも今度の事件の指揮者である。これはもう一カ月以上、告発をしても、傷害事件が起こっても、警察は何一つ手を出していない。だからこういう事件が起こったのです。私は十一月十三日に文部省に行きましたときにも、このままでおいたらまた事件が起こる、八鹿高校がまた不穏な状態になるんじゃないかということを言った。十一月十三日のことです。私がそのとき心配したとおりのことが、何ら手を打たれないために今度のような大惨劇になってあらわれてきたわけです。

 もう一回警察庁に聞きますけれども、警察庁は断固たる処置をすると言っておりますが、ほんとうにこの傷害者に対して逮捕する決意があるのですか。

○佐々説明員 本事件の捜査は、現在兵庫県警におきまして鋭意進めておるところでございますが、被疑者の特定その他捜査の進みました段階におきまして、強制捜査を含む必要な捜査的な措置をとる方針というふうに報告を受けております。

○山原委員 その日程といいますか、大体どれくらいでその捜査を完了して、そして警察として適切な措置を打つ、それはいつごろですか。

○佐々説明員 具体的にいつどういう形で捜査の着手をするかという点につきましては、兵庫県警の捜査の進展状況により兵庫県警におきまして判断をすることになろうかと思いますが、現時点、先ほど御報告いたしましたように、入院者のうち十六名の事情聴取を終え、現在十四名の聴取中ということでございます。ただし、先ほど先生御指摘のように、必ずしも被害者の方々がほんとうのことを言ってくださらない、こういう捜査上の困難性がございまして、これについて事実関係につきまだまだ被疑者の特定というために必要なだけの調書が十分集まっていないというふうに聞いております。いずれにせよ、可及的すみやかに捜査の進展を待って、先ほど申し上げましたように、強制捜査を含む必要な措置をとるものとわれわれは確信しております。

○山原委員 被害者がほんとうのことを言ってくれないというのは、被害者がうその証言をしておる、陳述をしておるということなんですか。

○佐々説明員 おそらく被害者の心境といたしましては、その後の捜査の結果によりまして何らかの迷惑が自分に及ぶことを心配して、そういう配慮からなかなかほんとうのことを言っていただけない、また目撃者もなかなか参考人として必要な供述をしていただけない、こういう状況でございまして、うそを言っているという意味ではございません。本件につきまして、先ほど先生御指摘のように、南但馬地方におきましてはこのほか朝来郡におきましても御指摘のような不法事案が起こっておりますが、これも同様のような事情で被害者を含めての御協力がなかなか得られない、こういう情報がございますが、今回の八鹿高校事件につきましては、はっきり負傷者が出ておりますので、また、この先生方の中にはほんとうの事実関係をお話しいただいておる方もおられるやに伺っておりますので、その結果を待ちまして、時期等については兵庫県警の判断にゆだねざるを得ませんけれども、所要の厳正なる捜査的な措置をとることになろうかと思われます。

○山原委員 いま警察庁の佐々警備課長のお話がありましたところに私は問題があると思うのです。ほんとうに事実を言えばまた報復を受けるというようなこと。さらに、入院先の八鹿病院におきましても、八鹿病院そのもの自体が安心して治療を受けることのできるような状態ではない。治療はもちろんお医者さんたちが治療をされておられるわけでありますけれども、その病院すら安全な状態でない。しかも、目撃した住民がほんとうのことを語ることはできない。これが法治国家であろうか。私は、何はともあれ、ほんとうのことも言えないような状態というものはたいへんなことだと思う。だから、そういう意味でこの事件の違法性というものをはっきりさせなければなりませんし、同時に行政機関、警察機関がそれに対して当然とるべき措置は、適切に、機敏に打っていくということがなければ、住民は恐怖、おそろしさというものがますます高じてきて、そしてみな沈黙をしてしまう。心の中では涙を流しているとみんな言っている。こういうことでどうして部落差別がなくなりますか。どうかつや脅迫によって教育ができるなどということは全くないことなんです。そういう事態というものを解決していく道は、それぞれの機関がそれぞれ適切な当然の措置をとっていくということです。私はそのことを強く要求しておきたいと思います。

 もう一つの問題は、県の教育委員会、これは文部省に所管される問題でありますけれども、ここで問題になりますのは、この事件が起こりましたときに、八鹿高等学校の校長室には県の教育委員会の杢谷教育次長あるいは指導主事その他がおります。しかも、校長のそばには先ほど言いました丸尾という人物がおるわけです。あるいは直接校長をこの場所で指導しておる人物として、畑中県教育委員会の参事もおるわけであります。しかも、長時間にわたっていろいろなそういう暴行が加えられておるにかかわらず、警察が来たならば、まだ待ってもらいたいとか、関与する必要はないとかということを言っているわけですね。こういう状態、これについて文部省はどう把握していますか。この長時間にわたるときに、この学校の中の校長室にだれがおりましたか。

○安嶋説明員 校長室には御指摘の校長のほか県教育委員会の職員が同席をしたということは私ども報告を受けておりますが、ただいま御指摘の杢谷教育次長がその場にいたかどうかということにつきましては、まだ確認をいたしておりません。私どもが得た情報によりますと、白井教育長、杢谷教育次長等は二十三日に現地へ行ったやに聞いております。したがいまして、ただいま御指摘の事実については確認をいたしておりませんが、いずれにいたしましても、長時間そうした異常な事態が続いておる中で、校長なりあるいはこれに対して指導助言を与えるべき県教委の職員が適切な助言をしたかどうか、警察との連絡等に遺漏がなかったかどうか、その辺につきまして、さらに現在問い合わせ中でございます。

○山原委員 初中局長、あとで文部大臣にもお尋ねしたいのですけれども、問い合わせ中などという状態じゃないでしょう。私は十一月の十三日に文部省へ行って、ほんとうに涙を流しながら話したのです。こんなことで教育ができるのかということで話をして、ほんとうに調べてください。電話で問い合わせてどうして真相がつかめますか。しかも、兵庫県教育委員会の方針の中には、文章としては確かに、同和教育については各関係団体と相談をしてやっていきますと、こう出ています。これは正しいことです。同和教育に関する諸団体がありますから、それと相談してやっていきますと、こう書いてあるのです。しかし、私が杢谷教育次長に会えば、関係諸団体というのは部落解放同盟だけです、他の団体とはお話し合いをしません、こういう思想です。しかし、ちゃんと出している方針は、りっぱに諸団体と話し合いをしていきますと、こうなっている。これ以外にないわけですね。ところが、それにもかかわらず、連帯をしていくものは部落解放同盟だけだ、こういう考え方。部落解放同盟というのは一定のイデオロギーを持った団体ですよ。政治的な主張も持っています。また、部落解放に対する一定の、それなりの見解も持っておるわけです。それが正しいかどうかということについてはまた意見もあるわけです。また、それと違う団体もあるわけです。しかし、その一つだけが連帯をする団体だと、こういう規定をしておるところに問題があるわけです。

 だから、私は、ちょっと文部大臣にも聞いていただきたいのですけれども、十月の下旬から十一月にかけまして、一週間にわたって橋本哲朗教諭の家を包囲したとき、しかもそれは、十月の二十三日に裁判所の仮処分が決定をされまして、そういう家を取り巻いてやる集会あるいは不法な監禁はやってはならぬという裁判所の決定がなされている。ところが二十五日、この日に兵庫県教育委員会の但馬教育事務所長は、この集会へ行ってどういう演説をしておるか。私はこれを、録音を忠実に起こしてみました。こういう演説をやっているのです。

 「但馬の事務所長であります。声明文を読み上げます。部落の完全解放をはばみ、運動と教育の分裂をはかる橋本哲朗の危険な部落差別は断じて許せません。但馬教育事務所は教育行政の責任において、解放同盟と連帯し、橋本糾弾、完全勝利をかちとるまで戦い続けることを声明いたします。なお、今日の戦いに参加していただいた皆さん、この戦いは但馬の夜明けを迎える歴史的な戦いであることを私どもは信じております。最後の最後まで戦ってください。私どもも戦います。以上。」こうして、司会者が拍手を要請して、この但馬の教育事務所長は万雷の拍手をもってこの演説が終わるわけです。

 公正中立を憲法、教育基本法で明示して、それを守れといっておる文部省の直接の兵庫県教育委員会の、しかも最末端の責任者である事務所長が、まさにこのような演説をしておる。解放同盟の意に沿わないからといって、その人物が確認書に、私が悪うございましたと書かないからといって、何でこんなことをしなければならないのですか。まさに教育の中立性に反したこの但馬の教育事務所長は、これだけの事実に基づいても、これはまさに、いままでの教育行政のあり方からいうならば、私は懲戒免職に値する人物だと思っております。こんなことが平然と行なわれている。

 しかも、そのほかに、――私は自分の主観を申しておるのではありません。すべて彼らが出したことば、事実に基づいてきょうは発言をいたしております。たとえば、これはこの事件の起こりました八鹿町のすぐ北にあります日高町の場合です。これは日高町の町長と日高町の教育委員会教育長羽渕木兵衛氏が出しておる回答書であります。これを見ますと、この中にこういうふうに書いております。
 「この組織の拡大強化に逆行する運動は」――この組織というのは部落解放同盟のことです。「この組織の拡大強化に逆行する運動は、かえって解放のテンポを遅らせるものであるとの判断から、このような表現となりました。」これは前文がありますけれども、「ともあれ、このような観点から、町といたしましては、同和地区の住民の皆さんが一体となって、解放同盟の旗の下に結集され、運動を展開して、解放に立ち上られることを願い、そのためには、万難を排して努力したいと決意いたしております。」こういうふうに、まさに教育機関が平然とこういう文書を出す事態が起こるわけであります。このような状態でございますから、文部省がどんなに公正中立な立場を標榜しても、兵庫県教育委員会に聞いたならば真相がつかめないのは当然です。まさにべったりとなっておる一方の相手に真相を幾ら電話で聞いても事実はつかめないのです。だから文部省は現地に人を派遣してほんとうにその人々の意見も聞けばいいでしょう。しかし相手の被害者あるいは住民、これらの人々の声をほんとうに聞くということ、これがいま一番大事なんです。そのことをやらないで兵庫県教育委員会を通じてやっても、こういう一面的な立場に立った兵庫県教育委員会が正しくものごとを皆さんに報告するはずはないわけです。まさに違法、不法な行為を彼らはやっているのです。教育委員会そのものがやっているのです。このことについて官房長は、全く異常なことであります、不正常なことでありますと私に言いましたが、私はこの官房長のことばは全くそのとおりだと思うのです。私がいま発表したこの事実について安嶋局長はどうお考えになりますか。このやり方が、但馬教育事務所長の態度が正しいですか、日高教育委員会の教育長の態度が正しいですか。どうですか。

○安嶋説明員 行政の公平中立が確保されなければならないということにつきましては御指摘のとおりでございます。政府関係の各省といたしましては、御承知のとおり、昨年の五月十七日に関係各省の事務次官通達をもちまして特にそのことを強調をいたしておるわけでございます。行政指導の基本はまさにここにあると申していいわけでございます。

 ただいま御指摘の但馬の教育事務所長の発言の問題でございますが、実は先週金曜日、二十二日に兵庫県の白井教育長を呼びまして、このことにつきまして厳重に注意をいたしてございます。兵庫県教育長といたしましては、但馬の教育事務所長の発言は穏当でないということを認めておるのでございます。そうした立場を兵庫県教育委員会としてはとっておるわけでございます。ただ、この具体的な人事の問題につきましては、これは兵庫県の教育委員会におきましてただいま申し上げましたような趣旨に従って適切な措置の講ぜられることを期待をしておるということでございます。

○山原委員 適切な措置をとるということですね。それに基づいて、では但馬の教育事務所長がほんとうに反省をして、こういうことをやるべきでないということをほんとうに文部省がその兵庫県の教育長にお話をして、そしてそういうことはすべきでないということ、これはだれが考えたって、三歳の児童でもわかることなんです。正しくないということなら、その態度を改めるということが出てこなければならないわけですね。それが出ていない。今度の八鹿高校の事件にも、校長室に教育委員会の杢谷次長がおるおらないは、あなたはわからぬと言った。これは調べてください。しかし、少なくともそこには教育事務所の職員、県の教育委員会の職員がおられたということはあなたは認めたのです。それならばなぜ、こういう事件があるならば、学校の中でそんなことをしてもらっては困る、そんなに先生をいじめてもらっては困る、学校のことは私たちにまかせてください、なぜこれができなかったのですか。教育行政者がほんとうに教育を守ろうとするならば、そこにおけるき然たる態度がなければならぬわけです。そのことが行なわれているのでしょうか。行なわれておれば、十四時間にわたるこういう暴行あるいはそんなことが行なわれておれば――体育館のすぐそばなんです、そこでわんわんやっているわけです。だから警察官が入って、それはもうそこで処理をしていくという態度をなぜとらないのか、何時間も何時間もそれをここでなぜ傍観したのか、ここに問題があるわけですね。そういう適切な指導をしていますか。

○安嶋説明員 先ほど申し上げましたように、その間適切な措置が行なわれていたかどうかにつきましては、私どもも疑問に思います。したがいまして、その間の事情についてさらに調査を進めておるということでございます。

○山原委員 私はあまり時間を長くとることはいたしませんが、先ほどの申し合わせで許していただきますけれども、この問題は、たとえば南但馬地方におきまして、いままで学校のみならず役場も教育委員会も、あるいは場合によっては労働組合も、いわゆる確認と称して、こういう確認会に出席を要請されて、そこでそれぞれいろいろな経験をしています。たとえば確認会といえば、広い講堂の中に一人の先生が不動の姿勢で立たされて、そしていろいろな質問を受ける。答弁ができなければ、おまえは差別者だと言われる。そしてときにはインディアン方式といって学校の子供までがその周辺を走って糾弾をする。そしてふらふらになる。これは和田山中学校の場合の例を申し上げましたけれども、夜の八時から翌日の午前六時半まで徹夜でやるわけです。そうしてついに確認書に判を押す者もおる。あるいはそれを押さなければまた一そう糾弾を受ける。だから一定の思想、イデオロギー、一定の政治的見解とかいうようなものを認めなければ許してもらえないという状態があるわけです。いままでそういうことがずっと続いてきて、それに対して、そんな不当なことば私は聞かないと言った橋本哲朗教諭に対してこの包囲が行なわれてきた。こういう中で住民の中にはほんとうにこれはおそろしいという空気が出てくるのは当然のことです。
 そして私が調べてみますと、南但馬の地方財政あるいは教育、住民の生活、これはいまほんとうに正常な状態にはありません。それから学校の子供まで巻き込んで、しかも校内において先生の糾弾をやるということになってまいりますと、中には涙をぼろぼろ流して失心をする先生がいる。そんなものを生徒が目の前で見て、朝の六時半までやって、そうしてそこには県の教育委員会の職員もいる。そばには地方教育委員会の職員もいる。教育委員、町長もいる。その目の前で多数の人間に取り巻かれて一人一人が糾弾を受けて、そうしてみんな心ならずも確認書を書く。何でこれが正しいでしょうか。そういうことをやられてきたこの経過が今度の八鹿高校になってあらわれたわけです。
 言うことを聞かない者は暴力でやる。これはファシストのやってきたことです。ナチスのやってきたことです。だからこれはみんなで一緒になって食いとめなければならぬ。同和教育に対する考え方の相違があれば、そこは職員会議の中でほんとうに話し合う、私たちは差別心がないのか、私たちの同和教育が正しかったか、これが自由に言える職員会議の中で激論をし話し合いをし、そうして初めて教育というものは成立をしていくわけなんです。それを一つの団体の、おれの言うことを聞かなければ糾弾をする、暴力でもやってみせる、こうなってきたら、憲法や教育基本法、人権は一体どうなるのか、こういう問題でございます。私は、いまその学校の中につくられておる解放研の問題これなどについても相当大きな問題を抱えておると思いますけれども、しかしそこまできょう申し上げることはできません。
 三原文部大臣、私はほんとうにいま懸命になってこのような事態を何とかなくするために発言をいたしております。そしていま但馬の教育事務所長の言ったこと、事実、あるいは日高の教育委員会の出した文書、それをお見せして発言をしておるわけですが、このような事態を正しいとお思いでしょうか。もしそういうことが誤りだとお考えになるならば、大臣としてもやはりしっかりとしたき然たる姿勢でこの問題について対処をしていただかなければならぬと思いますが、ここで大臣の見解を伺っておきたいのです。

○三原国務大臣 山原委員の御意見のように、教育というのは公正な立場で運営されなければならぬ。しかも平和を理念として教えていく場所でもございます。私は、そういう立場で、いま起こっております事態はきわめて異常な事態と思っているわけでございます。南但馬地区におきまする問題、高校あるいは小中の学校を中心にして展開されておりますこういう問題については、県の教育委員会なり町村の教育委員会等が責任を持って緊急に処置されねばならぬ適切な処置をなされねばならぬと思いますけれども、文部省といたしましては全体の教育の指導、助言の責任を持つところでございます。特に私は、けさほども関係者に申し上げましたが、高校におきましては、ちょうど上級校への入試の問題もかかえておるときであろう、また中学においても、そういうような立場であろうと思いまして、親御さんの立場に立って、この事態は早急に解決してやらねばならぬのではないか、そういう点でひとつ適正な現地指導、助言をするとともに、積極的に早期に解決するようにお願いするぞということを申した次第でございます。
 そういうような心境でございますので、この異常事態は早期にひとつ解決をして、早くいま先生の申されますような軌道に乗せた体制をつくってまいりたい、こう考えておるのでございます。

○山原委員 私は救いもあると思っているのです。この異常な事態の中で、ほんとうに地元の父母の方たちも動員をされているわけですけれども、その中には、先生に対してそんな暴行をしたらいかぬとかということを言っていらっしゃる方もあるわけです。地元の人たちの中には、涙を流して、そういう糾弾の会に動員をされている人もいるのです。そういう声も聞いています。よそから来た人たちがあの鉄製のリングをつけてなぐる、あるいは長靴に鉄製の部分をつけてけるというようなこと、これに対して、それを心の中で批判している人もいるのです。私は、ほんとうにこの問題でそれぞれの機関が適切な措置をとる、校長は校長として、学校をほんとうに運営、管理していく立場で、そういうことはもう一切学校の中へ来てもらっては困る、学校の中のことは学校で始末をしていきますというような姿勢をとる。また教育委員会で、ほんとうに正しい同和教育というものをどう進めていくか、こういう教職員の論議を起こすというようなことですね。そして不当な力は介入させない。警察は警察で、そういう反社会的な行為に対しては適切な手を打つ。こういうことがなされて初めてこの地域の問題は解決をしていくわけです。だから、そういう意味であいまいな態度でなくして、ほんとうに私は適切な手を打つべき時期だと思っています。そしていま、きょうは月曜日でございますから、生徒も先生も登校する日でしょう。しかし学校の先生だって身の安全が保障されなければ行けないわけですね。きょうお聞きしますと、生徒の数は千三百名八鹿高校にはおると聞いております。千名くらいかもしれません。しかしその中できょう登校した生徒は五十名、その子供たちも下校する。先生が七名程度学校へ来られたそうですけれども、中には入院しておる、あるいは通院しておる、またうかつに出て行けばやられるかもしれない、まだ確認書をおれは書いていないからやられるかもしれない、そういう人もいらっしゃるわけですね。こういう状態で、ただ教育委員会や校長さんが、きのうは職務命令と解して学校へ来てもらいたいなどと、事態の収拾も何にもはからないでやっているわけです。これでどうして正常な姿に返るでしょうか。だから私は緊急の問題として要求したいのは、この学校の先生方が、教職員がほんとうに教育に専念できる、町の中を自由に歩けるようにすること。生徒も千名の生徒が抗議に立ち上がっておるわけです。生徒の態度も私はりっぱだと思います。先生を返してもらいたい、先生を殺さないでくれと言って立ち上がった生徒のこの姿はほんとうにりっぱだと思うのです。この子供たちがほんとうに自由に学校に行けるような状態、これをつくるためにどうするか、この身の安全をどう保障するか、このことについて警察庁はどうお考えになっていますか。

○佐々説明員 本日南但馬地区の情勢に対しまして、先はど申し上げましたように、六百名の部隊を残留させて事案の再発防止のために警戒を行なっております。
 また、基本的な姿勢といたしましては、主義主張のいかんにかかわらず暴力事件は見のがさないという厳正公平な取り締まり姿勢で、ただし、日本の刑事訴訟法上、証拠主義でございますので、十分なる証拠を収集した上でこれに対する必要な捜査的な措置をとり、事態の正常化をはかりたいと考えております。

○山原委員 警察の答弁はそういうことですけれども、しかし、そういうことが先ほども言ったように長引けば長引くほどまた問題が起こります。きょうこの地域にありますところのある町の高等学校の糾弾をやる、あしたまた八鹿高校をやるのだというようなうわさも飛んでいるのです。どこへでも自分の思うところに糾弾をやっていく、そうして至るところにこういう状態を起こしていく、警察は野放し、何をやっても何の具体的な措置も受けないということになる。これではいつまでたっても問題は解決しないわけです。だから私は、適切なことをやる、やるべきことはやるということ、これは警察当局も当然やるべきことはやり、しかも機敏にやるということです。

 それから、文部省はどうでしょうか。この事態をどういうふうに収拾をするつもりですか。ただ、学校を開け開けですか。どういうふうにこの事態を、あるいは入院しておる人たち、負傷した人たちに対する治療の問題、見舞いの問題、そういう問題を含めて八鹿町全体がほんとうに落ちついた状態にするために教育行政の最高機関としてどういう手があるか、言ってください。

○安嶋説明員 先ほど来警察庁からお話のようなことでございますが、何と申しましても教職員の身柄の安全をはかるということが第一であろうと思います。そうした点につきましては、警察と十分連絡をとって、遺憾の点のないようにいたしたいと思いますが、そうしたことを前提としながら、やはり学校の教育の正常な回復ということに努力いたしてまいりたいというふうに考えています。具体的には、先ほども申し上げましたように、二十三日から県の教育長自身が現地におもむきまして、高等学校の校長その他の当局者あるいはPTA、育友会の関係者あるいは解同の関係者その他と協議を続けておるということでございます。ですから、具体的には、そうした教育長を中心とする県教育委員会の努力にまちたいということでございます。私どもといたしましては、一日も早く安全にかつ正常な学校教育の回復されることをぜひ期待をしてまいりたい。
 なお、実情の把握につきましては、今後とも県当局と密接な連絡をとってまいりたいというふうに考えております。

○山原委員 確認会の問題ですけれども、確認会というのは、聞きますと、部落解放同盟の支部から学校の校長さんに対して、あるいは地方自治体の場合も同じような形態だそうですけれども、何月何日にどこへ来いというふうに言って、それに校長さんが同調していくということですね。この確認会などというものに教師が行かなければならぬ義務があるのか。私はないと思うのです。学校の中でいろいろな意見を聞いて、学校の運営にそれを参考にしていくということ、それは当然のことでしょう。しかし、多数をもって集団で糾弾をしていくとか、あるいは一定の見解を認めなければどこまでも糾弾するとかいうようなこと、これに対して応ずる必要は私はないと思うのです。これはどうですか。確認会へ出席する義務がありますか。もしそれが必要なければ、その確認会へ行かない教師の人権をどういうふうに保障するのですか。

○安嶋説明員 確認会には、私ども出る義務が一般的にはないと考えております。
 ただ、当該学校の生徒と同和教育の問題について話し合うというようなことでございますれば、これは当該学校の教員の立場といたしましては、やはり生徒との話し合いに応ずることが必要であろうというふうに考えておりますが、それにいたしましても、それが非常に異常な雰囲気のもとに行なわれたり、あるいはそれが長時間にわたり、翌日の勤務に支障があるというような形態で行なわれることは、きわめて不適切であるというふうに考えております。こうした方向ですでに兵庫県の教育委員会に対しましても必要な指導は行なっておるところでございます。

○山原委員 こういう問題について適切な通達を出す意図はありませんか。といいますのは、こういうことであちらこちらで行なわれる、いまあなたがおっしゃったように、学校の中で子供さんと話し合う、これは当然のことです、学校ですから。学校の教育というのは、もともと話し合いをするものですからね。そこへ他の外部の団体が入ってきてこれを指導したり、あるいはこれで確認、あるいはおれの言うことを聞かなければ承知しないというようなことになってくると、これは異常なわけですね。ですから、そんなものにどうしても行かなければならぬなどという必要はないわけです。大体、外部の者が入ってきてやるなんということは、これは異常な状態です。そういうことはやってはならぬ、そういう通達を出す気持ちはありませんか。

○安嶋説明員 すでに、ただいま申し上げましたような方針によりまして指導いたしておるわけでございます。また、ほかの府県におきまして同様なケースが起こりましたならば、さっそくに指導いたすつもりでございますが、ただいまのところ、一般的に通達の形で指導する考えはございません。ケース・バイ・ケースで個々に指導の徹底をはかってまいりたいというふうに考えております。

○山原委員 あなたの言う指導というのはどういう指導ですか。電話で指導するのですか。具体的にこういう問題が起こっているときには、たとえば通達は一般的な問題があるのだから、個々に対しては出さないという御回答だろうと思いますけれども、こういう場合に、ほんとうにこの地域に対してはこういう異常な事態が起こっておれば、これについてはこうしなさい、こうしなさいということはどこでやるのですか。電話でやっているのですか。

○安嶋説明員 指導は電話でやることもございますし、関係官を文部省に招致をしてやることもございます。しかし、具体の問題につきましては、やはり各教育委員会自体の考え方、判断というものも尊重しなければなりません。したがいまして、文部省は基本的な事項につきましてはこれは強く指導いたしますけれども、ただいま御指摘のように、特定の場合にこうしなければならない、ああしなければならないというところまで立ち入った指導をするということは、必ずしも適当ではないだろう、一般的な方針としては、先ほど来申し上げたようなことで、個々に強く指導をしてきておりますし、将来ともそうしてまいりたいということでございます。

○山原委員 もう時間がありませんので、これでおきますけれども、私は最初に申し上げましたように、ほんとうにこれは人命の問題です。教師にも人権があるわけです。だからこういう異常な事態、こういう不法な暴行、暴力というものは排除していくということでそれぞれの機関が勇気を持ってもらいたいと思うのです。勇気がなければ心ならずもなどということで、実際はほんとうに同和教育というものを進めようという気持ちがなくても、そういうかっこうだけ見せてみせるとか、そうして一度確認をさせられたら、私は差別者でございましたなどと言って、その次には行動で示せとこうくる。どこまでもこれは続いていくわけですね。私はそういう点から考えますと、今度の事件は起こるべくして起こったと思うのです。そういうものをかもし出す雰囲気が兵庫県の教育委員会に私はあったと思うのです。その基礎が、最初に言いました兵庫県教育委員会の同和教育に対する基本姿勢の誤り、ここからきているわけです。
 しかし、そんなことが国民大衆にほんとうに受け入れられるかどうかというと、私は南但馬の地域の八割の人々がこういうやり方に対して憎しみを持っておるという声を聞いています。これはほんとうにそういうことを、いまの少なくとも民主主義の洗礼を受けた日本の国民が、しかも憲法や教育基本法を守ろうとする人々が納得するはずがないわけです。だからそういう暴力やどうかつで教育はできない、ほんとうの差別を解消することもできないのです。だから、この立場に立ってこの問題を解決していくべきだと思います。まさに今度の事件は日本の教育史上かつてないできごとだと思います。これに対してほんとうにこれを早期に正しく解決をしていくという、この姿勢で文部省も臨んでいただきたい。また取り締まり当局である警察庁もやるべきことは正しくやってもらいたい。このことを要請いたしまして、最後に私の本日の一時間にわたる質問に対しての文部大臣の見解を伺っておきたいと思います。

○三原国務大臣 劈頭申し上げましたように、教育は中正な立場で運営されなければならぬ。しかもその教育の場において、いま南但馬地方で起こっております異常事態、私は先生の御指摘の点ごもっともな御意見だと思っております。大事な学校の方向、高等、上級学校への進学の時期でもございます。そういうものを踏まえまして、早期に厳正な立場で解決を急いでやるように措置をしてまいりたい、そういう決意でおります。ありがとうございました。

○山原委員 最後に警察庁の見解を伺っておきたいのです。適切な措置を機敏にとりますか。

○佐々説明員 先ほど来繰り返し御答弁申し上げておりますとおり、兵庫県警の捜査の進展によりまして、強制捜査を含む所要の捜査措置をとる方針であります。

○山原委員 終わります。

○森(喜)委員長代理 本日は、これにて散会いたします。
   午後五時四十八分散会
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※→八鹿高校事件関連国会質問一覧 1974/11/22〜1975/03/31